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暴走と涙
中途半端
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後から、何かが割れる音。振り向くと、俺が張った結界が割られていた。靖弥の手には、銀色に輝く刀。
刀で、結界を壊したのか? そんな事出来る訳がない。確かに、俺は結界を張るのに慣れているかと問いかけられればそうでもないが、そうだとしてもただの刀で割るなど。どんな力をしているんだ。
「ダズゲデェェェエエアアアアアアアア」
振り向いた時には、もう遅かった。
苦悶の表情を浮かべていた少女は、自身の身体をかきむしりボロボロに。肉が見え始めている肌からは、赤黒い血がしたたり落ちていた。手の爪も、真っ赤に染まっている。
今から呪いを解いても遅い。時間もかかるし、今から最初から呪吸の儀を行うのは、無理だ。
「イヤダァァァァァァァァアァァアアアア!!!!!」
悲痛の叫び、脳を震え気持ちが悪い。耳を塞いでも意味はなく、嫌な汗が滲み出てくる。体から力も抜けて、眩暈もひどくなってきた。
気持が悪い、なんで叫び声だけでこんな周りに負荷がかかるんだ。最後の抗い? だとしてもそれは獣とかだろ、人間にこんな事出来る訳がない。今平然としているのは靖弥と半透明の闇命君だけ。琴平も紅音も俺と同じく耳を塞ぎ耐えていた。
「もう、手遅れだ」
靖弥の言葉と同じタイミングで、叫び声が消えた。
耳から手を離し、少女を見る。そこには、一人の死体が地面に転がっていた。最後の最後まで抗っていたのか、俺達に手を伸ばした状態で絶命している。
琴平の式神が氷柱を消したため、ただ一人、死体が転がっているのみ。
呪いは死体になど興味が無いかのように、肌は黒から白くなっていく。いや、白ではない。肉がはみ出してしまっているところから、赤黒い血が流れ落ち赤く染めていく。
近付くと、血の匂いが鼻を掠め吐き気が込み上げてきた。
「…………自業自得の結果…………か」
その場にしゃがみ、頭に手を乗せる。まだ温かい、死んでから時間が経っていないから当たり前だ。でも、ずっと触っていると、どんどん冷たくなっていく。
風が吹く度、少女の髪を揺らしていた。
―――――ザッ ザッ
後から足音、誰かが近づいて来ている。
「…………」
「待て、それ以上近づかせるわけにはいかない」
「…………」
琴平と紅音が俺を守るように立ち塞がる。
「目的を教えてもらおうか。あと、あの少女の事もな」
「…………時間がない。目的を果たしたら俺は去る。そこをどけ」
「まずは俺達の話を聞いてもらおうか」
「時間が無いと言っているんだが」
「なら、早く話した方がいいと思うが?」
琴平と靖弥が平坦な口調で話している。そんな時でも、少女の身体はどんどん冷たくなっていく。
これは、本当に自業自得の結果なのだろうか。
この少女には呪いがかけられていた。それはなぜ? なんでこの少女に呪いがかけられていた。誰にかけられた。
いや、誰かにかけられたとしてもだ。
「今回のはやり過ぎたな」
『っ、優夏?』
隣に立つ闇命君が俺の名前を呼ぶ。その声には”困惑”が含まれている。
闇命君の言葉に返す余裕がない。立ち上がり、琴平と紅音の間を通り抜け靖弥の前に。後ろから制止の声が聞こえるが、闇命君が止めてくれたみたい。
手を伸ばせば届く距離まで移動。靖弥は俺を見下ろし、刀を握り直した。でも、すぐに斬りつけようとしない。
「そこをどいてもらえるか、安倍晴明の子孫よ」
「そんな呼び方をするなんてね、普通に名前で呼んでもいいんだよ? 元の世界に居たみたいにさ、ねぇ? 靖弥」
何とか口元にだけ笑みを浮かべ、靖弥を見上げる。
「靖弥、何が目的はわからないけど、今回はやり過ぎたね」
「…………」
「今回は靖弥が主に動いていたみたいだけど、蘆屋道満からの命令なの? それともお前の意思で動いていたの?」
「お前には関係ない」
「関係ないわけがないよね。だって、靖弥、記憶あるもんね? 何がしたいのか、目的は何なのか。なぜ、今は蘆屋道満と別行動なのか。じっくり教えてもらいたいな」
蘆屋道満の名前を出すと、冷静だった靖弥の肩が微かに動いた。
「ねぇ、教えてほしんだけど。今は一体、何を目的として動いているの? 靖弥」
「…………」
「ねぇ、靖弥。俺は、怒っているわけではない、悲しいんだよ。だって、靖弥は本当はこんなことやりたくないんでしょ? これは決めつけとか、俺の理想を押し付けているわけではない。今まで一緒にいたからわかるんだ。だから、教えてほしい。靖弥のやりたい事、お願い」
「…………俺のやりたい事は、蘆屋道満様と同じ」
「嘘だよね。そんなことないはず」
「なぜ、言い切れる」
「まず、お前の行動は全てが中途半端だ。俺を殺せる時はあった。蘆屋道満のやりたい事は俺の体を殺す事。今まで、何回もチャンスはあっただろ。俺も、中途半端な気持ちで戦闘に出向いていたから分かるんだよ」
最初のヒザマの時とかは、俺も初めての戦場だったとはいえ、覚悟が出来ていなかった。だからこそ、闇命君の身体を危険な目に合わせてしまった。それだけではなく、百目や雷火などの式神も、何回も札を燃やしてしまった。
覚悟が足りなかった、考えが甘かった。だから、こんな中途半端になってしまった。
「中途半端だから、後悔するんだ。中途半端だから、失敗する。靖弥、お前が俺を本気で殺したいと思っているのなら、人を殺したいと思っているのなら。俺も本気でお前を止める。でも、そうでないなら、俺はお前を助けるために全力でやりたい。お前がやりたいことがわかれば、俺も本気で手を貸す。だから、教えてくれ。靖弥、お前は、何がやりたい、何を考えているんだ!!」
刀で、結界を壊したのか? そんな事出来る訳がない。確かに、俺は結界を張るのに慣れているかと問いかけられればそうでもないが、そうだとしてもただの刀で割るなど。どんな力をしているんだ。
「ダズゲデェェェエエアアアアアアアア」
振り向いた時には、もう遅かった。
苦悶の表情を浮かべていた少女は、自身の身体をかきむしりボロボロに。肉が見え始めている肌からは、赤黒い血がしたたり落ちていた。手の爪も、真っ赤に染まっている。
今から呪いを解いても遅い。時間もかかるし、今から最初から呪吸の儀を行うのは、無理だ。
「イヤダァァァァァァァァアァァアアアア!!!!!」
悲痛の叫び、脳を震え気持ちが悪い。耳を塞いでも意味はなく、嫌な汗が滲み出てくる。体から力も抜けて、眩暈もひどくなってきた。
気持が悪い、なんで叫び声だけでこんな周りに負荷がかかるんだ。最後の抗い? だとしてもそれは獣とかだろ、人間にこんな事出来る訳がない。今平然としているのは靖弥と半透明の闇命君だけ。琴平も紅音も俺と同じく耳を塞ぎ耐えていた。
「もう、手遅れだ」
靖弥の言葉と同じタイミングで、叫び声が消えた。
耳から手を離し、少女を見る。そこには、一人の死体が地面に転がっていた。最後の最後まで抗っていたのか、俺達に手を伸ばした状態で絶命している。
琴平の式神が氷柱を消したため、ただ一人、死体が転がっているのみ。
呪いは死体になど興味が無いかのように、肌は黒から白くなっていく。いや、白ではない。肉がはみ出してしまっているところから、赤黒い血が流れ落ち赤く染めていく。
近付くと、血の匂いが鼻を掠め吐き気が込み上げてきた。
「…………自業自得の結果…………か」
その場にしゃがみ、頭に手を乗せる。まだ温かい、死んでから時間が経っていないから当たり前だ。でも、ずっと触っていると、どんどん冷たくなっていく。
風が吹く度、少女の髪を揺らしていた。
―――――ザッ ザッ
後から足音、誰かが近づいて来ている。
「…………」
「待て、それ以上近づかせるわけにはいかない」
「…………」
琴平と紅音が俺を守るように立ち塞がる。
「目的を教えてもらおうか。あと、あの少女の事もな」
「…………時間がない。目的を果たしたら俺は去る。そこをどけ」
「まずは俺達の話を聞いてもらおうか」
「時間が無いと言っているんだが」
「なら、早く話した方がいいと思うが?」
琴平と靖弥が平坦な口調で話している。そんな時でも、少女の身体はどんどん冷たくなっていく。
これは、本当に自業自得の結果なのだろうか。
この少女には呪いがかけられていた。それはなぜ? なんでこの少女に呪いがかけられていた。誰にかけられた。
いや、誰かにかけられたとしてもだ。
「今回のはやり過ぎたな」
『っ、優夏?』
隣に立つ闇命君が俺の名前を呼ぶ。その声には”困惑”が含まれている。
闇命君の言葉に返す余裕がない。立ち上がり、琴平と紅音の間を通り抜け靖弥の前に。後ろから制止の声が聞こえるが、闇命君が止めてくれたみたい。
手を伸ばせば届く距離まで移動。靖弥は俺を見下ろし、刀を握り直した。でも、すぐに斬りつけようとしない。
「そこをどいてもらえるか、安倍晴明の子孫よ」
「そんな呼び方をするなんてね、普通に名前で呼んでもいいんだよ? 元の世界に居たみたいにさ、ねぇ? 靖弥」
何とか口元にだけ笑みを浮かべ、靖弥を見上げる。
「靖弥、何が目的はわからないけど、今回はやり過ぎたね」
「…………」
「今回は靖弥が主に動いていたみたいだけど、蘆屋道満からの命令なの? それともお前の意思で動いていたの?」
「お前には関係ない」
「関係ないわけがないよね。だって、靖弥、記憶あるもんね? 何がしたいのか、目的は何なのか。なぜ、今は蘆屋道満と別行動なのか。じっくり教えてもらいたいな」
蘆屋道満の名前を出すと、冷静だった靖弥の肩が微かに動いた。
「ねぇ、教えてほしんだけど。今は一体、何を目的として動いているの? 靖弥」
「…………」
「ねぇ、靖弥。俺は、怒っているわけではない、悲しいんだよ。だって、靖弥は本当はこんなことやりたくないんでしょ? これは決めつけとか、俺の理想を押し付けているわけではない。今まで一緒にいたからわかるんだ。だから、教えてほしい。靖弥のやりたい事、お願い」
「…………俺のやりたい事は、蘆屋道満様と同じ」
「嘘だよね。そんなことないはず」
「なぜ、言い切れる」
「まず、お前の行動は全てが中途半端だ。俺を殺せる時はあった。蘆屋道満のやりたい事は俺の体を殺す事。今まで、何回もチャンスはあっただろ。俺も、中途半端な気持ちで戦闘に出向いていたから分かるんだよ」
最初のヒザマの時とかは、俺も初めての戦場だったとはいえ、覚悟が出来ていなかった。だからこそ、闇命君の身体を危険な目に合わせてしまった。それだけではなく、百目や雷火などの式神も、何回も札を燃やしてしまった。
覚悟が足りなかった、考えが甘かった。だから、こんな中途半端になってしまった。
「中途半端だから、後悔するんだ。中途半端だから、失敗する。靖弥、お前が俺を本気で殺したいと思っているのなら、人を殺したいと思っているのなら。俺も本気でお前を止める。でも、そうでないなら、俺はお前を助けるために全力でやりたい。お前がやりたいことがわかれば、俺も本気で手を貸す。だから、教えてくれ。靖弥、お前は、何がやりたい、何を考えているんだ!!」
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