110 / 246
水仙家
誤魔化し方
しおりを挟む
うわぁ、目が腫れてるぅ。少しヒリヒリするし、どうやって言い訳しようかな。紅音とか絶対に怒るよねぇ、何かいい感じの言い訳を考えないと。
袖の中にあった魔境を片手に身だしなみを整えていると、目元に視線が行ってしまった。
「どうした優夏、朝ご飯を食べに行くぞ?」
「う、うん…………」
「目元が少し赤いな。巫女から濡らしたタオルでも借りるか」
あぁ、琴平の手が冷たくて気持ちがいい。昨日は温かかったけど、今日は冷たい。いや、俺の目元に熱がこもっているから、冷たく感じるのか。
「これ、どうやって言い訳しよう」
「いい訳か、特に必要はないと思うが」
「絶対に駄目」
「ふっ、そうか」
面白がってないで一緒に言い訳を考えてよ。なに口を押えて笑ってるの、恥ずかしいからやめて。
『ふざけてないで早く行くよ』
「あ、おはよう闇命君。夜はしっかりと眠れた?」
『心配不要』
だろうね、心配なんてしなくても問題はないよね。でも、やっぱり闇命君も不安がないわけじゃないと思うんだよなぁ。だって、俺よりまだ小さいし、しっかりしていると言っても心の奥にある不安感や寂しさなどを消すことは出来ない。
昨日俺も実感したからなぁ、琴平に温かさに負けてしまった。本当に不安なのは琴平なんだから、俺がしっかりしないと。
「それじゃ、朝ご飯を食べに行こうか」
「あぁ」
『ふん』
紅音と夏楓は起き――ているに決まっているな。そういえば今は何時なんだろう。安倍家にいた時より遅い起床な気がする。外が明るいし、鳥の鳴き声が聞こえる。
巫女として働いていた二人だ、早起きはお手の物だろう。
「今日のご飯は何だろうなぁ」
『食い意地だけはいっちょ前だね』
「うるさいよ、お腹空いているんだから仕方がないでしょ。そう言うなら闇命君にはご飯あげないよ?」
「それを俺が許すと思うか?」
「申し訳ございませんでした」
琴平は変わらず琴平だという事を再確認出来た会話だった。
☆
朝ご飯を食べて、部屋で一息。昨日まで怒涛の日々を過ごしていたから、この時間を大事にしないと。なんとなく気持ちが焦っている感はあるけど…………。
「今日はどうしますか、闇命様」
『そうだね。村をもう一度見て回りたい気がするから、外に行こうか。琴平は絶対に僕から離れないで』
「…………はい」
声ちっさい。心配してくれるのは嬉しいが、ここまで心配かけてしまっている自分が情けない的な感じだったり? 琴平なら考えそうなことだよね。
「私達も同行しますか?」
『そうだね…………。夏楓を一人にするのも危ないと思うし、一緒に行動の方が確実かな』
「? 一人で行動とは?」
『いや、同時進行で夏楓には昨日に引き続き七人ミサキについて調べてもらおうかなって思って。僕も調べたいけど、村の方も気になるから。でも、さすがに一人は危険かなってね』
「それなら大丈夫ですよ。私一人でも調べてみます」
『大丈夫なの? 何が起きるか現状だとわからないよ?』
「大丈夫ですよ。私は紅音さんや琴平さんよりは対応力に欠けますが、何かあれば必ず式神を飛ばします。なので、私に出来る事でしたらなんでもお申し付けください」
『それなら、魔魅。夏楓と一緒に昨日の調書室に行って、調べ物をお願いできる?』
「え、なんで魔魅ちゃん?」
元陰陽頭だとしても、今は普通の女の子だよ? さすがに危険でしょ。何かあった時とかどうやって対処するの?
『魔魅は確かに呪いは使えなくなったけど、陰陽術はさすがに使えるでしょ。結界とか式神とか。楓夏はそこらへんがまだ一人では難しいから魔魅だろうと、いた方がいいと思うよ』
「言い方よ……」
あ、魔魅ちゃんが不安そうに俺を見上げて来る。でも、今の話を聞いたら、確かに楓夏一人はちょっと不安が残る。魔魅ちゃんにお願いできたらうれしいけど、それはそれで不安だなぁ。大丈夫かなぁ。陰陽寮の中だとしても、昨日の少女が襲ってくる可能性があるよね………。
「…………紅音も一緒とかは――ごめんなさい」
やっべ、紅音が泣き出しそうな顔を浮かべてしまった。少しでも琴平と一緒に居たいんだな。不安だよなぁ、いつ何時予言のようになるかわからないし。
仕方がないか……。
「魔魅ちゃん、魔魅ちゃんの力を貸してほしいなぁ。お姉さんと一緒に調書室に来てもらってもいいかな」
お、目線を合わせて、夏楓が魔魅ちゃんに手を伸ばして安心させようとしている。慣れてるなぁ、さすが夏楓。
「…………」
「ん? 大丈夫だよ魔魅ちゃん。夏楓お姉ちゃんはすごく優しい人だから、一緒に行っておいで」
「……………………」
あ、俺から離れて夏楓の右手を握った。まだ少し俺の方を不安そうに見ているんだけど、多分夏楓だし大丈夫だろう。
「では、私達は先に行ってきますね」
『わかった。多分南京錠が欠けられているはずだから、まずは弥来に会ってね』
「わかりました。では、行ってきます」
魔魅ちゃんを連れて行った夏楓。優しく笑いかけながら部屋を出て行ったし、やっぱり問題はなさそう。あとは魔魅ちゃんが慣れてくれるのを待つしかないな。
『それじゃ、僕達は村を見に行こうか』
「そうですね、行きましょう」
んで、当たり前のように俺の方で寛ぎ始める闇命君。鼠姿に戻るのが早すぎる、慣れってすごいなぁ。
袖の中にあった魔境を片手に身だしなみを整えていると、目元に視線が行ってしまった。
「どうした優夏、朝ご飯を食べに行くぞ?」
「う、うん…………」
「目元が少し赤いな。巫女から濡らしたタオルでも借りるか」
あぁ、琴平の手が冷たくて気持ちがいい。昨日は温かかったけど、今日は冷たい。いや、俺の目元に熱がこもっているから、冷たく感じるのか。
「これ、どうやって言い訳しよう」
「いい訳か、特に必要はないと思うが」
「絶対に駄目」
「ふっ、そうか」
面白がってないで一緒に言い訳を考えてよ。なに口を押えて笑ってるの、恥ずかしいからやめて。
『ふざけてないで早く行くよ』
「あ、おはよう闇命君。夜はしっかりと眠れた?」
『心配不要』
だろうね、心配なんてしなくても問題はないよね。でも、やっぱり闇命君も不安がないわけじゃないと思うんだよなぁ。だって、俺よりまだ小さいし、しっかりしていると言っても心の奥にある不安感や寂しさなどを消すことは出来ない。
昨日俺も実感したからなぁ、琴平に温かさに負けてしまった。本当に不安なのは琴平なんだから、俺がしっかりしないと。
「それじゃ、朝ご飯を食べに行こうか」
「あぁ」
『ふん』
紅音と夏楓は起き――ているに決まっているな。そういえば今は何時なんだろう。安倍家にいた時より遅い起床な気がする。外が明るいし、鳥の鳴き声が聞こえる。
巫女として働いていた二人だ、早起きはお手の物だろう。
「今日のご飯は何だろうなぁ」
『食い意地だけはいっちょ前だね』
「うるさいよ、お腹空いているんだから仕方がないでしょ。そう言うなら闇命君にはご飯あげないよ?」
「それを俺が許すと思うか?」
「申し訳ございませんでした」
琴平は変わらず琴平だという事を再確認出来た会話だった。
☆
朝ご飯を食べて、部屋で一息。昨日まで怒涛の日々を過ごしていたから、この時間を大事にしないと。なんとなく気持ちが焦っている感はあるけど…………。
「今日はどうしますか、闇命様」
『そうだね。村をもう一度見て回りたい気がするから、外に行こうか。琴平は絶対に僕から離れないで』
「…………はい」
声ちっさい。心配してくれるのは嬉しいが、ここまで心配かけてしまっている自分が情けない的な感じだったり? 琴平なら考えそうなことだよね。
「私達も同行しますか?」
『そうだね…………。夏楓を一人にするのも危ないと思うし、一緒に行動の方が確実かな』
「? 一人で行動とは?」
『いや、同時進行で夏楓には昨日に引き続き七人ミサキについて調べてもらおうかなって思って。僕も調べたいけど、村の方も気になるから。でも、さすがに一人は危険かなってね』
「それなら大丈夫ですよ。私一人でも調べてみます」
『大丈夫なの? 何が起きるか現状だとわからないよ?』
「大丈夫ですよ。私は紅音さんや琴平さんよりは対応力に欠けますが、何かあれば必ず式神を飛ばします。なので、私に出来る事でしたらなんでもお申し付けください」
『それなら、魔魅。夏楓と一緒に昨日の調書室に行って、調べ物をお願いできる?』
「え、なんで魔魅ちゃん?」
元陰陽頭だとしても、今は普通の女の子だよ? さすがに危険でしょ。何かあった時とかどうやって対処するの?
『魔魅は確かに呪いは使えなくなったけど、陰陽術はさすがに使えるでしょ。結界とか式神とか。楓夏はそこらへんがまだ一人では難しいから魔魅だろうと、いた方がいいと思うよ』
「言い方よ……」
あ、魔魅ちゃんが不安そうに俺を見上げて来る。でも、今の話を聞いたら、確かに楓夏一人はちょっと不安が残る。魔魅ちゃんにお願いできたらうれしいけど、それはそれで不安だなぁ。大丈夫かなぁ。陰陽寮の中だとしても、昨日の少女が襲ってくる可能性があるよね………。
「…………紅音も一緒とかは――ごめんなさい」
やっべ、紅音が泣き出しそうな顔を浮かべてしまった。少しでも琴平と一緒に居たいんだな。不安だよなぁ、いつ何時予言のようになるかわからないし。
仕方がないか……。
「魔魅ちゃん、魔魅ちゃんの力を貸してほしいなぁ。お姉さんと一緒に調書室に来てもらってもいいかな」
お、目線を合わせて、夏楓が魔魅ちゃんに手を伸ばして安心させようとしている。慣れてるなぁ、さすが夏楓。
「…………」
「ん? 大丈夫だよ魔魅ちゃん。夏楓お姉ちゃんはすごく優しい人だから、一緒に行っておいで」
「……………………」
あ、俺から離れて夏楓の右手を握った。まだ少し俺の方を不安そうに見ているんだけど、多分夏楓だし大丈夫だろう。
「では、私達は先に行ってきますね」
『わかった。多分南京錠が欠けられているはずだから、まずは弥来に会ってね』
「わかりました。では、行ってきます」
魔魅ちゃんを連れて行った夏楓。優しく笑いかけながら部屋を出て行ったし、やっぱり問題はなさそう。あとは魔魅ちゃんが慣れてくれるのを待つしかないな。
『それじゃ、僕達は村を見に行こうか』
「そうですね、行きましょう」
んで、当たり前のように俺の方で寛ぎ始める闇命君。鼠姿に戻るのが早すぎる、慣れってすごいなぁ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる