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旦那様と親への挨拶 九尾
7-1
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氷璃さんが落ち込んでしまいました。
隣では旦那様が腕を組み、肩を落としております。
「はぁ……。そういえば、母上。父上は今どちらに?」
「実家でお仕事をしているはずよ。──まさか、本当に報告するつもり!?」
「しませんよ、いい機会です。華鈴に父上もご紹介しようと思ったのですが、忙しいでしょうか?」
え、今すぐですか?
私、お作法などわからないのですが!?
「あら、それなら大丈夫よ、呼べばすぐに来てくださるわ」
「ふむ。華鈴よ、もし良かったら今すぐにでも父上に紹介したいのだが、呼んでも良いか?」
「え、あ、あの。私、お作法などわかっておりません。旦那様に恥をかかせてしまわないか不安のですが…………」
こんな、『基本のお作法さえできない者が息子の嫁だと?』 など思われてしまわれないか、私は怖いです。
「そこは大丈夫ですよ、華鈴さん」
「え、大丈夫、なのですか?」
「えぇ、九尾様はお作法など気にしない方です。自身すら、お作法にあまり詳しくないので」
「まったく、もう……」と、頬に手を当て困った様に眉を下げてしまいました。
―――――ん?? 厳しい方ではないのでしょうか?
ですが、先ほどはすごく怯えておりました。
どのような方なのでしょう、色んな意味で怖くなってきました。
「安心してください、華鈴さん。私の旦那様で、貴方の旦那様の父上ですよ」
ニコッと笑みを浮かべ、安心するように言ってくださいます。
隣にいる旦那様に顔を向けると、氷璃さんと同じ優しい笑みを浮かべ、私を見ておりました。
お二人の笑みを見ると、大丈夫なんだと。
なぜか、自然と思えます。
「わかりました。大丈夫です!」
「では、呼びますね。――――九尾様、来ていただけますか」
氷璃さんの静かな言葉が部屋に響きます。
すると、何故か急に辺りの空気が変わりました。
なんか、体にゾクゾクと、悪寒が走ります。
怖いです……。
「だ、旦那様……」
「安心するが良い。ただ、華鈴の反応を見て楽しんでいる最低な父上なだけだ」
──ん? どういうことなのでしょうか。
楽しんでいる? 私の反応を?
「それは酷いと思うぞ、七氏。もう少しワシの事をよく言っても良いだろう」
「っ??!?!! きゃぁぁぁぁあああ!!」
う、ううううう、後ろ?!
耳元です! 耳元から旦那様より低い声が聞こえました!!
「父上、さすがに怒りますよ?」
「もう怒っているではないか……」
旦那様の怒りの声に続く、低く甘い声。
振り向くとそこには、一人の男性が旦那様の後ろに立っていました。
赤地に金の龍が施されている着物、黒い羽織りを肩にかけております。
旦那様と同じ銀髪は、肩あたりまでの長さ。耳は狐、九本の尾がゆらゆらと揺れております。
こちらの方が、旦那様の父君……?
一瞬、旦那様がお二人になったのかと錯覚してしまいました。
そのくらい、お二人の見た目や雰囲気が似ており、何度も見比べてしまいます。
唯一違うのは、瞳の色。
旦那様は藍色、父君は赤色の瞳です。
「短気は損気だぞ、七氏。――――にしても、ここまでの別嬪になるとは……。どのようなことをしたのだ、七氏よ」
「父上様がその手を離せば話してあげます。今すぐ離せ」
…………父君が顔を私に寄せ、何故か頬に手を添えてきました。
旦那様と似ている顔を近づかれ正直ドキッとしましたが、旦那様ほどではなかったです。
それより、隣からの視線がものすごく痛いのですが……。
氷より冷たい視線が送られているため、目線をそらすことしか出来ません。
旦那様、助けてください!!!
「九尾様、私という妻がいるのにも関わらず、他の女性に現を抜かすのですね。しかも、息子のお嫁さんを口説き落とそうとするなど愚の骨頂。やはり、九尾様は私が住んでいた山に連れていった方が良かったかもしれませんね。今でも間に合いますよね? では、今すぐ私が貴女を凍らせっ──……」
「ま、まてまてまてまて!! すまなかった! ワシが悪かったからやめてくれい!」
あ、私達から離れ、氷璃さんの所に瞬間移動しました。慌てて弁解しているみたいです。
「あの、旦那様。旦那様の父君は、女性に慣れた方なのでしょうか?」
「慣れてはいるだろう。母上に出会う前は、色んな女を弄んでいたらしいからな」
「…………え!? もてあっ……え? それって、色んな女性を口説いていたという事でしょうか?!」
「ん-。口説いていたのか、女性を引き寄せていたのか……。我は、『貴方の父親は私に出会う前、様々な女性をたぶらかせていたのよ』としか聞いておらん」
それはつまり、口説いていたのでは?
まさか、旦那様の父君が女たらしだったなんて。
旦那様を見ているだけでは予想すら出来ませんでした。
だって、旦那様は誰にも優しいですが、女性をたぶらかすような言動などをしているところなど見た事がありませんもん。
「た、大変だったのですね。でも、ものすごく楽しそうです」
「そうだな。母上は、父上がよく女性と話しているのに嫉妬していたが、それでも仲が良く楽しそうだったぞ。お互い”好き”という気持ちがあふれ出ているから、息子としては少々恥ずかしい部分もあるけどな」
「ふふっ、そう言いつつも、楽しそうですよ」
「楽しくないわけではないからな」
ふふっ。
あーあ、父君である九尾さんの耳を氷璃さんが引っ張っております。
あやかしの頂点の父君が涙目で『ギブギブ!!』と嘆いております。
これが、本物の両親なのでしょうか。
それとも、あの人達が特別なのか。
私には到底わかるわけもありませんが、どちらでもいいと思えます。
もし、叶うのなら、私も旦那様と共にお二人のような生活を送る事を──……
隣では旦那様が腕を組み、肩を落としております。
「はぁ……。そういえば、母上。父上は今どちらに?」
「実家でお仕事をしているはずよ。──まさか、本当に報告するつもり!?」
「しませんよ、いい機会です。華鈴に父上もご紹介しようと思ったのですが、忙しいでしょうか?」
え、今すぐですか?
私、お作法などわからないのですが!?
「あら、それなら大丈夫よ、呼べばすぐに来てくださるわ」
「ふむ。華鈴よ、もし良かったら今すぐにでも父上に紹介したいのだが、呼んでも良いか?」
「え、あ、あの。私、お作法などわかっておりません。旦那様に恥をかかせてしまわないか不安のですが…………」
こんな、『基本のお作法さえできない者が息子の嫁だと?』 など思われてしまわれないか、私は怖いです。
「そこは大丈夫ですよ、華鈴さん」
「え、大丈夫、なのですか?」
「えぇ、九尾様はお作法など気にしない方です。自身すら、お作法にあまり詳しくないので」
「まったく、もう……」と、頬に手を当て困った様に眉を下げてしまいました。
―――――ん?? 厳しい方ではないのでしょうか?
ですが、先ほどはすごく怯えておりました。
どのような方なのでしょう、色んな意味で怖くなってきました。
「安心してください、華鈴さん。私の旦那様で、貴方の旦那様の父上ですよ」
ニコッと笑みを浮かべ、安心するように言ってくださいます。
隣にいる旦那様に顔を向けると、氷璃さんと同じ優しい笑みを浮かべ、私を見ておりました。
お二人の笑みを見ると、大丈夫なんだと。
なぜか、自然と思えます。
「わかりました。大丈夫です!」
「では、呼びますね。――――九尾様、来ていただけますか」
氷璃さんの静かな言葉が部屋に響きます。
すると、何故か急に辺りの空気が変わりました。
なんか、体にゾクゾクと、悪寒が走ります。
怖いです……。
「だ、旦那様……」
「安心するが良い。ただ、華鈴の反応を見て楽しんでいる最低な父上なだけだ」
──ん? どういうことなのでしょうか。
楽しんでいる? 私の反応を?
「それは酷いと思うぞ、七氏。もう少しワシの事をよく言っても良いだろう」
「っ??!?!! きゃぁぁぁぁあああ!!」
う、ううううう、後ろ?!
耳元です! 耳元から旦那様より低い声が聞こえました!!
「父上、さすがに怒りますよ?」
「もう怒っているではないか……」
旦那様の怒りの声に続く、低く甘い声。
振り向くとそこには、一人の男性が旦那様の後ろに立っていました。
赤地に金の龍が施されている着物、黒い羽織りを肩にかけております。
旦那様と同じ銀髪は、肩あたりまでの長さ。耳は狐、九本の尾がゆらゆらと揺れております。
こちらの方が、旦那様の父君……?
一瞬、旦那様がお二人になったのかと錯覚してしまいました。
そのくらい、お二人の見た目や雰囲気が似ており、何度も見比べてしまいます。
唯一違うのは、瞳の色。
旦那様は藍色、父君は赤色の瞳です。
「短気は損気だぞ、七氏。――――にしても、ここまでの別嬪になるとは……。どのようなことをしたのだ、七氏よ」
「父上様がその手を離せば話してあげます。今すぐ離せ」
…………父君が顔を私に寄せ、何故か頬に手を添えてきました。
旦那様と似ている顔を近づかれ正直ドキッとしましたが、旦那様ほどではなかったです。
それより、隣からの視線がものすごく痛いのですが……。
氷より冷たい視線が送られているため、目線をそらすことしか出来ません。
旦那様、助けてください!!!
「九尾様、私という妻がいるのにも関わらず、他の女性に現を抜かすのですね。しかも、息子のお嫁さんを口説き落とそうとするなど愚の骨頂。やはり、九尾様は私が住んでいた山に連れていった方が良かったかもしれませんね。今でも間に合いますよね? では、今すぐ私が貴女を凍らせっ──……」
「ま、まてまてまてまて!! すまなかった! ワシが悪かったからやめてくれい!」
あ、私達から離れ、氷璃さんの所に瞬間移動しました。慌てて弁解しているみたいです。
「あの、旦那様。旦那様の父君は、女性に慣れた方なのでしょうか?」
「慣れてはいるだろう。母上に出会う前は、色んな女を弄んでいたらしいからな」
「…………え!? もてあっ……え? それって、色んな女性を口説いていたという事でしょうか?!」
「ん-。口説いていたのか、女性を引き寄せていたのか……。我は、『貴方の父親は私に出会う前、様々な女性をたぶらかせていたのよ』としか聞いておらん」
それはつまり、口説いていたのでは?
まさか、旦那様の父君が女たらしだったなんて。
旦那様を見ているだけでは予想すら出来ませんでした。
だって、旦那様は誰にも優しいですが、女性をたぶらかすような言動などをしているところなど見た事がありませんもん。
「た、大変だったのですね。でも、ものすごく楽しそうです」
「そうだな。母上は、父上がよく女性と話しているのに嫉妬していたが、それでも仲が良く楽しそうだったぞ。お互い”好き”という気持ちがあふれ出ているから、息子としては少々恥ずかしい部分もあるけどな」
「ふふっ、そう言いつつも、楽しそうですよ」
「楽しくないわけではないからな」
ふふっ。
あーあ、父君である九尾さんの耳を氷璃さんが引っ張っております。
あやかしの頂点の父君が涙目で『ギブギブ!!』と嘆いております。
これが、本物の両親なのでしょうか。
それとも、あの人達が特別なのか。
私には到底わかるわけもありませんが、どちらでもいいと思えます。
もし、叶うのなら、私も旦那様と共にお二人のような生活を送る事を──……
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