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水仙家

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 五冊の本を受けとり、夏楓はそのうちの二冊を俺から優しく取る。中をぺらぺらと捲ってみると、中にはびっしりと文字、文字、文字。

「…………無理」
『はぁぁぁああ、わかってた』

 あ、半透明闇命君。もう、このままの姿でいる事は駄目なのか? これも法力を使うのだろうか。

「これは一体?」
「あ、えっと…………」

 闇命君に助けを求めるけど、夏楓に本のページを捲ってもらい集中。こっちなんて全く気にしてない。
 これは俺にぶん投げやがったな、どこまで説明すればいいんだよ。

「…………深い事情があるという事は理解しました。話せる時に話していただけると嬉しいです」
「あ、いや、あの……。話す事は出来るんです。ですが、どのように伝えていいのか。どのように伝えるべきか。それに、闇命君の立場や性格上、むやみやたらに話すのも少しやめた方がいいのではないかと思って。すいません、話せる時が来たら、必ず話します」
「…………そうなのだとしたら、今みたいな言葉は避けるべきだと思いますよ」
「え?」
「ものすごく気になる事が多々あったので。もし、同じような事があった場合、言葉を予め考えておくのをお勧めします」

 あ、行ってしまった。いや、他の本を探しに行ってくれたのかな。
 今の話は一体何を言いたかったんだろうか。俺の話に気になる事? 何だろう。


 ――――それに、闇命君の立場や性格上、むやみやたらに話すのも少しやめた方がいいのではないかと思って。


 …………あ。これ、自分で自分を語っているような感じになっていないか? それに、自分を君呼び。


 確かに怪しいわ、俺だったら深く聞いてしまいそう。
 あの人の言うように、予め台詞を考えて何聞かれてもいいようにしておこうかな。闇命君の口調も慣れておかないと。もし、闇命君と関わりの深い人が居たら一発で怪しまれる。

「はぁ、演技力を鍛えないといけないな」

 二人はまだ本に集中している。あ、そうだ。二人が七人ミサキについて調べているのなら、俺は短命について調べればいいじゃん。呪いに関する本とかどこかにないのかな。

「ん? 魔魅ちゃん、何持っているの?」

 魔魅ちゃんが一冊の本を持って駆け寄ってきた。受け取ってみるけど、なにこれ。表紙はぼろぼろだし、文字は霞んで読めない。所々破れているし、この本はいつからここで保管されているんだろう。

 …………中を捲っても、文字は蛇のような感じだから読めない。これが読める闇命君や楓夏は本当にすごいな、慣れだとは思うけど。

「魔魅ちゃん、これ何処にあったの?」
「あっち」

 あっちって。指さされた方、真っ暗で光が届かない部屋の奥。もしかして、あそこに一人で言ったの? 魔魅ちゃんって、俺より肝が据わってない?

 本を抱えながら指察された方に向かうと、そこには大きな本棚。それだけなら別に何も感じないけど、それだけではない。

 本棚が、ポツンと一つしかないのだ。周りにも同じ大きさの本棚を置けるスペースはあると言うのに、何故か不自然にその本棚だけが置かれている。

「なんだこれ…………」

 っ、なんか、これ以上近づいてはだめな気がする。なんか、体がぞわぞわするというか、気持ちが悪い。

 一体、この本棚には何があるんだ?

「お兄ちゃん?」
「魔魅ちゃん、この本はあの本棚の中にあったの?」
「うん」
「どうやって取ったの?」
「普通に……」

 普通に……、そりゃ、そうか。普通以外の取り方なんてないよな。

 近付いても大丈夫なのだろうか、何か罠が仕掛けられているんじゃないだろうか。そう思ってしまう程、目の前から感じる気配はどす黒い。

 本棚の中には魔魅ちゃんが持ってきた本と同じものが沢山ある。めっちゃ気になるし、ここで引くのは何かいやだ。

 ゆっくりと、本棚に手を伸ばしてみると―――


 ――――――――バチン!!
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