生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

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旦那様とお料理 修行編

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「私は駄目な嫁です、お掃除や料理が出来ない、駄目な嫁です」

 お二人の顔を見れず、壁側に移動し三角座りで懺悔中です。
 うぅ……。旦那様を喜ばせたかっただけなのに、またしても困らせてしまいました。

 二口女さんも、忙しい中私のために時間を割いてくださったのに……。

 私は、なんでこんなにも出来ないのでしょうか。
 なぜ、迷惑をかけてばかりなのでしょう。

 何か出来るようにならなければ、また捨てられてしまうかもしれません。

 ――――そんなの、絶対に嫌です、今の生活を手放したくありません。旦那様や二口女さん達と離れたくないです。

 ですが、私がいると迷惑をかけてしまいます。
 私のわがままだけで、他の人に迷惑をかける訳にはいかないのです。

 でも、でも……。


 ――――――ふわっ


 涙を我慢し俯いていると、後ろから甘い香りと共に優しい温もりに包まれます。
 横を向くと旦那様が黒い布を横にずらし、私を夜空のような藍色の瞳で見つめておりました。

「だ、旦那様?」

 後ろから抱きしめられています、心臓が高鳴り顔が赤くなってしまいます。
 ど、どうしたのでしょうか。めんどくさい態度を取ってしまったため、怒ってしまわれたのでしょうか。

「あ、あの、あの……?」

 一人で慌てていますと、旦那様がフッと笑いかけてくださいました。

「華鈴、失敗は誰にでもあるのだぞ。一度うまくいかなかったとしても、諦めず何度も繰り返す事により出来るようになる。ぬしなら出来るようになると、我は信じておるぞ」

 旦那様のお言葉に、二口女さんも後ろで小さく頷いております。

 …………そうです、なんでも一回で出来るなんてことはありません。
 何度も何度も繰り返し、それで成功していくのです。

「華鈴、まだまだ練習できるぞ、共に頑張ろうぞ」

「はい!! ありがとうございます!!」

 私はバカ者です。こんなにお優しい旦那様が、私を捨てるなどありません。

 旦那様は、私を信じてくださっています。
 なので、私も旦那様を信じます!!

 気合を入れ直しますと、二口女さんが準備を始めてくださいました。

「では、また先ほどと同じように行っていきましょう、奥様」

「はい、よろしくお願いします!!」

 旦那様と共に再度鍋の前で菜箸を握り、水分をしっかりと拭きとり、油が温まるのを待ちます。
 その間、旦那様と二口女さんは、私を囲い見守ってくださっております。

 今回こそ、絶対に失敗しません。必ず、成功させます。

 油が温まるのを待っていると、旦那様が菜箸を掴んでおります私の手を握ってくださいました。
 どうしたのでしょう、私ならもう大丈夫ですよ?

 旦那様を見上げると、なにやら難しい顔を浮かべております。

「旦那様?」

「い、いや。やはり、油跳ねを抑えられる方法があると言っても、危険なことには変わりはない。華鈴が火傷しないか、怖いものは怖いのだ。だが、華鈴が練習したいのを止めるのも我にはできん。だが………」

 先程とは違い、旦那様が不安そうに鍋を見つめています。

 ――――ふふっ。旦那様を見ると、気持ちが落ち着きました。

 旦那様、可愛いです。
 今も心配の声が口から零れておりますよ。

「油も温まりましたので。奥様、唐揚げのご準備をお願いできますか?」

「は、はい!!」

 旦那様が私から手を離してしまい少し寂しいですが、また時間をかけてしまうと煙が出てきてしまうので我慢です。

 息を飲み、唐揚げを掴み鍋の上に添えると、タレが落ちてしまい、じゅわっと音をたて油が少々跳ねてしまいました。

「ひっ!」

「大丈夫か! 華鈴!」

「だ、いじょうぶです!」

 負けられない、私は負けませんよ!!

「………………?」

 旦那様、自分が入れる時より緊張しているように見えます。
 それだけ私を心配してくださっているという事でしょうか。自惚れでしょうか。

 …………いえ、今はスピード勝負です、頑張りますよ華鈴!!

 深呼吸をし、再度油に集中。
 パチパチと音を鳴らしているので正直怖いですが、やるしかありません。

 震える手で唐揚げを油にゆっくりと寄せ、優しくを意識して油に入れます。

 ――――ジュワァアアア

 っ!! 油が跳ねてしまいましたが、無事にお肉を投入できました!!

「だ、旦那様!! 出来ました、出来ましたよ!!」

「あぁ、見ていた。よくやったぞ華鈴!!」

 旦那様が私の頭を撫でてくださいました、嬉しいです!!
 この調子で次々と唐揚げを作りますよ!

 途中からは跳ねないように入れるコツも掴め、最後にはスムーズに揚げられました。
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