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【挿絵あり】番外編 うれしはずかし夏休み
07 早くふたりで
しおりを挟む「ベイル、あっちで魚が跳ねたわ!」
「おっ、いいっすね、潜って見てみます?」
「いえそういう意味じゃなくてっ……!」
「はい息吸ってー、大きくですよ!」
唐突な指示に思わず従ってしまい、大きく息を吸う。そしてベイルにしがみついたまま、一緒に水中へ潜った。というよりも連れていかれた。もはやされるがままである。
目を固く閉じたままでいたヒルデガルドの横腹を、ベイルが肘でつく。それが目を開けてみろということだと気づき、恐る恐る目を開き──
──っ、なんて美しいの……
透明度の高いその湖の中には、どこまでも青い景色が広がっていた。水面から覗き込むのとは全く異なる世界に、まさに息をのむ。
太陽の光が水中に差し込み、カーテンのように広がってはキラキラと瞬いている。それが右へ左へと泳ぐ魚の鱗に反射し、また、ゆったりと揺れる水草を映し出しもした。
自然と、ベイルにしがみつき強張っていた身体の力も抜けていく。美しい。ただそれだけで、ヒルデガルドの胸は十二分に満たされてしまった。
「ぷはっ! どーっすか? 夏の楽しさ、わかってもらえました?」
ニカっと豪快に笑い、ベイルは雑に髪をかき上げる。
次に来るときはシュノーケリングの用意もしなくちゃな、なんて言って、そのベイルが描くいつかの未来にも、当たり前にヒルデガルドがいることが嬉しかった。
「ええ、すごく楽しかった。ねぇ、ベイル……」
溺れないようにとベイルにくっついているヒルデガルド。そうすると陸地での体格差が嘘のようになくなって、今にもくちびるが触れてしまいそうなほど近い。
ゆっくりと距離をなくし、重なったくちびるは柔らかい。冷えた身体とは裏腹に、溶け合う吐息は熱を帯びていた。
「ん……っ、四阿に、飲み物を用意させてあるわ。早く行きましょう……?」
「そうですね。でも……もうちょっとだけ……」
ヒルデガルドのくちびるの形を確かめるように食み、ベイルの大きな掌がくびれをなぞる。彼の首裏に腕を回し、更に密着した。
「ふふ……、足はくすぐったいわ」
「え?」
「え?」
ぴたり、止まって顔を見合わせる。
ベイルはヒルデガルドが沈んでしまわないよう、腰を掴んでいるわけで。なら、この足首に纏わりつくぬるりとしたものは。
「えええええっ!!」
「でっか!!?? ちょ、離れろこの……!」
「んなっ……! 気持ち悪い!」
「待って姫さん大丈夫だから暴れるな! こいつぁ、インモンクラゲ!」
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