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旦那様とお料理 修行編
9ー3
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気を取り直しまして、三人で唐揚げを揚げることとなりました。
最初はお手本に、二口女さんが揚げてくださいます。
私と旦那様は両側に立ち、二口女さんの手腕を見ます。
見落とさないように、集中します。
「油が跳ねておる……」
「跳ねてしまうのは仕方がないことですよ、七氏様。ですが、安心してください。こうすることによって、少しは抑えることができますので」
旦那様が不安げなお言葉を零すと、二口女さんがニコッと笑い、菜箸を乾いたキッチンタオルで拭き始めます。
あと、キッチンペーパー……でしょうか。
白い紙にタレを染み込ませたお肉を置き、包んでおります。
これでは、せっかくの味付けが薄れてしまわないのでしょうか。
何も言わずに旦那様と見ておりますと二口女さんは、白い紙で包んでいたお肉を菜箸で掴みます。
「入れる時は怖がらず、ゆっくりと入れてください」
言うと、ゆっくりとお肉を油に入れます。
じゅわぁという揚げる音が聞こえ身構えますが、油の跳ねは最低限に抑えられておりました。
「すごい! 跳ねません!」
「おぉ! 油が跳ねんかったぞ! だが、何故だ?」
旦那様が油が跳ねなかったことに疑問を抱き、私も同じく首を傾げます。
二口女さんが行ったのは、菜箸を拭いたりお肉を白い紙で包んだだけのはず。それだけで油はねが収まりました。
…………なぜなのでしょうか。
「できる限り水を拭き取ることにより油は跳ねず、今のように安心して揚げられるのですよ」
「なんと、そうだったのか……」
まさか、こんな方法があるなんて思ってもいませんでした。
今のは唐揚げだけでなく、他の揚げ物でも使えそうです。
これからは怖がらずに油物を作れそうで安心しました!
「我もやってみても良いか?」
「大丈夫ですよ」
旦那様が二口女さんから菜箸を受け取り、気合を入れ鍋の前に立ちます。
「頑張ってください、旦那様!」
「あぁ、失敗しないように気をつけんとならんな」
あ、旦那様が緊張しておられます。
難しい顔を浮かべてしまいました。
だ、大丈夫でしょうか、怪我をしてしまわれないかとても不安です。
「旦那様、頑張ってください」
私が祈っておりますと、旦那様が覚悟を決め菜箸でお肉を摘み取ります。
少し震えてはおりますが、二口女さんと同じ動きで優しく油にお肉を入れました!!
「やりましたよ旦那様!! 油が跳ねておりません!!」
「お見事です、七氏様」
二口女さんと喜んでいると、旦那様が息を吐き私達へと振り向き笑います。
やり切ったというような笑みを向けられ、私も嬉しくなりました!!
「上手く出来れば、料理というものは楽しいな」
「お料理は、慣れると楽しいですよ。次は奥様ですね。やってみますか?」
「はい、やってみます!」
旦那様から菜箸を受け取り、今度は私の番です。
……うぅ、手が震えます。
ここまで成功しています、失敗は許されません。
私が失敗してしまったら、お二人の努力が水の泡となってしまいます。
絶対に失敗してはいけません、頑張るのですよ華鈴。
菜箸を握り直し、お肉を摘み取ります。
油へと近づかせると、パチパチと音が聞こえてきました。
息を飲み、負けては駄目だと奮い立たせますが、油はブクブクと泡立ち、今以上に近付けても大丈夫なのか不安に……。
――――いえ、駄目です、駄目ですよ華鈴。早く、早く入れなければ!
「あ、あの、奥様?」
「華鈴?」
お二人が私の名前を呼んでおります。
返事をしたいのに、目の前に広がる油に緊張してしまいうまく口が開かなっ――……
「え、煙??」
え、あ、煙!! 煙が出てしまっております!!
あ、あ、これは、どうすればいいのですか!?!?
私が一人であわあわしておりますと、視界の端に二口女さんが桶を手に取る姿が映ります。
「奥様! 失礼しますね!!」
――――――バッシャン
「あっ……」
二口女さんが火を消すようの桶を、鍋にかけました。
それにより、火は消え煙は収まります。
思わず、体から力が抜けます。
はぁ、怖かった。
「大丈夫か、華鈴!! 怪我はないか?」
「は、はい。大丈夫です………」
旦那様が駆け寄り、私に怪我がない確認してくださいます。
その際、私が持っていた菜箸を預かってくれました。
私には怪我は無いので、そこは大丈夫。
大丈夫、なのですが……。
あ、あぁ、やってしまいました。
私が怖がり過ぎて、二口女さんと旦那様が揚げた唐揚げを駄目にしてしまいました。
う、うぅ。なんてことをしてしまったのでしょう。
私は、お二人の努力を無駄にしてしまいました。
これは私、切腹しなければならないでしょうか。
それか、指を詰めますか。どうすれば許されるのでしょう。
床に座り込み包丁を掴み見ていると、旦那様が私から包丁を取り台の上に置いてしまいました。
「華鈴、さすがに包丁を持ち、世界絶望みたいな顔を浮かばれると、こっちとしては心臓に悪いからやめてもらえると助かるぞ」
「う、うぅ。旦那様……。わ、私はもう、私はもう生きてはいけないのかもしれないです」
「唐揚げに命を懸けておるんか、華鈴よ……」
だって、だって!!!! 私はお二人の努力を無駄にしてしまったのです!! 私のせいです!!
「よしよし」
旦那様が項垂れている私の頭を撫でてくださっております。
うっ、うぅぅう! 嬉しいです。
ものすごく嬉しいのです。
ですが、いつものように手放しに喜べません。
泣きたいです……。
最初はお手本に、二口女さんが揚げてくださいます。
私と旦那様は両側に立ち、二口女さんの手腕を見ます。
見落とさないように、集中します。
「油が跳ねておる……」
「跳ねてしまうのは仕方がないことですよ、七氏様。ですが、安心してください。こうすることによって、少しは抑えることができますので」
旦那様が不安げなお言葉を零すと、二口女さんがニコッと笑い、菜箸を乾いたキッチンタオルで拭き始めます。
あと、キッチンペーパー……でしょうか。
白い紙にタレを染み込ませたお肉を置き、包んでおります。
これでは、せっかくの味付けが薄れてしまわないのでしょうか。
何も言わずに旦那様と見ておりますと二口女さんは、白い紙で包んでいたお肉を菜箸で掴みます。
「入れる時は怖がらず、ゆっくりと入れてください」
言うと、ゆっくりとお肉を油に入れます。
じゅわぁという揚げる音が聞こえ身構えますが、油の跳ねは最低限に抑えられておりました。
「すごい! 跳ねません!」
「おぉ! 油が跳ねんかったぞ! だが、何故だ?」
旦那様が油が跳ねなかったことに疑問を抱き、私も同じく首を傾げます。
二口女さんが行ったのは、菜箸を拭いたりお肉を白い紙で包んだだけのはず。それだけで油はねが収まりました。
…………なぜなのでしょうか。
「できる限り水を拭き取ることにより油は跳ねず、今のように安心して揚げられるのですよ」
「なんと、そうだったのか……」
まさか、こんな方法があるなんて思ってもいませんでした。
今のは唐揚げだけでなく、他の揚げ物でも使えそうです。
これからは怖がらずに油物を作れそうで安心しました!
「我もやってみても良いか?」
「大丈夫ですよ」
旦那様が二口女さんから菜箸を受け取り、気合を入れ鍋の前に立ちます。
「頑張ってください、旦那様!」
「あぁ、失敗しないように気をつけんとならんな」
あ、旦那様が緊張しておられます。
難しい顔を浮かべてしまいました。
だ、大丈夫でしょうか、怪我をしてしまわれないかとても不安です。
「旦那様、頑張ってください」
私が祈っておりますと、旦那様が覚悟を決め菜箸でお肉を摘み取ります。
少し震えてはおりますが、二口女さんと同じ動きで優しく油にお肉を入れました!!
「やりましたよ旦那様!! 油が跳ねておりません!!」
「お見事です、七氏様」
二口女さんと喜んでいると、旦那様が息を吐き私達へと振り向き笑います。
やり切ったというような笑みを向けられ、私も嬉しくなりました!!
「上手く出来れば、料理というものは楽しいな」
「お料理は、慣れると楽しいですよ。次は奥様ですね。やってみますか?」
「はい、やってみます!」
旦那様から菜箸を受け取り、今度は私の番です。
……うぅ、手が震えます。
ここまで成功しています、失敗は許されません。
私が失敗してしまったら、お二人の努力が水の泡となってしまいます。
絶対に失敗してはいけません、頑張るのですよ華鈴。
菜箸を握り直し、お肉を摘み取ります。
油へと近づかせると、パチパチと音が聞こえてきました。
息を飲み、負けては駄目だと奮い立たせますが、油はブクブクと泡立ち、今以上に近付けても大丈夫なのか不安に……。
――――いえ、駄目です、駄目ですよ華鈴。早く、早く入れなければ!
「あ、あの、奥様?」
「華鈴?」
お二人が私の名前を呼んでおります。
返事をしたいのに、目の前に広がる油に緊張してしまいうまく口が開かなっ――……
「え、煙??」
え、あ、煙!! 煙が出てしまっております!!
あ、あ、これは、どうすればいいのですか!?!?
私が一人であわあわしておりますと、視界の端に二口女さんが桶を手に取る姿が映ります。
「奥様! 失礼しますね!!」
――――――バッシャン
「あっ……」
二口女さんが火を消すようの桶を、鍋にかけました。
それにより、火は消え煙は収まります。
思わず、体から力が抜けます。
はぁ、怖かった。
「大丈夫か、華鈴!! 怪我はないか?」
「は、はい。大丈夫です………」
旦那様が駆け寄り、私に怪我がない確認してくださいます。
その際、私が持っていた菜箸を預かってくれました。
私には怪我は無いので、そこは大丈夫。
大丈夫、なのですが……。
あ、あぁ、やってしまいました。
私が怖がり過ぎて、二口女さんと旦那様が揚げた唐揚げを駄目にしてしまいました。
う、うぅ。なんてことをしてしまったのでしょう。
私は、お二人の努力を無駄にしてしまいました。
これは私、切腹しなければならないでしょうか。
それか、指を詰めますか。どうすれば許されるのでしょう。
床に座り込み包丁を掴み見ていると、旦那様が私から包丁を取り台の上に置いてしまいました。
「華鈴、さすがに包丁を持ち、世界絶望みたいな顔を浮かばれると、こっちとしては心臓に悪いからやめてもらえると助かるぞ」
「う、うぅ。旦那様……。わ、私はもう、私はもう生きてはいけないのかもしれないです」
「唐揚げに命を懸けておるんか、華鈴よ……」
だって、だって!!!! 私はお二人の努力を無駄にしてしまったのです!! 私のせいです!!
「よしよし」
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うっ、うぅぅう! 嬉しいです。
ものすごく嬉しいのです。
ですが、いつものように手放しに喜べません。
泣きたいです……。
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