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28-3 「自分の想いを偽るな」
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「レオ、わたし……」
「言うな」
「でも」
「自分の想いを偽るな。お前は、俺と離れていても平気なのか」
「それ、は……」
平気なわけがない。
メロディナがこの恋心を自覚してからというもの、いや、自覚するずっと前から、クレオナルドと会えない日々は寂しくてたまらなかった。
母について度々公爵家に訪れていたのも、そうすればクレオナルドに会えるかもしれないという衝動を抑えられなかった結果だ。
それに自分勝手に離れようとしたあの日。本当は想いなんて伝えるつもりじゃなかった。
それなのに、なんの躊躇いもなくクレオナルドへ歓声と憧れのまなざしをまっすぐに送ることができる、会場の女の子たちに嫉妬をして。
もう一度メロディナだけを見てほしいなんて、最後に愛を囁いてほしいなんて欲をかいてしまった結果だ。
「メロディナ、すまなかった」
「え……?」
なにに対しての言葉かわからずにメロディナが顔を上げれば、真剣なまなざしが絡み合う。その金色の煌めきに見惚れ、逸らすことができない。
「ずっと、お前を愛していたから。俺がお前を守ってやるんだって、それが使命だなんて思ってた。精神的にも、物理的にも、な」
クレオナルドの硬い指先が、メロディナの頬をそっと撫でる。
「だがな、不甲斐ない俺は、何度もお前を泣かせてしまった」
くしゃりと顔を歪めるクレオナルドは、先日のことを思い出したのだろうか。メロディナは何も言えず、ただただクレオナルドの話に耳を傾ける。
「そんなの、守るだなんて到底言えない。お前の前に立って、あらゆる障害を取り除いて、全てをきれいに整えてやろうって……でもそれじゃあ、やってることはコーラル伯爵と全く同じだ」
俺がなりたいのは父親じゃなくて恋人だ、なんてため息を吐き、力なく笑う。
そして一呼吸置いてソファーから離れ、クレオナルドはメロディナの前に跪いた。彼女の右手を大きな両手で大事そうに包み、まるで乞うようにメロディナを見上げている。
「だからこれからは、前じゃなく隣に立ちたい。前を向くお前を傍で支えていきたいんだ。……よく言っているだろう。普通になりたい、と。それは、こんなふうに守られるばかりじゃなくて、自分自身で思い描いた先へ進むこと……違うか?」
「でも……」
「不安なことがあるなら言ってほしい。この前はついカッとなって……声を荒げてしまった。許してくれ」
「そんな、レオは悪くないわ。私が、自分勝手だったから……」
「だから話し合おう。モモの憂いがなくなるように。俺たちの気持ちは同じ、で間違いないよな?」
躊躇いがちに頷くと、クレオナルドはほっとしたように笑った。
「よかった。なぁメロディナ。俺はお前と、生涯の愛を誓いたい。お前が俺の伴侶であって、俺もまたお前の伴侶だと皆に知らしめたいんだ。誰にも取られぬように……あー……、束縛したい」
「────っ」
「気持ち悪いよな、こんなこと言われて」
「っ、そんなこと、思わないわ」
顔を逸らし、自嘲するクレオナルド。そんな彼に重ねられている手をぎゅっと握り返し、引き寄せた。
「だって、私もそうだもの。あなたを見つめるご令嬢たちに嫉妬したわ。かっこよくて優しくて、なんて話を聞かされて、レオの一体なにを知ってるのって言いそうになっちゃった」
予想外の言葉だったのだろう。
クレオナルドは驚きに目を見開いて、それから顔を真っ赤に染め上げた。
それにつられ、メロディナの頬にも赤みが差す。
「わ、私だって、レオが大好きなんだもの……」
「モモ……」
「でも、でもね。公爵夫人だなんて、そんな大役、私には務まらないとも思うの」
そう小さく呟いた声は、クレオナルドに届いてしまっただろうか。
「言うな」
「でも」
「自分の想いを偽るな。お前は、俺と離れていても平気なのか」
「それ、は……」
平気なわけがない。
メロディナがこの恋心を自覚してからというもの、いや、自覚するずっと前から、クレオナルドと会えない日々は寂しくてたまらなかった。
母について度々公爵家に訪れていたのも、そうすればクレオナルドに会えるかもしれないという衝動を抑えられなかった結果だ。
それに自分勝手に離れようとしたあの日。本当は想いなんて伝えるつもりじゃなかった。
それなのに、なんの躊躇いもなくクレオナルドへ歓声と憧れのまなざしをまっすぐに送ることができる、会場の女の子たちに嫉妬をして。
もう一度メロディナだけを見てほしいなんて、最後に愛を囁いてほしいなんて欲をかいてしまった結果だ。
「メロディナ、すまなかった」
「え……?」
なにに対しての言葉かわからずにメロディナが顔を上げれば、真剣なまなざしが絡み合う。その金色の煌めきに見惚れ、逸らすことができない。
「ずっと、お前を愛していたから。俺がお前を守ってやるんだって、それが使命だなんて思ってた。精神的にも、物理的にも、な」
クレオナルドの硬い指先が、メロディナの頬をそっと撫でる。
「だがな、不甲斐ない俺は、何度もお前を泣かせてしまった」
くしゃりと顔を歪めるクレオナルドは、先日のことを思い出したのだろうか。メロディナは何も言えず、ただただクレオナルドの話に耳を傾ける。
「そんなの、守るだなんて到底言えない。お前の前に立って、あらゆる障害を取り除いて、全てをきれいに整えてやろうって……でもそれじゃあ、やってることはコーラル伯爵と全く同じだ」
俺がなりたいのは父親じゃなくて恋人だ、なんてため息を吐き、力なく笑う。
そして一呼吸置いてソファーから離れ、クレオナルドはメロディナの前に跪いた。彼女の右手を大きな両手で大事そうに包み、まるで乞うようにメロディナを見上げている。
「だからこれからは、前じゃなく隣に立ちたい。前を向くお前を傍で支えていきたいんだ。……よく言っているだろう。普通になりたい、と。それは、こんなふうに守られるばかりじゃなくて、自分自身で思い描いた先へ進むこと……違うか?」
「でも……」
「不安なことがあるなら言ってほしい。この前はついカッとなって……声を荒げてしまった。許してくれ」
「そんな、レオは悪くないわ。私が、自分勝手だったから……」
「だから話し合おう。モモの憂いがなくなるように。俺たちの気持ちは同じ、で間違いないよな?」
躊躇いがちに頷くと、クレオナルドはほっとしたように笑った。
「よかった。なぁメロディナ。俺はお前と、生涯の愛を誓いたい。お前が俺の伴侶であって、俺もまたお前の伴侶だと皆に知らしめたいんだ。誰にも取られぬように……あー……、束縛したい」
「────っ」
「気持ち悪いよな、こんなこと言われて」
「っ、そんなこと、思わないわ」
顔を逸らし、自嘲するクレオナルド。そんな彼に重ねられている手をぎゅっと握り返し、引き寄せた。
「だって、私もそうだもの。あなたを見つめるご令嬢たちに嫉妬したわ。かっこよくて優しくて、なんて話を聞かされて、レオの一体なにを知ってるのって言いそうになっちゃった」
予想外の言葉だったのだろう。
クレオナルドは驚きに目を見開いて、それから顔を真っ赤に染め上げた。
それにつられ、メロディナの頬にも赤みが差す。
「わ、私だって、レオが大好きなんだもの……」
「モモ……」
「でも、でもね。公爵夫人だなんて、そんな大役、私には務まらないとも思うの」
そう小さく呟いた声は、クレオナルドに届いてしまっただろうか。
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