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呪吸の義
後悔と前進
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「ひゃ、百目!!!」
しまった、百目が俺を守るために刀を放ってしまったから、百目は武器を失い触手を躱す事が出来なくなったんだ。
あ、百目の札が燃える。百目が、消える。
『間に合った、見たいです。よかった』
ま、間に合った? 何が…………。
百目が呟き優しく笑うと、そのまま燃えるように消えてしまった。手に握りられていた札が、一緒に燃えて消える。
百目が最後に言い残した言葉。何が、間に合ったんだ。
触手がまた生成される、俺に狙いを定めてくる。これを操っているであろう弥来さんは、無表情で何も感じない瞳で見てくる。切っても切っても意味はない触手。
駄目だ、動揺するな。何のために百目は俺を守ってくれたんだ。
「闇命君! 早くさっきの続き!」
『いや、その必要はないみたい』
え、何を言って―――
「『水妖 悪なるモノを全て包みこめ、急急如律令』」
襖から、人の声が聞こえた。それに、水妖って──まさか!!
振り向くと、襖に険しい顔を浮かべている水分さんと紅音。間に合ったって、こういう事か!!!
「水分さん!! 紅音!!」
まだ完治していないのか、紅音が水分さんの腕を担いでいる。
「今、楽にしてやるからな。行け、水妖」
水分さんの式神、水妖が右手をゆっくり上にあげる。
――――――――バシャン!!!!
後から水が弾ける音。もしかして、水妖の攻撃で触手が何かダメージ、って。
「触手の動きを止めたのか。触手一本一本に水が付いてる、あれって…………」
『ただの水じゃないね。おそらく体を痺れさせる成分が入っているんだと思う』
「痺れさせる? 倒すんじゃなくて、動きを封じたって事?」
『おそらくね』
紅音から離れ、水分さんが弥来さんに近付いて行く。さすがに危険じゃないのか? 今、相手が動き出したら水分さんは何も出来ない。せめて、少しでも距離をおかないと。
『ぐっ、が、っくまりさま。ころ、し…………』
「あぁ、安心しろ、お前は十分頑張った。今までご苦労だった」
え、何その言葉。まるで、今ここで、弥来さんが死んでしまうような。
まさか、殺す気なのか?
「…………」
水分さんが懐から小刀を取り出した。振り上げ、刃を下にいる弥来さんに──……
「ま、待って!!!!!!!」
手を伸ばし、止めようとしたが、俺が間に合う訳がなかった。
☆
何が起きたのかわからない。なぜ、弥来さんがあんな化け物みたいな容姿になってしまったのか、なんで俺達を襲ってきたの。
今は大広場でみんな円になり座っている。怪我をした人は、しっかりと手当てを終わらせている。
俺は周りの人が守ってくれたから、そこまで大きな怪我はない。
「弥来さんは大丈夫なんですか?」
「今は動かないように拘束し、地下牢に閉じ込めている。何かあったとしても、地下なら何とか対処出来るだろう。それより琴平とやら、咄嗟に出て来たとはいえ、腕を刺してしまって済まない」
「いえ、さすがに判断を下すには早すぎかと思ったまでだ」
「そうか」
琴平は俺の声に答えるように、水分さんが振り下ろした小刀を受け止めようとしてくれたんだ。だが、うまく止める事が出来ず、腕に刃先が刺さってしまった。
「琴平、あの時は結界を張ってくれてありがとう。助かったよ」
「闇命様を守るのが俺の役割だからな、当たり前の事をしたまでだ。と言っても、今回は何も出来なかった。それくらいしか、出来なかった。動揺してしまった、これは反省点だ」
え、琴平が反省するの? 俺の方が何も出来なかったんだけど。何とか解決しようと動いたりしたけど、結局式神を三体も殺させてしまった。
結局俺は、何も出来なかった。
『…………。今回のは、一体何か。原因はわかっているの?」
「ここまで大きな騒動を起こした理由はわからんが、起こした奴ならわかる。前に話した、氷鬼家からいなくなった陰陽師だろう」
『今までこんな力を使う陰陽師なんて聞いてこなかったけど。隠されていたの?』
「俺も知らなかった。まさか、ここまでの力を隠し持っていたなんて」
水分さんも頭を抱えている様子だ。今だと何を話してもわからない状態が続きそうだな。
まず、今回の件含め調べて、何でこんな事をし始めたのか。何が絡んでいるのか、知らないと。こっちがいつまでも先手を打つ事が出来ない。
…………落ち込んでいても意味はない。早く、今の事態を解決させないと。何とかしないと。
また、大きな被害が出る前に。
しまった、百目が俺を守るために刀を放ってしまったから、百目は武器を失い触手を躱す事が出来なくなったんだ。
あ、百目の札が燃える。百目が、消える。
『間に合った、見たいです。よかった』
ま、間に合った? 何が…………。
百目が呟き優しく笑うと、そのまま燃えるように消えてしまった。手に握りられていた札が、一緒に燃えて消える。
百目が最後に言い残した言葉。何が、間に合ったんだ。
触手がまた生成される、俺に狙いを定めてくる。これを操っているであろう弥来さんは、無表情で何も感じない瞳で見てくる。切っても切っても意味はない触手。
駄目だ、動揺するな。何のために百目は俺を守ってくれたんだ。
「闇命君! 早くさっきの続き!」
『いや、その必要はないみたい』
え、何を言って―――
「『水妖 悪なるモノを全て包みこめ、急急如律令』」
襖から、人の声が聞こえた。それに、水妖って──まさか!!
振り向くと、襖に険しい顔を浮かべている水分さんと紅音。間に合ったって、こういう事か!!!
「水分さん!! 紅音!!」
まだ完治していないのか、紅音が水分さんの腕を担いでいる。
「今、楽にしてやるからな。行け、水妖」
水分さんの式神、水妖が右手をゆっくり上にあげる。
――――――――バシャン!!!!
後から水が弾ける音。もしかして、水妖の攻撃で触手が何かダメージ、って。
「触手の動きを止めたのか。触手一本一本に水が付いてる、あれって…………」
『ただの水じゃないね。おそらく体を痺れさせる成分が入っているんだと思う』
「痺れさせる? 倒すんじゃなくて、動きを封じたって事?」
『おそらくね』
紅音から離れ、水分さんが弥来さんに近付いて行く。さすがに危険じゃないのか? 今、相手が動き出したら水分さんは何も出来ない。せめて、少しでも距離をおかないと。
『ぐっ、が、っくまりさま。ころ、し…………』
「あぁ、安心しろ、お前は十分頑張った。今までご苦労だった」
え、何その言葉。まるで、今ここで、弥来さんが死んでしまうような。
まさか、殺す気なのか?
「…………」
水分さんが懐から小刀を取り出した。振り上げ、刃を下にいる弥来さんに──……
「ま、待って!!!!!!!」
手を伸ばし、止めようとしたが、俺が間に合う訳がなかった。
☆
何が起きたのかわからない。なぜ、弥来さんがあんな化け物みたいな容姿になってしまったのか、なんで俺達を襲ってきたの。
今は大広場でみんな円になり座っている。怪我をした人は、しっかりと手当てを終わらせている。
俺は周りの人が守ってくれたから、そこまで大きな怪我はない。
「弥来さんは大丈夫なんですか?」
「今は動かないように拘束し、地下牢に閉じ込めている。何かあったとしても、地下なら何とか対処出来るだろう。それより琴平とやら、咄嗟に出て来たとはいえ、腕を刺してしまって済まない」
「いえ、さすがに判断を下すには早すぎかと思ったまでだ」
「そうか」
琴平は俺の声に答えるように、水分さんが振り下ろした小刀を受け止めようとしてくれたんだ。だが、うまく止める事が出来ず、腕に刃先が刺さってしまった。
「琴平、あの時は結界を張ってくれてありがとう。助かったよ」
「闇命様を守るのが俺の役割だからな、当たり前の事をしたまでだ。と言っても、今回は何も出来なかった。それくらいしか、出来なかった。動揺してしまった、これは反省点だ」
え、琴平が反省するの? 俺の方が何も出来なかったんだけど。何とか解決しようと動いたりしたけど、結局式神を三体も殺させてしまった。
結局俺は、何も出来なかった。
『…………。今回のは、一体何か。原因はわかっているの?」
「ここまで大きな騒動を起こした理由はわからんが、起こした奴ならわかる。前に話した、氷鬼家からいなくなった陰陽師だろう」
『今までこんな力を使う陰陽師なんて聞いてこなかったけど。隠されていたの?』
「俺も知らなかった。まさか、ここまでの力を隠し持っていたなんて」
水分さんも頭を抱えている様子だ。今だと何を話してもわからない状態が続きそうだな。
まず、今回の件含め調べて、何でこんな事をし始めたのか。何が絡んでいるのか、知らないと。こっちがいつまでも先手を打つ事が出来ない。
…………落ち込んでいても意味はない。早く、今の事態を解決させないと。何とかしないと。
また、大きな被害が出る前に。
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