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安倍晴明

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 二人は看守、村長相手に一歩も引かずにやり合っている。これなら、確かに俺なんて居なくても問題なさそう。

『言ったでしょ。だから、早く行くよ』
「う、うん……」

 二人を、信じよう。

 今は、雨燕さんと合流して、井戸であった出来事と、この村の規定について話す。

 牢屋があるのは地下室。ジメッとした空気、周りは明るい訳では無いから気をつけながら上へと続く道を探す。村長が来た道を進めば階段か何かあるはず。

「って、いつの間に鼠姿に。しかも、肩の上に移動しているんだね闇命君」
『走るのは君の仕事でしょ』
「どういう事だよ!!」

 走り続けていると、上へと続く階段を見つけた。やっぱり、ここから村長は来たんだ。

 駆けあがると、赤色が階段を照らしている。もう夕暮れか。暗い所にいたから、夕暮れの光でも目が痛い。眩しいな。

「ここどこだ。俺達が地下へと連れられた時は、目元を隠されていたからわかんない……」
『おそらく、村を囲っている森だろうね。それにしても、なんか気持ち悪い空気が漂っていて吐きそう』
「うん、なんか。重たい。ここだけ重力が違うのか?」
『そんなわけ──』

 ん? 闇命君が一つの場所を見て固まってしまった。どうしたんだろうか。

 あれって……靖弥? 木の上に靖弥の姿。

「せっ──」
『声を出すなバカ』
「ばっ………」

 思わず駆け出そうとしたら、またしても闇命君に止められてしまった。
 俺が少し動いてしまった事で人の気配を感じたのか、靖弥が見ていた村から目を離してしまった。周りを見てる。

 体を小さくし、草木に隠れ見つからないようにしないと。いや、話したいんだけど、多分俺の言葉なんて聞く耳持ってくれないだろう。今話すのは得策じゃないか。

 俺達を見つけられず、靖弥は諦め村の観察をまた始めた。そこで村を見て、何をしているんだ?

「一体なにを──がっ!!」

 いきなり項辺りに強い衝撃、何が起きて……。

「っ、あ、しや、ど――――…………」
 
 ――――――――バタン

 ☆

「道満様。なにかっ──」
「セイヤよ。気配に気づかないとは、どういう事なんだい? もう、ヘマをしないと約束したはずなのだが」
「申し訳ありません。一瞬気配を感じたのですが、見つけられませんでした」

 抑揚のない言葉を交わし、セイヤは木の上から飛び降り道満に近付いて行く。

 まずい。さすがに気づかなかった。

「これはこれは、安倍晴明の子孫だね。私は蘆屋道満だ。よろしく頼むよ」

 気持ち悪い笑みを浮かべながら、鼠姿の僕に手を伸ばしてくる。不快だ。どす黒い何かを感じる。こいつには、近づいてはいけない。

「まぁ、今の君には興味無いねぇ。私が興味あるのは──」

 まずいな、今の僕じゃ何も出来ない。体に戻ったところで気絶しているから意味なんてない。
 どうする、どうやってこの場を切り抜けようか。せめて、百目とか出しておくんだったな。

 少しずつ近づいてくる道満と距離をとりたくても、僕の体を運ぶ事が出来ないからどうする事も……。

 ────ん? なんだ。セイヤって奴が口パクで何か言ってる?

 ”う・え”

 上? 上に何が──あれは……。ちっ、一か八か。あいつに賭けるしかない!!!

 道満の両足の下を潜り一本の木に。セイヤが僕を捕まえようと手を伸ばしてくるけど、それを横に避け木に登る。

 鼠の利点は、小回りが利く事と早く走れる事だな。

「ほぉ。自分の体を捨てたか」
『そんなわけないだろ』

 木の上に駆け上がり、枝の上に到着。
 多分これは、侵入者を防ぐ為だろうな。鈴が葉に隠れ備え付けられてる。これはしっかり見ないと気付かない。

 鼠の姿だから上手く出来ないけど、鼻で鈴を鳴らしまくる!!!

 チリンチリンチリン!!

 おりゃぁぁああ!!!
 って、あいつの変な掛け声が移っちゃったよ!!!

「鈴?」

 道満が僕を見上げてくる。見たところで僕に届かないだろう。それか木を登ってくるか? 出来ないだろ。

 鈴を鳴らしまくっていると、セイヤが木を蹴り、駆け上がってきた。重力お構い無しだな。
 って、まずい!! このまま捕まってしまえば何も出来なくなる。

 飛び降りようと枝から跳んだけど間に合わず、捕まっちまった。でも、タダでは捕まらないよ!

『ガブッ!!』
「っ!!」

 思いっきり噛んでやると、セイヤが痛みで体を傾かせる。その時、鈴の音が鳴り響き、森周辺にうるさいほどの鈴の音が響き渡った。
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