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安倍晴明
子供
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「僕が……、この、僕が、あんな女に……。ありえない……有り得てはならない……」
「無念……」
三人と一匹で地下室に走ると、俺達が閉じ込められていた牢屋に縛り付けられている二人を発見。
村長は両手首だけではなく、足まで縛られ、負けた事に絶望したような顔を浮かべている。
看守の方は、もうぐるぐる巻き。
足首を縛りつけられ、胴体もぐっるぐる。全く身動き取れない状態になっていた。顔が痒くても、トイレに行きたくても無理な状態だなぁ……。
この状態の二人を、琴平と紅音は放置していたという事か。大怪我はないように見えるけど、切り傷や頬の腫れ。無傷では無いね。
「…………琴平」
「………………はい」
「これはどういう事か。簡潔に、分かりやすく、正直に、答えて」
「……………………はい」
後ろにいる琴平に振り向き、極力冷静に問いかける。
どんな気持ちで言っているのか察した琴平は顔を青くして、冷や汗を流しながらも、小さな声で返事してくれた。
良かった、教えてくれるらしい。いやぁ、こういう時は琴平に聞くのが一番だね。うんうん。
俺がこの時どんな顔をしていたか分からないけど、琴平だけではなく、この後雨燕さんにも「今まで、闇命すらした事がない顔をしていたぞ」と、少し目線を逸らされながら言われた。
そんなの知らない、悪いのは琴平と紅音だもん。
☆
「僕は、僕は村長……。負けるなど、ありえん……」
「無念……」
縄を解いたにもかかわらず、村長は頭を抱え何度も何度も「ありえん」と呟き、看守はうつ伏せのまま動かない。
ちなみに、琴平から少し事情を聞いたのだけれど。やっぱりこの二人、相当強かったらしい。村長と看守は一技之長を使用したみたいで、一筋縄ではいかなかったみたい。
村長の属性は氷、看守の属性は影、らしい。いや、氷は分かるけど、影って何?
「ま、まぁ、いいや。えっと。村長さん、大丈夫ですか?」
「…………君達は、何者だ。僕が、僕達が負けるわけが無い。負けるわけがないんだもん!!」
もん?!!! え、なんで涙目なんですか?! なんか、子供みたいにいじけてしまったのだが……。
「え、えっと……。一応俺達は陰陽師なんですが、知っていますか?」
「陰陽師ですか? 魔魅様のお知り合い?」
魔魅様? お知り合い……。あ!!
「漆家の、今の陰陽頭か」
確か、名前が漆魔魅。地下室の資料にそう書いてあったはず。知り合いという訳では無いけど、同じ職種で働く仲間ではあるか。
「ねぇ、漆家の陰陽頭に会いたいんだけど、どこにいるか教えてくれない?」
「…………教えん」
うわぁ、完全に不貞腐れてる。頬をふくらませながらそっぽを向かないでよ。絶対に元の俺より年齢は上のはずなのに、なんでこんなに子供のような拗ね方を……。
何かを与えないと、教えてくれないのかなぁ。どうしよう、クッキーとかあげる? いや、持ってないや。
「あれ、琴平?」
琴平がいきなり村長に向かって歩き出した。何をするつもりだろうか。
「なんだ。何を言われようと教えるつもりはありませんよ」
あ、少し口調が戻ってきてる。冷静になってきたのかな。
「言わないのであれば──」
え、その後に続く行動が怖いんだけど。ちょっ、なんで琴平の式神である氷柱女房を出してるの?! 何をする気なのやめて!!
「ことっ──」
何をするか分からない琴平を止めようと、急いで手を伸ばしたのだが──え?
「これで勘弁してくれると助かる。氷だからすぐに溶けてしまうが、そこは許してくれ」
「これは、お花?」
ん? 琴平の手には一輪の花。氷で作られたコスモスが握られていた。細かいところまでしっかりと作られてる。うわぁ、綺麗。
「他に欲しい物があるのなら作る、氷で申し訳ないけどな。今はこんな物しか準備できん」
「…………」
琴平から差し出された一輪の花を受け取り、村長はまじまじと見ている。
…………なんで、村長さん。貴方、なんで頬を染めているのですか? しかも、なんか、乙女みたいな表情を浮かべて!!!!!
貴方はそういう人じゃないでしょ?! 男になんて負けない! とかそういう事を言う人じゃないの?! 琴平のイケメンオーラに負けんじゃねぇ!!!!
「話してくれるか?」
琴平の問いかけに顔を俯かせる。
いや、否定しろ。否定してくれ、頼む。村長さん。そこは自身の意志を貫き通そう。大丈夫だ。貴方ならいける。大丈夫だ。だから、琴平の問いかけは否定しろ。
否定してくれぇぇええええ!!!!
「……………し、仕方がないから、教えてやりますよ」
「そうか。礼を言う。良かったな優夏、教えて貰えっ──どのような顔だそれ」
「ナンデモアリマセン」
……………………この世に生きるイケメンよ、全て滅びやがれこんちくしょうがぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!
「無念……」
三人と一匹で地下室に走ると、俺達が閉じ込められていた牢屋に縛り付けられている二人を発見。
村長は両手首だけではなく、足まで縛られ、負けた事に絶望したような顔を浮かべている。
看守の方は、もうぐるぐる巻き。
足首を縛りつけられ、胴体もぐっるぐる。全く身動き取れない状態になっていた。顔が痒くても、トイレに行きたくても無理な状態だなぁ……。
この状態の二人を、琴平と紅音は放置していたという事か。大怪我はないように見えるけど、切り傷や頬の腫れ。無傷では無いね。
「…………琴平」
「………………はい」
「これはどういう事か。簡潔に、分かりやすく、正直に、答えて」
「……………………はい」
後ろにいる琴平に振り向き、極力冷静に問いかける。
どんな気持ちで言っているのか察した琴平は顔を青くして、冷や汗を流しながらも、小さな声で返事してくれた。
良かった、教えてくれるらしい。いやぁ、こういう時は琴平に聞くのが一番だね。うんうん。
俺がこの時どんな顔をしていたか分からないけど、琴平だけではなく、この後雨燕さんにも「今まで、闇命すらした事がない顔をしていたぞ」と、少し目線を逸らされながら言われた。
そんなの知らない、悪いのは琴平と紅音だもん。
☆
「僕は、僕は村長……。負けるなど、ありえん……」
「無念……」
縄を解いたにもかかわらず、村長は頭を抱え何度も何度も「ありえん」と呟き、看守はうつ伏せのまま動かない。
ちなみに、琴平から少し事情を聞いたのだけれど。やっぱりこの二人、相当強かったらしい。村長と看守は一技之長を使用したみたいで、一筋縄ではいかなかったみたい。
村長の属性は氷、看守の属性は影、らしい。いや、氷は分かるけど、影って何?
「ま、まぁ、いいや。えっと。村長さん、大丈夫ですか?」
「…………君達は、何者だ。僕が、僕達が負けるわけが無い。負けるわけがないんだもん!!」
もん?!!! え、なんで涙目なんですか?! なんか、子供みたいにいじけてしまったのだが……。
「え、えっと……。一応俺達は陰陽師なんですが、知っていますか?」
「陰陽師ですか? 魔魅様のお知り合い?」
魔魅様? お知り合い……。あ!!
「漆家の、今の陰陽頭か」
確か、名前が漆魔魅。地下室の資料にそう書いてあったはず。知り合いという訳では無いけど、同じ職種で働く仲間ではあるか。
「ねぇ、漆家の陰陽頭に会いたいんだけど、どこにいるか教えてくれない?」
「…………教えん」
うわぁ、完全に不貞腐れてる。頬をふくらませながらそっぽを向かないでよ。絶対に元の俺より年齢は上のはずなのに、なんでこんなに子供のような拗ね方を……。
何かを与えないと、教えてくれないのかなぁ。どうしよう、クッキーとかあげる? いや、持ってないや。
「あれ、琴平?」
琴平がいきなり村長に向かって歩き出した。何をするつもりだろうか。
「なんだ。何を言われようと教えるつもりはありませんよ」
あ、少し口調が戻ってきてる。冷静になってきたのかな。
「言わないのであれば──」
え、その後に続く行動が怖いんだけど。ちょっ、なんで琴平の式神である氷柱女房を出してるの?! 何をする気なのやめて!!
「ことっ──」
何をするか分からない琴平を止めようと、急いで手を伸ばしたのだが──え?
「これで勘弁してくれると助かる。氷だからすぐに溶けてしまうが、そこは許してくれ」
「これは、お花?」
ん? 琴平の手には一輪の花。氷で作られたコスモスが握られていた。細かいところまでしっかりと作られてる。うわぁ、綺麗。
「他に欲しい物があるのなら作る、氷で申し訳ないけどな。今はこんな物しか準備できん」
「…………」
琴平から差し出された一輪の花を受け取り、村長はまじまじと見ている。
…………なんで、村長さん。貴方、なんで頬を染めているのですか? しかも、なんか、乙女みたいな表情を浮かべて!!!!!
貴方はそういう人じゃないでしょ?! 男になんて負けない! とかそういう事を言う人じゃないの?! 琴平のイケメンオーラに負けんじゃねぇ!!!!
「話してくれるか?」
琴平の問いかけに顔を俯かせる。
いや、否定しろ。否定してくれ、頼む。村長さん。そこは自身の意志を貫き通そう。大丈夫だ。貴方ならいける。大丈夫だ。だから、琴平の問いかけは否定しろ。
否定してくれぇぇええええ!!!!
「……………し、仕方がないから、教えてやりますよ」
「そうか。礼を言う。良かったな優夏、教えて貰えっ──どのような顔だそれ」
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……………………この世に生きるイケメンよ、全て滅びやがれこんちくしょうがぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!
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