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盛夏
悩み
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ここからは九尾もまざり、屋台を回る事になった。
――――ここって、お祭り……では無いのかな。
弥狐は、お祭りに行ったことがない。
だが、今静華達がいる場所は、お祭りという言葉以外では説明が出来ない。
不思議に思い、翔と共に前を歩いている弥狐を見た。
楽しそうに話している二人に割り込んでまで聞くようなことは出来ず、静華は言葉を飲み込む。
だが、静華の心境を察した九尾が、酒瓶を揺らしながら静華に聞いた。
『何か、気になる事がありそうじゃのぉ。我慢せず、話してみるがよい』
「え、い、いえ……」
突如、声をかけられたことにより戸惑い、思わず目を逸らしてしまう。
『まだ、我が怖いのかのぉ~』
「っ、い、いえ! そんなことはっ――……」
悲し気に言われたため、思わず振り向き否定しようとすると、途中で言葉が詰まる。
振り向くと、眼前には赤い瞳。
顔を近づかせていたらしく、少しでも動けばぶつかってしまう。
目を離せないでいると、腰に手を回され身動きすら封じ込められる。
動かなければならないのに、動けない。
顔が赤くなる感覚があり、恥ずかしい。
――――な、なんなのよ!!!
目を閉じ離れようとすると、下から視線を感じた。
見てみると、翔と弥狐の子供特有の大きな瞳と目が合った。
それで頭が冷静になり、男性に顔を近づかれ、腰に手を回され動きを封じ込められている現状を把握。
これは、傍から見たら勘違いされても仕方がない。
顔がさっきより真っ赤に染まり、力いっぱいに九尾を押した。
「はーなーしーてーくーだーさーいー!!!!」
『いででででで!!! さすがに痛いぞ! やめてくれ!!』
――――なら離せよ!!!
そんな攻防を繰り広げ、無事に解放された静華は、触れないように気を付けながら弥狐の後ろに隠れた。
『悲しいのぉ~』
『自身の行いをしっかり見つめ直してください』
――――弥狐君のおっしゃる通りです。
じぃ~と、怪訝そうに見ていると、またしても落ち込んでしまった九尾。
肩を落とし、悲痛な雰囲気を醸し出している九尾を見て、静華は本当にこの人があやかしの頂点に位置する立場の人なのか疑う。
その視線の意味も九尾にはすぐわかり、さらに落ち込んでしまった。
『我だって、やる時はやる男なんじゃぞ……』
『そうですね。九尾様はやる時はやる男です。わかっておりますよ』
ポンッと背中を叩き、慰めている弥狐の方がよっぽど大人に見える。
静華は呆れつつ、翔の肩を掴んだ。
『それで、何を考えていたんじゃ、静華の少女』
酒を飲み、気を取り直し聞いて来た九尾に、静華は「あー」と、弥狐を見た。
「ここには様々な屋台があり、提灯が飾られ、お祭りみたいな所。それなのに、弥狐君はお祭りを経験したことがないと言っていたので。それが少し気になっていました」
素直に言うと、答えたのは弥狐ではなく、九尾だった。
『確かに、ここは人間世界では、お祭りみたいな場所ではあるのぉ』
姿勢を整え、周りを見回した。
静華も同じく、赤く光るお祭りの景色を見回す。
『じゃが、ここはあくまで、あやかし世界なんじゃよ。弥狐は、人間世界でのお祭りを経験したことがないんじゃ』
「見た通り、あまり変わりませんよ? 逆に、こちらの方が楽しめるような気がします」
人は少なく周りやすい。屋台は様々、食べる系や遊ぶ系が沢山ある。
雰囲気も綺麗で、人間社会では出せない艶やかさが醸し出されていた。
『見慣れている物と、見慣れない物。興味を持つのはどちらか、すぐにわかるじゃろう?』
「…………見慣れていない方、でしょうか?」
『そうじゃ。それに、弥狐は人間に触れる事が出来ぬ。憧れるのは無理がないじゃろう』
――――ないものねだりってやつかな。手に入れる事が出来ない物ほど、興味がわき、手に入れたいという気持ちが強くなる。
そう思うと、静華は今までの自分もそんな感じだったのではないかと考え始める。
――――本物を見た事がない都会に憧れ、なれるかわからない作家という夢に縋って。
今までの自身の行動を思い出し、馬鹿な事をしていたと嘲笑する。
そんな静華を見て、九尾は狐面から覗き見える赤い瞳を細めた。
『主は何か、大きな悩みを抱えていそうじゃのぉ』
「っ、え」
九尾に指摘され、静華は顔を上げる。
狐面の表情は変わらないが、それでも微かに、心なしか笑っている、そう感じた。
『悩むのは悪い事ではない。大いに悩め、それが生き物には必要な事じゃ』
――――悩みが、必要な事?
「でも、悩みは思考を停止させます。人をマイナス思考へと引っ張ります。いい事ではないと思うのですが……」
『確かにそうかもしれぬな。じゃが、悩みがあるということは、それだけ物事に本気で向き合っているからだと思うんじゃよ。本気で向き合えない生き物は、今より前に進むことなど出来ん』
九尾の言っている言葉の意味が理解出来ない。
静華は首を傾げ、何とか理解しようとするが、どうしても言った通りに物事を捉える事が出来ない。
再度問いかけようとするが、九尾が先に口を開いてしまった。
『ほれ、もうそろそろ時間じゃ。帰らんと、家の者が心配するのではないか?』
「え、今何時ですか!?」
『人間世界の計算だと、もう朝方になるじゃろうな』
――――え。
「や、やばいやばいやばい。絶対に怒られる。何も言わずに出てきてしまったし、絶対にお母さんに怒られる!!」
頭を抱えその場にしゃがみ怖がっていると、翔が目を輝かせ指を差している。
先を見ると、あるのは屋台。
みたところ、くじ引きのようだ。
「やりたい!!!」
「……………………もう終わり!!!!!」
弥狐にお願いして、泣きじゃくる翔をなだめながら実家へと帰った。
案の定、お説教タイム。
一時間以上正座をさせられ、静華は突如襲ってきた睡魔により、翔と共に次の日まで眠りについた。
――――ここって、お祭り……では無いのかな。
弥狐は、お祭りに行ったことがない。
だが、今静華達がいる場所は、お祭りという言葉以外では説明が出来ない。
不思議に思い、翔と共に前を歩いている弥狐を見た。
楽しそうに話している二人に割り込んでまで聞くようなことは出来ず、静華は言葉を飲み込む。
だが、静華の心境を察した九尾が、酒瓶を揺らしながら静華に聞いた。
『何か、気になる事がありそうじゃのぉ。我慢せず、話してみるがよい』
「え、い、いえ……」
突如、声をかけられたことにより戸惑い、思わず目を逸らしてしまう。
『まだ、我が怖いのかのぉ~』
「っ、い、いえ! そんなことはっ――……」
悲し気に言われたため、思わず振り向き否定しようとすると、途中で言葉が詰まる。
振り向くと、眼前には赤い瞳。
顔を近づかせていたらしく、少しでも動けばぶつかってしまう。
目を離せないでいると、腰に手を回され身動きすら封じ込められる。
動かなければならないのに、動けない。
顔が赤くなる感覚があり、恥ずかしい。
――――な、なんなのよ!!!
目を閉じ離れようとすると、下から視線を感じた。
見てみると、翔と弥狐の子供特有の大きな瞳と目が合った。
それで頭が冷静になり、男性に顔を近づかれ、腰に手を回され動きを封じ込められている現状を把握。
これは、傍から見たら勘違いされても仕方がない。
顔がさっきより真っ赤に染まり、力いっぱいに九尾を押した。
「はーなーしーてーくーだーさーいー!!!!」
『いででででで!!! さすがに痛いぞ! やめてくれ!!』
――――なら離せよ!!!
そんな攻防を繰り広げ、無事に解放された静華は、触れないように気を付けながら弥狐の後ろに隠れた。
『悲しいのぉ~』
『自身の行いをしっかり見つめ直してください』
――――弥狐君のおっしゃる通りです。
じぃ~と、怪訝そうに見ていると、またしても落ち込んでしまった九尾。
肩を落とし、悲痛な雰囲気を醸し出している九尾を見て、静華は本当にこの人があやかしの頂点に位置する立場の人なのか疑う。
その視線の意味も九尾にはすぐわかり、さらに落ち込んでしまった。
『我だって、やる時はやる男なんじゃぞ……』
『そうですね。九尾様はやる時はやる男です。わかっておりますよ』
ポンッと背中を叩き、慰めている弥狐の方がよっぽど大人に見える。
静華は呆れつつ、翔の肩を掴んだ。
『それで、何を考えていたんじゃ、静華の少女』
酒を飲み、気を取り直し聞いて来た九尾に、静華は「あー」と、弥狐を見た。
「ここには様々な屋台があり、提灯が飾られ、お祭りみたいな所。それなのに、弥狐君はお祭りを経験したことがないと言っていたので。それが少し気になっていました」
素直に言うと、答えたのは弥狐ではなく、九尾だった。
『確かに、ここは人間世界では、お祭りみたいな場所ではあるのぉ』
姿勢を整え、周りを見回した。
静華も同じく、赤く光るお祭りの景色を見回す。
『じゃが、ここはあくまで、あやかし世界なんじゃよ。弥狐は、人間世界でのお祭りを経験したことがないんじゃ』
「見た通り、あまり変わりませんよ? 逆に、こちらの方が楽しめるような気がします」
人は少なく周りやすい。屋台は様々、食べる系や遊ぶ系が沢山ある。
雰囲気も綺麗で、人間社会では出せない艶やかさが醸し出されていた。
『見慣れている物と、見慣れない物。興味を持つのはどちらか、すぐにわかるじゃろう?』
「…………見慣れていない方、でしょうか?」
『そうじゃ。それに、弥狐は人間に触れる事が出来ぬ。憧れるのは無理がないじゃろう』
――――ないものねだりってやつかな。手に入れる事が出来ない物ほど、興味がわき、手に入れたいという気持ちが強くなる。
そう思うと、静華は今までの自分もそんな感じだったのではないかと考え始める。
――――本物を見た事がない都会に憧れ、なれるかわからない作家という夢に縋って。
今までの自身の行動を思い出し、馬鹿な事をしていたと嘲笑する。
そんな静華を見て、九尾は狐面から覗き見える赤い瞳を細めた。
『主は何か、大きな悩みを抱えていそうじゃのぉ』
「っ、え」
九尾に指摘され、静華は顔を上げる。
狐面の表情は変わらないが、それでも微かに、心なしか笑っている、そう感じた。
『悩むのは悪い事ではない。大いに悩め、それが生き物には必要な事じゃ』
――――悩みが、必要な事?
「でも、悩みは思考を停止させます。人をマイナス思考へと引っ張ります。いい事ではないと思うのですが……」
『確かにそうかもしれぬな。じゃが、悩みがあるということは、それだけ物事に本気で向き合っているからだと思うんじゃよ。本気で向き合えない生き物は、今より前に進むことなど出来ん』
九尾の言っている言葉の意味が理解出来ない。
静華は首を傾げ、何とか理解しようとするが、どうしても言った通りに物事を捉える事が出来ない。
再度問いかけようとするが、九尾が先に口を開いてしまった。
『ほれ、もうそろそろ時間じゃ。帰らんと、家の者が心配するのではないか?』
「え、今何時ですか!?」
『人間世界の計算だと、もう朝方になるじゃろうな』
――――え。
「や、やばいやばいやばい。絶対に怒られる。何も言わずに出てきてしまったし、絶対にお母さんに怒られる!!」
頭を抱えその場にしゃがみ怖がっていると、翔が目を輝かせ指を差している。
先を見ると、あるのは屋台。
みたところ、くじ引きのようだ。
「やりたい!!!」
「……………………もう終わり!!!!!」
弥狐にお願いして、泣きじゃくる翔をなだめながら実家へと帰った。
案の定、お説教タイム。
一時間以上正座をさせられ、静華は突如襲ってきた睡魔により、翔と共に次の日まで眠りについた。
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