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安倍晴明

地平線

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 ……──と、言う事がありました。

 ひとまず、闇命君との会話を雨燕さん達に伝えると、腕を組み考え込んでしまった。
 琴平と紅音は協力してくれるみたいだし、あと雨燕さんが賛成してくれると、今後ものすごく動きやすくなる。

「なるほど、話は理解した。だか、賛成はできん」
「分かってはおりました」
「なら、話は早いな」

 あ、やべ。思わず口から本音が出てしまった。しかも、しっかりと拾われてしまい、会話がここで終わろうとする。待って待って!! ここで終わらせる訳にはいかんのだよ!!

「賛成してくれなくてもいい! 協力してくれなくてもいい! でも、邪魔だけはしないで。くだ、さい……」

 あっぶねぇ。敬語が外れるところだったぁ。いや、多分雨燕さんには意味がないと思うけどさ、少しは印象を良くしたいじゃん。

「それは約束できんな。闇命には、陰陽寮に残ってもらわなければならん。出て行く事など許さぬぞ」

 うっ、やっぱりそうなるか。でも、ここで諦めるほど、今の俺は聞き分け良くないからな。ふんっ!!

 鋭い眼光を向けられて少し怯んでしまったけど、負ける訳にはいかないんだ。
 必ず、闇命君をしがらみから解き放ち、自由を手に入れ、他の陰陽寮の人達を助ける。

「でしたら、今回のくだんの件、俺達が無事に解決出来たら出て行くのを許してください!!」

 ☆

 話し合いだけで結構な時間が経っていたらしいな。日が沈み、夜空が広がってる。一つ一つが綺麗に輝いており、思わず見とれてしまう。

 夜空を見上げていると、後ろから琴平に話しかけられた。

「優夏、少しいいか?」
「あ、うん。良いよ。闇命君はどうする?」
『そこまで遠くに行かないのなら、僕は紅音といるよ』

 闇命君が言うと、琴平の後ろにいたであろう紅音が嬉しそうに目を輝かせ、手を伸ばしてきた。
 今は鼠姿だから、握りつぶさないでね?

 闇命君を紅音に渡し、俺は琴平の後ろを付いていく。
 村の中を通り、奥へと進んでいくと、裏庭みたい所に辿り着いた。

 そういえば、村の周りに立ち並ぶ森の中は何回か行ったけど、奥には行っていなかったな。
 村の奥は畑になっているのかぁ。野菜が沢山育てられている。大根とかキャベツとか。

 そんな畑の横を進んで行くと、冷たい風が顔に当たった。

「わっ!」

 いきなり突風? 遮るものがないからかぁ。咄嗟に閉じてしまった目を開けると、月が大きく俺達の頭上から照らしている。
 
 わぁ、地平線だ。

 奥の方に緑が生い茂っているのがか微かに見える。おそらく、あそこにも森があるのだろう。
 すごく綺麗だ。あの、地平線の先には何があるのか。違う村が、町が、陰陽寮があるのだろうか。気になる。行きたい。
 まだ知らないどこかに。そうしたら、この闇命君の体を侵している呪いの正体が分かるかもしれない。

 知りたい、行きたい──自由が欲しい。

「優夏」
「ん、なに?」

 そういえば、なんで琴平はいきなりここへ?

「俺は、闇命様が自由になるのなら力を貸す。だが、もしその体に傷をつけてみろ。その時は、俺達が優夏をどうするかわからん」
「それ、すごく気になってたんだよ。どうして琴平や紅音は、あそこまで闇命君を敬うの? 確かに天才ですごいけど、それでも琴平達よりはまだ生きていない。気になるんだけど……」

 琴平は顎に手を当て少し考え始めた。月の光が琴平の水色の髪を照らし、反射する。顔が整っている分、男の俺でも凄くかっこ良く見え羨ましい。女性が一目惚れしてしまってもおかしくないなぁ。

 まつ毛も長いし、頭を切れる。闇命君が絡むと途端にアホっぽくなるけど、そこを引いたとしてプラスしかない。くそっ、この世界は理不尽だ。いろんな意味で理不尽だ。

「そうだな。俺と紅音がなんで闇命様と共に行動しているのか……。少し長くなるかもしれない。それでもいいか?」
「うん、大丈夫だよ。気になるし、聞いたの俺だし」

 琴平は「そうか」と言葉をこぼし、ゆっくりと話し出してくれた。

「俺と紅音は義兄妹だったんだ」
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