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暴走と涙
殺して
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…………――――何が、起きたの。
―――――ポタッ ポタッ
「…………ゴホッ」
赤い液体が、琴平の腹部から流れ落ちている。
銀色の刃が腹部を貫通し、背中から出ている刃が赤く染まっていた。
琴平の身体が傾いたかと思ったら、力なく倒れ、動かなくなる。
ドクドクと血が流れ、地面が赤くなっていく。
琴平の目の前には、赤く染まった刀を手にし、驚愕の顔を浮かべ彼を見下ろしている靖弥の姿。口元に手を持っていき、震えていた。
「琴平!!!!」
紅音がいち早く動きだし、琴平に駆け寄った。巫女の力で傷口を塞ごうと手のひらをかざし、温かい光を当て始める。
次に動き出したのは闇命君、難しい顔を浮かべながら琴平に駆け寄り、息がまだあるか、確認していた。
俺は、まだ体が動かない。
なんで、どうして。何で靖弥が、琴平を刺したんだ。
「琴平!! 琴平!!!!」
意識がない琴平に、何度も声をかける紅音。水分さんも駆け寄り前に立つ、まるで何かから守るように。
――――――――――パシュッ!!!!!
道満が封じ込められている方向から乾いた音と、白い煙が漂い始めた。
何が起きたのか理解出来ていない頭のまま、視線だけをそっちに向ける。そこには、妖しい笑みを浮かべた道満が、氷の中から姿を現した。
「よくやったぞ、セイヤ。まず一人、処分出来た」
低く、気持ちの悪い声。この状況を楽しみ、あざ笑っている。
靖弥は道満を揺れている瞳で見ていた。顔を青ざめさせ、赤く染まっている刀をカランと落とす。
歯をガチガチと振るわせ、怯えていた。
「あ、ああ…………。ど、うまん、さま…………」
「セイヤ、どうした? 今までこうなるように頑張ってきただろう。まずは一人、達成出来たのだ、なんでそんな顔を浮かべている? 早く、次を殺るんだ」
道満は言うと、右手を前に出し手のひらを靖弥に向ける。すると、靖弥は「嫌だ…………」と呟きながら、地面に落ちた刀に手を伸ばしてしまった。
闇命君が気づき、すぐ刀を手に取ろうとしたが、今は半透明の姿。刀を握ることが出来ず、靖弥が掴んでしまった。
「さぁ、殺れ。セイヤ」
「道満様、すいません、すいません。あの、やめてください、俺は、殺したくはっ――……」
何とか抗おうとするが、操られているのか体が思うように動かず立ち上がる。刀をカタカタと揺らしながら、目には涙の膜を浮かべていた。
「や、やめ…………」
涙が耐えきれず、頬を伝い落ちる。悲願する言葉は意味を成すことなく、道満は楽しげに放った。
「――――殺れ」
今の言葉で、靖弥の意識は完全に無くなった。黒く染まった目が、俺の方に向けられる。
黒く濁っている瞳の中には、何も出来ず、ただ立ち尽くしている俺の姿。
靖弥の狙いは――――俺だ。
涙の跡が残る顔を向けられ、刀を構えられる。
──────ダンッ
地面を蹴る音が聞こえた瞬間、眼前に刃先。
時間が止まっているのか、それともゆっくりだけれど動いているのか。目の前から迫ってきているはずの刃が、スローモーションのように見える。
靖弥は嫌だと言っていた。無理やり操り、人を殺めさせようとしている。道満は自分の手を汚さず、安全な場所で高みの見物。
──────────ユルセナイ
目の前まで迫ってきた刃先、それを顔を横にずらし既で交わす。頬を切られたらしく、血が流れ落ちるのを感じた。だが、そんなのただのかすり傷。
「百目────ヤレ」
手に持っていた御札に法力を注ぐ。いきなり大量の法力を送ってしまったためか、百目は若干顔を歪めたが、すぐに気を取り直し刀を握り直した。
『主の、仰せのままに』
目にも止まらぬ早さで百目は道満へと向かった。それに驚き、すぐさま結界を張り百目からの攻撃を防ぐ。
反射神経は良いみたいだけど、それだけでは、百目は止められないぞ。
────っ、ちっ。
道満に気を取られすぎていたか、まぁいい。靖弥が黙っていてくれないのは知っていた。
手に持っていた刀を、俺の首に向けて横にはらって来た。すぐさまひざを折り、頭の上を刀が通る。
後ろに下がり距離を取った――…………
「っ、靖弥…………」
後ろに下がり距離をとったと思ったんだが、すぐに距離を詰まれた。顔を横にそらし、またしても刃先を既でで交わす。次々と繰り出される斬撃、すべてをギリギリで交わすので精一杯だ。でも、避けられないわけではない。
頬、肩、腕。掠ってしまったけど、余裕だ。刀に迷いがあるし、踏み込みが浅い。動きも無駄が多いし、手慣れた人なら掠りすらしないだろう。慣れていない俺でも避けれているくらいだしな。
「『七人ミサキ、繰り出される刃を弾き、この場にある悪を切り刻め。急急如律令』」
避けながらもお札を取り出し、最近式神にした七人ミサキを出した。
俺の周りには、七人の僧侶。錫杖を地面にたたき、その度シャンシャンと音を鳴らす。
「七人ミサキ、行け」
七人ミサキの視線は一気に靖弥へと向けられる。七人からの異様な視線に一瞬息を飲む靖弥だが、今の靖弥は操られている。靖弥の感情関係なく、体が勝手に動き出す。
七人ミサキは迷いのある刀の動きなど簡単に弾いているため、刃は届かない。それだけではなく、思うように動かす事をしないように取り囲み、関節を錫杖で叩き動かせないように封じた。
叩かれた瞬間手から力が抜け、靖弥の手から刀が離れる。一人の僧侶が刀が地面に落ちる前に掴み、靖弥が届かない所まで投げた。
カランと地面に刀が落ちた。しかも、計ったかのように俺の近くに。
これがあれば、俺自身も戦う事が出来る。もう、一技之長も使いこなす事が出来ているんだ。
刀に近づき、拾い上げる。片手では持てないけど、両手でなら振りかざす事くらいは出来る。あの、闇の空間は無駄な時間ではなかったな。
道満の方を見ると、百目がスピードを生かし動きを制限。道満は動く事すら出来ないのか、苦い顔を浮かべ百目の猛攻を何とか避けたり防いだりしている。顔を歪めているから余裕ではないのだろう。
隙をつくことが出来れば、俺が道満を…………殺せる?
―――――ポタッ ポタッ
「…………ゴホッ」
赤い液体が、琴平の腹部から流れ落ちている。
銀色の刃が腹部を貫通し、背中から出ている刃が赤く染まっていた。
琴平の身体が傾いたかと思ったら、力なく倒れ、動かなくなる。
ドクドクと血が流れ、地面が赤くなっていく。
琴平の目の前には、赤く染まった刀を手にし、驚愕の顔を浮かべ彼を見下ろしている靖弥の姿。口元に手を持っていき、震えていた。
「琴平!!!!」
紅音がいち早く動きだし、琴平に駆け寄った。巫女の力で傷口を塞ごうと手のひらをかざし、温かい光を当て始める。
次に動き出したのは闇命君、難しい顔を浮かべながら琴平に駆け寄り、息がまだあるか、確認していた。
俺は、まだ体が動かない。
なんで、どうして。何で靖弥が、琴平を刺したんだ。
「琴平!! 琴平!!!!」
意識がない琴平に、何度も声をかける紅音。水分さんも駆け寄り前に立つ、まるで何かから守るように。
――――――――――パシュッ!!!!!
道満が封じ込められている方向から乾いた音と、白い煙が漂い始めた。
何が起きたのか理解出来ていない頭のまま、視線だけをそっちに向ける。そこには、妖しい笑みを浮かべた道満が、氷の中から姿を現した。
「よくやったぞ、セイヤ。まず一人、処分出来た」
低く、気持ちの悪い声。この状況を楽しみ、あざ笑っている。
靖弥は道満を揺れている瞳で見ていた。顔を青ざめさせ、赤く染まっている刀をカランと落とす。
歯をガチガチと振るわせ、怯えていた。
「あ、ああ…………。ど、うまん、さま…………」
「セイヤ、どうした? 今までこうなるように頑張ってきただろう。まずは一人、達成出来たのだ、なんでそんな顔を浮かべている? 早く、次を殺るんだ」
道満は言うと、右手を前に出し手のひらを靖弥に向ける。すると、靖弥は「嫌だ…………」と呟きながら、地面に落ちた刀に手を伸ばしてしまった。
闇命君が気づき、すぐ刀を手に取ろうとしたが、今は半透明の姿。刀を握ることが出来ず、靖弥が掴んでしまった。
「さぁ、殺れ。セイヤ」
「道満様、すいません、すいません。あの、やめてください、俺は、殺したくはっ――……」
何とか抗おうとするが、操られているのか体が思うように動かず立ち上がる。刀をカタカタと揺らしながら、目には涙の膜を浮かべていた。
「や、やめ…………」
涙が耐えきれず、頬を伝い落ちる。悲願する言葉は意味を成すことなく、道満は楽しげに放った。
「――――殺れ」
今の言葉で、靖弥の意識は完全に無くなった。黒く染まった目が、俺の方に向けられる。
黒く濁っている瞳の中には、何も出来ず、ただ立ち尽くしている俺の姿。
靖弥の狙いは――――俺だ。
涙の跡が残る顔を向けられ、刀を構えられる。
──────ダンッ
地面を蹴る音が聞こえた瞬間、眼前に刃先。
時間が止まっているのか、それともゆっくりだけれど動いているのか。目の前から迫ってきているはずの刃が、スローモーションのように見える。
靖弥は嫌だと言っていた。無理やり操り、人を殺めさせようとしている。道満は自分の手を汚さず、安全な場所で高みの見物。
──────────ユルセナイ
目の前まで迫ってきた刃先、それを顔を横にずらし既で交わす。頬を切られたらしく、血が流れ落ちるのを感じた。だが、そんなのただのかすり傷。
「百目────ヤレ」
手に持っていた御札に法力を注ぐ。いきなり大量の法力を送ってしまったためか、百目は若干顔を歪めたが、すぐに気を取り直し刀を握り直した。
『主の、仰せのままに』
目にも止まらぬ早さで百目は道満へと向かった。それに驚き、すぐさま結界を張り百目からの攻撃を防ぐ。
反射神経は良いみたいだけど、それだけでは、百目は止められないぞ。
────っ、ちっ。
道満に気を取られすぎていたか、まぁいい。靖弥が黙っていてくれないのは知っていた。
手に持っていた刀を、俺の首に向けて横にはらって来た。すぐさまひざを折り、頭の上を刀が通る。
後ろに下がり距離を取った――…………
「っ、靖弥…………」
後ろに下がり距離をとったと思ったんだが、すぐに距離を詰まれた。顔を横にそらし、またしても刃先を既でで交わす。次々と繰り出される斬撃、すべてをギリギリで交わすので精一杯だ。でも、避けられないわけではない。
頬、肩、腕。掠ってしまったけど、余裕だ。刀に迷いがあるし、踏み込みが浅い。動きも無駄が多いし、手慣れた人なら掠りすらしないだろう。慣れていない俺でも避けれているくらいだしな。
「『七人ミサキ、繰り出される刃を弾き、この場にある悪を切り刻め。急急如律令』」
避けながらもお札を取り出し、最近式神にした七人ミサキを出した。
俺の周りには、七人の僧侶。錫杖を地面にたたき、その度シャンシャンと音を鳴らす。
「七人ミサキ、行け」
七人ミサキの視線は一気に靖弥へと向けられる。七人からの異様な視線に一瞬息を飲む靖弥だが、今の靖弥は操られている。靖弥の感情関係なく、体が勝手に動き出す。
七人ミサキは迷いのある刀の動きなど簡単に弾いているため、刃は届かない。それだけではなく、思うように動かす事をしないように取り囲み、関節を錫杖で叩き動かせないように封じた。
叩かれた瞬間手から力が抜け、靖弥の手から刀が離れる。一人の僧侶が刀が地面に落ちる前に掴み、靖弥が届かない所まで投げた。
カランと地面に刀が落ちた。しかも、計ったかのように俺の近くに。
これがあれば、俺自身も戦う事が出来る。もう、一技之長も使いこなす事が出来ているんだ。
刀に近づき、拾い上げる。片手では持てないけど、両手でなら振りかざす事くらいは出来る。あの、闇の空間は無駄な時間ではなかったな。
道満の方を見ると、百目がスピードを生かし動きを制限。道満は動く事すら出来ないのか、苦い顔を浮かべ百目の猛攻を何とか避けたり防いだりしている。顔を歪めているから余裕ではないのだろう。
隙をつくことが出来れば、俺が道満を…………殺せる?
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