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革命

決断

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 え、闇命君? 今の口調は?

 闇命君は自分の口調に気づいているのか、気づいていないのか。そのまま話を進める。

『もし、安倍家で私が必要なのなら、それは全力を尽くしてあげよう。だが、それと同時にこちらはこちらで動かせてもらう。しかし、今までの安倍家は、私を浄化の際にしか使っていなかったように思える。今更いなくなったところで、問題は無いと思うがね。それとも、こんな少年がいないと、安倍家は悪霊の浄化すらまともに出来ないという事だろうか。そうだとすれば地に落ちたものだね。本当に』

 目の前に座る少年は、本当に闇命君なのか。そう疑いたくなるほど、口調が大人びいている気がする。元々、大人びいている感はあったけど、これじゃ本当に……。

「闇命様、口調が戻っておりますが、よろしいのでしょうか?」
『………えっ、戻ってた? うそ。やばっ』
「え、もどっ???」

 戻ってる? もしかして、今の話し方が本来の闇命君なん? え、なんか、イメージが違いすぎ。

「闇命様は、父上が大好きだからな。口調も、頭に血が上ると父上のように──」
『琴平少し黙って。別に父さんなんて関係ないし、好きでもなんでもないから。口調は一番近くにいた人の口調が自然と移ってしまうのは仕方がない事だと思うのだけれど。好きとか嫌いとか関係などない。そもそも──』

 うわぁ。めっちゃ図星つかれて焦っとるやん。早口だし、今もペラペラと言い訳を並べてるし、わかりやすいなぁ。

「えっと。とりあえず、闇命君の口調は隣に置いておいて」
『ちょっと』
「雨燕さん、さっき闇命君が言った通り。協力しあえるところは協力し、手を貸し合うようにしたい。それで、今後はお互いがやる事に口出しをしない。今はとりあえずそれでやっていきたいんですけど、駄目でしょうか?」

 一番楽だろう、これが。お互い意識しなくていいし、邪魔もされない。

「その意思を、変える気はないんだな」
「ないよ」
「この先、何があるかわからん。今よりもっと、凄惨な事が起きる可能性があってもか?」
「起こらないように努力するし、琴平や紅音もいるから大丈夫。俺は絶対に折れないし、諦める気は無い」

 この先、件がいるからと言って油断は出来ない。何が起きるのか分からないのが普通だし、何が起きても仲間がいれば怖くはなっ────い訳では無いけど、なんとなく大丈夫な気はする。

「…………はぁ、そうか。なら、後は、陰陽頭様の判断に任せる」
「っ。わ、わかった」

 もしかして、認めてくれた? だって、今、陰陽頭って言っていた。

「貴様らの意見を認めた訳では無い。勘違いだけはやめてもらおうか」
「あい……」

 ここの人達って全員、人の心を自然と読めるの? 夏楓と闇命君だけで十分だよ……。

『疲れた』
「確かに疲れたね。もう、寝たい……」

 あれ、なんか、安心したら急激に睡魔が襲ってきた……。やばい。瞼がおもっ──……

 ☆

 ……──っ。あれ、この暗い空間。床も壁も天井もない。俺だけ何故か発光している空間。

「安倍晴明さん?」
『よくわかったね。こんにちは』
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!!!」

 真後ろ待機はやめろよ!!!! しかも、なんでこんなに近いんだよ!! 耳元で囁くな!!!

『ふふっ。今回は大変だったね』
「全くですよ……。本当に、疲れました。死にそう」
『これからもまだまだ試練は続くでしょう。ここで倒れる訳にはいかないのでは?』
「大丈夫ですよ。もう、転生したばかりの俺ではありませんので」

 転生したばかりの俺は、何がなにやらわからず、流れのままに行動を起こしてきた。
 闇命君に振り回され、琴平には助けられ、紅音の暴走を止めて……。思い出してみると、俺、本当によく頑張ったなぁ。

 よく分からない世界で、俺の常識は通じず。はぁ、よく耐えれたな。

『思い耽っているところ申し訳ないけれど、次を考えておいた方が良いよ』
「現実が突き刺さる」
『目を背けるわけにはいかないからね』
「……そうですね。俺にとっては夢の中みたいな世界だけど、闇命君からしたら現実であるこの世界。一つ一つ、問題を解決していき、靖弥を取り戻し自由を手に入れる」
『そうだね。まずは一つ一つ解決していかなければ、君が壊れてしまう。今は、君を頼りにしているのだから、途中で放棄するのだけはやめてくれるかい? 何があっても、どんな事が待ち受けていようとも、絶対に諦めないでほしい』

 っ、なんで。晴明さんはそんなに悲しそうな顔をするんだろう。
 悲しげに瞳を揺らし、目線を下に向けている。口元には控えめに笑みが浮かべ、それがまたしても不安を煽る。
 胸がザワザワとする。何か、見えているのだろうか。

『これからも、私の子孫をよろしくお願いいたします』
「あ、はい。俺に出来る事は少ないと思いますが、全力は尽くします。それしか、俺に出来る事はありませんし」

 何事も全力。それが俺の出来る最大限だ。

『時間です』
「わかりました」

 いつものように周りが白くなっていく。もう、目を覚ます時間だ。

 現実で何が待ち受けていようと、俺は諦めない。俺の世界で当たり前の事を、この世界でも同じように、当たり前にするんだ。

『道を、外さないで。自分を信じ続けるんだよ、牧野優夏』
「──はい」

 晴明さんは最後に言い残すと、安心したように微笑み、そのまま姿を消した。

 俺も、眩い光に包まれ目を閉じ、浮遊感に襲われた。
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