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死絡村
気持ち悪い
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それからは何も無く馬車が進み、目的の場である死絡村へと辿り着いた。
…………なんだろう。やっぱり、この村は普通じゃない。それは、俺以外の三人も気づいているらしく、村の出入口で立ち止まっている。
見た目は普通の村。
門が建てられ、塀が左右に続いている。中は江戸時代を思わせるような物で、社会の教科書などに載っていた長屋が作られていた。
村人達は全員着物や袴を身に付け、手には洗濯物が入っている桶や、野菜などを抱えていた。
闇命君が言う通り、表面上は平和な村だ。でも、違和感を感じる。不吉な何かが起きる……いや、もう、起きている。そんな気がする。
「琴平よ。この村はここまで荒れていたか?」
「いえ、ここまでではなかったです。俺が来た時には小さな妖でしたし、それさえ浄化すれば元の村に戻りました」
「なるほどな」
そういえば、琴平は来た事があるんだっけ。任務か何かで。
一体、この村で何があったんだ。いや、この村だけの出来事ではない。
あくまでこの村は巻き込まれた。そう考えた方がいいかもしれない。まぁ、これは俺の勘だから、理由も何も無いけど。
「ひとまず入りましょう」
「うむ」
琴平と雨燕さんが先行して入り、俺達は後ろを付いて行く形で村の中へ。
「…………ん?」
「どうした」
「いや、なんか……」
一歩足を踏み入れると、さっきより大きな違和感が生まれたような気がした。紅音に問いかけられたけど、この違和感に名前がつけられない。本当に、ただの違和感なんだ。
足が一瞬、重くなった気がする。
「…………いや、なんでもないよ。置いていかれないように行こう」
「…………あぁ」
深く聞かず、紅音は付いてきてくれた。
今回も前回同様、すぐに終わらないな。怪我だけには気をつけて進もう。
☆
「来たか。安倍晴明の末裔よ」
「…………」
死絡村の周りは緑で覆われており、風が吹く度葉音が響き耳に入ってくる。
立ち並ぶ樹木の上、葉に隠され二人の男性が村の中を観察していた。
一人は、安倍晴明を殺したと思われている人物、蘆屋道満の子孫、蘆屋藍華のはずだが。今の見た目は、顔にシワがあり、口ひげが頬骨が外ハネしている年老いた老人。
「セイヤ。前みたいな事は許さぬぞ。今度こそ末裔を──殺せ」
重く伸し掛る声と、殺気の込められた言葉が風と共に響く。
セイヤは口答えなど出来る立場でもないため、頷くしかない。その顔は何を考えているのかわからず、瞳は黒く濁っている。
「わかりました」
一言だけ呟き、セイヤはその場から姿を消した。そんな彼の姿を蘆屋藍華は、口が裂けそうになるほど横に広げ、大きな笑みを零した。
「必ず、殺し尽くしてやるぞ。晴明よ」
☆
「っ!! 今の気配──」
今は村の中、色んな人に聞き取り調査中。そこまで有力な情報が手に入れられない中、黒く渦巻くような気配が体に突き刺さった。
「どうかしました、闇命様」
「…………いや、なんでもないよ」
琴平は気づいていないのか。雨燕さんは少し周りを気にしている様子だ。おそらく、気づいたんだ。この、どす黒い気配。なんなんだこれ。
体にまとわりつくような気持ちの悪い感覚。今はもう大分薄くなってしまったけど、まだ感覚だけは体に残っている。
両腕を摩って気持ちの悪い感覚を払い落とそうとしたけど、無駄な事だった。
「闇命君、今の」
『うん。ヒザマの時と同じ感覚があった。もしかしたらいるかもしれないね』
いるかもしれない、俺の友人。また、話が出来るのか。出来る、状況なのか。
「何かございましたか、闇命様」
「あ、い、いや。なんでもないよ」
琴平に言ってしまうと困らせてしまうし、無駄に悩み事を増やすわけにもいかない。今は、聞きこみ調査に集中しよう。
…………なんだろう。やっぱり、この村は普通じゃない。それは、俺以外の三人も気づいているらしく、村の出入口で立ち止まっている。
見た目は普通の村。
門が建てられ、塀が左右に続いている。中は江戸時代を思わせるような物で、社会の教科書などに載っていた長屋が作られていた。
村人達は全員着物や袴を身に付け、手には洗濯物が入っている桶や、野菜などを抱えていた。
闇命君が言う通り、表面上は平和な村だ。でも、違和感を感じる。不吉な何かが起きる……いや、もう、起きている。そんな気がする。
「琴平よ。この村はここまで荒れていたか?」
「いえ、ここまでではなかったです。俺が来た時には小さな妖でしたし、それさえ浄化すれば元の村に戻りました」
「なるほどな」
そういえば、琴平は来た事があるんだっけ。任務か何かで。
一体、この村で何があったんだ。いや、この村だけの出来事ではない。
あくまでこの村は巻き込まれた。そう考えた方がいいかもしれない。まぁ、これは俺の勘だから、理由も何も無いけど。
「ひとまず入りましょう」
「うむ」
琴平と雨燕さんが先行して入り、俺達は後ろを付いて行く形で村の中へ。
「…………ん?」
「どうした」
「いや、なんか……」
一歩足を踏み入れると、さっきより大きな違和感が生まれたような気がした。紅音に問いかけられたけど、この違和感に名前がつけられない。本当に、ただの違和感なんだ。
足が一瞬、重くなった気がする。
「…………いや、なんでもないよ。置いていかれないように行こう」
「…………あぁ」
深く聞かず、紅音は付いてきてくれた。
今回も前回同様、すぐに終わらないな。怪我だけには気をつけて進もう。
☆
「来たか。安倍晴明の末裔よ」
「…………」
死絡村の周りは緑で覆われており、風が吹く度葉音が響き耳に入ってくる。
立ち並ぶ樹木の上、葉に隠され二人の男性が村の中を観察していた。
一人は、安倍晴明を殺したと思われている人物、蘆屋道満の子孫、蘆屋藍華のはずだが。今の見た目は、顔にシワがあり、口ひげが頬骨が外ハネしている年老いた老人。
「セイヤ。前みたいな事は許さぬぞ。今度こそ末裔を──殺せ」
重く伸し掛る声と、殺気の込められた言葉が風と共に響く。
セイヤは口答えなど出来る立場でもないため、頷くしかない。その顔は何を考えているのかわからず、瞳は黒く濁っている。
「わかりました」
一言だけ呟き、セイヤはその場から姿を消した。そんな彼の姿を蘆屋藍華は、口が裂けそうになるほど横に広げ、大きな笑みを零した。
「必ず、殺し尽くしてやるぞ。晴明よ」
☆
「っ!! 今の気配──」
今は村の中、色んな人に聞き取り調査中。そこまで有力な情報が手に入れられない中、黒く渦巻くような気配が体に突き刺さった。
「どうかしました、闇命様」
「…………いや、なんでもないよ」
琴平は気づいていないのか。雨燕さんは少し周りを気にしている様子だ。おそらく、気づいたんだ。この、どす黒い気配。なんなんだこれ。
体にまとわりつくような気持ちの悪い感覚。今はもう大分薄くなってしまったけど、まだ感覚だけは体に残っている。
両腕を摩って気持ちの悪い感覚を払い落とそうとしたけど、無駄な事だった。
「闇命君、今の」
『うん。ヒザマの時と同じ感覚があった。もしかしたらいるかもしれないね』
いるかもしれない、俺の友人。また、話が出来るのか。出来る、状況なのか。
「何かございましたか、闇命様」
「あ、い、いや。なんでもないよ」
琴平に言ってしまうと困らせてしまうし、無駄に悩み事を増やすわけにもいかない。今は、聞きこみ調査に集中しよう。
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