上 下
162 / 246
修行

修行方法

しおりを挟む
今まで黙っていた靖弥がオズオズと手を上げ、付け加えるように口を開いた。

「それと、優夏の方は一技之長いちぎのちょうを扱えるようになっている。そっちもうまく使えば、もっと戦闘が優位になるんじゃないか?」
「あ、そうなのかい? なら、一技之長も磨こうか。でも、最初は基本の本術を扱えるようにした方がいい。君の身体的にも、そちらの方がいいだろうしね」
「はぁ…………」

 確かに、いくつもの技を同時になんて、今の俺には難しいし、一つずつやってくれるのは助かる。

「…………今の俺は、闇命君との繋がりで法術を扱えている。なら、その繋がりを解けば、また式神すら出せなくなるんだよね?」
『そうだよ、当たり前でしょ。今は僕が僕の身体のために制御してあげているの、感謝して』
「はいはい、アリガトウゴザイマス」

 嫌味を混ぜないと話せない闇命君、降臨。

「繋がりって、意図的に外す事ってできるの? それか、闇命君が今回だけ、制御しないとか」
『繋がっていれば自然と法力を抑えてしまうから、僕との繋がりを解除した方がいいかもしれないね。解除自体は出来るし』
「あ、そうなんだ」

 無意識に自身の身体を守るため、力を抑えていると言う事か。
 絶対に俺のためではないだろうなぁ、闇命君だし。自分の身体を守るのは当然だし、何も言えねぇ。

「それなら、さっそく外してもらおうか。早く早く~~」

 琴葉さん、絶対に楽しんでいるだろ。闇命君も従いたくないって顔をしているな、俺と同じだ。
 俺もなんとなくこの流れでやるのは癪に障るというか、気持ち的に負けた気分になるからやりたくない。
 でも、やらないと何も進まないし、闇命君と目伏せをして繋がりを切る事に。

『……………………それじゃ、切るよ』
「……………………よろしくお願いします」

 渋々、本当に渋々言われたようにやることに。

 闇命君は両手を胸元で合わせ、目を閉じる。すると、俺の身体から白いオーラのようなものが現れ、闇命君の合わせられている手に吸い込まれた。

「…………あ」
『ふぅ、多分。これで繋がりは遮断されたと思うよ。試しに式神を出してみて』
「え、う、うん。でも、繋がりが切れていた場合、大きな火花を出して札が燃えたりしない? 大丈夫?」
『やればわかるでしょ。早く、僕もやりたくなかったことを無理やりやらされたんだから、君も早くやって』
「はい…………」

 懐から札を一枚出して、いつものように式神である百目を出そうとする。もし出す事が出来たら、心から謝りたい。あの時の失態を、絶対に。

「百目、でてきっ――……」

 札に力を込めた瞬間、火花が出てきっ――………


 ――――――――――バチッ!!!!!


「どわっ!!!!」
「優夏!?」
「おにーちゃん!?」

 いてて…………。やっぱり、大きな火花が出てしまった。驚きすぎて後ろに転んでしまった。

 すぐに紅音と魔魅ちゃんが近寄ってきて、心配の声をかけてくれる。差し出された紅音の手を握り、立ち上がる。魔魅ちゃんが俺の身体を支えてくれるように腰に手を回してくれた。ありがとね、魔魅ちゃん。

「これが、今の君の実力だという事だねぇ。君はこの世界の住人ではないから、これが普通なんだろうけど。思った以上に事態は悪いなぁ、まさかここまで扱えていないとは」
「すいません………。元の俺は凡人に足が生えて歩いているような人物なので…………」
「そこは俺にとって何か関係はあるかい? 君が凡人だろうが、天才だろうが、関係ないよ。俺に関係あるのは、今の君の実力と、どうやって扱えるようになるかの方法だけ」
「ソーデスネー」

 あっさりしているというか、なんというか。わかっていたけど、琴葉さんも、やっぱり扱いにくい。この世界の一人一人、本当にキャラが濃すぎてさぁ。俺が米粒以下の存在になりかねないよ。そのうち、プチッっと潰されそう。

「これからは法力の使用方法と、制御を覚えてもらおうかな。それは水分の方が得意だし、そっちにお願いするか。俺はもう一人の方を相手する」
「え、もう一人って?」

 琴葉さんは、俺から目を逸らし、笑みを浮かべながら靖弥の方に向いた。

 もしかして、琴葉さんは靖弥の修行相手って事? でも、靖弥は絶対に今の俺より強いし、力も使いこなしている。これ以上強くなるには、一体どうすればいいんだ? 新しい技を覚えたり、式神を捕まえたりするとか?

「俺は何をすればいい」
「おぉ、やる気だなぁ」
「俺に出来る事があるのなら、やりたい。罪滅ぼしになるなんて思っていないけど、出来る事は全力でやって、少しでも優夏達の役に立ちたいんだ」

 意志の強さが瞳に現れている。目は琴葉さんを離さず、言い切った。

 靖弥、今までどんなことをしてきたのか俺にはわからないけど、償おうとしているのはわかる。今の話だけで、意志の強さはわかった。

「ほぅ、おもしろいねぇ。なら、俺も答えないといけないな」

 言った琴葉さんは、顎を撫で、口角を上げる。なんか、あ、妖しいのよ…………。何あの、含みのある感じ。靖弥、大丈夫かなぁ。

『何をするつもりなの?』
「そうだなぁ、こいつの場合はおそらく基本中の基本は出来ていると思うから、技を磨くところから入ろうと思っている」
『技を磨く?』
「そうだ。ここからはこいつとのやり取りになるから、お前らは水分が来るまで待っていろよ」
「え、いや。さすがにあの状態で今日は無理でしょ。というか、こっちが気を遣うから、休んでいていほしいんだけど…………」

 あれ、確実に二日酔いでしょ? 二日酔いがきついのは、経験していない俺でもわかるよ。
 漫画やアニメでも、結構きつめに描写されているし。吐いたりもしているから、本当に辛そうなのわかる。

「大丈夫だろう、水を飲めば何とかなる。俺もよく羽目を外して酔いつぶれていたなぁ。その時は水を飲んで一日中寝ていたわぁ」
「一日中寝てんじゃねぇか。あ、やべ」

 思わず心の声が洩れちまった。でも、本人気にしてなさそう。気にするはずないか、こんな適当な人間が、人の暴言すらどこ吹く風だろうな。

 え、後ろから人が来る気配?? この流れで来る人って、一人しかいないような気がするんだけど…………。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドラゴンに転生したら少年にテイムされました 〜心優しいマスターの夢を叶えるため、仲間と共に戦います〜

白水廉
ファンタジー
末期癌によって、二十八歳の若さでその一生を終えた黒岩翔。 目を覚ました翔はドラゴンの雛の姿になっており、やがて異世界に転生してしまったことを悟る。 起きてしまったことは仕方がない。 そう考えた翔は第二の人生をのんびり暮らそうとした矢先、人間の少年カイルに捕獲されてしまった。 そうして、アイズと名付けられた彼はカイルの従魔に。 やがて、カイルから「テイマー決定トーナメントに優勝して両親を楽にさせてあげたい」という健気な夢を聞いたアイズは、トーナメントへの出場を決意。 アイズは心優しいマスターのため、途中出会った仲間と共に優勝を目指すのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~

うしのまるやき
ファンタジー
郡元康(こおり、もとやす)は、齢45にしてアマデウス神という創造神の一柱に誘われ、アイスという冒険者に転生した。転生後に猫のマーブル、ウサギのジェミニ、スライムのライムを仲間にして冒険者として活躍していたが、1年もしないうちに再びアマデウス神に迎えられ2度目の転生をすることになった。  今回は、一市民ではなく貴族の息子としての転生となるが、転生の条件としてアイスはマーブル達と一緒に過ごすことを条件に出し、神々にその条件を呑ませることに成功する。  さて、今回のアイスの人生はどのようになっていくのか?  地味にフリーダムな主人公、ちょっとしたモフモフありの転生記。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

洛陽の華、戦塵に舞う~陰陽師、乱世を導く~

エピファネス
歴史・時代
天文二十一年、尾張国―― 織田信長という若き獅子が、その鋭い牙を静かに、しかし確実に研ぎ澄ませていた。 「尾張のうつけ者」。そう嘲笑された若者は、常識を覆す革新的な思想と、底知れぬ行動力で周囲を驚かせていた。荒削りながらも、彼の手腕には奇妙な説得力があり、家臣や領民を魅了し、徐々に尾張の地を一つにまとめつつあった。そしてその野望は、やがて周辺諸国、さらには歴史そのものを飲み込むかのように膨れ上がろうとしていた。 しかし、信長の影に控えていたのは、彼自身と同じく一風変わった男の存在だった。剣や槍ではなく、知恵と策略を武器とする稀代の軍師。だが、その男は、信長の覇道の礎となるための覚悟を、まだ完全には持ち合わせていなかった。 その名を――東雲宗則という。 史実をベースにした、戦国時代を舞台にした重厚な人間ドラマ 主人公とライバル、二人の軍師の視点から描かれる、戦国乱世の裏側 剣戟アクション、宮廷陰謀、そして切ないロマンスが織りなす、壮大な物語、、、を書けるように頑張ります、、、

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...