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はじめの一歩
異常事態
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無事に三人は意識を取り戻し、再度出発出来た。
「はぁぁぁああ。というか、なんで俺だとあんな風にならないのに、闇命君が体に戻っただけで失神しそうな勢いになるの? そんなに別人? 見た目同じなのにさ」
「す、すいません……」
「優夏、お、怒っているのか?」
いや、怒ってるとかじゃなくてさ……。
「いや、なんか……。ある意味すごいなって思って。ここまで人を好きになれるのもすごいし、見た事ないなって思っただけだよ」
元の世界とかだったらここまでの忠誠心や執着心はあまりないと思う。いや、そういう人は必ずしもいると思うけど、それでも俺は出会ってこなかった。それに、ただの執着心じゃなくて、相手のための行動をしっかりと出来る。度が行き過ぎると、ストーカーとか、依存とかになりかねないしな。
これは大人だからという訳ではなく、この人達の人柄なのだろう。
本当に、闇命君は恵まれた環境に立たされているね。羨ましいよ。
「まぁ、俺じゃ駄目なんだなっていう虚しさは心に残った出来事だったけどね……」
あはは……。はぁ………………。
闇命君は疲れたらしく、一番安全であろう俺の膝の上で寝ている。
確かにここだったら二人も手が出せないだろう。いつもの肩でも大丈夫な気はするけど。
動いている馬車から眺める景色は、次々と移り変わり綺麗に見える。
森に囲まれた道を進んでいるのだけれど、自然豊からで、鹿やリスといった。自然動物も沢山いた。木の実が実っているらしく、色も出ている。
――――――――ガクン
っ、え? いきなり馬車が止まった。なんだ?
「どうしたの琴平」
「いや、進みたいんだが……」
「ん? あれ……なんだ?」
なんか、前にも馬車が止まってる。ここは一車線並に狭いから、避けてくれるか前に進んでくれないと、俺達が通れないな。
「なんでこんな所で止まっているんだ?」
「わからんが…………。ここで止められると他の馬車が通った時も困るだろう」
これ、元の世界だったら切符切られるやつじゃない? 車のルール知らないけど。
「少し話を聞いて来るな」
「あ、俺も行くよ。紅音達は待っていてくれるかな?」
二人が頷いてくれたから、そのまま馬車を出て琴平の隣に移動。前に止まっている馬車に向かった。
大きさは俺達が使っていた馬車と変わらないな。馬の毛色が違うだけだ。こっちは黒いのな、かっこいい。
その馬の隣には、なぜか怯えた様子て体を大きく震わせ、森の中を指しているおじさんが地面に転がり落ちたような体勢で地面に座っている。何があったんだ?
「あの、どうかしたんですか?」
「で、出た。出たんだ……。い、いやだ。死ぬ、俺は、殺される。俺も、あの後ろを歩かないといけなくなる……。いやだ……いやだぁぁあああああ!!!!!」
「え、ちょっ!!」
いきなりおじさんは俺達の横を通り抜け、ふらついている足で走り去ってしまう。
「な、なんだ?」
え、出た? 死ぬ? ここの森に何か出たという事か? それにしても、あの脅えようは……。
「え、この馬車、どうすればいいの?」
「ひとまず避けてもらうしかないな。乗っている人は………一人だけいるか。こちらも同じく体を震わせているみたいだ。どうする?」
「怯えているのなら、一度落ち着かせよう」
「わかった」
琴平が窓の中を確認し、今の状況を伝えてくれた。なんで、そんなに怯えているんだ? 何を見たというのか。
琴平が扉をノックし、開くのと同時に女性の小さな悲鳴。相当怖い思いをしたらしいな。
「大丈夫ですか?」
「ひっ、あ、貴方達は……?」
「ただの旅をしている者です。ここで一体何があったのですか?」
優しく差し伸べた手を、中に入っていた人が掴む。
その人は落ち着いた色の着物を着て、背中くらい長い髪を簪でまとめてる。
今は怯えている為、眉が下げられ不安げに茶色の瞳が揺れていた。
「あの、何があったんですか?」
「え、なんで子供が……」
「こちらはただの子供ではありません。安心してください」
琴平が補足してくれたおかげで、彼女は俺についてそれ以上追求してこなかった。いや、追求出来る程の余裕を今持っていないって感じか。
馬車を琴平に支えられながら降り、女性は地面にそのまま崩れ落ちる。
さすがに馬車の中から見ていた紅音と夏楓は、異常事態だという事を察しくれたらしく、こちらへと来てくれた。多分、同じ女性がいた方が話しやすいと思うし、来てくれて良かったよ。
地面に崩れ落ちた女性は、両手で顔を覆い、肩をカタカタと震わすだけで何があったか話してくれない。
夏楓が「大丈夫ですよ」と背中を摩り、紅音と琴平は目を合わせ何かを考えている。
「出た……、死ぬ……。後ろを歩く?」
さっきのおじさんの言葉って。あれ、もしかして…………。
「はぁぁぁああ。というか、なんで俺だとあんな風にならないのに、闇命君が体に戻っただけで失神しそうな勢いになるの? そんなに別人? 見た目同じなのにさ」
「す、すいません……」
「優夏、お、怒っているのか?」
いや、怒ってるとかじゃなくてさ……。
「いや、なんか……。ある意味すごいなって思って。ここまで人を好きになれるのもすごいし、見た事ないなって思っただけだよ」
元の世界とかだったらここまでの忠誠心や執着心はあまりないと思う。いや、そういう人は必ずしもいると思うけど、それでも俺は出会ってこなかった。それに、ただの執着心じゃなくて、相手のための行動をしっかりと出来る。度が行き過ぎると、ストーカーとか、依存とかになりかねないしな。
これは大人だからという訳ではなく、この人達の人柄なのだろう。
本当に、闇命君は恵まれた環境に立たされているね。羨ましいよ。
「まぁ、俺じゃ駄目なんだなっていう虚しさは心に残った出来事だったけどね……」
あはは……。はぁ………………。
闇命君は疲れたらしく、一番安全であろう俺の膝の上で寝ている。
確かにここだったら二人も手が出せないだろう。いつもの肩でも大丈夫な気はするけど。
動いている馬車から眺める景色は、次々と移り変わり綺麗に見える。
森に囲まれた道を進んでいるのだけれど、自然豊からで、鹿やリスといった。自然動物も沢山いた。木の実が実っているらしく、色も出ている。
――――――――ガクン
っ、え? いきなり馬車が止まった。なんだ?
「どうしたの琴平」
「いや、進みたいんだが……」
「ん? あれ……なんだ?」
なんか、前にも馬車が止まってる。ここは一車線並に狭いから、避けてくれるか前に進んでくれないと、俺達が通れないな。
「なんでこんな所で止まっているんだ?」
「わからんが…………。ここで止められると他の馬車が通った時も困るだろう」
これ、元の世界だったら切符切られるやつじゃない? 車のルール知らないけど。
「少し話を聞いて来るな」
「あ、俺も行くよ。紅音達は待っていてくれるかな?」
二人が頷いてくれたから、そのまま馬車を出て琴平の隣に移動。前に止まっている馬車に向かった。
大きさは俺達が使っていた馬車と変わらないな。馬の毛色が違うだけだ。こっちは黒いのな、かっこいい。
その馬の隣には、なぜか怯えた様子て体を大きく震わせ、森の中を指しているおじさんが地面に転がり落ちたような体勢で地面に座っている。何があったんだ?
「あの、どうかしたんですか?」
「で、出た。出たんだ……。い、いやだ。死ぬ、俺は、殺される。俺も、あの後ろを歩かないといけなくなる……。いやだ……いやだぁぁあああああ!!!!!」
「え、ちょっ!!」
いきなりおじさんは俺達の横を通り抜け、ふらついている足で走り去ってしまう。
「な、なんだ?」
え、出た? 死ぬ? ここの森に何か出たという事か? それにしても、あの脅えようは……。
「え、この馬車、どうすればいいの?」
「ひとまず避けてもらうしかないな。乗っている人は………一人だけいるか。こちらも同じく体を震わせているみたいだ。どうする?」
「怯えているのなら、一度落ち着かせよう」
「わかった」
琴平が窓の中を確認し、今の状況を伝えてくれた。なんで、そんなに怯えているんだ? 何を見たというのか。
琴平が扉をノックし、開くのと同時に女性の小さな悲鳴。相当怖い思いをしたらしいな。
「大丈夫ですか?」
「ひっ、あ、貴方達は……?」
「ただの旅をしている者です。ここで一体何があったのですか?」
優しく差し伸べた手を、中に入っていた人が掴む。
その人は落ち着いた色の着物を着て、背中くらい長い髪を簪でまとめてる。
今は怯えている為、眉が下げられ不安げに茶色の瞳が揺れていた。
「あの、何があったんですか?」
「え、なんで子供が……」
「こちらはただの子供ではありません。安心してください」
琴平が補足してくれたおかげで、彼女は俺についてそれ以上追求してこなかった。いや、追求出来る程の余裕を今持っていないって感じか。
馬車を琴平に支えられながら降り、女性は地面にそのまま崩れ落ちる。
さすがに馬車の中から見ていた紅音と夏楓は、異常事態だという事を察しくれたらしく、こちらへと来てくれた。多分、同じ女性がいた方が話しやすいと思うし、来てくれて良かったよ。
地面に崩れ落ちた女性は、両手で顔を覆い、肩をカタカタと震わすだけで何があったか話してくれない。
夏楓が「大丈夫ですよ」と背中を摩り、紅音と琴平は目を合わせ何かを考えている。
「出た……、死ぬ……。後ろを歩く?」
さっきのおじさんの言葉って。あれ、もしかして…………。
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