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本編

08 呼べよ

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「私の彼氏が……! 超絶イケメンすぎる……!」
「はぁ? バカ言ってないで早く外せって」
「ぁんっ、ちょっと待って」
「変な声出すな!」
「だって……っ、先輩が下から突く、からぁっ」

 んっ、と小さく喘いで黒戸を引き抜くと、水瀬はのろのろと彼の身体の上を這い、ベルトを巻き付けた腕へと手を伸ばした。
 その間大きな胸を顔に押し付けられて、黒戸はつい、柔らかな乳房を舌で押し返すようにしてから吸い付いてしまった。

「やんっ、せんぱ、ちょっと待って」
「早く外せよ」
「だってっ、そんなことされたら……あぁんっ」

 黒戸に反応する水瀬が可愛らしく思えて、つい悪戯心に火が付いた。黒戸は顔を動かして、ツンと主張するピンク色のしこりを口に含み、マーキングが如く唾液を塗り付けながら愛撫をする。

「んっ! やだっ……! そんな……せんぱいっ、気持ちよくなっちゃうぅっ」

 早くしろと言いながらも弱まらない舌使いに、水瀬は甘い吐息を漏らしながら身体をくねらせる。拘束を解くのには時間がかったが、やっとのことで黒戸の両手が自由になったその瞬間、水瀬の視界は反転した。

「きゃんっ」

 黒戸の逞しい腕に抱かれ、くるりとひっくり返されると、そのまま入れ替わるようにしてベッドへと沈められていたのだ。

「やっ、だなぁ……せんぱい、怒ってます……?」

 先ほどまでの威勢はなりを潜めている。彼の顔色を窺うような水瀬の表情に、黒戸は緩みそうになる口元をキュッと下げた。

「当然だろ。拘束までしやがって。さんざん弄ばれたおかげで俺だってもう限界なんだ。……責任取れよ」
「やだ、オラオラする先輩が超絶カッコイイ……」
「……えらい余裕だな」
「あっ……!!」

 開いた水瀬の脚を抱え引き寄せて、一気に穿つ。
 最奥まで押し込められて、水瀬の視界にはチカチカと光が瞬いた。きゅうっと黒戸を締めつけて、縋るように首裏に手を回したのは、もう離れたくないからだ。

「は、ぁぁっ……、せんぱいっ、せんぱぃ……っ!」

 黒戸は力強く腰を打ちつけて、細い首筋にキスを落とす。互いに上気し汗ばんだ素肌は、それだけで粟立つほど色っぽい。

あきらって、呼べよ。なつ
「んぅっ! そ、んなっ……ずるい……っ」

 ぱちゅん、と音をたてながら抜き挿しされる剛直に、水瀬の瞳が涙で濡れていく。
 繋がり部分は淫らに濡れて、互いを溶かしてしまいそうなまでに、熱い。

「早く、捺。呼んで」
「ま、ぁっ……、だめ、ぁ、きらっ……い、く……っ!」

 グリっと奥を抉り耳朶を齧ると、水瀬は体を丸め、黒戸を抱き締めた。
 あまりの悦びに腟内は痙攣し、黒戸をも快楽のその先へと引きずり込む。その心地良さに、黒戸は低く唸った。

「っは、締めすぎ……俺も、もうイきそ。ほら、ここ好きなんだろ? 捺」

 黒戸はそう言って、繋がりの上の、硬く尖る蕾を軽く摘んだ。

「ひぁぁっ、まって、今っ! いまっ、いったばっか、だからぁっ、ああああっ」
「っ、だからキツ……」

 黒戸は己の限界を感じ取り、蕾から手を離して挿入の激しさを増していく。水瀬の細い腰を荒々しく掴み、引き寄せるようにして自らを打ちつけた。

「んはっ、あき、らぁっ……! なかにっ、だして」
「……は?」
「んっ、……薬っ、飲んでる、から……ぁんっ」
「 ……っ」

 黒戸は苛つきをぶつけるように水瀬を搔き抱くと、唇に噛みつき、そのまま彼女の最奥へと、白濁とした欲望を注ぎ込んだ。

「は、ぁ……」
「…………」
「んっ……? せんぱい、どうか、した?」
「なぁ、捺」

 今しがた吐精したばかりにも関わらず、黒戸は水瀬から出ていこうとしない。それどころか、むしろゆるゆると腰を揺らし始めた。

「どうしよう、も、二回も出したのに全然おさまらね……」

 半分泣きそうになりながら項垂れる黒戸のその言葉に、水瀬は反射的に身体を起こした。

「先輩……♡そんなによかったんですね? 嬉しい……私なら大丈夫です、何回でもお付き合いしますっ♡」
「ちが……っ、なんか今日、おかしい。いつもこんなわけじゃ」
「私だからこんなに凄くなっちゃったってことですか? 最高ですね。唐突なデレをありがとうございます……!」

 水瀬は座り込む黒戸に身体を密着させると、深く口づけながら、ゆっくりとした律動を開始する。

「おい」
「はぁっ、先輩、好き……! 今度は私が、イかせてあげます」

 ぐりぐりと黒戸を奥へ捩じ込んで、前後へ揺する。そんな水瀬に笑みを零し、腰を抱くと、黒戸は耳もとへ唇を寄せた。

「名前、戻ってるぞ。捺」
「んんん……っ!」
「それに、捺の悦いとこだろ、それ」
「ちが」
「下から突いてやろうか」
「まっ……! やぁん」

 目の前で揺れるたわわな乳房を口に含みながら突き上げると、水瀬は一層艶めかしい声で啼く。

 存分に互いを貪り、まだ足りないのだと深くまで愛し合って、半ば倒れ込むようにして眠りについたのは、窓の外が白み始めた頃だった。
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