上 下
137 / 246
暴走と涙

しおりを挟む
「精神力は、楽しい事を思い出したらテンションが上がって上手くコントロール出来たりしないか?」
「一回黙ってもらってもいいかな、靖弥」
「なんでだよ。俺も一緒に考えたいのに…………」

 最初の頃の闇命君の気持ち、今の俺と同じだったのかなぁ。馬鹿な発言していたし、今実感したよ。ごめんね、闇命君。

「…………ん? 待てよ」

 精神は、言い換えればメンタル。メンタルが落ちれば体調を崩したりもするし。あながちHPという例えは間違えていないのかもしれない。

 つまり、精神力は体力という考えでもう一度集中すれば、もしかしたら出来るかもしれない。
 一技之長いちぎのちょうは誰にでも使える、そんなに難しいものではないだろ。

 もう一度目を閉じて、息を一定の間隔で吸って、吐く。

 よく、水をイメージするといいとか聞いたことある。今回も、それを応用して水をイメージしてみよう。

 足元に広がる湖、波紋が広がる感覚。徐々に波が高くなっていくようにイメージして、それを刀に纏わせる。

 体から湧き上がるモノ、これが精神力なんだという事を理解するのに、さほど時間はかからなかった。これなら間違いない、集中を切らさぬよう刀に。

「…………これって」

 靖弥の戸惑いの声が聞こえる、出来ているのか? 

 先程まで不安定だったが、今はやっと安定して纏わせる事ができてきた。目をゆっくりと開け、どんな属性か確認する。

「……………………闇?」

 刀に刃に、どす黒い渦のような物が巻かれていた。刀も銀色だったのが、黒く染まっているし、これって大丈夫なのか? 
 今まで一技之長いちぎのちょうを使っている人を見た事が無いからわからない。
 一技之長と陰陽術を組み合わせた技なら見たけど、見本にはならないから思い出す必要はないか。

「これが、一技之長なのか?」
「た、ぶん。闇命君の属性って、闇なのかな。普通に炎とか水とかじゃないんだ。これって、空間とか切れたりするのかな」
「それは試してみたらいいんじゃないか?」
「それもそうだな」

 ここで問いかけても意味は無い、今までみたいに答えが返ってくる訳では無い。やれるのならやってみないと。

 空間を切る…………、ただ上から下に切り裂くだけでいいのかな。結構重たいけど、頑張るか。

「よいしょっと!!!」

 重たいけど頑張って刀を頭の上まで持っていき、何もない空間を斬る!!!!

「おりゃぁぁぁぁあああ!!!!!!」


 ――――――――――スカッ


「え」
「何も、変わらないな」

 ……………………空気を斬りました。

 ただ振り回すだけでは駄目という事か、端を見つけないと駄目って事? でも、無限ループしているし、どうやって見つければいいんだろうか。

 やっぱり、琴平達がどうにかしてくれないと俺達はこのままなのかなぁ、それはちょっと嫌なんだけど。

 いや、思考を止めるな、視野を広くしろ。闇命君に言われただろ、絶対に諦めるな。考え続けろ、続けろ。



 ――――――――――空間を作りだしている媒体を探すのです



「っ、安倍晴明??」
「は? 何を言っているんだ?」

 今、安倍晴明の声が聞こえたような気がした。

 媒体、そうか。こんな大きな空間を作り出しているんだ、必ず媒体があるはず。じゃなかったら、さすがにこんな大きな空間を作りだすなんて不可能だ。というか、無限ループを作りだすなんて不可能だろ。

「靖弥、媒体を探そう」
「媒体?」
「道満の法力を広く伝えている装置だよ。こんなに広く、大きな空間、道満がどんなにすごい実力や法力を持っていたところで一人で作りだすなんて不可能のはず。必ず媒体と呼ばれる何かがあるはずなんだ。それを探そう」

 と言っても、どうやって探せばいいんだ?? 道満の気配が一番強い所を探せばいいのか? でも、今まで気配を探ろうとしても意味はなかった。だから、気配で見つけるのは不可能だろう、手当たり次第に探すしかないのか?

「…………手当たり次第するしかないな」
「え? そんな時間あるの?」
「俺達が歩いて探すとかならないだろうな」

 ん? どういうことだ?

「優夏、自分に結界を張ることは出来るか?」
「え、普段なら出来るけど。何で?」
「なら、いい。輪入道、手当たり次第に炎の玉を放て」

 靖弥は、ずっと隣にいた輪入道の身体を摩りながら、意味の分からない指示を出した。
 手に握られているお札に法力を注ぎ込んでいるからか、暗闇を淡く照らしている。

 何をしようとしているんだ????

「早く自分に結界を張らないと火だるまになるぞ??」
「――――へ?」

 っ、輪入道の周りに沢山の炎の玉。もしかして――……

「――――やれ、輪入道」

 作りだされた炎が四方に放たれたっ――……

 いぃぃぃぃぃぃいやゃゃゃゃゃゃゃやややややややややああああ!!!!!!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...