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暴走と涙
死というものは
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村の外に向かって走っていると、気配が強くなるのがわかる。
体が重くなり、走るだけで辛くなってきた。でも、走る足を止める訳にはいかない。
「安倍家御一行!!」
「あ、水分さん!! 今まで調べ物をしていたみたいだけど、体は大丈夫?」
「今は気にする必要はない。ちなみに、首と腰が痛い」
「…………頑張ってください」
「聞いた意味ねぇだろうが」
「確かにそうだね」
水分さんと無事に合流出来て良かった、すごい心強い。
『いた』
「あそこに――って、何をしているんだ?」
村の出入り口、一人の少女がただポツンと立っている姿が見えてきた。何をしているんだ、何がしたいんだ。もしかして、何かの準備中とか? それなら早く止めないと!!
『待て』
「なんで? 何かが起きる前にどうにかした方が…………」
―――――ゾワッ
さっきまでとは違う、嫌な気配。これは、なにかの前触れか。今まで体験したことがないような、嫌な予感。
あの、羽織の女に近づいてはいけないような気がする。それは、他の人も同じのようで、足を止め動かない。
村の出入り口に立っていた羽織の女がゆっくりと動き出す。羽織を翻し、こちら側を振り向いた。
「…………なっ」
女の顔、すごく青い。目をかっぴらいで、よだれを垂らし、なにかに耐えるように俺達に手を伸ばしてきた。
「たす、け、て…………。こ、違う。我は…………、こんなことになる、なんて……ッ…………」
伸ばしてきた手が黒ずみ始める。あれは、何? どんどん彼女の肌が黒くなり、苦し気に体を搔きむしり始めた。
あの女の肌の色、肌をかきむしるしぐさ。どこかで見た光景…………あ、俺が呪吸の儀を行った女性と同じなんだ。
もしかして、呪いが少女にも?
いや、今は考える時間はない。今、少女に何かだあれば情報を聞き出す事が出来ない。
呪いが彼女を苦しめているのなら、前回と同じように呪いを吸い取ってあげれば問題はないはず。助けた後に話を聞く、うまくいく保証はないけど、やるしかっ――……
『なんで?』
「…………え?」
『なんで、助けないといけないの? あの女は自業自得の結果に苦しんでいるんだよ? 前回の女も自業自得ではあったけど、巻き込まれた側。仕方がないから、呪吸の儀を教えたけど。今回のはやる価値がない、このまま死んでもいいと思う。呪いの進行を遅らせて、情報だけを抜き取り放置すればいい』
半透明の姿を現した闇命君が、当たり前のように言ってくる。迷いなく、言い切っていた。
「…………自業自得でも、命を落とすほどはやらなくていいんだよ」
『なんで? 死んでも誰も困らないからいいんだよ』
いや、困るから。俺が困るから、やめて。
確かに自業自得かもしれない、こうなっても仕方がない。でも、死ぬのはおかしい、見殺しにするのはおかしい。村の人達を死人にして、関係ない人を巻き込んで。それで自業自得で死ぬ? だから、死ななければならないのか?
関係ない人をあんなに殺しておいて、死ぬなんて許さねぇよ?
『…………えぇっと? 優夏?』
「ん? どうしたんですか、闇命様。優夏に何か?」
『いや、なんか。優夏が変』
変って、俺は変じゃないよ。いつもと同じ同じ。
「闇命君」
『……………………なに?』
「俺、思うんだよね。死ぬのは確かに苦しいし辛いし怖いけど。でも、”死”は残された人の方が悲しいんだ、辛いんだよ。闇命君が言うように、あの人は自業自得であのように苦しんでいる。なのに、残された方が嫌な気持ちになるなんておかしいだろ? 他の人を巻き込んだのなら、無駄に死なしたのなら。逆に、生きて罪を償ってもらわないと、駄目だよね? そう思わない? 闇命君」
隣に立つ闇命君に視線を送ると、何故か今まで見た事がないような顔を浮かべた。なぜかその隣に立っている琴平と紅音も顔を青くしている。水分さんが小さな声で「悪魔のようだ」と言ったのは聞こえてないから。
―――――誰が悪魔だ!!!!
体が重くなり、走るだけで辛くなってきた。でも、走る足を止める訳にはいかない。
「安倍家御一行!!」
「あ、水分さん!! 今まで調べ物をしていたみたいだけど、体は大丈夫?」
「今は気にする必要はない。ちなみに、首と腰が痛い」
「…………頑張ってください」
「聞いた意味ねぇだろうが」
「確かにそうだね」
水分さんと無事に合流出来て良かった、すごい心強い。
『いた』
「あそこに――って、何をしているんだ?」
村の出入り口、一人の少女がただポツンと立っている姿が見えてきた。何をしているんだ、何がしたいんだ。もしかして、何かの準備中とか? それなら早く止めないと!!
『待て』
「なんで? 何かが起きる前にどうにかした方が…………」
―――――ゾワッ
さっきまでとは違う、嫌な気配。これは、なにかの前触れか。今まで体験したことがないような、嫌な予感。
あの、羽織の女に近づいてはいけないような気がする。それは、他の人も同じのようで、足を止め動かない。
村の出入り口に立っていた羽織の女がゆっくりと動き出す。羽織を翻し、こちら側を振り向いた。
「…………なっ」
女の顔、すごく青い。目をかっぴらいで、よだれを垂らし、なにかに耐えるように俺達に手を伸ばしてきた。
「たす、け、て…………。こ、違う。我は…………、こんなことになる、なんて……ッ…………」
伸ばしてきた手が黒ずみ始める。あれは、何? どんどん彼女の肌が黒くなり、苦し気に体を搔きむしり始めた。
あの女の肌の色、肌をかきむしるしぐさ。どこかで見た光景…………あ、俺が呪吸の儀を行った女性と同じなんだ。
もしかして、呪いが少女にも?
いや、今は考える時間はない。今、少女に何かだあれば情報を聞き出す事が出来ない。
呪いが彼女を苦しめているのなら、前回と同じように呪いを吸い取ってあげれば問題はないはず。助けた後に話を聞く、うまくいく保証はないけど、やるしかっ――……
『なんで?』
「…………え?」
『なんで、助けないといけないの? あの女は自業自得の結果に苦しんでいるんだよ? 前回の女も自業自得ではあったけど、巻き込まれた側。仕方がないから、呪吸の儀を教えたけど。今回のはやる価値がない、このまま死んでもいいと思う。呪いの進行を遅らせて、情報だけを抜き取り放置すればいい』
半透明の姿を現した闇命君が、当たり前のように言ってくる。迷いなく、言い切っていた。
「…………自業自得でも、命を落とすほどはやらなくていいんだよ」
『なんで? 死んでも誰も困らないからいいんだよ』
いや、困るから。俺が困るから、やめて。
確かに自業自得かもしれない、こうなっても仕方がない。でも、死ぬのはおかしい、見殺しにするのはおかしい。村の人達を死人にして、関係ない人を巻き込んで。それで自業自得で死ぬ? だから、死ななければならないのか?
関係ない人をあんなに殺しておいて、死ぬなんて許さねぇよ?
『…………えぇっと? 優夏?』
「ん? どうしたんですか、闇命様。優夏に何か?」
『いや、なんか。優夏が変』
変って、俺は変じゃないよ。いつもと同じ同じ。
「闇命君」
『……………………なに?』
「俺、思うんだよね。死ぬのは確かに苦しいし辛いし怖いけど。でも、”死”は残された人の方が悲しいんだ、辛いんだよ。闇命君が言うように、あの人は自業自得であのように苦しんでいる。なのに、残された方が嫌な気持ちになるなんておかしいだろ? 他の人を巻き込んだのなら、無駄に死なしたのなら。逆に、生きて罪を償ってもらわないと、駄目だよね? そう思わない? 闇命君」
隣に立つ闇命君に視線を送ると、何故か今まで見た事がないような顔を浮かべた。なぜかその隣に立っている琴平と紅音も顔を青くしている。水分さんが小さな声で「悪魔のようだ」と言ったのは聞こえてないから。
―――――誰が悪魔だ!!!!
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