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20 深い口づけ ◆
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「ただいま帰った」
屋敷へ戻り、厩番にロイロを預けると、フラフラと足元のおぼつかないメロディナの腰に手を回した。
本当は抱き上げて部屋まで連れて行ってやると言ったのだが、断固として拒否されてしまったのだ。
「お帰りなさいませ、若旦那様。お嬢様にお茶のご用意は」
「かまわん。呼ぶまで誰も部屋に近づけるな」
「かしこまりました」
できる家令は礼儀正しく胸に手を当てて下がる。
一方大股で他者を振り切るように歩くクレオナルドである。それに付いて歩くメロディナは半分駆け足のようになっている。
といっても実際はクレオナルドが抱えるようにして持ち上げているので、彼女はパタパタと足を動かしているだけなのだが。
「っレオ、恥ずかしいわ降ろして」
「そんなこと言ったって、まだ足に力が入らないだろう。こっちはもう限界なんだよ」
並んで恭しく頭を下げる使用人たちの前を足早に通り過ぎ、階段を駆け上がる。
毎日自分が過ごしている部屋にメロディナを招く日が来るなど思いもしなかった。
クレオナルドは薄く扉を開くとメロディナを抱き寄せて身体を滑り込ませ、すぐさま鍵を閉める。そして彼女の背を扉に押し付けたまま、性急にくちびるを重ねた。
「まっ…………んっ、ぁ」
柔らかな感触を確かめるように啄み、押し付ける。迷うように彷徨っていたメロディナの両腕が、控えめながらも彼の肩に回されて、クレオナルドは彼女の身体を力強く抱きしめた。
細い腰のくびれを大きな手が這うと、驚いたのか小さな悲鳴が上がる。その瞬間を逃さずに、クレオナルドは彼女の小ぶりな口腔に熱い舌先をねじ込んだ。
「えっ、ぁ……っ! んっ」
驚き固まってしまった彼女の舌先をつつき、舐る。ざらりと上顎を擽ると、メロディナは大きく身体を震わせ、顔を背けた。
「やっ……! な、なに……?」
くちびるが離れ、顔を覗きこんでみると、当惑し今にも泣いてしまいそうなメロディナがそこにいる。
「っすまない、浮かれて急ぎすぎた。モモが俺の部屋にいると思ったら、頭に血が上って……俺が、怖いか?」
眉が下がり、懇願するように情けない顔になっていることは自覚している。
以前無理矢理くちびるを奪い、メロディナを傷つけたことを激しく後悔したのだ。もう二度と、彼女にあんな思いをさせてはいけない。
だがメロディナは頬を赤く火照らせて、恥じらうようにクレオナルドを見上げた。
「こわい、とかじゃなくて……えっと、どうしたらいいか、わからなくて」
「……今のが深い口づけだ。嫌だったか?」
甘さを含んだクレオナルドの問いかけに、メロディナは首を振る。
「びっくりしただけ……」
「そうか。なら、もう一度ゆっくりしよう。モモ、舌を出して」
「ん……」
クレオナルドを誘うように瞳を潤ませながら、メロディナは小さく口を開く。そこから赤い舌がちろりと覗き、また衝動的にむしゃぶりついてしまいそうになる。
屋敷へ戻り、厩番にロイロを預けると、フラフラと足元のおぼつかないメロディナの腰に手を回した。
本当は抱き上げて部屋まで連れて行ってやると言ったのだが、断固として拒否されてしまったのだ。
「お帰りなさいませ、若旦那様。お嬢様にお茶のご用意は」
「かまわん。呼ぶまで誰も部屋に近づけるな」
「かしこまりました」
できる家令は礼儀正しく胸に手を当てて下がる。
一方大股で他者を振り切るように歩くクレオナルドである。それに付いて歩くメロディナは半分駆け足のようになっている。
といっても実際はクレオナルドが抱えるようにして持ち上げているので、彼女はパタパタと足を動かしているだけなのだが。
「っレオ、恥ずかしいわ降ろして」
「そんなこと言ったって、まだ足に力が入らないだろう。こっちはもう限界なんだよ」
並んで恭しく頭を下げる使用人たちの前を足早に通り過ぎ、階段を駆け上がる。
毎日自分が過ごしている部屋にメロディナを招く日が来るなど思いもしなかった。
クレオナルドは薄く扉を開くとメロディナを抱き寄せて身体を滑り込ませ、すぐさま鍵を閉める。そして彼女の背を扉に押し付けたまま、性急にくちびるを重ねた。
「まっ…………んっ、ぁ」
柔らかな感触を確かめるように啄み、押し付ける。迷うように彷徨っていたメロディナの両腕が、控えめながらも彼の肩に回されて、クレオナルドは彼女の身体を力強く抱きしめた。
細い腰のくびれを大きな手が這うと、驚いたのか小さな悲鳴が上がる。その瞬間を逃さずに、クレオナルドは彼女の小ぶりな口腔に熱い舌先をねじ込んだ。
「えっ、ぁ……っ! んっ」
驚き固まってしまった彼女の舌先をつつき、舐る。ざらりと上顎を擽ると、メロディナは大きく身体を震わせ、顔を背けた。
「やっ……! な、なに……?」
くちびるが離れ、顔を覗きこんでみると、当惑し今にも泣いてしまいそうなメロディナがそこにいる。
「っすまない、浮かれて急ぎすぎた。モモが俺の部屋にいると思ったら、頭に血が上って……俺が、怖いか?」
眉が下がり、懇願するように情けない顔になっていることは自覚している。
以前無理矢理くちびるを奪い、メロディナを傷つけたことを激しく後悔したのだ。もう二度と、彼女にあんな思いをさせてはいけない。
だがメロディナは頬を赤く火照らせて、恥じらうようにクレオナルドを見上げた。
「こわい、とかじゃなくて……えっと、どうしたらいいか、わからなくて」
「……今のが深い口づけだ。嫌だったか?」
甘さを含んだクレオナルドの問いかけに、メロディナは首を振る。
「びっくりしただけ……」
「そうか。なら、もう一度ゆっくりしよう。モモ、舌を出して」
「ん……」
クレオナルドを誘うように瞳を潤ませながら、メロディナは小さく口を開く。そこから赤い舌がちろりと覗き、また衝動的にむしゃぶりついてしまいそうになる。
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しおりを挟んでくださっている皆様へ。
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