憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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はじめの一歩

本題

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 頭を撫でてあげ、笑顔を意識し挨拶。すると、魔魅ちゃんはゆっくりと俺を見上げてきた。
 
 驚かせてしまったかな。でも、こんなに小さい子を縛り付けるものはもう無くなった。次を、しっかりと考えてくれる人がいる。
 風当たりが強い人は必ずいると思うけど、それでももうこの子が背負う業は無くなったんだ。これからは、幸せな人生を歩んで欲しい。

「魔魅ちゃん、どこまで話聞いてるかな?」
「…………全部」
「そっか。頑張ったね、お疲れ様」

 全部という事は、魔魅ちゃんの力の消失、漆家の跡取り、今後の動き。それらを全て聞いたという事だろう。
 まだそこまで日にちが経っていないはずなのに、そこまで話をするのか。急ぎすぎだろ。

「…………次の、陰陽頭……」
「うん。もう考えているみたいだよ。だから、安心して」
「私、もう要らない?」
「え?」

 い、要らない? どういう事だ?

「私、もうここには必要ない? 要らない? 居なくならないと、いけない?」

 不安げに揺れる黒い瞳が見上げてくる。胸元で握っている両手はカタカタと震え、今にも崩れ落ちそうだ。

 こんなに、脅えているなんて。それに、必要ない? なんで、そんな事を聞くんだよ。意味がわかんねぇ……。

「私、力が無くなったから、もう、要らない……」
「…………そんな事、言われたの?」
「言ってる……。もう、必要ないって……言ってた」

 信じられない。今まで都合よく使っていた。それは分かっていたけど、ハッキリとそう言うなんて……。
 いや、影で言っていたのを聞いてしまったのか。そんなのどうでもいい。どうでも、いいな。

「魔魅ちゃん。ここの人達が必要ないと言ったのなら、こんな所。今すぐにでも出ようか!」
「…………え?」
「俺達と一緒に外の世界を見て回らない?」
「貴方達と、外の世界?」
「うん」

 後ろには馬車から降りた琴平、紅音、夏楓は驚いているけど、何も言ってこない。多分、俺の思考を読んでくれたんだろうな。

「……………………」

 む、無言。さすがにいきなりすぎたか。これは断られたかなぁ。

「ん? あれ、闇命君。ハイハイ、こっちにおいで」

 足をカリカリと爪で引っ掛けないでよ。地味にくすぐったいよそれ。痛みがないのはいい事だけどさ。
 とりあえず右手ですくい上げ、魔魅ちゃんに見せようか。

「この子、君達がよく知ると思う安倍闇命君だよ。今この姿なのには事情があるんだけど、それは追々話すね。今はこれからについてお話しない?」

 コクンと頷いてくれた、良かった。というか、ずっと隣に立っている男性。陰陽師の狩衣を身にまとっているから漆家の者だと思うけど、さっきからずっと黙ってるし……。なんなんだよこの人。側近みたいな感じだろうか。

「…………」
「え、あ、はい……」

 長めの銀髪が風に揺れ、黒いつり目が俺を見下ろし右手で寮へと促してきた。
 そのまま歩き出してしまい、慌てて後ろを付いていく事に……。

「えっと、こんにちは?」
「…………」
「え、無視?」
「…………」

 …………無視だな。
 長く廊下を進む中、みんな無言。さすがに重苦しいよ……。

 廊下を進んでいると、大きな扉が現れた。
 ここだけ襖ではなく、大きな両開きの扉で作られてる。異質だな。

「…………」
「え、この中に入っていいの?」

 男性が扉を指し、俺達を中へと誘導する。
 特別な部屋かと思っていたけど、違うのかな。いや、入ればわかるか。

「俺が開けよう」
「あ、ありがとう琴平」

 俺でも届くけど、まぁいいや。

 扉を開けると中にはっ──

「おはよう!!! 待っていたぞ安倍家の者よ!!!!!」
「おぅふ」

 こ、この耳に痛い声は!!!

「やぁ!!!!」
「た、岱平さん………おはようございます」
「おはよう!! 今日はいい天気だな!! 道中何も無かったか?!」
「はい、少々移動に支障がありましたが、今は大丈夫です……」
「そうか!!!」

 うっ、あ、頭が割れる……痛い……。
 手を振りながら岱平寿成さんがこちらへと向かってくる。も、もう少し声を落とし──無理か。

「あの、そこまで大きく話さなくても聞こえております。もう少し落としていただけないでしょうか?」
「ふむっ! なら、これでどうだ!! 変わっただろう!!」
「どこがだ」
「琴平、諦めよう」

 琴平が素で返してしまうほど、声量が変わっていないという事だよ。声がでけぇ……。
 肩に乗っている闇命君なんて、事前に耳を抑えていたな。中にいる事わかっていただろう貴様。教えなさいよ。

寿成かずなり
「おっ! 陰陽頭様!! 今日もお疲れ様です!!!」
「私はもう陰陽頭じゃないよ」
「確かにそうですね!! ですが!! 私からしたら、まだまだ貴方は陰陽頭様なので! このように呼ばせていただきたく思います!! ご迷惑でしたら直させていただきますのでお申し付けください!!!」
「………分かった。あと、耳が痛い」
「すいません!!!!」

 あ、魔魅ちゃんが少し笑ってる。いや、眉間にシワよってるから呆れてるのかな。でも、少し嬉しそう。

 …………陰陽頭と呼ばれて、喜んでいるのかな。やっぱり、そこはプライドがあるのだろう。

「とりあえず、本題に入ってもいいですか?」
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