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はじめの一歩
全力
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闇命君の静かな言葉が響く。その声には、ほんの少しだけ怒りが含まれているように感じる。
「闇命君……。君、もしかして自分が──」
『僕の事はどうでもいいよ、今は魔魅についてでしょ。今までは同じ大人として見てきたくせに、力が失うと今度は子供扱い? 大人って本当にずる賢いんだね。そうやって子供だから、大人だからと振り回す。本当の子供はどっちなのか分からなくなるよ。もっと、他人について考えられるようになってから発言した方がいいんじゃないの?』
「待て待て待て! そこまで言う必要は無いんじゃないかな?!」
おかしいおかしい!! そこまで言うのは本当におかしいよ! 相手を怒らせる気満々じゃねぇか!!
見てみろよ、岱平さんの額に青筋が……たってない? え、今も先程までの表情と変わらず無表情で俺達を見ている。
眉を少しあげ、怒っているような感じだけどそれは闇命君に対してでは無いだろうな。さっきから同じ顔つきだし。
闇命君の生意気な言葉に怒らなかった大人って、初めてかも……。
「…………なるほどな。確かに我々大人は、子供を都合の良い道具と見てきたかもしれぬ。反省だ」
目を伏せ、岱平さんは両手を床につけ頭を下げる。重々しい声だ。
「魔魅様!! 大変申し訳ございませんでした!! 私、貴方を都合よく利用していたのかもしれません!! どのような罰でもお受けします!!!」
「え、そこまで?! いやいや、心配していただけでしょ? 罰なんて」
「いえ!! これは魔魅様に対して無礼のある言葉であった!! 誠に情けない!! どうか、この私に罰を!!!」
頭を下げ、岱平さんが叫ぶ。いや、本人は叫んでいるつもりは無いと思うんだけど、そのぐらいの声量なんだよね……。耳がものすごく痛いです。興奮しているからかなぁ。
「…………岱平」
「はい!!!」
「罰は、私を自由にするお手伝いをすることだよ」
「………え、それは一体……?」
え、そんなに小さな声出せるの? なら、これからでもいいからその声量で話して。今は驚いているから思わず小さくなっているだけだと思うけど。
「これから私は、お兄ちゃんと出る。だから、私の着替えとか武器……? とかの準備。私、よく分からないから」
「……本当に、行かれるのですね」
「うん。私、行きたい。外の世界を見たい。もっと、呪い以外の力が欲しい」
その声には力が込められている。魔魅ちゃんの覚悟が、その言葉に乗せられている。
岱平さんが俺達を見てきた。まだ、大事な魔魅ちゃんを外の世界に繰り出す心の準備が出来ていないんだろうなぁ。なら、魔魅ちゃんの覚悟を岱平さんに見せればまだワンチャンありか。多分……。
「もし、呪い以外の力を手に入れる事が出来たら。魔魅ちゃんはその力をどのように使いたい?」
「お兄ちゃんを守る!」
「…………ん?」
「お兄ちゃんを、守る!!!!」
「……………………え?」
え、なんか。拳を握って意気揚々と魔魅ちゃんが宣言してるけど。お兄ちゃんって、俺の事でいいんだよね……? え。という事は、俺を守るってこと?
「俺って、そんなに頼りないのかな……」
『今更?』
「冷静に返さないで闇命君……」
魔魅ちゃんが目をキラキラさせて、今も俺を見上げてくるし……。
「お、俺じゃなくてもっと他の人を守るとかは……どうかな?」
「私、まだ力つけてない。守りたいけど、沢山の人守れるくらいになるか分からない。大きすぎると、目標が迷っちゃう」
「ド正論」
つまり。まずは少しずつ前に進むため俺を守れるように。その後、どんどん幅を広げていこうと言った感じか。なるほど。
「なんで俺?」
「…………いいでしょ……」
あ、そこは教えてくれないんだ。なんか、モジモジしていて可愛いな。本当に子供だ。
「優夏、もうそろそろ」
「あ、琴平、そうだね。岱平さん、いいですか? 魔魅ちゃんを連れて行って」
岱平さんに問いかけると、渋々ではあるが首を縦に振ってくれた。
「魔魅様」
「何、岱平」
「私は、何時でも貴方の味方です。なので、何かあれば、必ず戻ってきてください。貴方の居場所は、ここにもあります!!」
岱平さんが立ち上がり、魔魅ちゃんの近くまで移動してくる。そして、片膝をつき魔魅ちゃんの右手を優しく包み込み温かい声で伝えていた。
声量も、この時だけは普通。耳は痛くないし、大きくない。
「では、魔魅様の衣服などの準備に取り掛かります。少しだけお時間下さい!!!!」
「少しだからね。早くして」
「分かりました!!」
笑顔で岱平さんがこの大広間を出て行く。少しだけ不安げに顔を俯かせていたような気がしたけど、多分もう何も言わないだろう。
魔魅ちゃんを外の世界へと送り出すと決めたんだし。俺がやる事は、友人の奪還と魔魅ちゃんを守ること。
この、少年の体で。出来る事を全力でやる。
「闇命君……。君、もしかして自分が──」
『僕の事はどうでもいいよ、今は魔魅についてでしょ。今までは同じ大人として見てきたくせに、力が失うと今度は子供扱い? 大人って本当にずる賢いんだね。そうやって子供だから、大人だからと振り回す。本当の子供はどっちなのか分からなくなるよ。もっと、他人について考えられるようになってから発言した方がいいんじゃないの?』
「待て待て待て! そこまで言う必要は無いんじゃないかな?!」
おかしいおかしい!! そこまで言うのは本当におかしいよ! 相手を怒らせる気満々じゃねぇか!!
見てみろよ、岱平さんの額に青筋が……たってない? え、今も先程までの表情と変わらず無表情で俺達を見ている。
眉を少しあげ、怒っているような感じだけどそれは闇命君に対してでは無いだろうな。さっきから同じ顔つきだし。
闇命君の生意気な言葉に怒らなかった大人って、初めてかも……。
「…………なるほどな。確かに我々大人は、子供を都合の良い道具と見てきたかもしれぬ。反省だ」
目を伏せ、岱平さんは両手を床につけ頭を下げる。重々しい声だ。
「魔魅様!! 大変申し訳ございませんでした!! 私、貴方を都合よく利用していたのかもしれません!! どのような罰でもお受けします!!!」
「え、そこまで?! いやいや、心配していただけでしょ? 罰なんて」
「いえ!! これは魔魅様に対して無礼のある言葉であった!! 誠に情けない!! どうか、この私に罰を!!!」
頭を下げ、岱平さんが叫ぶ。いや、本人は叫んでいるつもりは無いと思うんだけど、そのぐらいの声量なんだよね……。耳がものすごく痛いです。興奮しているからかなぁ。
「…………岱平」
「はい!!!」
「罰は、私を自由にするお手伝いをすることだよ」
「………え、それは一体……?」
え、そんなに小さな声出せるの? なら、これからでもいいからその声量で話して。今は驚いているから思わず小さくなっているだけだと思うけど。
「これから私は、お兄ちゃんと出る。だから、私の着替えとか武器……? とかの準備。私、よく分からないから」
「……本当に、行かれるのですね」
「うん。私、行きたい。外の世界を見たい。もっと、呪い以外の力が欲しい」
その声には力が込められている。魔魅ちゃんの覚悟が、その言葉に乗せられている。
岱平さんが俺達を見てきた。まだ、大事な魔魅ちゃんを外の世界に繰り出す心の準備が出来ていないんだろうなぁ。なら、魔魅ちゃんの覚悟を岱平さんに見せればまだワンチャンありか。多分……。
「もし、呪い以外の力を手に入れる事が出来たら。魔魅ちゃんはその力をどのように使いたい?」
「お兄ちゃんを守る!」
「…………ん?」
「お兄ちゃんを、守る!!!!」
「……………………え?」
え、なんか。拳を握って意気揚々と魔魅ちゃんが宣言してるけど。お兄ちゃんって、俺の事でいいんだよね……? え。という事は、俺を守るってこと?
「俺って、そんなに頼りないのかな……」
『今更?』
「冷静に返さないで闇命君……」
魔魅ちゃんが目をキラキラさせて、今も俺を見上げてくるし……。
「お、俺じゃなくてもっと他の人を守るとかは……どうかな?」
「私、まだ力つけてない。守りたいけど、沢山の人守れるくらいになるか分からない。大きすぎると、目標が迷っちゃう」
「ド正論」
つまり。まずは少しずつ前に進むため俺を守れるように。その後、どんどん幅を広げていこうと言った感じか。なるほど。
「なんで俺?」
「…………いいでしょ……」
あ、そこは教えてくれないんだ。なんか、モジモジしていて可愛いな。本当に子供だ。
「優夏、もうそろそろ」
「あ、琴平、そうだね。岱平さん、いいですか? 魔魅ちゃんを連れて行って」
岱平さんに問いかけると、渋々ではあるが首を縦に振ってくれた。
「魔魅様」
「何、岱平」
「私は、何時でも貴方の味方です。なので、何かあれば、必ず戻ってきてください。貴方の居場所は、ここにもあります!!」
岱平さんが立ち上がり、魔魅ちゃんの近くまで移動してくる。そして、片膝をつき魔魅ちゃんの右手を優しく包み込み温かい声で伝えていた。
声量も、この時だけは普通。耳は痛くないし、大きくない。
「では、魔魅様の衣服などの準備に取り掛かります。少しだけお時間下さい!!!!」
「少しだからね。早くして」
「分かりました!!」
笑顔で岱平さんがこの大広間を出て行く。少しだけ不安げに顔を俯かせていたような気がしたけど、多分もう何も言わないだろう。
魔魅ちゃんを外の世界へと送り出すと決めたんだし。俺がやる事は、友人の奪還と魔魅ちゃんを守ること。
この、少年の体で。出来る事を全力でやる。
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