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18-2 寂しそうだった?
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◇◆
「ブルドア卿、10番隊隊長ー!」
公開練習終了後。
クレオナルドは差し入れを渡そうと詰め掛けてくる令嬢たちを無表情でいなしつつ、詰め所に戻ろうとしていると遠くの方で聞きなれた声がして、顔を上げた。
「! モ……!」
会いたいと思い過ぎて遂に幻覚が見えるようになってしまったのだろうか。
ここだ早く来いと大きく手を振るベリルの横には、戸惑いながら俯く美女の姿。クレオナルドが見間違えるはずがない。あれは、紛れもなくメロディナ本人だ。
彼女を目に留めるや否や、人混みをかき分け大股で進んだ。もうクレオナルドの目には、愛しいメロディナしか映っていない。
「どうして来たんだ」
開口一番そう言って、細く頼りない肩を掴むと、メロディナはびくりと身体を強張らせた。
怖がらせてしまったと気づき、慌てて手を離す。こんなことを言いたかったわけじゃないのに、自分の不甲斐なさに眩暈がする。
そんなクレオナルドを黙って見ていたベリルは、隣で大きくため息を吐いた。
「なによ。来たら迷惑みたいな言い方しちゃってさ。お姉様があんたに会えなくて寂しそうにしてたから連れてきてあげたのにあんまりじゃない? もういいわ。一緒にお父様のところに行きましょう、お姉様」
「ベ、ベリルちゃん、ちょっと待って」
クレオナルドを睨みつけ、ベリルはメロディナを連れて行こうと彼女の腕を取る。しかしクレオナルドの頭の中は、先ほどのベリルの言葉でいっぱいだった。
──寂しそうだった? モモが? 俺に会えなくて、だと……?
自然とだらしなく緩んでいきそうになる頬を手で覆い、横を向いた。顔が熱い。
ベリルの言ったことは事実なのだろうか。
クレオナルドがちらりとメロディナを盗み見ると、彼女もどこか恥じらうように顔を赤らめている。……気がする。
──!! 可愛すぎるだろ……!
「待てベリル。迷惑だなんて言ってない。こんな男だらけのところにモモが来たら危ないと言ってるんだ」
「……それはそうね。ごめんなさい、そこまで考えていなかったわ。帽子があれば十分かと思って」
「え?」
「馬鹿め。そんなものだけで隠せるわけないだろうが」
「なにを?」
「それは完全同意ね。お姉様の美しさは春の妖精だって恥じらって逃げ出すほどだもの」
恥ずかしげもなくそう言ってうんうんと頷き合うふたりを、わけがわからずにただ眺めるしかないメロディナである。
「あの、あのね、レオ。お昼持ってきたから一緒に食べられる? ダメならベリルちゃんとお父様のところに行くのだけど」
メロディナはふんわりと頬を染め、持っていた籠を少し持ち上げた。
可愛すぎて困る。今すぐ抱きしめたくなるのを必死に抑えて拳を握り、大きく頷いた。
「もちろんだ。俺もここに居る奴らも午後から非番だし、もう帰っても問題ないが。せっかくだから、ここで食っていくか? 向こうに静かな場所がある……っと、悪いが少しだけ待っていてくれ。汗を流してくる。ベリル、モモを頼む」
「言われなくてもそのつもりだし。お姉様を待たせないでくれる? 早く行って来て」
「ありがとうベリルちゃん。レオも、ゆっくりでいいよ」
周りを見渡せば、貴賓席にはもう人はあまりいなくなっている。ベリルもいることだし、これなら目を離しても問題ないだろうと、クレオナルドは足早に着替えに向かった。
「ブルドア卿、10番隊隊長ー!」
公開練習終了後。
クレオナルドは差し入れを渡そうと詰め掛けてくる令嬢たちを無表情でいなしつつ、詰め所に戻ろうとしていると遠くの方で聞きなれた声がして、顔を上げた。
「! モ……!」
会いたいと思い過ぎて遂に幻覚が見えるようになってしまったのだろうか。
ここだ早く来いと大きく手を振るベリルの横には、戸惑いながら俯く美女の姿。クレオナルドが見間違えるはずがない。あれは、紛れもなくメロディナ本人だ。
彼女を目に留めるや否や、人混みをかき分け大股で進んだ。もうクレオナルドの目には、愛しいメロディナしか映っていない。
「どうして来たんだ」
開口一番そう言って、細く頼りない肩を掴むと、メロディナはびくりと身体を強張らせた。
怖がらせてしまったと気づき、慌てて手を離す。こんなことを言いたかったわけじゃないのに、自分の不甲斐なさに眩暈がする。
そんなクレオナルドを黙って見ていたベリルは、隣で大きくため息を吐いた。
「なによ。来たら迷惑みたいな言い方しちゃってさ。お姉様があんたに会えなくて寂しそうにしてたから連れてきてあげたのにあんまりじゃない? もういいわ。一緒にお父様のところに行きましょう、お姉様」
「ベ、ベリルちゃん、ちょっと待って」
クレオナルドを睨みつけ、ベリルはメロディナを連れて行こうと彼女の腕を取る。しかしクレオナルドの頭の中は、先ほどのベリルの言葉でいっぱいだった。
──寂しそうだった? モモが? 俺に会えなくて、だと……?
自然とだらしなく緩んでいきそうになる頬を手で覆い、横を向いた。顔が熱い。
ベリルの言ったことは事実なのだろうか。
クレオナルドがちらりとメロディナを盗み見ると、彼女もどこか恥じらうように顔を赤らめている。……気がする。
──!! 可愛すぎるだろ……!
「待てベリル。迷惑だなんて言ってない。こんな男だらけのところにモモが来たら危ないと言ってるんだ」
「……それはそうね。ごめんなさい、そこまで考えていなかったわ。帽子があれば十分かと思って」
「え?」
「馬鹿め。そんなものだけで隠せるわけないだろうが」
「なにを?」
「それは完全同意ね。お姉様の美しさは春の妖精だって恥じらって逃げ出すほどだもの」
恥ずかしげもなくそう言ってうんうんと頷き合うふたりを、わけがわからずにただ眺めるしかないメロディナである。
「あの、あのね、レオ。お昼持ってきたから一緒に食べられる? ダメならベリルちゃんとお父様のところに行くのだけど」
メロディナはふんわりと頬を染め、持っていた籠を少し持ち上げた。
可愛すぎて困る。今すぐ抱きしめたくなるのを必死に抑えて拳を握り、大きく頷いた。
「もちろんだ。俺もここに居る奴らも午後から非番だし、もう帰っても問題ないが。せっかくだから、ここで食っていくか? 向こうに静かな場所がある……っと、悪いが少しだけ待っていてくれ。汗を流してくる。ベリル、モモを頼む」
「言われなくてもそのつもりだし。お姉様を待たせないでくれる? 早く行って来て」
「ありがとうベリルちゃん。レオも、ゆっくりでいいよ」
周りを見渡せば、貴賓席にはもう人はあまりいなくなっている。ベリルもいることだし、これなら目を離しても問題ないだろうと、クレオナルドは足早に着替えに向かった。
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