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暴走と涙
負けられない
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『琴平、現状を僕でもわかりやすく教えてくれると嬉しいんだけど』
「すいません、闇命様。俺にもこれは説明するのは難しいです」
『紅音』
「はい! 水分が受け答えをしていたが、道満が何故かいきなり大声で笑いだし、目にもとまらぬ速さで水分を襲った。すぐに体を傾け避ける事に成功。今はお互い、近距離戦、殴り合いを行っている。です!!」
『…………ありがとう』
「はい!!!」
紅音は無表情ながらも、役に立てた、と言いたげにきらきらと顔を輝かせている。こんな顔を見せられたら何も言えなくなるんだって、紅音は本気で喜んでいるから悲しませることも言えないし。
…………今、紅音が言ったことは、僕も分かってるんだけど……。それを、聞きたかったんじゃないんだけど……、まぁ、いいか。
そんな事より、まさか二人が拳でやりあう事もになるなんて。今までは式神を使って戦ってたじゃん、拳でやりあう事はしてこなかったじゃん。
僕は体格差もあるし、なにより肉弾戦は習ってないから確実に無理。相手が近戦に持ち込んできたとしても、距離を取り式神で戦う。絶対に。
「どうしますか、闇命様」
『まず、僕の身体を見つけ出したい。セイヤがどのように動くか予想出来ない今、早く見つけ出さないと危険だ。僕との繋がりが消えた今、優夏は法力を使いこなせない、戦闘を持ちかけられていたら終わりだよ』
「確かにそうですね、早く気配を探り、見つけ出さなければ」
気配を探るとしても、異空間に飛ばされてしまったのなら気配は完全に消されているだろう。やっぱり、道満を今ここに居るみんなで倒さないと駄目か。勝ち筋が見えないから避けたいんだけど、今は水分がいる。なら、今が一番の好機だ。
『琴平は紅音に武器を渡して、氷柱女房で動きを制限してほしい。紅音は二人の動きに注目し、いつでも参戦できるように準備。僕は…………』
当たり前のように僕のやることを言おうとしてしまった。やれることなんてないのに、役立たずなのに。
『…………僕は何もできない。お願いしてごめんね』
何時ものようにの僕も式神や何かで手を貸す事が出来たらいいのに、本体が無いから何もできない。それに、この依代もいつまでもつか。指示を出すしか出来ない雑魚と同じなんだな、今の僕。
今の僕は、役立たず。二人は、今の僕も慕ってくれているけど、内心どう思っているか分からない。でも、絶対に無理はしていると思う。
無理なんて、しなくていいのに。指示だけ出して、二人を危険に晒すだけ晒して、終わり。
そんな僕を慕う人なんて、いるわけが無い。
「わかりました!!」
「闇命様の、仰せのままに」
『っ!』
紅音と琴平はそれだけを言って、僕の言うように武器を生成し戦闘態勢を作った。一切の疑いがない、僕の指示に疑問を持っていない。それところか、心から信じているような表情。
『大丈夫なの? 今の僕はいつもの直感もない、本当に危険なんだよ? それに、指示を出している僕は、一番安全な場所で待機しか出来ない。嫌なら嫌と言ってもいいんだよ? なんでも従う必要はない』
見上げながら言うと、二人は不思議そうに首を傾げ顔を見合わせた。なに、その反応。
「闇命様、俺達はどんな姿でも、どんな状況でも。最後まで主に従う従者です。たとえ、力を失ってしまったとしても、俺達の主であることには変わりありません。なので、どのような危険な事でも、闇命様の命なのであれば力の限り尽くしますよ」
「闇命様は、ワタシ達のために今までいろんなことをしてくれました。居場所の提供や、文字の読み書きを教えてくださったり。他にも色んな事を沢山教えてくれました。なので、今はその恩を返せる時。ワタシは、力いっぱい頑張ります。どんなことでも」
珍しいな、紅音の笑顔。琴平も柔和な笑みを浮かべ僕に言ってくれた。
本当に、二人は僕の事買いかぶり過ぎ。ほとんどは父さんの受け売りだよ、僕自身は特に何もしていない。でも、二人がやりたいのならいいか。
『本当に、二人にはかなわないな。任せたよ、紅音、琴平』
「「主の仰せのままに」」
二人は僕に向けて腰を折り、振り返る。今だお互い引かない戦闘を繰り広げている蘆屋道満と水分。もしかしたら、実力は五分五分なのかもしれない。そうなると、体力のない方が先に落ちるか、一瞬でも隙を見せた方の負けとなる。
でも、これからは紅音と琴平が水分に力を貸す。実力的にはこっちが有利となるだろ。セイヤを一緒に異空間に飛ばしたのは失敗だったな、数で押させてもらう。
紅音の手に氷柱女房が白い冷気を吹きかける。慣れたように紅音が右手を広げると、冷気は一つの武器を作りだした。
紅音の慣れ親しんだ武器は、琴平の氷柱女房が作った薙刀。これが一番しっくり来ているらしく、紅音のお気に入りとなっている。
琴平は紅音に武器を与えた氷柱女房に頭を下げ、水分達を見据えた。
二人とも準備は出来たみたいだな。僕は見ているしか出来ないけど、思考は止めないよ、視野も狭くしない。
あいつも、絶対に考える事をやめていないはず。だから、僕も何も出来ないなりに考えるよ。
『優夏、早く戻って来い。待っているからね』
「すいません、闇命様。俺にもこれは説明するのは難しいです」
『紅音』
「はい! 水分が受け答えをしていたが、道満が何故かいきなり大声で笑いだし、目にもとまらぬ速さで水分を襲った。すぐに体を傾け避ける事に成功。今はお互い、近距離戦、殴り合いを行っている。です!!」
『…………ありがとう』
「はい!!!」
紅音は無表情ながらも、役に立てた、と言いたげにきらきらと顔を輝かせている。こんな顔を見せられたら何も言えなくなるんだって、紅音は本気で喜んでいるから悲しませることも言えないし。
…………今、紅音が言ったことは、僕も分かってるんだけど……。それを、聞きたかったんじゃないんだけど……、まぁ、いいか。
そんな事より、まさか二人が拳でやりあう事もになるなんて。今までは式神を使って戦ってたじゃん、拳でやりあう事はしてこなかったじゃん。
僕は体格差もあるし、なにより肉弾戦は習ってないから確実に無理。相手が近戦に持ち込んできたとしても、距離を取り式神で戦う。絶対に。
「どうしますか、闇命様」
『まず、僕の身体を見つけ出したい。セイヤがどのように動くか予想出来ない今、早く見つけ出さないと危険だ。僕との繋がりが消えた今、優夏は法力を使いこなせない、戦闘を持ちかけられていたら終わりだよ』
「確かにそうですね、早く気配を探り、見つけ出さなければ」
気配を探るとしても、異空間に飛ばされてしまったのなら気配は完全に消されているだろう。やっぱり、道満を今ここに居るみんなで倒さないと駄目か。勝ち筋が見えないから避けたいんだけど、今は水分がいる。なら、今が一番の好機だ。
『琴平は紅音に武器を渡して、氷柱女房で動きを制限してほしい。紅音は二人の動きに注目し、いつでも参戦できるように準備。僕は…………』
当たり前のように僕のやることを言おうとしてしまった。やれることなんてないのに、役立たずなのに。
『…………僕は何もできない。お願いしてごめんね』
何時ものようにの僕も式神や何かで手を貸す事が出来たらいいのに、本体が無いから何もできない。それに、この依代もいつまでもつか。指示を出すしか出来ない雑魚と同じなんだな、今の僕。
今の僕は、役立たず。二人は、今の僕も慕ってくれているけど、内心どう思っているか分からない。でも、絶対に無理はしていると思う。
無理なんて、しなくていいのに。指示だけ出して、二人を危険に晒すだけ晒して、終わり。
そんな僕を慕う人なんて、いるわけが無い。
「わかりました!!」
「闇命様の、仰せのままに」
『っ!』
紅音と琴平はそれだけを言って、僕の言うように武器を生成し戦闘態勢を作った。一切の疑いがない、僕の指示に疑問を持っていない。それところか、心から信じているような表情。
『大丈夫なの? 今の僕はいつもの直感もない、本当に危険なんだよ? それに、指示を出している僕は、一番安全な場所で待機しか出来ない。嫌なら嫌と言ってもいいんだよ? なんでも従う必要はない』
見上げながら言うと、二人は不思議そうに首を傾げ顔を見合わせた。なに、その反応。
「闇命様、俺達はどんな姿でも、どんな状況でも。最後まで主に従う従者です。たとえ、力を失ってしまったとしても、俺達の主であることには変わりありません。なので、どのような危険な事でも、闇命様の命なのであれば力の限り尽くしますよ」
「闇命様は、ワタシ達のために今までいろんなことをしてくれました。居場所の提供や、文字の読み書きを教えてくださったり。他にも色んな事を沢山教えてくれました。なので、今はその恩を返せる時。ワタシは、力いっぱい頑張ります。どんなことでも」
珍しいな、紅音の笑顔。琴平も柔和な笑みを浮かべ僕に言ってくれた。
本当に、二人は僕の事買いかぶり過ぎ。ほとんどは父さんの受け売りだよ、僕自身は特に何もしていない。でも、二人がやりたいのならいいか。
『本当に、二人にはかなわないな。任せたよ、紅音、琴平』
「「主の仰せのままに」」
二人は僕に向けて腰を折り、振り返る。今だお互い引かない戦闘を繰り広げている蘆屋道満と水分。もしかしたら、実力は五分五分なのかもしれない。そうなると、体力のない方が先に落ちるか、一瞬でも隙を見せた方の負けとなる。
でも、これからは紅音と琴平が水分に力を貸す。実力的にはこっちが有利となるだろ。セイヤを一緒に異空間に飛ばしたのは失敗だったな、数で押させてもらう。
紅音の手に氷柱女房が白い冷気を吹きかける。慣れたように紅音が右手を広げると、冷気は一つの武器を作りだした。
紅音の慣れ親しんだ武器は、琴平の氷柱女房が作った薙刀。これが一番しっくり来ているらしく、紅音のお気に入りとなっている。
琴平は紅音に武器を与えた氷柱女房に頭を下げ、水分達を見据えた。
二人とも準備は出来たみたいだな。僕は見ているしか出来ないけど、思考は止めないよ、視野も狭くしない。
あいつも、絶対に考える事をやめていないはず。だから、僕も何も出来ないなりに考えるよ。
『優夏、早く戻って来い。待っているからね』
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