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新生活
挑発
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俺達が黙っていると、襖の外から声が聞こえた。
『闇命様、琴平さん。お時間出来ましたので来たのですが、こちらにいますか?』
聞こえてきたのは夏楓の声。
そうだった。仕事が一段落したら、合流をお願いしていたんだ。
「あぁ、入ってくれ」
琴平が言うと襖が開き、夏楓と紅音が入ってくる。その姿はさすが巫女というもので。音を立てず、清楚な感じだ。
「どのようなお話をなされていたのでしょうか」
「先程、少しだけ厄介な件があってな。その話を少々」
「厄介な件とは?」
質問してきた夏楓に、さっきの話を簡単に琴平が説明してくれた。
※
「────なるほど」
夏楓は琴平の簡単且つ、親切丁寧な説明に頷き、考え込む。
同じ話を聞いた紅音は、まぁ、うん。ほっとくのなんて当たり前だろうというように鼻を鳴らしていた。
「そんなもの、ほっとけば良いだろう。今までもそのようにしてきた」
迷い無く紅音が言い放つ。
まぁ、それが一番いいんだろうけど、やっぱり納得いかない。
だって、分かっているのに、ここで知らないフリは駄目じゃん。守れるかもしれないのに。
「その事について納得していない奴がいるから、困っているんだ」
自分は関係ないみたいな言い方するじゃん琴平。琴平だって納得はしていないじゃん。人のせいだけにしないでよ。
…………琴平と闇命君が俺を見てくる。
やめて、俺を見ないでくれ。
だって、ほっときたくねぇんだもん。
それに、これで闇命君が言った通り大きな災いが起きてしまったら、後悔してもしきれないじゃん。
「納得出来ない気持ちは分からなくもない。だが、どうするつもりだ? 依頼されなければ内容自体ワタシ達には届かない。それだけではなく、ワタシ達も他の依頼を任される可能性があるのだぞ」
「そうですね。せめて、受付が聞いている話を共有出来れば、まだ手はあるかもしれませんが、今の不明瞭な段階では動けないかと」
内容を、共有、か。
受付が聞いた話を詳しく聞ければ、動けるかもしれないのか。
「なら、闇命君がその依代で依頼人の内容を──」
『なんで僕がそんな事をしないといけないの? 僕はその女がどうなろうと知った事じゃないの。大体、それは君がやりたいんでしょ? 他人を巻き込むのはお門違いなんじゃないの』
やっぱり倍で返ってくるよねぇ、そんな気はしていたよ。
闇命君も迷いがない。
今までも同じようにしてきたみたいだし、やっぱり何も出来ないのかなぁ。
……いや、駄目だよ。諦めたらそこで全て終わってしまうんだから。
「お願い、闇命君。今は君に頼るしか──」
『どんなにお願いされてもめんどくさいし嫌だよ。それに、その災いも大したことでは無いかもしれないしね。やるだけ無駄だよ』
ぐぅ、子供の癖に一筋縄ではいかないな。
子供、子供──あ。
「────そっか。天才陰陽師である闇命君の勘でもそこまでは分からないのか。まぁ、そうだよね。なんだかんだ言っても子供だし、出来ない事があるのは仕方がないね」
『────なんだって?』
お、食いついた。
「だから、闇命君の直感でも分からない事はあるんだなって思って。それに、天才なのに依頼人一人も救えないんだって思ってさ」
「貴様、なにをっ──」
紅音が俺に突っかかるように体を乗り出したが、琴平が途中で止めてくれた。
夏楓が口に人差し指を置き鎮めている、助かった。
……不機嫌そうな顔して不貞腐れちゃった。ごめんね、紅音。
『そんな挑発に乗ると思う? あんたの考える事なんてわかりきってんだよ』
「挑発じゃなくて事実だろ? 最初闇命君は『大きな災いが起きる』って言っていた。でも、さっきは大したものでは無いと言っている。それって、自分の勘を信じていないって事だよね。なんだかんだ言っても、結局は勘なんだから、天才だろうと凡人と変わらず、間違えると怖いもんねぇ~」
言い切ると、闇命君の額には青筋が立ち始める。効果は抜群だな。
『僕が、凡人と同じだって? ふざけた事言うなよ!! 大体あんたの方がただの凡人じゃないか。今は天才である僕の体に入っているから動きやすいと思うけど、普通はそんなんじゃないの分かってんだからね!!!』
うっ、心にくる事を簡単に言うな、この餓鬼。
「…………ゴホン。えっと、そ、それでもやりたくないんでしょ? それって、勘が外れた時恥ずかしいからだからなんじゃないの?」
『そんな訳ないだろ!! くだらない』
「そっかそっか。闇命君は外れた時が恥ずかしいから参加したくないのか。それは、仕方がないな。どうせ子供だし、そんな気持ちがあるのは当たり前だね、子供だし」
"子供"という言葉を強調しながらため息混じりに言うと、闇命君は徐々に顔を赤くし、その場に勢いよく立ち上がった。
『わかったよ。そこまで言うならやってあげるよ。でも、これはあんたの挑発に乗ったわけじゃないから!! 勘違いすんなよ凡人が!!!』
おぉ、上手くいった。けど、なんか、なんだろう。目が霞んできた、花粉かなぁ。
…………虚しいぞ、俺は虚しい。凡人言うなよ、事実なだけに辛い。
『今回の件は色々めんどくさいよ。でも、動いてしまえば途中でやめられない。せいぜい挫折しないように気を付けるんだね』
「そう言われると怖いけど、頑張るよ。助けたいし」
女性を助けられれば、俺は何でもやる。
人が死ぬのなんて、もう見たくないし。
『闇命様、琴平さん。お時間出来ましたので来たのですが、こちらにいますか?』
聞こえてきたのは夏楓の声。
そうだった。仕事が一段落したら、合流をお願いしていたんだ。
「あぁ、入ってくれ」
琴平が言うと襖が開き、夏楓と紅音が入ってくる。その姿はさすが巫女というもので。音を立てず、清楚な感じだ。
「どのようなお話をなされていたのでしょうか」
「先程、少しだけ厄介な件があってな。その話を少々」
「厄介な件とは?」
質問してきた夏楓に、さっきの話を簡単に琴平が説明してくれた。
※
「────なるほど」
夏楓は琴平の簡単且つ、親切丁寧な説明に頷き、考え込む。
同じ話を聞いた紅音は、まぁ、うん。ほっとくのなんて当たり前だろうというように鼻を鳴らしていた。
「そんなもの、ほっとけば良いだろう。今までもそのようにしてきた」
迷い無く紅音が言い放つ。
まぁ、それが一番いいんだろうけど、やっぱり納得いかない。
だって、分かっているのに、ここで知らないフリは駄目じゃん。守れるかもしれないのに。
「その事について納得していない奴がいるから、困っているんだ」
自分は関係ないみたいな言い方するじゃん琴平。琴平だって納得はしていないじゃん。人のせいだけにしないでよ。
…………琴平と闇命君が俺を見てくる。
やめて、俺を見ないでくれ。
だって、ほっときたくねぇんだもん。
それに、これで闇命君が言った通り大きな災いが起きてしまったら、後悔してもしきれないじゃん。
「納得出来ない気持ちは分からなくもない。だが、どうするつもりだ? 依頼されなければ内容自体ワタシ達には届かない。それだけではなく、ワタシ達も他の依頼を任される可能性があるのだぞ」
「そうですね。せめて、受付が聞いている話を共有出来れば、まだ手はあるかもしれませんが、今の不明瞭な段階では動けないかと」
内容を、共有、か。
受付が聞いた話を詳しく聞ければ、動けるかもしれないのか。
「なら、闇命君がその依代で依頼人の内容を──」
『なんで僕がそんな事をしないといけないの? 僕はその女がどうなろうと知った事じゃないの。大体、それは君がやりたいんでしょ? 他人を巻き込むのはお門違いなんじゃないの』
やっぱり倍で返ってくるよねぇ、そんな気はしていたよ。
闇命君も迷いがない。
今までも同じようにしてきたみたいだし、やっぱり何も出来ないのかなぁ。
……いや、駄目だよ。諦めたらそこで全て終わってしまうんだから。
「お願い、闇命君。今は君に頼るしか──」
『どんなにお願いされてもめんどくさいし嫌だよ。それに、その災いも大したことでは無いかもしれないしね。やるだけ無駄だよ』
ぐぅ、子供の癖に一筋縄ではいかないな。
子供、子供──あ。
「────そっか。天才陰陽師である闇命君の勘でもそこまでは分からないのか。まぁ、そうだよね。なんだかんだ言っても子供だし、出来ない事があるのは仕方がないね」
『────なんだって?』
お、食いついた。
「だから、闇命君の直感でも分からない事はあるんだなって思って。それに、天才なのに依頼人一人も救えないんだって思ってさ」
「貴様、なにをっ──」
紅音が俺に突っかかるように体を乗り出したが、琴平が途中で止めてくれた。
夏楓が口に人差し指を置き鎮めている、助かった。
……不機嫌そうな顔して不貞腐れちゃった。ごめんね、紅音。
『そんな挑発に乗ると思う? あんたの考える事なんてわかりきってんだよ』
「挑発じゃなくて事実だろ? 最初闇命君は『大きな災いが起きる』って言っていた。でも、さっきは大したものでは無いと言っている。それって、自分の勘を信じていないって事だよね。なんだかんだ言っても、結局は勘なんだから、天才だろうと凡人と変わらず、間違えると怖いもんねぇ~」
言い切ると、闇命君の額には青筋が立ち始める。効果は抜群だな。
『僕が、凡人と同じだって? ふざけた事言うなよ!! 大体あんたの方がただの凡人じゃないか。今は天才である僕の体に入っているから動きやすいと思うけど、普通はそんなんじゃないの分かってんだからね!!!』
うっ、心にくる事を簡単に言うな、この餓鬼。
「…………ゴホン。えっと、そ、それでもやりたくないんでしょ? それって、勘が外れた時恥ずかしいからだからなんじゃないの?」
『そんな訳ないだろ!! くだらない』
「そっかそっか。闇命君は外れた時が恥ずかしいから参加したくないのか。それは、仕方がないな。どうせ子供だし、そんな気持ちがあるのは当たり前だね、子供だし」
"子供"という言葉を強調しながらため息混じりに言うと、闇命君は徐々に顔を赤くし、その場に勢いよく立ち上がった。
『わかったよ。そこまで言うならやってあげるよ。でも、これはあんたの挑発に乗ったわけじゃないから!! 勘違いすんなよ凡人が!!!』
おぉ、上手くいった。けど、なんか、なんだろう。目が霞んできた、花粉かなぁ。
…………虚しいぞ、俺は虚しい。凡人言うなよ、事実なだけに辛い。
『今回の件は色々めんどくさいよ。でも、動いてしまえば途中でやめられない。せいぜい挫折しないように気を付けるんだね』
「そう言われると怖いけど、頑張るよ。助けたいし」
女性を助けられれば、俺は何でもやる。
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