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新生活
被害
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今日は、とりあえず四季さんに陰陽寮に来てもらう事にした。
上司に何を言っても意味なんてないのは分かっているから、せめて火事が起きるであろう村には行かないように。
「あの、本当によろしいのですか?」
「よろしくはないと思うけど、このままあんたを帰すのも後味悪そうだし。とりあえず付いてきて」
闇命君に言われた言葉をそのまま言い、陰陽寮があるであろう方向へと歩く。
さっきまでと口調が違うから、少し戸惑ってる。許して、闇命君に逆らえないの。
そんな事を考えていると、闇命君の名前を呼ぶ男性と女性の声が聞こえた。
この声は多分琴平と紅音かな。
あぁ、怒られる。完全に怒られるぞ。なんだろう、ゲンコツでも食らうんだろうか。
ため息を吐いたのと同時に、四季さんが立ち止まってしまう。
振り返ると、気がかりなことがあるのか、後ろを振り向いた。
「あの、やはり私、帰ります」
「え、でも。今日にでも火事が起きるかもしれないんだよ? 帰らない方が──」
「なら、なおの事帰らなければなりません。家には、お母さんとお父さんがいるんです」
そうか、四季さんだけを守ればいいわけじゃない。家族の方も一緒に守らないと。でも、どうやって……。
闇命君は、四季さんが今日死ぬと言っている。こんな事、冗談で言うわけない。
「すいません。私の話をしっかり聞いてくれたのに失礼なことを言ってしまって。でも、今日はこれで失礼します。また、日を改めてご依頼させていただきます」
四季さんは言うと、来た方向と反対へと歩き出してしまう。止めたくても、何も言葉が出ない。
引き止めるだけの言葉では彼女は止まらない、しっかりとした理由を言わなければ――……
『あんた。そのまま帰ったら家族諸共死ぬよ』
少し低く、不機嫌そうな声が静かな森に響く。
隣には半透明な闇命君、腕を組んで四季さんを見てる。
いつの間にか、俺の肩から降りていたみたい。
「え、同じ人が、二人?」
『そんなのどうでもいいよ。こいつが偽物、僕が本物。ただそれだけ』
「偽物という訳ではないと思うんだけど……」
否定したところで闇命君には、何処吹く風なんだろうけど。
『とりあえず、このまま何も作戦を立てずに帰ったら、間違いなく焼死体が三体出来上がる。それでもいいなら、僕は止めないけど』
「ふ、不吉な事を子供が言わないでください」
四季さんは、苛立ちと戸惑いで口調が荒くなる。先程まで柔らかい声だったのが嘘のように、今では刃のように鋭く、怒気の含まれた声で闇命君に突っかかる。
『不吉かもしれないけど、これが事実なんだ。君達の家は今日火事が起こり、逃げられず死ぬ』
闇命君の言葉は普通に聞くと不謹慎すぎて、直ぐに止めに入るのが正しい。でも、ふざけてなどいないし、馬鹿にしている訳でもない。
それは口調と、それを口にしている彼の表情を見れば明らかだ。
それは彼女もわかったらしく、手を強く握りその場から動かない。見定めているのだろう。
この少年を信じるか、信じないか。
そんな重苦しい沈黙の中、草木の揺れる音が背後から聞こえた。
振り向くと、そこには心配そうな顔を浮かべている琴平と、紅音が肩を上下に動かしながら立ってた。
息が荒い、色んな所を探してくれていたのかな、申し訳ない。
「闇命さっ──」
紅音が闇命君を呼ぼうとしてしまった。
待って待って! 今は名前を呼ばないであげて!!
慌てて静かにと口に人差し指を当てると、直ぐに察してくれた琴平が紅音の口を塞ぎ途中で止めてくれた。良かったよ。
「……これはどういう状況だ、優夏」
「あの人はね──」
説明するため琴平達に近づき、小さな声で先程までの出来事を掻い摘んで伝えると、二人は今の闇命君と彼女のやり取りを見守る事にしてくれた。
「その話が本当なのなら、私はどうすればいいんですか。どうすれば、守れますか。大事な家族なんです、絶対に守りたい」
『さぁね、まずはその村に住み着いているモノを確認しないと今は何も言えない。だから、まずはあんたの住んでいる場所に行きたい。後ろの三人も一緒に』
闇命君と目が合う。
そりゃ、俺が言い出したわけだし、行かないなんて選択肢無い。
力強く頷き、琴平達と共に四季さんの隣に移動した。
「必ず村を守るから、安心して欲しい」
『それは言い切るな』
「え、なんで?」
こういうのって言い切った方がかっこいいじゃん。それに、守るんだったらそこまで言わないと。
『どんな奴か分からないのに、今それを言い切るなよ。妖には様々な種類がいる。まぁ、僕は天才だからどんな奴だろうと問題無いけど。今の天才陰陽師はあんただよ、分かってる? あんたが倒さないといけないんだよ?』
……………………はぁ?
え、俺が倒さないといけない?
え、だって琴平も紅音もいるじゃないですか。なぜ俺が倒すと言い切るんだよ
『琴平は援護中心にやらせていたんだよ。それと、紅音には戦闘経験がない。前線で戦えるのは、あんたしかいないんだよ』
・・・・・・・・・・・・・。
そ、そんなの。
知らねぇよぉぉぉぉぉぉおおおおお!!
上司に何を言っても意味なんてないのは分かっているから、せめて火事が起きるであろう村には行かないように。
「あの、本当によろしいのですか?」
「よろしくはないと思うけど、このままあんたを帰すのも後味悪そうだし。とりあえず付いてきて」
闇命君に言われた言葉をそのまま言い、陰陽寮があるであろう方向へと歩く。
さっきまでと口調が違うから、少し戸惑ってる。許して、闇命君に逆らえないの。
そんな事を考えていると、闇命君の名前を呼ぶ男性と女性の声が聞こえた。
この声は多分琴平と紅音かな。
あぁ、怒られる。完全に怒られるぞ。なんだろう、ゲンコツでも食らうんだろうか。
ため息を吐いたのと同時に、四季さんが立ち止まってしまう。
振り返ると、気がかりなことがあるのか、後ろを振り向いた。
「あの、やはり私、帰ります」
「え、でも。今日にでも火事が起きるかもしれないんだよ? 帰らない方が──」
「なら、なおの事帰らなければなりません。家には、お母さんとお父さんがいるんです」
そうか、四季さんだけを守ればいいわけじゃない。家族の方も一緒に守らないと。でも、どうやって……。
闇命君は、四季さんが今日死ぬと言っている。こんな事、冗談で言うわけない。
「すいません。私の話をしっかり聞いてくれたのに失礼なことを言ってしまって。でも、今日はこれで失礼します。また、日を改めてご依頼させていただきます」
四季さんは言うと、来た方向と反対へと歩き出してしまう。止めたくても、何も言葉が出ない。
引き止めるだけの言葉では彼女は止まらない、しっかりとした理由を言わなければ――……
『あんた。そのまま帰ったら家族諸共死ぬよ』
少し低く、不機嫌そうな声が静かな森に響く。
隣には半透明な闇命君、腕を組んで四季さんを見てる。
いつの間にか、俺の肩から降りていたみたい。
「え、同じ人が、二人?」
『そんなのどうでもいいよ。こいつが偽物、僕が本物。ただそれだけ』
「偽物という訳ではないと思うんだけど……」
否定したところで闇命君には、何処吹く風なんだろうけど。
『とりあえず、このまま何も作戦を立てずに帰ったら、間違いなく焼死体が三体出来上がる。それでもいいなら、僕は止めないけど』
「ふ、不吉な事を子供が言わないでください」
四季さんは、苛立ちと戸惑いで口調が荒くなる。先程まで柔らかい声だったのが嘘のように、今では刃のように鋭く、怒気の含まれた声で闇命君に突っかかる。
『不吉かもしれないけど、これが事実なんだ。君達の家は今日火事が起こり、逃げられず死ぬ』
闇命君の言葉は普通に聞くと不謹慎すぎて、直ぐに止めに入るのが正しい。でも、ふざけてなどいないし、馬鹿にしている訳でもない。
それは口調と、それを口にしている彼の表情を見れば明らかだ。
それは彼女もわかったらしく、手を強く握りその場から動かない。見定めているのだろう。
この少年を信じるか、信じないか。
そんな重苦しい沈黙の中、草木の揺れる音が背後から聞こえた。
振り向くと、そこには心配そうな顔を浮かべている琴平と、紅音が肩を上下に動かしながら立ってた。
息が荒い、色んな所を探してくれていたのかな、申し訳ない。
「闇命さっ──」
紅音が闇命君を呼ぼうとしてしまった。
待って待って! 今は名前を呼ばないであげて!!
慌てて静かにと口に人差し指を当てると、直ぐに察してくれた琴平が紅音の口を塞ぎ途中で止めてくれた。良かったよ。
「……これはどういう状況だ、優夏」
「あの人はね──」
説明するため琴平達に近づき、小さな声で先程までの出来事を掻い摘んで伝えると、二人は今の闇命君と彼女のやり取りを見守る事にしてくれた。
「その話が本当なのなら、私はどうすればいいんですか。どうすれば、守れますか。大事な家族なんです、絶対に守りたい」
『さぁね、まずはその村に住み着いているモノを確認しないと今は何も言えない。だから、まずはあんたの住んでいる場所に行きたい。後ろの三人も一緒に』
闇命君と目が合う。
そりゃ、俺が言い出したわけだし、行かないなんて選択肢無い。
力強く頷き、琴平達と共に四季さんの隣に移動した。
「必ず村を守るから、安心して欲しい」
『それは言い切るな』
「え、なんで?」
こういうのって言い切った方がかっこいいじゃん。それに、守るんだったらそこまで言わないと。
『どんな奴か分からないのに、今それを言い切るなよ。妖には様々な種類がいる。まぁ、僕は天才だからどんな奴だろうと問題無いけど。今の天才陰陽師はあんただよ、分かってる? あんたが倒さないといけないんだよ?』
……………………はぁ?
え、俺が倒さないといけない?
え、だって琴平も紅音もいるじゃないですか。なぜ俺が倒すと言い切るんだよ
『琴平は援護中心にやらせていたんだよ。それと、紅音には戦闘経験がない。前線で戦えるのは、あんたしかいないんだよ』
・・・・・・・・・・・・・。
そ、そんなの。
知らねぇよぉぉぉぉぉぉおおおおお!!
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