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はじめの一歩
旅路
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「それじゃ、行ってきます」
「気をつけてくださいね」
「はい。紫苑さんも、色々ありがとうございます。あの、全ての資料を解決出来ずすいません……」
「いえ、そもそも、期待していませんでしたので」
「…………え?」
昨日貰った服を着て、陰陽寮の出入口で別れを惜しんでいると引っかかる言葉が……。
俺、期待されてなかったの!? なら、なぜあんなに大量の仕事を押し付けたんだよ!!
「元々貴方達には、旅に出てもらう予定でしたので、あの資料はただの時間稼ぎ。ですが、まさかあそこまで大きくなるとは思っていなったので、驚きましたよ」
「あ、そうなんですね………。なんか、複雑です」
「そう言わないで欲しい。さぁ、紅音や琴平達が待っているよ。早く行きなさい」
「あ、はい」
後ろを見ると、馬車に乗っている紅音や琴平が俺を待っていた。御者席には琴平が乗っている。どうやら、馬車を動かしてくれるらしい。
嘘やろ、なんでも出来るやん。
「それじゃ、行ってきますね。本当に、ありがとうございました!」
「気をつけるんだよ」
手を振りあい、少ない荷物を持ち馬車へと乗り込んだ。それを見計らったように馬車が動き出す。
窓の外を見ると、紫苑さんだけだったはずなのに、その隣には陰陽頭と陰陽助もいた。
いやいや、今更来られても挨拶できませんよ……。いや、それが狙いか。見えていないだろうが手を振っておこう。一応、色んな意味でお世話になったしな!!!
「とうとう、やってしまいましたね」
「不安?」
夏楓が自身の荷物を膝に乗せ、撫でながら呟いている。
そりゃぁ、不安にもなるよね。だって、無鉄砲ってわけじゃないけど、今後何が待ち受けているのか分からない状態なんだから。不安にならない方が無理。
「少しだけ。ですが、今回は優夏さんが加わっていますので、少しの安心もあります」
「え、俺? 闇命君じゃなくて?」
「もちろん、闇命様がいるだけで心に余裕は生まれます。ですが、やはり私達は一度挫折してしまっております。また、同じ事にならないかと頭を過ってしまうのですよ」
まぁ、そうだよね。過去に失敗してしまっているのなら、その光景が頭を過っても仕方がないか。
諦める気はない。でも、今後何があるかわからない。やば、俺も不安になってきた。大丈夫かなぁ。
「問題ない」
「紅音さん?」
「今回は、以前とは違う。もう、縛られず、自由に動く事が出来る立場だ。それに加え、他の陰陽寮との関わりを持つ事が出来ている。少なからず、前進はしている。あとは、突き進むだけだ」
たしかに、紅音の言う通りだな。前回がどこまで進んでいたか分からないけど、前進しているのは間違いないだろう。
「………そうですね。ありがとうございます、紅音さん」
「ふんっ。弱音を聞きたくないだけだ」
「そうですか」
この二人、仲が悪いと思っていたけど、なんだかんだお互い大事に思っているんだろうなぁ。仲間思いな人達だし、少し過激なだけで……。
「これからまた長旅になるし、ゆっくり進もうか」
『今のうちに漆家に手紙を書いておこう。体を返して』
「あ、手紙ね……。分かった……」
前回、机に乗せてある便箋にすら文字を書く事が出来なかったわけだし、こんなカタカタと動く場所で机無しで書くのは、チャレンジする前から分かる。無理。
「よろしくお願いいたします」
『早く返して』
「…………はいはい」
そこから、俺は意識が飛んでいき目の前が真っ暗となった。
☆
「…………ん、あ、終わったのかな」
あ、書き終わってる。さすが闇命君、はやっ────何事?!?!
なんか、なぜか鼠姿の闇命君はめっちゃ疲れてるし、紅音は椅子にうつ伏せになって倒れているし、夏楓は顔を抑えて何かブツブツ唱えれる。えっと、なになに??
「あぁ、闇命様。今日も美しい、ありがとうございます、ありがとうございます。凛々しいです。凛々しいお姿を久しぶりに拝む事が出来て、私は幸せです」
…………ん?
え、本当に何があったの。ただ、手紙を書くだけじゃなかったの? なんでこんなに興奮されてるの? というか、なんで馬車が止まってるの?
ゆっくりと御者席を見てみると…………
「…………はぁ、もう、闇命君が元に戻るのはやめよう。もっと、俺自身できるようにならないと……」
琴平は琴平で、顔を覆って意識消失してる。
どんだけ好きなんだよこの闇命狂が!!!!!!!!
「気をつけてくださいね」
「はい。紫苑さんも、色々ありがとうございます。あの、全ての資料を解決出来ずすいません……」
「いえ、そもそも、期待していませんでしたので」
「…………え?」
昨日貰った服を着て、陰陽寮の出入口で別れを惜しんでいると引っかかる言葉が……。
俺、期待されてなかったの!? なら、なぜあんなに大量の仕事を押し付けたんだよ!!
「元々貴方達には、旅に出てもらう予定でしたので、あの資料はただの時間稼ぎ。ですが、まさかあそこまで大きくなるとは思っていなったので、驚きましたよ」
「あ、そうなんですね………。なんか、複雑です」
「そう言わないで欲しい。さぁ、紅音や琴平達が待っているよ。早く行きなさい」
「あ、はい」
後ろを見ると、馬車に乗っている紅音や琴平が俺を待っていた。御者席には琴平が乗っている。どうやら、馬車を動かしてくれるらしい。
嘘やろ、なんでも出来るやん。
「それじゃ、行ってきますね。本当に、ありがとうございました!」
「気をつけるんだよ」
手を振りあい、少ない荷物を持ち馬車へと乗り込んだ。それを見計らったように馬車が動き出す。
窓の外を見ると、紫苑さんだけだったはずなのに、その隣には陰陽頭と陰陽助もいた。
いやいや、今更来られても挨拶できませんよ……。いや、それが狙いか。見えていないだろうが手を振っておこう。一応、色んな意味でお世話になったしな!!!
「とうとう、やってしまいましたね」
「不安?」
夏楓が自身の荷物を膝に乗せ、撫でながら呟いている。
そりゃぁ、不安にもなるよね。だって、無鉄砲ってわけじゃないけど、今後何が待ち受けているのか分からない状態なんだから。不安にならない方が無理。
「少しだけ。ですが、今回は優夏さんが加わっていますので、少しの安心もあります」
「え、俺? 闇命君じゃなくて?」
「もちろん、闇命様がいるだけで心に余裕は生まれます。ですが、やはり私達は一度挫折してしまっております。また、同じ事にならないかと頭を過ってしまうのですよ」
まぁ、そうだよね。過去に失敗してしまっているのなら、その光景が頭を過っても仕方がないか。
諦める気はない。でも、今後何があるかわからない。やば、俺も不安になってきた。大丈夫かなぁ。
「問題ない」
「紅音さん?」
「今回は、以前とは違う。もう、縛られず、自由に動く事が出来る立場だ。それに加え、他の陰陽寮との関わりを持つ事が出来ている。少なからず、前進はしている。あとは、突き進むだけだ」
たしかに、紅音の言う通りだな。前回がどこまで進んでいたか分からないけど、前進しているのは間違いないだろう。
「………そうですね。ありがとうございます、紅音さん」
「ふんっ。弱音を聞きたくないだけだ」
「そうですか」
この二人、仲が悪いと思っていたけど、なんだかんだお互い大事に思っているんだろうなぁ。仲間思いな人達だし、少し過激なだけで……。
「これからまた長旅になるし、ゆっくり進もうか」
『今のうちに漆家に手紙を書いておこう。体を返して』
「あ、手紙ね……。分かった……」
前回、机に乗せてある便箋にすら文字を書く事が出来なかったわけだし、こんなカタカタと動く場所で机無しで書くのは、チャレンジする前から分かる。無理。
「よろしくお願いいたします」
『早く返して』
「…………はいはい」
そこから、俺は意識が飛んでいき目の前が真っ暗となった。
☆
「…………ん、あ、終わったのかな」
あ、書き終わってる。さすが闇命君、はやっ────何事?!?!
なんか、なぜか鼠姿の闇命君はめっちゃ疲れてるし、紅音は椅子にうつ伏せになって倒れているし、夏楓は顔を抑えて何かブツブツ唱えれる。えっと、なになに??
「あぁ、闇命様。今日も美しい、ありがとうございます、ありがとうございます。凛々しいです。凛々しいお姿を久しぶりに拝む事が出来て、私は幸せです」
…………ん?
え、本当に何があったの。ただ、手紙を書くだけじゃなかったの? なんでこんなに興奮されてるの? というか、なんで馬車が止まってるの?
ゆっくりと御者席を見てみると…………
「…………はぁ、もう、闇命君が元に戻るのはやめよう。もっと、俺自身できるようにならないと……」
琴平は琴平で、顔を覆って意識消失してる。
どんだけ好きなんだよこの闇命狂が!!!!!!!!
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