55 / 79
旦那様と迷子
11-2
しおりを挟む
私が旦那様を見上げていますと、きょとんとした顔を浮かべました。
すると、なぜか口を押え肩を震わせます。
……これは、確実に笑っております。
な、何故ですか!?
旦那様が涙を拭きながら顔を上げ、頬を膨らませ怒っている私の頭を撫でてきます。
むー、何なんですかぁ……。
「いや、すまんすまん、そう怒るな。愛らしいと、そう思っただけだ」
「あいっ!? そ、そんなことを言われましても、今回ばかりは簡単に許しません!!」
「そう言う割には、頬が緩んでおるぞ。やはり、可愛いな、華鈴よ」
むむむっ、頬をフニフニと触ってきます。
優しく微笑みかけられると、どうしても頬が緩んでしまうのです、仕方がないのですよ!!
「華鈴よ」
「は、はい!」
「華鈴は、我を心配し過ぎだ。我はぬしが思っているより、弱くはないぞ」
――――――――え、い、いや。あの、ち、違います!! そういう事ではないのです!!
旦那様を弱いと思っているわけでは決してないのです!! そうお伝えしたかったのですが、旦那様が先に言葉を続けてしまいました。
「我は、ぬしに我慢ばかりさせていたなと思ったのだ。確かに長の仕事は沢山あり、あやかしの世界の管理も、我がしなければならん」
はい、存じております。
だから私は、旦那様が無理をしないように。
少しでも負担を減らせるようにと思っているのですから。
「だがな、我個人としては、ぬしにはもう少しわがままを言ってほしい。男とは、頼られると嬉しいものだからな」
頼られると嬉しい………本当でしょうか。
ご迷惑にならないのでしょうか、お仕事の邪魔にならないのでしょうか。
「うむ、疑っておるな?」
「あっ、い、いえ。旦那様を疑うなど、そのようなことはありません!! ただ、私がわがままを言ってしまうと、今度は旦那様が無理してしまわれないかと不安になったのです……」
捨てられた私を妻に迎えて下さり、本当の幸せをくださった旦那様。
私は、旦那様に少しでも無理をしてくほしくないだけなのです。
私のせいで旦那様の手を、煩わせたくないのです。
「ふむ。どうするべきか……」
「え、あ、あの!! 私の事は本当に大丈夫ですよ! 私は今もすっごく幸せですので、これ以上を求めてしまうと、私が我慢できなくなってしまうかもしれないです」
人というものは、今以上の幸せを求める生き物だと聞いたことがあります。
今以上の幸せを求めてしまえば、私は”もっと”と欲が出てしまう。
出てしまった欲を抑えるのは難しいと、私自身も実感しております。
今まで、何度か我慢ができず旦那様の手を握ったり、か、顔をじぃっと見ております。
これ以上は、何をしてしまうのかわかりません!!
「…………分かったぞ、華鈴」
あ、わかってくださいました。
旦那様に甘えることが出来れば、私は今以上の幸福を感じるでしょう。
ですが、それは私のわがまま。
旦那様には長としてのお仕事があります。
無理をさせてしまう訳にはいかないのです!!
私が旦那様を見ますと、藍色の瞳と目が合います。
いつの間にか黒い布は横にずらしており、顔を近づかせておりました。
私の視界が、旦那様の瞳に覆われます。
思考が動かず固まっておりますと、旦那様は私の背中に両手を回し抱き留めました。
甘い、優しい温もりに包まれ、やっと思考が動くなった私は一気に心臓が高鳴り、顔が赤くなるのを感じます。
「な、なななな、だ、旦那様!? な、何を?」
「うむ。華鈴が遠慮してしまうのなら、我が甘えようと思ってな。今まで幾度か抱きしめてはいるが、やはり何度でも、何時間でも華鈴を我の腕で包み込んでいたいな」
な、な!? ど、え? ま、え!?
し、思考がまたしても停止です。
これ、あの、私は、どうすれば??
「――くくっ、慌てているようだな、華鈴。いつものように、我の背中に手を回しても良いのだぞ?」
っ! み、耳元で! 耳元で話さないでください! くすぐったいです!
旦那様のお声は低く、体に甘い痺れが走ります!
……だ、旦那様の温もり、甘い香り。
が、まんなど、できるわけがありません!
震える手を、言われるがままに旦那様の背中に回します!
――――ギュッ
旦那様の背中、大きいです。ずっと抱きしめていたい。
――――幸せです、旦那様に包まれております。
これは、妻である私の特権なのです! 旦那様に包まれてもいいのは私だけなのです。
あ、これって重たい感情というものなのでしょうか。
旦那様にはばれないようにしなければ。
「お、そうだ。華鈴よ、今後時間を合わせ、出かけないか?」
「あ、はい!! あの、どちらにでしょうか?」
「現代だ。先週開店したばかりのショッピングモールがあるらしい。人間世界を束ねる神から教えてもらったのだ。華鈴はそのような所はどうだ? 行ってみたいか?」
旦那様とならどこでも楽しいので行ってみたいという感情より、旦那様となら行きたいという感情が大きいです。
「行ってみたいです!」
「そうか、では三日後だな」
え、やはり三日間は絶対安静なのですね?!!
すると、なぜか口を押え肩を震わせます。
……これは、確実に笑っております。
な、何故ですか!?
旦那様が涙を拭きながら顔を上げ、頬を膨らませ怒っている私の頭を撫でてきます。
むー、何なんですかぁ……。
「いや、すまんすまん、そう怒るな。愛らしいと、そう思っただけだ」
「あいっ!? そ、そんなことを言われましても、今回ばかりは簡単に許しません!!」
「そう言う割には、頬が緩んでおるぞ。やはり、可愛いな、華鈴よ」
むむむっ、頬をフニフニと触ってきます。
優しく微笑みかけられると、どうしても頬が緩んでしまうのです、仕方がないのですよ!!
「華鈴よ」
「は、はい!」
「華鈴は、我を心配し過ぎだ。我はぬしが思っているより、弱くはないぞ」
――――――――え、い、いや。あの、ち、違います!! そういう事ではないのです!!
旦那様を弱いと思っているわけでは決してないのです!! そうお伝えしたかったのですが、旦那様が先に言葉を続けてしまいました。
「我は、ぬしに我慢ばかりさせていたなと思ったのだ。確かに長の仕事は沢山あり、あやかしの世界の管理も、我がしなければならん」
はい、存じております。
だから私は、旦那様が無理をしないように。
少しでも負担を減らせるようにと思っているのですから。
「だがな、我個人としては、ぬしにはもう少しわがままを言ってほしい。男とは、頼られると嬉しいものだからな」
頼られると嬉しい………本当でしょうか。
ご迷惑にならないのでしょうか、お仕事の邪魔にならないのでしょうか。
「うむ、疑っておるな?」
「あっ、い、いえ。旦那様を疑うなど、そのようなことはありません!! ただ、私がわがままを言ってしまうと、今度は旦那様が無理してしまわれないかと不安になったのです……」
捨てられた私を妻に迎えて下さり、本当の幸せをくださった旦那様。
私は、旦那様に少しでも無理をしてくほしくないだけなのです。
私のせいで旦那様の手を、煩わせたくないのです。
「ふむ。どうするべきか……」
「え、あ、あの!! 私の事は本当に大丈夫ですよ! 私は今もすっごく幸せですので、これ以上を求めてしまうと、私が我慢できなくなってしまうかもしれないです」
人というものは、今以上の幸せを求める生き物だと聞いたことがあります。
今以上の幸せを求めてしまえば、私は”もっと”と欲が出てしまう。
出てしまった欲を抑えるのは難しいと、私自身も実感しております。
今まで、何度か我慢ができず旦那様の手を握ったり、か、顔をじぃっと見ております。
これ以上は、何をしてしまうのかわかりません!!
「…………分かったぞ、華鈴」
あ、わかってくださいました。
旦那様に甘えることが出来れば、私は今以上の幸福を感じるでしょう。
ですが、それは私のわがまま。
旦那様には長としてのお仕事があります。
無理をさせてしまう訳にはいかないのです!!
私が旦那様を見ますと、藍色の瞳と目が合います。
いつの間にか黒い布は横にずらしており、顔を近づかせておりました。
私の視界が、旦那様の瞳に覆われます。
思考が動かず固まっておりますと、旦那様は私の背中に両手を回し抱き留めました。
甘い、優しい温もりに包まれ、やっと思考が動くなった私は一気に心臓が高鳴り、顔が赤くなるのを感じます。
「な、なななな、だ、旦那様!? な、何を?」
「うむ。華鈴が遠慮してしまうのなら、我が甘えようと思ってな。今まで幾度か抱きしめてはいるが、やはり何度でも、何時間でも華鈴を我の腕で包み込んでいたいな」
な、な!? ど、え? ま、え!?
し、思考がまたしても停止です。
これ、あの、私は、どうすれば??
「――くくっ、慌てているようだな、華鈴。いつものように、我の背中に手を回しても良いのだぞ?」
っ! み、耳元で! 耳元で話さないでください! くすぐったいです!
旦那様のお声は低く、体に甘い痺れが走ります!
……だ、旦那様の温もり、甘い香り。
が、まんなど、できるわけがありません!
震える手を、言われるがままに旦那様の背中に回します!
――――ギュッ
旦那様の背中、大きいです。ずっと抱きしめていたい。
――――幸せです、旦那様に包まれております。
これは、妻である私の特権なのです! 旦那様に包まれてもいいのは私だけなのです。
あ、これって重たい感情というものなのでしょうか。
旦那様にはばれないようにしなければ。
「お、そうだ。華鈴よ、今後時間を合わせ、出かけないか?」
「あ、はい!! あの、どちらにでしょうか?」
「現代だ。先週開店したばかりのショッピングモールがあるらしい。人間世界を束ねる神から教えてもらったのだ。華鈴はそのような所はどうだ? 行ってみたいか?」
旦那様とならどこでも楽しいので行ってみたいという感情より、旦那様となら行きたいという感情が大きいです。
「行ってみたいです!」
「そうか、では三日後だな」
え、やはり三日間は絶対安静なのですね?!!
0
https://accaii.com/sakurannbo398/?msg=signup
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる