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盛夏
怪我
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――――な、なに、これ。人の形をしているみたいだけど、体の一部がみんな、化け物。
周りにいる者達は、少年少女。
だが、普通の子供達ではない。
体の一部が化け物のようになっていた。
獣のように大きかったり、下半身が溶けてなくなっていたり、頭が無かったりと。
突風を起こしているのは、奏多の前に立っている、天狗。
顔には赤い天狗の仮面をつけ、手には大きな葉。それを振りかざすと、突風が吹き荒れ静華達を襲う。
見えたところでどうすればいいのかわからず、静華はただただ恐怖心が高まるだけだった。
そんな時、化け物の中に、一人だけ。
見覚えのある少年が口をパクパクと動かし、何かを訴えようとしていた。
――――銀髪の、少年……。
見覚えがあるのに、思い出せない。
頭の中にある記憶が、霧により見えない。
だが、今は信じるしかない。
信じて、言われた通りに走るしかない。
「奏多! 私についてきて!」
言うと、静華は化け物達とは反対側へと駆けだした。
今、静華が駆けだした方向は、いつも公園へ入る入り口とは逆方向。
行った事がない道へと向かう。
道なき道。
枝葉で腕や足は切れ、道を妨げる。
土は自分達の歩みを止めようと掴み、転ばせようとしてくる。
それでも、奏多と静華は、背後から迫ってくる気配から逃げずにはいられなかった。
走り続けていると、上り坂になる。
心の中で最悪と呟きながらも、走り続けた。
汗が流れ、息が乱れる。
喉が切れ、鉄の味が口の中に広がった。
それでも、足を止めてしまえば、化け物に殺される。
それだけは嫌だと、必死に走り続けた。
「――――キャッ!!」
「っ、静華!」
先頭を走っていた静華が、疲労で足がもつれ転んでしまった。
すぐに奏多が翔を下ろし、静華を立たせる。
「だいじょうぶ?」
「いってて……。大丈夫だよ、ごめん」
心配そうに声をかけて来る翔の頭を撫で、すぐに奏多の手を掴み立ちあがる。
そんな時でも、後ろから迫ってくる気配は薄くすらならない。
早く走らなければ、追いつかれてしまう。
「大丈夫なのか」
「平気――っ!」
平気だと思い、走り出そうと前に一歩、足を出した。
だが、足首に痛みが走るのと同時に力が抜け、崩れ落ちる。
「静華!?」
すぐに奏多が駆け寄ると、足首が赤く腫れているのに気づく。
転んだ時に捻ってしまったのは明らか。これでは、走れない。
「わ、私は大丈夫だから! はしっ――っ!」
再度立ち上がろうとするも、痛みが走り立つことすら出来ない。
そうこうしているうちに、風が吹かなくても緑が揺れ音を鳴らす。
化け物達が近くまで来ているのを、体が自然と察してしまう。
奏多も翔も、狐の窓で見ていないにも関わらず、嫌な気配が近づいてきているのを肌で感じる。
すぐに逃げなければ、殺される。
そう思い、翔は眉を吊り上げしっかりとした足で立ちあがった。
「僕! 走れる! おにいちゃんは、おねえちゃんをだっこして!」
翔が言うと、先に走り出してしまった。
奏多が咄嗟に止めるも、説得している時間はない。
静華も不安そうに翔を呼ぶが意味はなく、翔は走り続けた。
「仕方がない」
「えっ――きゃ!」
困惑していると、静華の身体に浮遊感。
気づいた時には、奏多に抱きかかえられていた。
「へっ?」
「動くなよ? 普段は鍛えていないから、走るだけで精一杯なんだ」
言いながら奏多は走り出す。
翔を抱きかかえている時よりは遅いが、それでも十分に逃げられている。
すぐに翔に追いつくことができ、「転ぶなよ」と呼びかけた。
「大丈夫だもん!」
「それなら良かった」
そのまま坂道を走り続けていると、遠くの方に光が見えてきた。
「あそこ!」
静華が指を差す。
翔と奏多も気づき、足を緩めることなく走り続けた。
後ろからの気配が徐々に濃くなっていく。
肩越しに狐の窓を作り、後ろを見てみると――……
「ひっ!」
「見るな!」
先程の化け物達が怖い顔して追いかけてきている光景が窓の奥に映し出された。
小さな悲鳴を上げ、奏多がすぐ静華に見るのをやめさせる。
走り続けていると、光に近付いて行き、届く距離まで辿り着く。
そのまま突っ込むと、ガサッと、森を抜ける事に成功。
周りは何もなく、目の前には星空が広がる崖が、ただただ左右に続いているだけだった。
周りにいる者達は、少年少女。
だが、普通の子供達ではない。
体の一部が化け物のようになっていた。
獣のように大きかったり、下半身が溶けてなくなっていたり、頭が無かったりと。
突風を起こしているのは、奏多の前に立っている、天狗。
顔には赤い天狗の仮面をつけ、手には大きな葉。それを振りかざすと、突風が吹き荒れ静華達を襲う。
見えたところでどうすればいいのかわからず、静華はただただ恐怖心が高まるだけだった。
そんな時、化け物の中に、一人だけ。
見覚えのある少年が口をパクパクと動かし、何かを訴えようとしていた。
――――銀髪の、少年……。
見覚えがあるのに、思い出せない。
頭の中にある記憶が、霧により見えない。
だが、今は信じるしかない。
信じて、言われた通りに走るしかない。
「奏多! 私についてきて!」
言うと、静華は化け物達とは反対側へと駆けだした。
今、静華が駆けだした方向は、いつも公園へ入る入り口とは逆方向。
行った事がない道へと向かう。
道なき道。
枝葉で腕や足は切れ、道を妨げる。
土は自分達の歩みを止めようと掴み、転ばせようとしてくる。
それでも、奏多と静華は、背後から迫ってくる気配から逃げずにはいられなかった。
走り続けていると、上り坂になる。
心の中で最悪と呟きながらも、走り続けた。
汗が流れ、息が乱れる。
喉が切れ、鉄の味が口の中に広がった。
それでも、足を止めてしまえば、化け物に殺される。
それだけは嫌だと、必死に走り続けた。
「――――キャッ!!」
「っ、静華!」
先頭を走っていた静華が、疲労で足がもつれ転んでしまった。
すぐに奏多が翔を下ろし、静華を立たせる。
「だいじょうぶ?」
「いってて……。大丈夫だよ、ごめん」
心配そうに声をかけて来る翔の頭を撫で、すぐに奏多の手を掴み立ちあがる。
そんな時でも、後ろから迫ってくる気配は薄くすらならない。
早く走らなければ、追いつかれてしまう。
「大丈夫なのか」
「平気――っ!」
平気だと思い、走り出そうと前に一歩、足を出した。
だが、足首に痛みが走るのと同時に力が抜け、崩れ落ちる。
「静華!?」
すぐに奏多が駆け寄ると、足首が赤く腫れているのに気づく。
転んだ時に捻ってしまったのは明らか。これでは、走れない。
「わ、私は大丈夫だから! はしっ――っ!」
再度立ち上がろうとするも、痛みが走り立つことすら出来ない。
そうこうしているうちに、風が吹かなくても緑が揺れ音を鳴らす。
化け物達が近くまで来ているのを、体が自然と察してしまう。
奏多も翔も、狐の窓で見ていないにも関わらず、嫌な気配が近づいてきているのを肌で感じる。
すぐに逃げなければ、殺される。
そう思い、翔は眉を吊り上げしっかりとした足で立ちあがった。
「僕! 走れる! おにいちゃんは、おねえちゃんをだっこして!」
翔が言うと、先に走り出してしまった。
奏多が咄嗟に止めるも、説得している時間はない。
静華も不安そうに翔を呼ぶが意味はなく、翔は走り続けた。
「仕方がない」
「えっ――きゃ!」
困惑していると、静華の身体に浮遊感。
気づいた時には、奏多に抱きかかえられていた。
「へっ?」
「動くなよ? 普段は鍛えていないから、走るだけで精一杯なんだ」
言いながら奏多は走り出す。
翔を抱きかかえている時よりは遅いが、それでも十分に逃げられている。
すぐに翔に追いつくことができ、「転ぶなよ」と呼びかけた。
「大丈夫だもん!」
「それなら良かった」
そのまま坂道を走り続けていると、遠くの方に光が見えてきた。
「あそこ!」
静華が指を差す。
翔と奏多も気づき、足を緩めることなく走り続けた。
後ろからの気配が徐々に濃くなっていく。
肩越しに狐の窓を作り、後ろを見てみると――……
「ひっ!」
「見るな!」
先程の化け物達が怖い顔して追いかけてきている光景が窓の奥に映し出された。
小さな悲鳴を上げ、奏多がすぐ静華に見るのをやめさせる。
走り続けていると、光に近付いて行き、届く距離まで辿り着く。
そのまま突っ込むと、ガサッと、森を抜ける事に成功。
周りは何もなく、目の前には星空が広がる崖が、ただただ左右に続いているだけだった。
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