憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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水仙家

平和な陰陽寮

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 無事に陰陽寮に到着。今まで見た陰陽寮の中では小さい方、それでも大きいけど。

 木製の建物で、見た目は神社にあるような本殿。立派な建物が目の前に建っている。中に入ると、結構明るい。
 廊下には三本の蝋燭が壁に付けられ、廊下を照らしてくれていた。横には二人が限度の廊下の幅、だから今は縦に歩いている。

 中には巫女さんや他の陰陽師立が当たり前だがいる。水分さんが隣を通り過ぎる時、必ず一礼をしているなぁ。それだけ慕われているという事だろうか。それとも、この人の場合は無理やりさせているというのも…………。

「陰陽頭様」
「どうした」

 あ、一人の陰陽師が水分さんに声をかけた。手に何か持っているけど、何かの資料かな。

「ここは比較的環境は腐ってはいないみたいだな」
「確かにそうだね。陰陽頭自身が話の通じる人だからなのかもしれないけど、周りからの空気は悪い物じゃない」

 琴平も感じ取っていたみたいだな。感じ取ると言っても、この雰囲気は特に気にするようなものではない。

 周りの人達は俺達を敬遠していないし、逆に歓迎している感じかな? なんか、顔を向ければ笑顔を返してくれる。手を振ってくれる巫女さんもいるし、居心地がいいなぁ。

「待たせたな、任せていた仕事の報告だったんだ」
「あ、いや。大丈夫だよ」
「んじゃ、行くぞ」

 再度歩き出す水分さん。周りからの視線何て一切気にしていないな。まぁ、環境がいいから気にする必要はないか。もし、闇命君をこのような環境に置く事が出来たら、また違ったのかなぁ。

「はぁ…………」
「どうした?」
「あ、いや、何でもないよ。ごめんね」
「あぁ…………。本当に噂とは違うな。これは話を聞くのが楽しみだ」

 うわぁ、めっちゃ悪党のような顔を浮かべてる。これは、色んな意味で覚悟しないといけないなぁ。

 怖がりながら歩いていると、一つの襖の前で水分さんが立ち止まった。

「この部屋なら問題ないだろ」

 襖を開けると、六人何て簡単に入りそうな大きな部屋。
 整理整頓はしっかりとされて、旅館の匂い的なものが鼻に入る。畳だからかな、なんか落ち着く。陰陽寮って基本畳が多いのかな? いや、この時代にいきなりフローリングが出てきたらそれはそれで驚きだけどさ。

「んじゃ、今座布団準備するわ。”スイ”、出てこい」

 ん? スイ?  

 三枚の札を出し、水分さんが誰かの名前を呼ぶ。もしかして、式神? こんな適当な出し方でいいの? 急急如律令とか言わなくてもいいの?

 放り出された三枚のお札が急に水に包まれ、飛び散ると小さな子供が三人出てきた。かわいい!!!

『ごしゅじんさまぁぁあ』
『しゃまぁぁああ』
『まぁぁあ』
「おー。座布団準備してくれ」
『『『はーい』』』

 え、こんな三つ子のような可愛い少女達に座布団を準備させるの!? というか、座布団を準備させるためだけに式神を出したの!? それくらい俺準備しますが!?

 スムーズに準備を進める少女達。水色の雫が施されている着物がかわいいな。なんか、座敷童みたい。

「これって、なんの妖?」
『これは人型の式神を作っただけだろうね。つまり、あいつが考えた妖とでも言っておこうか。ただ、戦闘能力とかは皆無のはずだよ』
「え、そんな事出来るの?」
『君もやったでしょ? 猫刃《みょうじん》を捕まえる時に』

 え、猫刃を捕まえる時? 出したっけ? 

「あ、もしかして。闇命君の姿を作りだした人型の式神?」
『うん。多分それだと思う』

 なるほど、こんな使い方もあるのか。結構便利だな、現代だったら絶対に欲しい。リモコンとかお茶とかを取ってほしい時にでも。

「準備できたぞ。飲みもんとかが必要だったら巫女に頼むが?」
「お、お気遣いなく…………」
「俺が飲みたいから頼むわ。スイ、茶」
『はーい』

 あ、三人とも廊下に行ってしまった。

 なんというか、この人も自由は自由なんだけど。悪い気分にはならない自由人っぷりだな。こんな扱いされたの初めてだからめっちゃ変な感じ…………。

「茶が来るまでの間に、お前らについて話してもらおうか」
「え、あ、あの。暑いんですか?」
「この方が動きやすい」
「確かにそうですね…………」

 水分さんが狩衣の上に来ている服を脱いで、中に来ていた”単”と呼ばれている服の右側だけ脱いでいた。お腹辺りに晒しが巻かれているけど、それでも胸筋や二の腕の筋肉が…………。しっかりと鍛えられてらっしゃる。

 座布団に座り、俺達にも座るように促してきた。そのまま準備された座布団に正座で座る。水分さんは胡坐なんだけど、胡坐でいいのか? 陰陽頭がいいのかそれで、そんなに適当で。

「えっと、まず何から話せばいいやら…………」
「まず、お前自身について話せ。噂が一人歩きしていた可能性はあるが、それにしても違い過ぎる。影武者だったとしてももっと似せるだろ」

 う、確かに。どうやって説明しようかな…………。異世界転生と言っても通じないだろうし。

「なぁ、その肩に乗ってる鼠。そいつ、ただの鼠じゃないだろ」
「えっ、なんで…………」
「気配がある。結構強い人物が憑依しているように感じるが、何かあるのか?」

 さ、さすが陰陽頭を務めているだけの事はある。こんなにすぐ知られてしまった。闇命君も少し驚いているように見えるけど、すぐに気を取り直したのか。肩から降りて半透明の姿になった。

『よくわかったね。僕が本物の安倍闇命だよ。まぁ、陰陽頭を務めているんだ、これくらい見破れないと陰陽頭の名がなくね』
「納得、お前が本物なのは間違いないみたいだな。くそ生意気の餓鬼、噂通りの糞餓鬼だな」
「貴様!! もう一回いっ――――」

 紅音が暴走しそうなところを琴平が制してくれた。さすがに空気を読んでくれたみたいだな。

「んじゃ、今本体の中に入っている奴は誰だ。何でこんなまどろっこしい事をやっている」
『そうだね。これは少し長くなるし、信じられない話だ。それでも聞く?』
「聞かねぇと判断出来る訳ねぇだろうが」
『確かのそうだね。予防線を張らせてもらっただけだよ、嘘かもしれない内容だという事のね』
「そうかよ。どうでもいいが、ひとまず話せ。気難しい話や駆け引きとかは苦手なんだよ、堂々と話しやがれ」
『君とは面白い話が出来そうだよ。それに幾分か楽、頭を使わなくてよさそうだ』
「使うな、餓鬼らしく鼻水垂らして走り回ってろよ」
『そんな事が出来る環境だったら良かったのかもしれないね。まぁ、今考えたところで意味はない。ひとまず、これから話す事は全て真実。それを頭に入れて聞いてね』

 闇命君の言葉に小さく頷いた水分さん。ちょうど襖が開かれお茶が届く。
 全員に配られ、また巫女さんは一礼し部屋を出て行った。スイと呼ばれていた式神達も札に戻る。

 この場にいる全員が態勢を整えると、闇命君が重要な部分をかいつまんで話し出した。
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