上 下
23 / 246
新生活

習性

しおりを挟む
 成功してよかったぁぁぁぁああああああ!!!! 
 失敗していたら次の作戦を考えないといけないところだった。
 マジで何も考えられていなかったから、その意味でも良かったよ。

 猫刄は、俺のの頭を伝い地面に降り立った瞬間、本物の俺が結界を瞬時に張り捕まえた。

 なぜここまで誘導したか。
 それは、太陽の光を利用するため。

 猫又は、人の家に住んでいた猫が老いて化けると聞いた事がある。だから、目の作りとかは大きく変わらないんじゃないかなって。

 猫は夜行性。夜は得意だろうけど、光に弱いんじゃないかなと。だから、ここまで誘導して動きを制限、光から逃げるような動きをした猫刄を捕まえる。これが今回の作戦だ。

「それにしても、この依代すごいなぁ。思った通りに動いてくれるし、声も出せるんだ」
『あの声はなんだったの。僕の体でふざけないでくれる?』
「いや、なんか。少しでも驚かせた方がいいかなと……」

 少しでも驚かせ、咄嗟に逃げた先で捕まえる。
 地面に足を付ける少し前に結界を張る事で、逃げたくても逃げられない状況を作る。だから、少しでも高く跳んで逃げてもらないと駄目じゃん。

 まだ俺は、結界とかの陰陽術は慣れてないからね。
 それにしても──

「よく見ると、可愛いなぁ」

 結界はまだ張っているけど、その中で優雅に毛繕いしている猫刄の姿は、普通の猫みたいで可愛い。尻尾が二つに分かれている以外は、普通の猫だな。

「単純な作戦だったけど、動物相手ならこのくらいの方がいいのかな」
『みたいだね。まぁ、僕の体だから上手くいったってだけだと思うけど』

 うっ、確かに。今、一気に三つの術を出しているようなものだからね。
 雷火に依代、結界。なんか、体がだるい気がしてきた。さすがに疲れたのかなぁ。

 あ、依代はもういいのか。

「えっと、この依代ってどうすれば消せるの?」
『依代を作る時に使った紙人形あるでしょ。それに感謝の気持ちを込めながら、名前の書いてある文字のところを破る。そうすれば解除出来るよ』

 破るのか……。でも、感謝の気持ちを込めてなんだね。

「今回は、俺の作戦のために働いて下さりありがっ──」
『そういうのはいいから早く破り捨てなよ。どうせ、驚かしただけなんだから』

 こんの糞餓鬼が。

「また、よろしくお願いします」

 っと。このまま”闇命”と書かれた部分を破り、風に乗せる。
 
「え、燃えた?」

 風に乗った紙は炎に包まれ、そのままチリになって無くなった。
 闇命君として動いてくれた依代も半透明になり、そのまま姿を消す。

「これが陰陽術なんだね」
『まぁね。これはまだ序の口だけど』

 序の口かぁ。
 まぁ、他にも色々ありそうだからね。頑張ろう。

 崖の方に遠い目を向け立ち尽くしていると、後ろからパチパチと、拍手の音と共に俺を労う言葉が聞こえた。

「あ、紫苑さん……と、え。なんで琴平、そんなに疲れてるの?」

 後ろには、優しく微笑みながら俺の方を見ている紫苑さんと、木にもたれかかり、震える体で立っている琴平だった。

 なんでそんなに疲れているの。紫苑さんは息一つ乱れていないのに。

「ぶ、無事に終わったみたいですね……。良かったです……」
「いや、まずは自分の心配をしよう琴平、大丈夫?」
「闇命様に心配されるなんて……。勿体ないお言葉……です」

 あ、もう駄目だ。
 疲れすぎて俺を闇命君だと思い込んでる。とりあえず、話しかけないようにしよう。その方が体力は回復するでしょ。

「えっと、とりあえず捕まえました。これで、協力していただけますか?」

 今回の条件は”式神である猫刄を捕まえる事”で間違いないはず。なら、今のこの状況で絶対にクリアだろ。

「そうだね。正直、ここまで早くその体を使いこなせるとは思わなかったけれど、約束は約束。協力しようか」

 よっしゃぁぁぁあぁぁぁ!!!! 強い味方ゲットぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!

 これで闇命君の体は陰陽寮から出れる。よし、まずは一歩前進だ。

「そうと決まれば早速行こうか。もう、時間が無いからね」
「え、もうそんなに時間が無いのですか?」

 確かに、時間が無いと言ったのは俺だけど、夜まではまだ時間がある。
 いや、早めに行って損は無いと思うからいいけど。

「準備の時間もあるだろう。それと、”夜”という言葉に惑わされてはいけない。夜という言葉に明確な時間など存在しないからね。今宵、今夜、今晩。様々な言葉あるけれど、今宵以外は明確な時間が明かされていないんだ。油断しては駄目だよ」

 え、そうなの? 全然知らなかった。大体十八時以降とかじゃないの?
 この人が言うならそうなんだろうけど。なんか、すごく不安になってきたな……。

「さぁ、早く彼女を連れて行こう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...