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安倍晴明
三手
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とりあえず話を聞くため、地下室から外に出て、村長が住む家へと向かう。
外は朝日が昇り始め明るくなっていた。時間で言うと、朝の四時や五時ぐらいかな。
村長がみんなを先導し、俺達を案内してくれているんだけど。いやぁ、ほんと。ここに紅音がいなくて良かったよ。
村長がチラチラと、後ろを歩いている琴平を見ているんだよなぁ。しかも、頬は少し染まってる……。
いや、いいんじゃないかな。うん。女性らしくていいと思うよ。
『僕の顔で嫉妬心向き出しなのやめてくれる?』
「闇命君は多分、性格を何とかすれば琴平に負けないイケメンになると思うんだよ俺」
『性格と顔は完璧だから』
「どこから出てくるんだよその自信」
『僕だからだよ』
「際ですか……」
でも、鏡で見た感じと半透明の闇命君を見ていると、そこまで顔は悪くないと思うんだよなぁ。
子供特有の可愛らしい輪郭に、猫っ毛の茶髪、オレンジ色のぱっちりな両目。かわいい感じに成長しそうなんだよ。
「着きました」
「あ、ありがとう」
おぉ、村長なだけあって、長屋ではないみたいだな。
少し離れている場所に位置する建物。なんか、なんて名前の建物なんだろう。高床住居とかって社会の教科書に書いてあった気がする。
床を地面より高く構築されてる。入り口には階段、木製の扉。
階段で二階に行くのか。地震が起きたらやばない?? 柱一本でも折れたら危ない建物だなぁ。
案内されるまま中に入る。
「なんか、凄いなぁ」
中はそこまで広くないけど、板で全てが作られていた。
電球もあるから中は明るいし、窓から太陽の光が差し込んで床を照らしている。壁側に布団が畳まれ、棚と机が控えめに置かれていた。
普通に靴のまま上がってるけどいいのかなぁ。外国とかだったら靴を履きながら過ごしているみたいだけど、生憎俺は日本人。違和感が半端ない。
「では。まず君達がこの村を訪れた理由を聞いてもよろしいですか」
「あ、はい」
みんなの顔が見えるように円になり、その場に座り話し合いを始めた。
☆
「……──なるほど。元々件について調べたく、この村を訪れたという事ですね。その際、漆家についても名前を知ったと」
「そうなんだ。件はもう亡くなってしまったから気にしなくていいと思うけど、漆家についてはどうしてもほっときたくなくて……」
「ですが、漆家の陰陽頭である魔魅様は今外出中な為、お会いできませんよ?」
「マジかよ……」
まさかの外出中。嘘だろ。
いや、でも任務か何かでこの村から離れる可能性もあるのか。安倍家の陰陽頭も外に出歩く時があるみたいだしな。
「いつ頃帰ってくるかはわからんのか」
「いつもならご報告があるのですが、今回ばかりはなんの知らせも来ておりません。緊急だったのか、他に理由があるのか……。今、魔魅様がどこにいるのか分からないのです」
目を伏せ、村長は心配そうに言う。
普段とは違う行動を行っているって事か。それは、気になるな。もしかしたら事件に巻き込まれている可能性があるし。あんな子供なら、簡単に誘拐とか出来そうだよね。
「それに、件の話ですが。死んだからと言って、このまま終わりではありませんよ」
「…………蘇るんだっけ」
そうだ、件は蘇るんだ。何度でも。だから、闇命君も関わるの渋っていたんだよね。
事件を解決するためにこの村に来たのに、どんどん謎が深まるばかりだなぁ。
いや、深まっているんじゃない、何一つ進展していないんだ。
「ここから先は二手に別れた方が良さそうだな」
雨燕さんが考えながら案を出してくれた。
「あぁ、確かに。もう、ここまで来ると一つ一つ解決なんて考えられないわ」
「なら、まずはどのように分けるかになりますね」
「うむ」
ペア分けか。正直、琴平には休んでほしいけど、ここで言ってもおそらく受け入れてくれなさそう。やる気満々だし。せめて紅音だけでも休んではくれないだろうか、足の打撲は無理すると悪化すると歩けなくなるかもしれない。歩くだけでも辛そうだったし。
「僕も協力しよう。魔魅様が心配なので」
「なら、村長とやらは陰陽頭の方に行ってもらおう。ワシもそちら側に着く」
あ、なら俺と琴平がペアかな。それなら紅音は休んでもらう事は可能かも。
『三手に分かれるって事で、僕達は違う所を調べさせてもらうよ』
「………………達?」
鼠姿だった闇命君がいきなり半透明になり、床へと座りそんな事を口にしやがった。
あれじゃん。”達”ってさ、闇命君と俺は一定の距離は離れられないはずだし、絶対にそうじゃん。え、何を考えてるの?
「え、ねず……え?」
『僕は安倍家の陰陽師。天才の名を持っている安倍闇命。今は訳あってこの姿だけど、気にしないで』
「あ、え? はい」
…………自己紹介をした?? え、あの闇命君が、自ら自己紹介? 頭打った?
『噛むよ』
「すいませんでした」
闇命君、君。琴平達を休ませる気ある?
外は朝日が昇り始め明るくなっていた。時間で言うと、朝の四時や五時ぐらいかな。
村長がみんなを先導し、俺達を案内してくれているんだけど。いやぁ、ほんと。ここに紅音がいなくて良かったよ。
村長がチラチラと、後ろを歩いている琴平を見ているんだよなぁ。しかも、頬は少し染まってる……。
いや、いいんじゃないかな。うん。女性らしくていいと思うよ。
『僕の顔で嫉妬心向き出しなのやめてくれる?』
「闇命君は多分、性格を何とかすれば琴平に負けないイケメンになると思うんだよ俺」
『性格と顔は完璧だから』
「どこから出てくるんだよその自信」
『僕だからだよ』
「際ですか……」
でも、鏡で見た感じと半透明の闇命君を見ていると、そこまで顔は悪くないと思うんだよなぁ。
子供特有の可愛らしい輪郭に、猫っ毛の茶髪、オレンジ色のぱっちりな両目。かわいい感じに成長しそうなんだよ。
「着きました」
「あ、ありがとう」
おぉ、村長なだけあって、長屋ではないみたいだな。
少し離れている場所に位置する建物。なんか、なんて名前の建物なんだろう。高床住居とかって社会の教科書に書いてあった気がする。
床を地面より高く構築されてる。入り口には階段、木製の扉。
階段で二階に行くのか。地震が起きたらやばない?? 柱一本でも折れたら危ない建物だなぁ。
案内されるまま中に入る。
「なんか、凄いなぁ」
中はそこまで広くないけど、板で全てが作られていた。
電球もあるから中は明るいし、窓から太陽の光が差し込んで床を照らしている。壁側に布団が畳まれ、棚と机が控えめに置かれていた。
普通に靴のまま上がってるけどいいのかなぁ。外国とかだったら靴を履きながら過ごしているみたいだけど、生憎俺は日本人。違和感が半端ない。
「では。まず君達がこの村を訪れた理由を聞いてもよろしいですか」
「あ、はい」
みんなの顔が見えるように円になり、その場に座り話し合いを始めた。
☆
「……──なるほど。元々件について調べたく、この村を訪れたという事ですね。その際、漆家についても名前を知ったと」
「そうなんだ。件はもう亡くなってしまったから気にしなくていいと思うけど、漆家についてはどうしてもほっときたくなくて……」
「ですが、漆家の陰陽頭である魔魅様は今外出中な為、お会いできませんよ?」
「マジかよ……」
まさかの外出中。嘘だろ。
いや、でも任務か何かでこの村から離れる可能性もあるのか。安倍家の陰陽頭も外に出歩く時があるみたいだしな。
「いつ頃帰ってくるかはわからんのか」
「いつもならご報告があるのですが、今回ばかりはなんの知らせも来ておりません。緊急だったのか、他に理由があるのか……。今、魔魅様がどこにいるのか分からないのです」
目を伏せ、村長は心配そうに言う。
普段とは違う行動を行っているって事か。それは、気になるな。もしかしたら事件に巻き込まれている可能性があるし。あんな子供なら、簡単に誘拐とか出来そうだよね。
「それに、件の話ですが。死んだからと言って、このまま終わりではありませんよ」
「…………蘇るんだっけ」
そうだ、件は蘇るんだ。何度でも。だから、闇命君も関わるの渋っていたんだよね。
事件を解決するためにこの村に来たのに、どんどん謎が深まるばかりだなぁ。
いや、深まっているんじゃない、何一つ進展していないんだ。
「ここから先は二手に別れた方が良さそうだな」
雨燕さんが考えながら案を出してくれた。
「あぁ、確かに。もう、ここまで来ると一つ一つ解決なんて考えられないわ」
「なら、まずはどのように分けるかになりますね」
「うむ」
ペア分けか。正直、琴平には休んでほしいけど、ここで言ってもおそらく受け入れてくれなさそう。やる気満々だし。せめて紅音だけでも休んではくれないだろうか、足の打撲は無理すると悪化すると歩けなくなるかもしれない。歩くだけでも辛そうだったし。
「僕も協力しよう。魔魅様が心配なので」
「なら、村長とやらは陰陽頭の方に行ってもらおう。ワシもそちら側に着く」
あ、なら俺と琴平がペアかな。それなら紅音は休んでもらう事は可能かも。
『三手に分かれるって事で、僕達は違う所を調べさせてもらうよ』
「………………達?」
鼠姿だった闇命君がいきなり半透明になり、床へと座りそんな事を口にしやがった。
あれじゃん。”達”ってさ、闇命君と俺は一定の距離は離れられないはずだし、絶対にそうじゃん。え、何を考えてるの?
「え、ねず……え?」
『僕は安倍家の陰陽師。天才の名を持っている安倍闇命。今は訳あってこの姿だけど、気にしないで』
「あ、え? はい」
…………自己紹介をした?? え、あの闇命君が、自ら自己紹介? 頭打った?
『噛むよ』
「すいませんでした」
闇命君、君。琴平達を休ませる気ある?
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