憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
上 下
35 / 246
死絡村

藍華

しおりを挟む
 村の出来事があってから、二ヶ月が経った。

 俺の怪我も完全に治り、熱も下がり体も元気。力も戻り、闇命君も半透明な姿を維持できるまでに回復した。
 
 今はもう、ほぼ毎日のように文句を言われている。
 正直、心が折れそうだよ。

 そんな生活を送っていても、頭の片隅にあるのは、いつも靖弥について。
 あとは、どのように陰陽寮を変えていくか。

 革命を起こしたいけど、まず仲間が欲しい。
 闇命君達の説得―――達というか、闇命君を説得出来れば琴平達なら協力してくれそう。

「うーーーん………」

 朝ご飯を食べながら考えても、お味噌汁の香ばしい匂いや食器のカチャカチャとなる音で集中出来ない。だって、お腹空いているんだもん!!!

 なんでいつも朝早いのに、朝ご飯はこんなに遅いんだよ。
 こんなの、体に悪いに決まってるじゃん、阿保じゃないの!?

 まぁ、その生活にも少しずつ慣れてきたからいいけど……。
 
 もそもそと食べていると、琴平はもう食べ終わり食器を片付けに行ってしまった。
 早いなぁ、相当お腹空いていたんだな。

 ご飯を食べ終え、食堂を後にする。
 琴平と行動するのはもう当たり前のようになっているから、周りの人も怪しまなくなってきた。

 いや、最初からそこまで怪しまれていなかったな。
 普段から一緒にいるって事だよな。ズッ友かよ、さすがだわ。

「琴平、この後はどこに行くの?」
「二ヶ月前に起こった村火事の詳細がようやくわかったらしく、それを聞きに行こうと思っている」

 あぁ、確かにそれは聞きたいな。

「なら、紫苑さんの所?」
「あぁ」

 こういう時はやっぱり紫苑さんの所が一番いいよね。
 この陰陽寮上司組の中では一番話しやすいし。

 そのまま俺達は静かな廊下をひたすら歩き、紫苑さんの部屋へと向かった。

 ※

「待っていたよ」

 部屋の中に入ると、紫苑さんが優しい微笑みで出迎えてくれた。
 部屋内は、相変わらず汚い。座る場所あるのか、これ。

 資料らしきものが床を覆っているし、筆や墨で壁やその資料が汚れてますが……。
 これ、掃除するのってもしかして巫女さん達の仕事? 
 あぁ、紅音と夏楓。ドンマイ。二人が掃除するかは分からないけど。

 座る場所を作り、俺と琴平は紫苑さんの向かいに正座する。
 服が汚れないか不安だな…………。

「では、まずわかった事からゆっくりと話そう」

 数枚の資料を片手に、紫苑さんは話し出してくれた。

「今回の村火事の発端は、やはりヒザマの仕業みたいだね。あの件より前から火事は多発しており、四季さん以外の人達も火事には敏感になっていたらしいよ」

 そういえば言っていたな。
 村の中で何件も火事が起きていたと。

「しかし、そのヒザマを利用した人物が二人浮上している。一人は蘆屋道満の子孫にあたる、蘆屋藍華あしやらんか

 蘆屋、藍華? え、蘆屋道満じゃないの。それに子孫って──

「そして、もう一人は──流井あらいセイヤ」

 っ。靖弥。やっぱり、あいつは靖弥だったんだ。
 なら、やっぱり、靖弥は蘆屋道満に引き寄せられた?

 あ、でも、蘆屋道満じゃなくて、名前が挙がっているのは蘆屋藍華って、女性のような名前。ど、どういうことだ?

「名前として挙がっている二人がヒザマを利用し、村火事を起こしたと今は見ているよ」
「なぜ、あの村を狙ったかは分かっていないのでしょうか」
「狙った理由は、安倍家の掃滅だろうね。昔からの因縁らしい」

 琴平は、顎に手を当て考え込んでしまう。

 安倍家の掃滅か。安倍晴明に恨みを持つ蘆屋道満なら有り得そうだな。
 でも、なんでそんな強い恨みを持ってしまったのかも分からない。それも、代々受け継ぐほどに。

「とりあえず、この二人についてはまだ調査を続けるつもりだよ。今の情報ではこれが精一杯」
「そうですね。ですが、蘆屋家の者が絡んでいるという情報は大きかと」
「確かにね。いつもはしっぽを掴ませないのに、今回は何か企んでいるのかな」

 …………え、あぁ、俺? 紫苑さんがいきなり俺の方を見てきた。
 いや、まぁ、だよね。多分、琴平から話は聞いているだろうし……。

「もうそろそろ、詳しく話してもらってもいいかな。忘れていないよね?」
「はい。忘れたくても、忘れられません……」

 ずっと肩に乗って、静かに話を聞いていた闇命君が床へと飛び降り、姿を現した。

「おや、どうしたんだい?」
『別に。僕ももっと詳しく聞きたいと思ってね。鼠の姿だと集中出来ない。ただ、それだけ』

 闇命君は俺の隣に座って、ムスッとした顔を向けてきた。

 あ、なるほど。この顔はあれだな。『僕の顔でそんな表情浮かべないでくれる?』と、言いたいらしい。もう、表情だけで分かるようになってきたよ。

「えっと。蘆屋道満──じゃなくて、えっと。蘆屋藍華さんは、俺も姿を見ていないので何も言えませんが、靖弥の事なら、少しだけ……」
「なら、そのセイヤという者について話してもらってもいいかな」
「はい」

 この後俺は、この異世界に来る前と、村であった出来事を詳しく話した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

処理中です...