105 / 246
水仙家
調べ物
しおりを挟む
三人がいなくなった部屋に、俺と半透明の闇命君。夏楓と魔魅ちゃんがまだその場から動かず沈黙。誰も話そうとしないだけど、なんか気まずい。
「闇命様。先ほど、やる事があると仰っておられましたが、何か致しますか?」
『うん。こっちはこっちで出来る事をやろうか」
「かしこまりました。何をしましょうか」
『調べ物』
調べ物? あ、闇命君が鼠に戻ってしまった。俺の肩に登ろうと足をカリカリしてくる。可愛いんだよな、ここだけ。本当にここだけ。
「いってぇぇえ!!! おい!!」
『早く手を伸ばさないのが悪いんでしょ。もううそろそろ瞬時に手を伸ばして欲しいものだけどね、反射神経鈍すぎない?』
くそっ。それなら、鼠になる時に肩めがけてジャンプしろ。…………あ、それはさすがに危険だからやっぱり俺が拾い上げてあげるよ。でも、噛むのはやめて…………。
「調べ物と致しましたら、調書室でしょうか」
「そうだね、どこにあるのかなぁ。…………歩いている人にでも聞いてみようか」
「そうですね」
部屋から出て人を探すが、何故か人がいない。小さい陰陽寮だからそんなに人がいないのかな。
「あ、あそこに人がいますよ」
「本当だ、話しかけようか」
「はい」
前の方に狩衣を着た人がいる。ここの人だろうし、聞いてみよう。
「すいませーん!!」
振り返ってくれた男性。黒い短髪に眼鏡。きりっとした黒い目に、怖そうな表情。すぐに分かる、この人。くそ真面目で頭が固いタイプの人間だ。
これで優しくて笑顔を振りまく人だったらそれはそれで嬉しいけど、戸惑う。
「何でしょうか」
思った通りの真面目ちゃんだった。これは間違えた事を言うと、言葉で刺される可能性。夏楓が暴走しないように気を付けようか。
「あの、俺は安倍家からある理由で旅をしている安倍闇命です。水仙家の陰陽頭に自由に歩き回っても良いと言われている為、少し調べ物をしたく。調書室というものはありますか?」
「…………またあの人は、適当な事を…………」
頭を抱えてしまった。もしかしてこの人、苦労人だったりする? 結構位の高い人なのかな。じゃないと、こんな反応しないいような気がする。
「いえ、申し訳ありません。私は鏡屋弥来《かがみやみくる》と言います。私でよければご案内します」
「ありがとうございます」
「ですが、私と共にです。言ってしまった以上、ご案内は致しますが。普通なら、他の陰陽寮の方でも調書室に入るのは原則禁止。機密事項がございますので」
「あ、なんか。すいません…………」
そうか、確かに漏らしてはいけない情報とかあるからそれは仕方がない。でも、そうなると、何故水分さんは自由に動き回ってもいいと言ったのだろうか。
調書室以外にも入ってはいけない部屋や、触れてはだめな物とかありそうだけど。まぁ、むやみやたらに部屋に入ったり荒したりはしないけどさぁ。
「貴方達は何をお調べになりたいのですか?」
「七人ミサキや短命の呪いについてとか。調べえられる事があれば調べたいなと」
「先ほど安倍家の者と言っておられましたが、自身の所ではお調べ出来ないのですか?」
「訳がありまして、戻る事が出来なくなっているんです…………」
「そうですか、そこは深く聞きません。興味が無いわけではありませんが、今聞くべき段階ではなさそうなので」
「お願いします」
この人は頭が固そうだけど、結構話が出来る。
「着きましたよ」
「あ、ありがとう」
少し大きめな襖。上には板が張り付けられ、調書室って書かれている。これくらいわかりやすかったら俺でも一人で行けそう。学校のプレートみたいな感じだな。
「今鍵を開けますので」
「あ、はい」
南京錠…………。そういえば、周りの雰囲気が少し暗い気がする。蝋燭も少なくなって、太陽の光も入ってこない。なんか、薄気味悪い雰囲気が漂う場所だ。
光がないだけでここまで人を不安にさせるのか。
「どうぞ、中へ」
「ありがとう」
中も薄暗い。どうしてこんなに薄暗いんだ、雰囲気を大事にしているのか? いや、いらないよそのこだわり。
「七人ミサキと短命の呪いについて調べたいと言っていましたが、まずはどちらからお調べになりますか?」
「あ、ならたんっ――――七人ミサキでお願いします」
「は、はい」
肩に乗っている闇命君からの視線で瞬時に理解した。これは七人ミサキを早く片付けろという、無言の圧。瞬時に把握出来るようになってしまった、なんとなく悲しいんだけど仕方がない。
「七人ミサキでしたら、今お持ちしますのでお待ちください」
あ、行ってしまった。そういえば、今の人はどの位に位置する人なんだろう。琴平達と同じ陰陽師なのだろうか。それか、もっと上の人? もしかして、陰陽助じゃないよね? それだったらさすがに今の俺、失礼が過ぎると思うんだけど。何も言って来ていないからいいと思うけど。
『七人ミサキは全てを成仏させるのは無理だから、ひとまず僕達が把握している物だけをやるよ』
「え、もしかして。七人ミサキって、この村の近くにいるものとまた違う所にも存在する感じ?」
『当たり前でしょ。怨霊や妖。幽霊などはこの世に溢れかえっている。その中で同じ存在の者がいてもなんもおかしくはない』
確かにそれもそうか。あ、男性が何冊かの本を持って戻ってきてくれた。
「おそらくですが、七人ミサキが乗っているものはこちらだけかと。五冊程度ですが、お役に立てると嬉しいです。」
「闇命様。先ほど、やる事があると仰っておられましたが、何か致しますか?」
『うん。こっちはこっちで出来る事をやろうか」
「かしこまりました。何をしましょうか」
『調べ物』
調べ物? あ、闇命君が鼠に戻ってしまった。俺の肩に登ろうと足をカリカリしてくる。可愛いんだよな、ここだけ。本当にここだけ。
「いってぇぇえ!!! おい!!」
『早く手を伸ばさないのが悪いんでしょ。もううそろそろ瞬時に手を伸ばして欲しいものだけどね、反射神経鈍すぎない?』
くそっ。それなら、鼠になる時に肩めがけてジャンプしろ。…………あ、それはさすがに危険だからやっぱり俺が拾い上げてあげるよ。でも、噛むのはやめて…………。
「調べ物と致しましたら、調書室でしょうか」
「そうだね、どこにあるのかなぁ。…………歩いている人にでも聞いてみようか」
「そうですね」
部屋から出て人を探すが、何故か人がいない。小さい陰陽寮だからそんなに人がいないのかな。
「あ、あそこに人がいますよ」
「本当だ、話しかけようか」
「はい」
前の方に狩衣を着た人がいる。ここの人だろうし、聞いてみよう。
「すいませーん!!」
振り返ってくれた男性。黒い短髪に眼鏡。きりっとした黒い目に、怖そうな表情。すぐに分かる、この人。くそ真面目で頭が固いタイプの人間だ。
これで優しくて笑顔を振りまく人だったらそれはそれで嬉しいけど、戸惑う。
「何でしょうか」
思った通りの真面目ちゃんだった。これは間違えた事を言うと、言葉で刺される可能性。夏楓が暴走しないように気を付けようか。
「あの、俺は安倍家からある理由で旅をしている安倍闇命です。水仙家の陰陽頭に自由に歩き回っても良いと言われている為、少し調べ物をしたく。調書室というものはありますか?」
「…………またあの人は、適当な事を…………」
頭を抱えてしまった。もしかしてこの人、苦労人だったりする? 結構位の高い人なのかな。じゃないと、こんな反応しないいような気がする。
「いえ、申し訳ありません。私は鏡屋弥来《かがみやみくる》と言います。私でよければご案内します」
「ありがとうございます」
「ですが、私と共にです。言ってしまった以上、ご案内は致しますが。普通なら、他の陰陽寮の方でも調書室に入るのは原則禁止。機密事項がございますので」
「あ、なんか。すいません…………」
そうか、確かに漏らしてはいけない情報とかあるからそれは仕方がない。でも、そうなると、何故水分さんは自由に動き回ってもいいと言ったのだろうか。
調書室以外にも入ってはいけない部屋や、触れてはだめな物とかありそうだけど。まぁ、むやみやたらに部屋に入ったり荒したりはしないけどさぁ。
「貴方達は何をお調べになりたいのですか?」
「七人ミサキや短命の呪いについてとか。調べえられる事があれば調べたいなと」
「先ほど安倍家の者と言っておられましたが、自身の所ではお調べ出来ないのですか?」
「訳がありまして、戻る事が出来なくなっているんです…………」
「そうですか、そこは深く聞きません。興味が無いわけではありませんが、今聞くべき段階ではなさそうなので」
「お願いします」
この人は頭が固そうだけど、結構話が出来る。
「着きましたよ」
「あ、ありがとう」
少し大きめな襖。上には板が張り付けられ、調書室って書かれている。これくらいわかりやすかったら俺でも一人で行けそう。学校のプレートみたいな感じだな。
「今鍵を開けますので」
「あ、はい」
南京錠…………。そういえば、周りの雰囲気が少し暗い気がする。蝋燭も少なくなって、太陽の光も入ってこない。なんか、薄気味悪い雰囲気が漂う場所だ。
光がないだけでここまで人を不安にさせるのか。
「どうぞ、中へ」
「ありがとう」
中も薄暗い。どうしてこんなに薄暗いんだ、雰囲気を大事にしているのか? いや、いらないよそのこだわり。
「七人ミサキと短命の呪いについて調べたいと言っていましたが、まずはどちらからお調べになりますか?」
「あ、ならたんっ――――七人ミサキでお願いします」
「は、はい」
肩に乗っている闇命君からの視線で瞬時に理解した。これは七人ミサキを早く片付けろという、無言の圧。瞬時に把握出来るようになってしまった、なんとなく悲しいんだけど仕方がない。
「七人ミサキでしたら、今お持ちしますのでお待ちください」
あ、行ってしまった。そういえば、今の人はどの位に位置する人なんだろう。琴平達と同じ陰陽師なのだろうか。それか、もっと上の人? もしかして、陰陽助じゃないよね? それだったらさすがに今の俺、失礼が過ぎると思うんだけど。何も言って来ていないからいいと思うけど。
『七人ミサキは全てを成仏させるのは無理だから、ひとまず僕達が把握している物だけをやるよ』
「え、もしかして。七人ミサキって、この村の近くにいるものとまた違う所にも存在する感じ?」
『当たり前でしょ。怨霊や妖。幽霊などはこの世に溢れかえっている。その中で同じ存在の者がいてもなんもおかしくはない』
確かにそれもそうか。あ、男性が何冊かの本を持って戻ってきてくれた。
「おそらくですが、七人ミサキが乗っているものはこちらだけかと。五冊程度ですが、お役に立てると嬉しいです。」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる