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夏めく
お手伝い
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「おっもたい!!!」
「静華、遅いわよ。早く来なさい」
電車を降りて、田舎道をスーパーの袋を持ち、三人は歩いていた。
時間帯的には十七時くらい。
夏なため、まだ日は隠れておらず明るい。
日が昇っているという事は、気温も高い。
重たい荷物を持っている静華の額には、大粒の汗がにじんでいた。
「な、なんで奏多もお母さんも、私より重たい物を持っているのに、そんな平然と歩けるの」
静華は袋一つなのだが、奏多と美鈴は袋二つ持ちで歩いていた。
そんな二人の額には汗一つ流れておらず、平然としている。
「まぁ、普段からこのくらいの量は持ち歩いているからね」
「俺も同じく。それに、男の俺が今の静華みたいになっていたら情けないだろう」
――――それって、私は今、情けない姿を晒しているということか。そう言いたいのか。
眉をピクピクと動かし、苦笑。
大きなため息で、複雑な気持ちを口から吐き出した。
「ほら、早く来なさい。食材が駄目になるわよ」
「……わかったよ」
「こんの、体力お化けども」と、悪態を零しつつも歩き、数十分で家にたどり着いた。
さっそく奏多と美鈴は、台所に引きこもりとなる。
残された静華は、広い庭で屋台を作っている親戚のおじちゃん達の手伝いをすることにした。
買い物に言っている時、親戚のおじさん達にお願いして翔を預けつつ、屋台を作っていただくようにお願いしていた。
「美鈴さんの娘さんかい。美鈴さんに似ていてかわいいねぇ」
「あ、ありがとうございます」
白いノースリーブ姿のおじさん。
肩にかけているタオルで汗を拭きながら、言う。
会ったことがないため、なんと返せばいいのかわからず、静華は困惑気味に返事。
すぐに目を逸らし、近くに置かれている木材を持った。
「あ、それはこっちに頼む」
「あ、はい」
疲れた体には木材は重く、膝が震える。
うまく歩けず、引きずる形となってしまう。
おじさんは、優しい笑みを浮かべ近づき、受け取った。
「お買い物で疲れたみたいだね。こっちは大丈夫だから、台所の方を手伝ってきな」
「すいません……」
――――ここにいたら邪魔になる。早くいなくなろう。
台所の方なら少しは手伝える。
そう思い向かったが、声をかける前に止まってしまった。
台所には、奏多と美鈴が真剣な表情で下準備をしていた。
料理があまり得意ではない静華が参加するのは戸惑われ、気づかれないようにその場を後にする。
廊下を歩き、外に。
中からはカンカンと、屋台を作っているような音と、おじさん達の笑い声。
――――あの、楽しい空気に私は入れない。
静華の気持ちとは裏腹に、青空は鮮やかに広がっている。
今日は風が吹いており、静華の長い黒髪を後ろへ流す。
目は曇り、耳を塞ぐ。
早くこんな楽しい空気から逃げ出したいと、歩き出した。
――――私は、なんでこんなに何もできないんだろう。料理も手伝いも。
学生の時も、うまく友達と付き合えず一人。
職場でもうまく話すことができず、当たり前のように新人では出来るはずのない仕事を任せられ、休む時間すら取れなかった。
自分がもっと出来るようになれば、また違う道があったかもしれない。
もっと出来れば周りからも好かれる。
もっと楽しい生活を送ることが出来る。
ないものねだりしても意味はない、頭の片隅ではわかっている。
それでも、どうしても心に根付いてしまった”無碌な自分”に悲観する。
居場所がない、何も出来ない自分。
静華は、歯を食いしばり、悔しげな表情を浮かべた。
――――本当に、役立たずで嫌になる。
顔を俯かせながら歩いていると、耳にまたしてもカンカンと、家で響いていた音が聞こえ始め、足を止めた。
顔を上げると、静華は無意識に赤城神社に来ていたことに気づく。
「あぁ……。お祭りの準備……」
明日から始まりだから、忙しくなく沢山の人が走り回っていた。
皆大変そうだが、楽しそう。
汗を流し、共に作業をしている人と笑いながら作業をしている。
あの中に、自分は入れない。
そう考えると、どうしても気持ちが落ち込み、顔を俯かせる。
こんな所にいても辛いだけ、悲しいだけ。
すぐにこの場から離れようと、田舎道を進む。
そんな時、後ろから足音が聞こえ、足を止めた。
振り向くと、小さな人影が駆け寄ってきていたのがわかる。
目を細めてみると、その人影の正体は、今家でおじさん達と共にいたはずの翔だった。
「静華、遅いわよ。早く来なさい」
電車を降りて、田舎道をスーパーの袋を持ち、三人は歩いていた。
時間帯的には十七時くらい。
夏なため、まだ日は隠れておらず明るい。
日が昇っているという事は、気温も高い。
重たい荷物を持っている静華の額には、大粒の汗がにじんでいた。
「な、なんで奏多もお母さんも、私より重たい物を持っているのに、そんな平然と歩けるの」
静華は袋一つなのだが、奏多と美鈴は袋二つ持ちで歩いていた。
そんな二人の額には汗一つ流れておらず、平然としている。
「まぁ、普段からこのくらいの量は持ち歩いているからね」
「俺も同じく。それに、男の俺が今の静華みたいになっていたら情けないだろう」
――――それって、私は今、情けない姿を晒しているということか。そう言いたいのか。
眉をピクピクと動かし、苦笑。
大きなため息で、複雑な気持ちを口から吐き出した。
「ほら、早く来なさい。食材が駄目になるわよ」
「……わかったよ」
「こんの、体力お化けども」と、悪態を零しつつも歩き、数十分で家にたどり着いた。
さっそく奏多と美鈴は、台所に引きこもりとなる。
残された静華は、広い庭で屋台を作っている親戚のおじちゃん達の手伝いをすることにした。
買い物に言っている時、親戚のおじさん達にお願いして翔を預けつつ、屋台を作っていただくようにお願いしていた。
「美鈴さんの娘さんかい。美鈴さんに似ていてかわいいねぇ」
「あ、ありがとうございます」
白いノースリーブ姿のおじさん。
肩にかけているタオルで汗を拭きながら、言う。
会ったことがないため、なんと返せばいいのかわからず、静華は困惑気味に返事。
すぐに目を逸らし、近くに置かれている木材を持った。
「あ、それはこっちに頼む」
「あ、はい」
疲れた体には木材は重く、膝が震える。
うまく歩けず、引きずる形となってしまう。
おじさんは、優しい笑みを浮かべ近づき、受け取った。
「お買い物で疲れたみたいだね。こっちは大丈夫だから、台所の方を手伝ってきな」
「すいません……」
――――ここにいたら邪魔になる。早くいなくなろう。
台所の方なら少しは手伝える。
そう思い向かったが、声をかける前に止まってしまった。
台所には、奏多と美鈴が真剣な表情で下準備をしていた。
料理があまり得意ではない静華が参加するのは戸惑われ、気づかれないようにその場を後にする。
廊下を歩き、外に。
中からはカンカンと、屋台を作っているような音と、おじさん達の笑い声。
――――あの、楽しい空気に私は入れない。
静華の気持ちとは裏腹に、青空は鮮やかに広がっている。
今日は風が吹いており、静華の長い黒髪を後ろへ流す。
目は曇り、耳を塞ぐ。
早くこんな楽しい空気から逃げ出したいと、歩き出した。
――――私は、なんでこんなに何もできないんだろう。料理も手伝いも。
学生の時も、うまく友達と付き合えず一人。
職場でもうまく話すことができず、当たり前のように新人では出来るはずのない仕事を任せられ、休む時間すら取れなかった。
自分がもっと出来るようになれば、また違う道があったかもしれない。
もっと出来れば周りからも好かれる。
もっと楽しい生活を送ることが出来る。
ないものねだりしても意味はない、頭の片隅ではわかっている。
それでも、どうしても心に根付いてしまった”無碌な自分”に悲観する。
居場所がない、何も出来ない自分。
静華は、歯を食いしばり、悔しげな表情を浮かべた。
――――本当に、役立たずで嫌になる。
顔を俯かせながら歩いていると、耳にまたしてもカンカンと、家で響いていた音が聞こえ始め、足を止めた。
顔を上げると、静華は無意識に赤城神社に来ていたことに気づく。
「あぁ……。お祭りの準備……」
明日から始まりだから、忙しくなく沢山の人が走り回っていた。
皆大変そうだが、楽しそう。
汗を流し、共に作業をしている人と笑いながら作業をしている。
あの中に、自分は入れない。
そう考えると、どうしても気持ちが落ち込み、顔を俯かせる。
こんな所にいても辛いだけ、悲しいだけ。
すぐにこの場から離れようと、田舎道を進む。
そんな時、後ろから足音が聞こえ、足を止めた。
振り向くと、小さな人影が駆け寄ってきていたのがわかる。
目を細めてみると、その人影の正体は、今家でおじさん達と共にいたはずの翔だった。
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