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安倍晴明
演技
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『っ、待って、変な事をしようとしないで』
「変な事じゃないから別にいいよね」
『駄目に決まってるでしょ。というか、無理だよ。優夏がやろうとしているのは、この世界に革命を起こすなんて。不可能だ』
「へぇ、やっぱり感づいていたんだ。当たり前か、闇命君は俺の思考なんてなんでもわかるもんね」
闇命君の困ったような、焦ったような顔。多分だけど、闇命君は最初から分かっていたんだと思う。俺が、初めて安倍晴明と話した時。俺の思考は駄々洩れだったと思うし、話さなかったから闇命君も話さなかっただけ。
真っすぐと困惑している闇命君を見る。何を言って来ても俺の決意は変わらない。
この世界に革命を、陰陽寮に自由を、人々に笑顔を。俺は、すべてを叶えるんだ。
☆
「アホなのか?」
「馬鹿すぎる……」
「冷静になった方がいい」
今は日が沈み、夜になっている。
頭を冷やした雨燕さん達が戻ってきて、今は村長の家に集まっていた。その時に、闇命君と話した内容を言ったら、紅音は首を傾げながら、琴平は頭を抱え、雨燕さんは呆れ気味に返してきた。
まぁ、予想は出来ていたよ。否定されない方がおかしいと思っていたからね。
「闇命は了承したのか」
『するわけが無いでしょ。何を言っても意味がなかったんだよ。どんな言葉も聞く耳持ってくれないし、意見を変える気は無いみたい。だから、琴平達に止めてもらおうと思った』
闇命君の言葉は、どれも納得が出来るものだったし、やめた方がいいとも思ったけど。それでも変えたいと思う気持ちを抑える事が出来なかった。
だから、どんな言葉をかけられても、俺は意見を変える気は無い。例え、琴平達が俺に呆れ一人にしようとしても、俺はやり続ける。
「なら、こちらも反対し続ける。無茶な事をしようとするのはやめろ優夏。闇命様が偉大な方だとしても、難しい事ぐらいある」
「闇命君の体じゃなくても、俺はやるよ。だって、この世界は絶対におかしい」
言い切ると琴平は一瞬固唾を飲む。ここまで強く琴平の言葉を否定した事なんて無かったから、驚かせてしまったのだろうか。ごめん。でも、今回ばかりは本当に諦められないんだ。それだけはわかって欲しい。
「やると口にするのは簡単だ。だが、それを行動に移すのは簡単ではない。貴様でも、それはわかるのではないか?」
「分かりますよ。口にするだけなら簡単ですよね。でも、行動に移すのは難しい。本当にそう思います。だから、協力して欲しいなどは言いません。俺一人でも何とかしてみようと思います」
「ちょっと待て。貴様の体は、闇命様の体だぞ! そんな危険な事を、闇命様の体でさせるわけがないだろう!!」
雨燕さんは諭すように俺に言い、紅音は怒りを拳に込めている。
「闇命君が言うに、口寄せした魂を別の依代に移す事は可能、そう聞いたんだ。だから、俺の魂を他の依代に移す。そうすれば、闇命君の事を返す事は出来るよ、紅音」
「そんな事、聞いた事ありませんが……」
『口寄せは魂を自身の体に誘導し、憑依させる。その誘導を他の人にするだけだよ。僕なら簡単に出来る。優夏が何を言っても聞かないのなら、それを実行するよ』
呆れ気味に闇命君は三人に伝えた。
最初は困惑している三人だったが、今までの闇命君を知っているため、嘘を言っているとは思えないのだろう。信じ難いという顔を浮かべているけど、信じてくれないと困る。
「次の依代もしっかりと考えているのか」
「考えていますよ」
「嘘ではないだろうな」
「嘘だと思っていいですよ、信じてくれるなんて思っていませんので。ですが、どう思おうと邪魔をしないでください。それが、俺からのお願いです」
真っ直ぐと雨燕さんを見る。
絶対に、俺の邪魔はさせない。今まで、散々邪魔してきたんだから、今回だけは道を譲ってもらうよ。
…………闇命君のせいでぶち破ってきたけど。
・・・・・・・・・・・。
無言が続く。おそらく、みんなで俺を諦めさせようと頭の中で考えているのだろう。早く、諦めて欲しい。頷いてよ。
「…………はぁ。なら、俺達がやる事も決まっているんだな、優夏」
「え、俺達?」
琴平がいきなりよく分からないことを言い出す。なに。俺達って?
「決まっているだろ。俺達は、革命を起こすにあたって何をすればいい」
「そうだ。ワタシ達は何をする。役割や段取りなど。しっかりと決めねばならぬだろ」
…………え。まさか、俺達って……?
『もしかして、琴平達は優夏の無謀とも言える革命に力を貸そうとしているの?』
「おそらく、これ以上何を言っても意味は無いかと。なら、闇命様の体に傷をつけぬよう、我々がお守り致します」
『体の問題はいらないよ。だって、口寄せで他の依代に──』
「それ、嘘ですよね?」
あ、バレた。
琴平は薄く笑みを浮かべて、唇を尖らせている闇命君を見下ろす。まさか、バレたなんて……。
「それだけではなく、闇命様は優夏の意見に賛成しているように見えます。いや、賛成せざるを得なかった。と、言った方がよろしいでしょうか?」
『…………いつから気づいていたの』
「確信したのは先ほどですよ」
そこまで気づいていたなんて……。琴平、凄い。俺達の演技は、そんなに下手だっただろうか。
気づかれないと思ったんだけどなぁ。闇命君も俺も、結構演技力あったと思うんだけど……。
「詳しく話を聞かせなさい」
この場で唯一、琴平の言葉を理解出来ていない雨燕さんが、少し慌てた様子で俺達に問いかけてきた。
確かに、バレてしまったのなら仕方がない。教えるしかないか。
俺が初めて、闇命君に口で勝てた出来事を、めっちゃ詳しく──ふふっ。
『笑うな気持ち悪い』
「スイマセンデシタ」
「変な事じゃないから別にいいよね」
『駄目に決まってるでしょ。というか、無理だよ。優夏がやろうとしているのは、この世界に革命を起こすなんて。不可能だ』
「へぇ、やっぱり感づいていたんだ。当たり前か、闇命君は俺の思考なんてなんでもわかるもんね」
闇命君の困ったような、焦ったような顔。多分だけど、闇命君は最初から分かっていたんだと思う。俺が、初めて安倍晴明と話した時。俺の思考は駄々洩れだったと思うし、話さなかったから闇命君も話さなかっただけ。
真っすぐと困惑している闇命君を見る。何を言って来ても俺の決意は変わらない。
この世界に革命を、陰陽寮に自由を、人々に笑顔を。俺は、すべてを叶えるんだ。
☆
「アホなのか?」
「馬鹿すぎる……」
「冷静になった方がいい」
今は日が沈み、夜になっている。
頭を冷やした雨燕さん達が戻ってきて、今は村長の家に集まっていた。その時に、闇命君と話した内容を言ったら、紅音は首を傾げながら、琴平は頭を抱え、雨燕さんは呆れ気味に返してきた。
まぁ、予想は出来ていたよ。否定されない方がおかしいと思っていたからね。
「闇命は了承したのか」
『するわけが無いでしょ。何を言っても意味がなかったんだよ。どんな言葉も聞く耳持ってくれないし、意見を変える気は無いみたい。だから、琴平達に止めてもらおうと思った』
闇命君の言葉は、どれも納得が出来るものだったし、やめた方がいいとも思ったけど。それでも変えたいと思う気持ちを抑える事が出来なかった。
だから、どんな言葉をかけられても、俺は意見を変える気は無い。例え、琴平達が俺に呆れ一人にしようとしても、俺はやり続ける。
「なら、こちらも反対し続ける。無茶な事をしようとするのはやめろ優夏。闇命様が偉大な方だとしても、難しい事ぐらいある」
「闇命君の体じゃなくても、俺はやるよ。だって、この世界は絶対におかしい」
言い切ると琴平は一瞬固唾を飲む。ここまで強く琴平の言葉を否定した事なんて無かったから、驚かせてしまったのだろうか。ごめん。でも、今回ばかりは本当に諦められないんだ。それだけはわかって欲しい。
「やると口にするのは簡単だ。だが、それを行動に移すのは簡単ではない。貴様でも、それはわかるのではないか?」
「分かりますよ。口にするだけなら簡単ですよね。でも、行動に移すのは難しい。本当にそう思います。だから、協力して欲しいなどは言いません。俺一人でも何とかしてみようと思います」
「ちょっと待て。貴様の体は、闇命様の体だぞ! そんな危険な事を、闇命様の体でさせるわけがないだろう!!」
雨燕さんは諭すように俺に言い、紅音は怒りを拳に込めている。
「闇命君が言うに、口寄せした魂を別の依代に移す事は可能、そう聞いたんだ。だから、俺の魂を他の依代に移す。そうすれば、闇命君の事を返す事は出来るよ、紅音」
「そんな事、聞いた事ありませんが……」
『口寄せは魂を自身の体に誘導し、憑依させる。その誘導を他の人にするだけだよ。僕なら簡単に出来る。優夏が何を言っても聞かないのなら、それを実行するよ』
呆れ気味に闇命君は三人に伝えた。
最初は困惑している三人だったが、今までの闇命君を知っているため、嘘を言っているとは思えないのだろう。信じ難いという顔を浮かべているけど、信じてくれないと困る。
「次の依代もしっかりと考えているのか」
「考えていますよ」
「嘘ではないだろうな」
「嘘だと思っていいですよ、信じてくれるなんて思っていませんので。ですが、どう思おうと邪魔をしないでください。それが、俺からのお願いです」
真っ直ぐと雨燕さんを見る。
絶対に、俺の邪魔はさせない。今まで、散々邪魔してきたんだから、今回だけは道を譲ってもらうよ。
…………闇命君のせいでぶち破ってきたけど。
・・・・・・・・・・・。
無言が続く。おそらく、みんなで俺を諦めさせようと頭の中で考えているのだろう。早く、諦めて欲しい。頷いてよ。
「…………はぁ。なら、俺達がやる事も決まっているんだな、優夏」
「え、俺達?」
琴平がいきなりよく分からないことを言い出す。なに。俺達って?
「決まっているだろ。俺達は、革命を起こすにあたって何をすればいい」
「そうだ。ワタシ達は何をする。役割や段取りなど。しっかりと決めねばならぬだろ」
…………え。まさか、俺達って……?
『もしかして、琴平達は優夏の無謀とも言える革命に力を貸そうとしているの?』
「おそらく、これ以上何を言っても意味は無いかと。なら、闇命様の体に傷をつけぬよう、我々がお守り致します」
『体の問題はいらないよ。だって、口寄せで他の依代に──』
「それ、嘘ですよね?」
あ、バレた。
琴平は薄く笑みを浮かべて、唇を尖らせている闇命君を見下ろす。まさか、バレたなんて……。
「それだけではなく、闇命様は優夏の意見に賛成しているように見えます。いや、賛成せざるを得なかった。と、言った方がよろしいでしょうか?」
『…………いつから気づいていたの』
「確信したのは先ほどですよ」
そこまで気づいていたなんて……。琴平、凄い。俺達の演技は、そんなに下手だっただろうか。
気づかれないと思ったんだけどなぁ。闇命君も俺も、結構演技力あったと思うんだけど……。
「詳しく話を聞かせなさい」
この場で唯一、琴平の言葉を理解出来ていない雨燕さんが、少し慌てた様子で俺達に問いかけてきた。
確かに、バレてしまったのなら仕方がない。教えるしかないか。
俺が初めて、闇命君に口で勝てた出来事を、めっちゃ詳しく──ふふっ。
『笑うな気持ち悪い』
「スイマセンデシタ」
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