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修行

不思議な人

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「これでどうじゃ!!!」

 うわぁ、めっちゃかっこいいわぁ。靖弥は元々顔もいいし、見た目は現代でもモテるほど。
 今は黒い痣が目立つけど、それでもかっこいいのよ。何なんだよ、俺なんて闇命君の身体じゃなかったらただの凡人だよ。

 今回、おに様が選んだ服は、本当に今の靖弥にピッタリなものだった。

 ズボンは袴のように広い裾、長く黒い羽織。中に着ているのは、薄い着物? も黒だけど、羽織には紫色の蝶がちりばめられているから重さはない。胸元をはだけさせているのはわざとですか?? 見せつけたいのですか? よく鍛えられていますね?

 コンチクショォォォオオオオ!!! イケメン係が切り替わっただけじゃねえぇか!!! もしかして、現代でも磨けばもっとイケメンになっていたんじゃないか? 靖弥、やっぱりお前は死ぬべきだ。

「見た目は重たさそうに見えるが、素材は出来る限り軽いものを使われておる。動きやすさも重視されとるから、これからの旅も問題ないじゃろう。どんな相手が敵じゃろうと、動きにくいなどはないはずじゃ」
「あ、ありがとうございます。ですが、この服何処で…………。普通はお取り寄せとかではないのですか?」
「わしが気に入って取り寄せしてもらっていた物なんじゃよ。まさか、こんな形で役に立つとは思ってはおらんかったぞ」

 カッカッカッと笑う魕様。いや、笑い事ではないんですが!? 質問していた靖弥も、思ってもいなかった返答にぽかんとしているよ。

「ただ、羽織が気に入っただけじゃよ。わしの大きさに合わせてしまっているから大きいが、羽織に使用するのなら特に問題はないじゃろう。わしからの贈答品じゃ、ありがたく受けとれ」
「え、こんな高価そうな物。もらえないですよ!?」
「お金はあるんか??」
「…………」
「ありがたくもらっとくことをお勧めするぞ」
「…………」

 靖弥は困惑顔をこちらに向けてきた。そんな顔を向けられても困るんだが、相手がいいと言っているのなら、いいのではないか? 遠慮なくもらえるものはもらっておこうよ。

『何遠慮しているのさ。あげると言われているのなら、遠慮なくもらっておきなよ。こんな所で遠慮とか本当にいらない』
「そうじゃぞ。もらえる時はもらうに限る。変に遠慮をすれば損するだけじゃぞ」

 当たり前だろうと、鼠姿でもわかるくらい堂々と言う闇命君に続き、なぜか魕様も続いた。

 …………ん? 続いた? え、今まで闇命君、声出してたっけ?

「…………この後、何か請求するとかはないですよね? 忘れた頃にお金の要求とか、奴隷のようになれとか。拷問とか…………」
「…………靖弥…………」
「その憐みの目はやめろ」

 いや、だって仕方がないじゃん。そんな物騒な思考になってしまうなんて、今までの生活が物語っているよ。哀れみの眼差しを送ってしまうのは仕方がない。

「安心するがよい。ここには証人出来る人間がワシを抜いておる。ワシが何かしようものなら人数的にこちらが不利じゃ、この状況でワシは言っておる。他に不安要素はあるかのぉ??」
「…………いや、というか、二人?」
「二人おるじゃろ。その少年と、肩に乗っている少年じゃ。いや、今は一匹と呼んだ方が良いかのぉ??」

 あ、やっぱり気づかれてたんだ。さっき、普通に闇命君の言葉に反応していたし。
 この人、もしかしたらすごい人かもしれない。俺達と同じ力を持っているとか?

『…………』

 あー。闇命君、君、何も考えていなかったな、鼠姿でも冷や汗が出るんだねびっくりだよ。
 闇命君がこんな初歩ミスなんて珍しいな。いつもは抜かりないのに。

 それにしても、鼠姿の闇命君が話していても何も言わないというか、逆に受け入れて普通に話している。頭数に入れていたし、こういう事に慣れている人なのか?

「では、ワシは行くぞ。また近いうちに会うと思うが、その時までにもっと強くなっている事を期待しておるぞ――……」

 足音を一つさせず、空気すら揺らすことなく、魕様が俺の目の前に来て顎を固定する。
 端正な顔が近づいて来て、目を離すことが出来ない。

「煌命の息子と――異端の存在よ」

 強制的に合わされた赤い瞳に、俺の驚いた顔が映り込む。俺が覗き込もうとしても、この人の心情は読むことが出来ないが、逆に俺は全てを見透かされているような感覚に陥る。
 体がしびれて動くことが出来ない、離れたいのに。

「……――そこまで怖がらんでも良い、また会う日を楽しみにしておるぞ」

 そのまま頭を一撫でされ、そのまま歩き去ってしまった。

 な、なな、なんだったんだ!?!?!?
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