133 / 246
暴走と涙
忘れ技
しおりを挟む
周りは見渡す限り闇、手がかりも何もない。手を伸ばしても何か掴めるわけでもないし、靖弥と一緒に真っすぐ歩いていても壁にぶつかることがない。
「なぁ、優夏」
「…………なんだ、靖弥」
「無限ループって、怖くね?」
「言わないで」
現代の言葉が通じるのは本当に楽なんだけど、今はいらない。無限ループはゲームの中だけで十分だよ。フリーホラーゲームとかで十分だよ、あれも結構怖いからやりたくないけど。
「そういえば、優夏は何か式神を出す事が出来ないのか? 例えば、辺りを照らせるものとか」
「あぁ、確かにそうだな」
雷火なら辺りを照らしてくれるか。それに、見えない何かに襲われた時とか式神を出しておいた方が安心できる。雷火を出した後に百目も出そう、一緒にこの場から抜け出す方法とかを考えてくれるかもしれない。
お札を取り出し、いつものように法力を出す事に集中。その間、靖弥が黙って見てくる、気が散るから見ないでほしいな。
「『雷火、俺達を包み込んでいる闇をかき消す光となれ。きゅうきゅう――……』」
俺がいつものように祝詞を唱えていると、お札を挟めている指先に少しの違和感。お札がいつもよりバチバチと、大きな火花を出している。いつもこんなに火花が立っていたかっ――……
――――――――――バチッ!!!
「うわぁ!!!!」
お札からいきなり大きな火花がは弾けた?! 思わずお札を離し、落しちゃった。
俺の手から離れたお札は、地面に落ちる前に炎に包まれ散りになって消える。
何が起きたんだ? 俺はいつものように法力をお札に注いでいただけなんだけど。なんで、火花が大きく弾いたんだ? 何が起きたんだ、いつもと何が違った?
「何やってんだ優夏!! 怪我はないか?」
「怪我は大丈夫なんだけど…………」
もう一回出そうとして大丈夫だろうか。また、同じことの繰り返しとなってしまうだろうか。
「もしかして、子孫本人が近くにいないと法力を使いこなす事が出来ないとかか?」
え、闇命君が近くにいないと使えない? そんな馬鹿な、そんなことありえるのか?
いや、ありえるか。もしかしたら、闇命君が法力の操作をして、出しやすいようにしてくれていたのかもしれない。
ということは、今の俺は、闇命君との繋がりが切れた状態ってことか。
改めて考えてみると、めっちゃやばいじゃん。離れただけでも不安がいっぱいなのに、法力が使えないなんて。
「今の俺は、何も出来ないただの役立たず…………」
「落ち込んでんじゃねぇ、落ち込む暇があるなら他の方法を考えるぞ」
「…………わかってる」
…………そうだな、落ち込んだところで闇命君との繋がりが修復できるわけでもないし、元の世界に戻れるわけでもない。今は、力を使わなくても出れる方法を探さないと。
……………………なくね? いや、これって蘆屋道満の力で作りだされた空間なんだよね? それで俺は法力を使えない。
「靖弥の出来る事を教えてもらってもいい?」
「式神と刀を扱う事しか出来ないな。あとは鉄砲。それ以外、教えてもらっていない」
「今使える式神はないの?」
「輪入道くらいだな」
「光くらいにしかならないか。出すだけ出してみる?」
「わかった、光があるだけでも気持ち的に違うだろ」
靖弥は一枚のお札から、輪入道を出した。サイズ的には今の俺と同じくらい、つまり少年サイズ。
輪入道を囲っている火の玉のおかげで辺りが淡く光り出した。けど、特に何も変わらない。明るくしても意味はないのかな。
「輪入道、この空間がどこまで続いているのか確認したい。炎の玉を放ってくれないか?」
靖弥の言葉に頷き、輪入道が動き出す。
馬車のような体に、顔が付いている妖。大きな口を開け、バランスボールほどの
炎の玉を生成、何も見えない空間に放った。
もし壁という概念があれば、どこかでぶち当たるはず。
「…………」
「…………何も音が聞こえないね」
「マジで無限ループか?」
「やめっ―――――」
っ、後ろから何かが迫ってきている気配。それに、視界が少し明るく……?
「っ、靖弥!! 後ろ!!!」
「っ!?」
お互い後ろに下がり、勢いよく迫ってきていたモノから回避。俺達の間を炎の玉が通過した。そのまま闇に溶け込み消えてしまった。
前方に放ったはずの炎が何故か後ろから。もしかして、この空間。
「どうやら、本当に無限ループみたいだな」
「みたいだね。どうする」
「安易に何かを放てば後ろから刺されるし、いくら歩いても端にたどり着くことが出来ない。優夏、詰んだか? 攻略本はないか?」
「あったらどんなに高くても俺は買う」
攻略のやり方、必ずあるはず。弱点がない魔法や法術なんて存在しない、媒体とかもどこかに隠しているはず。
でも、俺は法力を使う事が出来ないし、どうすればいいんだ。琴平や闇命君みたいに知識があるわけではないから、頭を使った戦術も不可能。
本当に詰んだか?
「法術以外に何か、使える魔法とか力があればまた違うのかもしれないが…………」
「そんなのあるわけ――……」
いや、待てよ? 法術以外に使えるもの? 力、確かあったはず。誰にでも使えるけど、武器に纏わせなければ使えない、使い勝手の悪い代物。これは、誰にでも宿っている力で、精神力があればいくらでも使える。
「優夏?」
「靖弥、聞いたことあるかわからないけど、この世界には陰陽術以外にも、使える技があるんだ」
靖弥は思い当たる節がないのか、首を傾げ考え込む。蘆屋道満は教えなかったみたいだな、この世界の共通語。
「俺にも使えるはず、この体は闇命君のだし」
属性がわからないけど、法力が使えないのであればやってみるしかない。この世界唯一の力。
「一技之長を、どうにか使ってここから出ようか」
「なぁ、優夏」
「…………なんだ、靖弥」
「無限ループって、怖くね?」
「言わないで」
現代の言葉が通じるのは本当に楽なんだけど、今はいらない。無限ループはゲームの中だけで十分だよ。フリーホラーゲームとかで十分だよ、あれも結構怖いからやりたくないけど。
「そういえば、優夏は何か式神を出す事が出来ないのか? 例えば、辺りを照らせるものとか」
「あぁ、確かにそうだな」
雷火なら辺りを照らしてくれるか。それに、見えない何かに襲われた時とか式神を出しておいた方が安心できる。雷火を出した後に百目も出そう、一緒にこの場から抜け出す方法とかを考えてくれるかもしれない。
お札を取り出し、いつものように法力を出す事に集中。その間、靖弥が黙って見てくる、気が散るから見ないでほしいな。
「『雷火、俺達を包み込んでいる闇をかき消す光となれ。きゅうきゅう――……』」
俺がいつものように祝詞を唱えていると、お札を挟めている指先に少しの違和感。お札がいつもよりバチバチと、大きな火花を出している。いつもこんなに火花が立っていたかっ――……
――――――――――バチッ!!!
「うわぁ!!!!」
お札からいきなり大きな火花がは弾けた?! 思わずお札を離し、落しちゃった。
俺の手から離れたお札は、地面に落ちる前に炎に包まれ散りになって消える。
何が起きたんだ? 俺はいつものように法力をお札に注いでいただけなんだけど。なんで、火花が大きく弾いたんだ? 何が起きたんだ、いつもと何が違った?
「何やってんだ優夏!! 怪我はないか?」
「怪我は大丈夫なんだけど…………」
もう一回出そうとして大丈夫だろうか。また、同じことの繰り返しとなってしまうだろうか。
「もしかして、子孫本人が近くにいないと法力を使いこなす事が出来ないとかか?」
え、闇命君が近くにいないと使えない? そんな馬鹿な、そんなことありえるのか?
いや、ありえるか。もしかしたら、闇命君が法力の操作をして、出しやすいようにしてくれていたのかもしれない。
ということは、今の俺は、闇命君との繋がりが切れた状態ってことか。
改めて考えてみると、めっちゃやばいじゃん。離れただけでも不安がいっぱいなのに、法力が使えないなんて。
「今の俺は、何も出来ないただの役立たず…………」
「落ち込んでんじゃねぇ、落ち込む暇があるなら他の方法を考えるぞ」
「…………わかってる」
…………そうだな、落ち込んだところで闇命君との繋がりが修復できるわけでもないし、元の世界に戻れるわけでもない。今は、力を使わなくても出れる方法を探さないと。
……………………なくね? いや、これって蘆屋道満の力で作りだされた空間なんだよね? それで俺は法力を使えない。
「靖弥の出来る事を教えてもらってもいい?」
「式神と刀を扱う事しか出来ないな。あとは鉄砲。それ以外、教えてもらっていない」
「今使える式神はないの?」
「輪入道くらいだな」
「光くらいにしかならないか。出すだけ出してみる?」
「わかった、光があるだけでも気持ち的に違うだろ」
靖弥は一枚のお札から、輪入道を出した。サイズ的には今の俺と同じくらい、つまり少年サイズ。
輪入道を囲っている火の玉のおかげで辺りが淡く光り出した。けど、特に何も変わらない。明るくしても意味はないのかな。
「輪入道、この空間がどこまで続いているのか確認したい。炎の玉を放ってくれないか?」
靖弥の言葉に頷き、輪入道が動き出す。
馬車のような体に、顔が付いている妖。大きな口を開け、バランスボールほどの
炎の玉を生成、何も見えない空間に放った。
もし壁という概念があれば、どこかでぶち当たるはず。
「…………」
「…………何も音が聞こえないね」
「マジで無限ループか?」
「やめっ―――――」
っ、後ろから何かが迫ってきている気配。それに、視界が少し明るく……?
「っ、靖弥!! 後ろ!!!」
「っ!?」
お互い後ろに下がり、勢いよく迫ってきていたモノから回避。俺達の間を炎の玉が通過した。そのまま闇に溶け込み消えてしまった。
前方に放ったはずの炎が何故か後ろから。もしかして、この空間。
「どうやら、本当に無限ループみたいだな」
「みたいだね。どうする」
「安易に何かを放てば後ろから刺されるし、いくら歩いても端にたどり着くことが出来ない。優夏、詰んだか? 攻略本はないか?」
「あったらどんなに高くても俺は買う」
攻略のやり方、必ずあるはず。弱点がない魔法や法術なんて存在しない、媒体とかもどこかに隠しているはず。
でも、俺は法力を使う事が出来ないし、どうすればいいんだ。琴平や闇命君みたいに知識があるわけではないから、頭を使った戦術も不可能。
本当に詰んだか?
「法術以外に何か、使える魔法とか力があればまた違うのかもしれないが…………」
「そんなのあるわけ――……」
いや、待てよ? 法術以外に使えるもの? 力、確かあったはず。誰にでも使えるけど、武器に纏わせなければ使えない、使い勝手の悪い代物。これは、誰にでも宿っている力で、精神力があればいくらでも使える。
「優夏?」
「靖弥、聞いたことあるかわからないけど、この世界には陰陽術以外にも、使える技があるんだ」
靖弥は思い当たる節がないのか、首を傾げ考え込む。蘆屋道満は教えなかったみたいだな、この世界の共通語。
「俺にも使えるはず、この体は闇命君のだし」
属性がわからないけど、法力が使えないのであればやってみるしかない。この世界唯一の力。
「一技之長を、どうにか使ってここから出ようか」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる