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革命

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 闇命君の言った通り、漆家の陰陽允おんようのじょうの所へと向かう。
 やっぱり、漆家の陰陽頭が倒れたからか。周りの人達は慌ただしく動き回っているなぁ。この混乱も早くどうにかしないと、これが村にも伝染して自体が大きくなる。

 これから会う人は常識人だといいな。それか、せめて話の通じる人。
 どんな人か、本当に怖いんだよ。今までの人がみんな濃いメンバーだったから。

 歩いていると、一つの部屋に辿り着いた。ここが陰陽允がいる部屋か、緊張するなぁ。

「す、すいません!! 安倍家に仕えている、安倍闇命です。陰陽允様はいらっしゃいますか?」
「いるぞ!!! どうぞーー!!」
「あ、はい」

 中に声を掛けたら、倍の元気な声が返ってきた。なんか、ある意味中に入るの怖いな。

 ゆっくりと襖を開けて中をおそるおそる見回してみると、すっごく汚いわけではなかった。
 良かった、紫苑さんみたいな人ではないらしい。特に目立つ物がない普通の和室だ。

 もっと襖を開き中へと入る。その和室の中心には、活発そうな男性が座布団の上に正座し、腕を組み、凛々しい笑みを浮かべ俺を見てくる。え、なんですか……。

「君が安倍闇命だね!!」
「う、声が大きい……。はい、俺が安倍闇命ですが……。貴方は漆家の陰陽允で間違いありませんか?」
「うむ!! 我がこの漆家に使える陰陽允で間違いない!! 名は、岱平寿成《たいへいかずなり》だ!! よろしく頼むぞ闇命!!」

 うっ!!! 俺の苦手とする人だ!!
 いや、活発そうでいいと思います。思いますよ。

 おでこが出るほど短い赤髪に、紅色の瞳。着物はオレンジ、羽織は黄色。派手好きなんですね?!!
 それに、声がものすごく大きい!!! そんなに大きくなくても聞こえるから安心してよ。

「えっと、もう少し声の音量を落としてもらえるとすごく助かるのですが……」
「そうか!! なら、このぐらいならどうだろう!!」

 え、どうだろう。どうだろうとは? まさか、変えたのか?

「どうだ!! 少しは小さくなっただろう!!」
「あ、はい。もういいです……」

 さっきと全く変わっていませんけれどね?! いや、でも仕方がない。もう、これで行こう。
 何を言っても無駄なんだろうし……。ここの世界の住人一人一人濃いなぁ。常識人って、琴平と夏楓しか居ないのか? 闇命君が絡むと全然常識人じゃないけどさ。

「ところで、君達な我に何の用だ!!」
「あ、はい。まず、岱平さんは今の漆家がどのような状況になっているかお分かりですか?」
「うむっ!! 漆家の陰陽頭である魔魅様が力を使えなくなり、熱で倒れてしまったのだろう!! それに加え、件を安倍闇命が式神にしてしまった事により、村の平穏が脅かされようとしている!! 間違いはあるか!!」
「まったくその通りでございます!!!」

 つられて声が大きくなる……。

 結構情報が早いなぁ。まさかこの人、その情報を耳にし、取り乱して声が自然と大きくなってしまっているのか? 普段はこんな人では無いのか?

「そうか!! なら、まずは陰陽頭である魔魅様の安否を最優先に考えよう!! その後に、この陰陽寮の存続や村の今後を調べながら考えていこうと思う!! どうだろうか!!」
「ぜひ、それでよろしくお願いします!!」

 この人、やっぱり普段からこんな感じなんだろうなぁ。だって、冷静だもん。冷静……だよな。ただ、声が大きいだけのお兄さん。

「ちなみになんですが、陰陽頭を貴方がやるということは考えておられないのでしょうか?」
「無理だ!!」

 あ、それは即答なのか。

「そもそも!! 我にはこれ以上の位はいらぬ! 今のこの立ち位置が我にとって一番最適なのだ!! ここから動くつもりは毛頭ない!!!」

 な、なるほど。この人は上を狙う人では無いのか。結構冷静で周りが見えているし、常識人っぽいのに。もっと上の立場になってもいいような気がするんだけど。


「でしたら、漆家が安定するまでの間は安倍家が管理する形で。陰陽頭は陰陽允である貴方が最適な方を探すという形でも大丈夫でしょうか?」
「後半は問題ない!! だが、管理を安倍家に任せるのはこちらとしてはすぐに判断できるものでは無い!!」

 え、そこを否定されると俺がやりたかった事がまるっと出来なくなるんだけど。さすがに勘弁して。

「ですが、今の状況を知っているのは我々安倍家ですよ? すぐに行動に移すことが可能。最適だと思うのですが、他に頼れる宛などがあるのでしょうか?」
「確かに今すぐは難しいが宛はある!! 管理を任せるではなく、少しの間だけ漆家の安否を見守るだけでよい!! こちらはこちらで動く!!」

 あまり俺達にお願いしたくないような言い分だな。これ以上言い返すと、漆家を安倍家が取り込もうとしているとか誤解されそうだし、宛を聞いてみようか。
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