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水仙家

誤魔化し方

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 うわぁ、目が腫れてるぅ。少しヒリヒリするし、どうやって言い訳しようかな。紅音とか絶対に怒るよねぇ、何かいい感じの言い訳を考えないと。

 袖の中にあった魔境を片手に身だしなみを整えていると、目元に視線が行ってしまった。

「どうした優夏、朝ご飯を食べに行くぞ?」
「う、うん…………」
「目元が少し赤いな。巫女から濡らしたタオルでも借りるか」

 あぁ、琴平の手が冷たくて気持ちがいい。昨日は温かかったけど、今日は冷たい。いや、俺の目元に熱がこもっているから、冷たく感じるのか。

「これ、どうやって言い訳しよう」
「いい訳か、特に必要はないと思うが」
「絶対に駄目」
「ふっ、そうか」

 面白がってないで一緒に言い訳を考えてよ。なに口を押えて笑ってるの、恥ずかしいからやめて。

『ふざけてないで早く行くよ』
「あ、おはよう闇命君。夜はしっかりと眠れた?」
『心配不要』

 だろうね、心配なんてしなくても問題はないよね。でも、やっぱり闇命君も不安がないわけじゃないと思うんだよなぁ。だって、俺よりまだ小さいし、しっかりしていると言っても心の奥にある不安感や寂しさなどを消すことは出来ない。
 昨日俺も実感したからなぁ、琴平に温かさに負けてしまった。本当に不安なのは琴平なんだから、俺がしっかりしないと。

「それじゃ、朝ご飯を食べに行こうか」
「あぁ」
『ふん』

 紅音と夏楓は起き――ているに決まっているな。そういえば今は何時なんだろう。安倍家にいた時より遅い起床な気がする。外が明るいし、鳥の鳴き声が聞こえる。
 巫女として働いていた二人だ、早起きはお手の物だろう。

「今日のご飯は何だろうなぁ」
『食い意地だけはいっちょ前だね』
「うるさいよ、お腹空いているんだから仕方がないでしょ。そう言うなら闇命君にはご飯あげないよ?」
「それを俺が許すと思うか?」
「申し訳ございませんでした」

 琴平は変わらず琴平だという事を再確認出来た会話だった。

 ☆

 朝ご飯を食べて、部屋で一息。昨日まで怒涛の日々を過ごしていたから、この時間を大事にしないと。なんとなく気持ちが焦っている感はあるけど…………。

「今日はどうしますか、闇命様」
『そうだね。村をもう一度見て回りたい気がするから、外に行こうか。琴平は絶対に僕から離れないで』
「…………はい」

 声ちっさい。心配してくれるのは嬉しいが、ここまで心配かけてしまっている自分が情けない的な感じだったり? 琴平なら考えそうなことだよね。

「私達も同行しますか?」
『そうだね…………。夏楓を一人にするのも危ないと思うし、一緒に行動の方が確実かな』
「? 一人で行動とは?」
『いや、同時進行で夏楓には昨日に引き続き七人ミサキについて調べてもらおうかなって思って。僕も調べたいけど、村の方も気になるから。でも、さすがに一人は危険かなってね』
「それなら大丈夫ですよ。私一人でも調べてみます」
『大丈夫なの? 何が起きるか現状だとわからないよ?』
「大丈夫ですよ。私は紅音さんや琴平さんよりは対応力に欠けますが、何かあれば必ず式神を飛ばします。なので、私に出来る事でしたらなんでもお申し付けください」
『それなら、魔魅。夏楓と一緒に昨日の調書室に行って、調べ物をお願いできる?』
「え、なんで魔魅ちゃん?」

 元陰陽頭だとしても、今は普通の女の子だよ? さすがに危険でしょ。何かあった時とかどうやって対処するの?

『魔魅は確かに呪いは使えなくなったけど、陰陽術はさすがに使えるでしょ。結界とか式神とか。楓夏はそこらへんがまだ一人では難しいから魔魅だろうと、いた方がいいと思うよ』
「言い方よ……」

 あ、魔魅ちゃんが不安そうに俺を見上げて来る。でも、今の話を聞いたら、確かに楓夏一人はちょっと不安が残る。魔魅ちゃんにお願いできたらうれしいけど、それはそれで不安だなぁ。大丈夫かなぁ。陰陽寮の中だとしても、昨日の少女が襲ってくる可能性があるよね………。

「…………紅音も一緒とかは――ごめんなさい」

 やっべ、紅音が泣き出しそうな顔を浮かべてしまった。少しでも琴平と一緒に居たいんだな。不安だよなぁ、いつ何時予言のようになるかわからないし。

 仕方がないか……。

「魔魅ちゃん、魔魅ちゃんの力を貸してほしいなぁ。お姉さんと一緒に調書室に来てもらってもいいかな」

 お、目線を合わせて、夏楓が魔魅ちゃんに手を伸ばして安心させようとしている。慣れてるなぁ、さすが夏楓。

「…………」
「ん? 大丈夫だよ魔魅ちゃん。夏楓お姉ちゃんはすごく優しい人だから、一緒に行っておいで」
「……………………」

 あ、俺から離れて夏楓の右手を握った。まだ少し俺の方を不安そうに見ているんだけど、多分夏楓だし大丈夫だろう。

「では、私達は先に行ってきますね」
『わかった。多分南京錠が欠けられているはずだから、まずは弥来に会ってね』
「わかりました。では、行ってきます」

 魔魅ちゃんを連れて行った夏楓。優しく笑いかけながら部屋を出て行ったし、やっぱり問題はなさそう。あとは魔魅ちゃんが慣れてくれるのを待つしかないな。

『それじゃ、僕達は村を見に行こうか』
「そうですね、行きましょう」

 んで、当たり前のように俺の方で寛ぎ始める闇命君。鼠姿に戻るのが早すぎる、慣れってすごいなぁ。
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