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09 本気のやつ
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「ねぇ待ってフレッド、話を……っ」
王城からほど近い場所にある部屋。
フレッドはユフェの手を握ったまま早足で玄関をすり抜け、迷うことなく寝室へ向かう。
「話? いいよ、何を知りたい? なんでも教えてあげる」
とびきり甘く囁いて、愛しい恋人を清潔なシーツの上へ押し倒した。逃げられないよう跨って、すべらかな頬を指先でなぞる。
一人暮らしにしては余裕がありすぎるこのベッドは、こうしてユフェと共に過ごすために用意しておいたものだ。
「もうバレてると思ってた。俺がどれだけユフェを愛してるかってこと」
昂る感情を抑えられず、恍惚とした笑みを向けてしまう。
少し怯えたような表情を見せるユフェのくちびるを、ひと舐めした。
「一目惚れだったんだ。それなりに恋愛とかしてきたつもりだったけど、今までのはなんだったんだってくらい、衝撃だった」
「ほ、ほんとう、に……? さっきのフレッド、別人みたいで。なにが本当か、わかんなくて……」
ユフェの瞳が涙に揺れる。悲しみに歪む。
あれほど望んだ彼女の涙なのに、これじゃない。愛しい人が心を痛める姿を欲したわけじゃない。見たいのはフレッドに愛され、快楽に蕩けきった、悦びの涙。
「別人? そう言われれば、そうかもな」
「っ! それって、やっぱり私を騙してたってこと……?」
身体を固くして、くちびるを戦慄かせた。怒ったように細めた瞳は力強く、それすらフレッドを煽る一因だと、ユフェは気づいていないのだろう。
「騙してたんじゃない。ただ、ユフェに気に入られたかっただけ」
「は……?」
「ちょっと抜けたような手のかかる男。それがユフェのタイプだろ?」
だから毎朝、きっちりと整えた髪型の、後ろ部分だけ握って崩した。
わざと制服のボタンも引っ張って緩めたし、縫い合わせもほつれさせた。
「全部、ユフェの気を引きたかったから」
「そ、んな。別に、手のかかる人が好きなわけじゃ」
「でも好きになっただろ」
くすりと笑う。
毎日毎日ついて回っていたおかげで、ユフェが絆されるように「フレッド」に心を開いたことはわかっている。
今だって、こうして彼女が対峙しているのは恋人としての義務感からなのかもしれない。だからフレッドは、そこに付け込むのだ。
「だからさ、逃げる気がなくなるくらいまでズブズブに愛して。それからなら、こうやって本性がバレても大丈夫かなって」
そろそろ限界だったから。自分を偽るのも、お行儀のいいセックスも。
そう思っているところに今日、たまたまあの女が来てくれて助かった。フレッドの友人と関係を持ち、本気にさせておいてフレッドにまで言い寄ってくるような尻軽女。男に媚びないユフェとはまるで違うあの女のおかげで、話をするいいきっかけになった。
「あ、あなたの本性って」
「俺もユフェと出会って知ったんだけど。どうやら尽くしたいみたいなんだよね。ほら、前に海老剥いてやっただろ?」
「ぁ……っ」
あの時のように人差し指を口内に差し込み、舌をひと撫ですると、警戒を残しながらも快楽に弱いユフェの力が抜けていく。
嫌がっていないことを確認して指を増やし、舌を弄んで上顎を擽った。鼻から漏れる甘さの含んだ吐息が、フレッドの身体を熱く疼かせた。
「ユフェの昔の男がクソなのは知ってる。俺のユフェに触れていたのは万死に値するけど、俺と出会う前のことだから気にしないよう……努力する。だからユフェ、アイツらの時みたいに尽くすんじゃなくて、俺にはたっぷり愛されておきな」
「んぅっ……! ふ、ぁ……」
親指をかませ、閉じられないようにした口内へ自らの舌を押し込めた。ユフェは何の抵抗もなく、それを受け入れ舌を絡めてくれる。
「ン……、かわい……キスだけで蕩けるんだ?」
「ちがっ! ……私、まだあなたの事信じてないから」
甘い雰囲気を破るよう、ユフェはフレッドの胸を押し睨みつけてくる。だがそれも、彼を煽るスパイスにしかなり得ない。
「へぇ……? まぁ、そっか。口では何とでも言えるもんな。じゃあさ、今から証明しようか」
「え?」
「俺がどれだけユフェを欲してるか……。好きな相手にじゃなきゃできないこと、教えてやる」
「それって……きゃぁっ!」
フレッドは身体を起こし、ユフェを後ろから抱きしめるようにして膝に乗せた。
手早くブラウスのボタンを外して素肌を撫でる。なめらかな肌は手に吸い付くようで、ずっとこうして触れていたい。
そんなフレッドから軽く身を捩り、ユフェは逃げるような素振りを見せる。逃げられるわけなんてないのに。
「無駄だって」
「やめ……ふ、ぁっ」
豊かな双丘の先をつまんだ瞬間、彼女の口からは艶やかな声が漏れて出る。
ユフェはこうして、ひっかくように爪で弾かれるのが好きなのだ。そうして更に羞恥を煽るように、耳元で低く囁いた。
「ユフェの乳首、めちゃくちゃ勃ってる。好きだもんなぁここ。ほら、うまそうに赤くしこった先っぽ、俺に弄られてるのちゃんと見てな」
「あっ、あっ……! やぁ……っ」
「見ろって」
「んぁあっ!」
先端をつまんだまま軽く引っ張ると、ユフェの腰が面白いように跳ねる。ポーズだった抵抗もすっかりなくなって、背中をフレッドの胸に預けてきた。
「ちょっと弄られただけで期待で腰揺れるの、すげぇ可愛い」
「うそ、そんな」
「本当だって。ユフェもさ、昨日とか。実は物足りなかったんじゃない?」
「…………え?」
「だって今まで抑えてたから。この奥の、最高にきもちーとこは突いてあげてなかっただろ?」
「──っ」
右の胸をいじめていた指先がゆっくりと肌を滑り、スカートの中へと侵入した。
「だから今日からは、本気の恋人セックスしような」
王城からほど近い場所にある部屋。
フレッドはユフェの手を握ったまま早足で玄関をすり抜け、迷うことなく寝室へ向かう。
「話? いいよ、何を知りたい? なんでも教えてあげる」
とびきり甘く囁いて、愛しい恋人を清潔なシーツの上へ押し倒した。逃げられないよう跨って、すべらかな頬を指先でなぞる。
一人暮らしにしては余裕がありすぎるこのベッドは、こうしてユフェと共に過ごすために用意しておいたものだ。
「もうバレてると思ってた。俺がどれだけユフェを愛してるかってこと」
昂る感情を抑えられず、恍惚とした笑みを向けてしまう。
少し怯えたような表情を見せるユフェのくちびるを、ひと舐めした。
「一目惚れだったんだ。それなりに恋愛とかしてきたつもりだったけど、今までのはなんだったんだってくらい、衝撃だった」
「ほ、ほんとう、に……? さっきのフレッド、別人みたいで。なにが本当か、わかんなくて……」
ユフェの瞳が涙に揺れる。悲しみに歪む。
あれほど望んだ彼女の涙なのに、これじゃない。愛しい人が心を痛める姿を欲したわけじゃない。見たいのはフレッドに愛され、快楽に蕩けきった、悦びの涙。
「別人? そう言われれば、そうかもな」
「っ! それって、やっぱり私を騙してたってこと……?」
身体を固くして、くちびるを戦慄かせた。怒ったように細めた瞳は力強く、それすらフレッドを煽る一因だと、ユフェは気づいていないのだろう。
「騙してたんじゃない。ただ、ユフェに気に入られたかっただけ」
「は……?」
「ちょっと抜けたような手のかかる男。それがユフェのタイプだろ?」
だから毎朝、きっちりと整えた髪型の、後ろ部分だけ握って崩した。
わざと制服のボタンも引っ張って緩めたし、縫い合わせもほつれさせた。
「全部、ユフェの気を引きたかったから」
「そ、んな。別に、手のかかる人が好きなわけじゃ」
「でも好きになっただろ」
くすりと笑う。
毎日毎日ついて回っていたおかげで、ユフェが絆されるように「フレッド」に心を開いたことはわかっている。
今だって、こうして彼女が対峙しているのは恋人としての義務感からなのかもしれない。だからフレッドは、そこに付け込むのだ。
「だからさ、逃げる気がなくなるくらいまでズブズブに愛して。それからなら、こうやって本性がバレても大丈夫かなって」
そろそろ限界だったから。自分を偽るのも、お行儀のいいセックスも。
そう思っているところに今日、たまたまあの女が来てくれて助かった。フレッドの友人と関係を持ち、本気にさせておいてフレッドにまで言い寄ってくるような尻軽女。男に媚びないユフェとはまるで違うあの女のおかげで、話をするいいきっかけになった。
「あ、あなたの本性って」
「俺もユフェと出会って知ったんだけど。どうやら尽くしたいみたいなんだよね。ほら、前に海老剥いてやっただろ?」
「ぁ……っ」
あの時のように人差し指を口内に差し込み、舌をひと撫ですると、警戒を残しながらも快楽に弱いユフェの力が抜けていく。
嫌がっていないことを確認して指を増やし、舌を弄んで上顎を擽った。鼻から漏れる甘さの含んだ吐息が、フレッドの身体を熱く疼かせた。
「ユフェの昔の男がクソなのは知ってる。俺のユフェに触れていたのは万死に値するけど、俺と出会う前のことだから気にしないよう……努力する。だからユフェ、アイツらの時みたいに尽くすんじゃなくて、俺にはたっぷり愛されておきな」
「んぅっ……! ふ、ぁ……」
親指をかませ、閉じられないようにした口内へ自らの舌を押し込めた。ユフェは何の抵抗もなく、それを受け入れ舌を絡めてくれる。
「ン……、かわい……キスだけで蕩けるんだ?」
「ちがっ! ……私、まだあなたの事信じてないから」
甘い雰囲気を破るよう、ユフェはフレッドの胸を押し睨みつけてくる。だがそれも、彼を煽るスパイスにしかなり得ない。
「へぇ……? まぁ、そっか。口では何とでも言えるもんな。じゃあさ、今から証明しようか」
「え?」
「俺がどれだけユフェを欲してるか……。好きな相手にじゃなきゃできないこと、教えてやる」
「それって……きゃぁっ!」
フレッドは身体を起こし、ユフェを後ろから抱きしめるようにして膝に乗せた。
手早くブラウスのボタンを外して素肌を撫でる。なめらかな肌は手に吸い付くようで、ずっとこうして触れていたい。
そんなフレッドから軽く身を捩り、ユフェは逃げるような素振りを見せる。逃げられるわけなんてないのに。
「無駄だって」
「やめ……ふ、ぁっ」
豊かな双丘の先をつまんだ瞬間、彼女の口からは艶やかな声が漏れて出る。
ユフェはこうして、ひっかくように爪で弾かれるのが好きなのだ。そうして更に羞恥を煽るように、耳元で低く囁いた。
「ユフェの乳首、めちゃくちゃ勃ってる。好きだもんなぁここ。ほら、うまそうに赤くしこった先っぽ、俺に弄られてるのちゃんと見てな」
「あっ、あっ……! やぁ……っ」
「見ろって」
「んぁあっ!」
先端をつまんだまま軽く引っ張ると、ユフェの腰が面白いように跳ねる。ポーズだった抵抗もすっかりなくなって、背中をフレッドの胸に預けてきた。
「ちょっと弄られただけで期待で腰揺れるの、すげぇ可愛い」
「うそ、そんな」
「本当だって。ユフェもさ、昨日とか。実は物足りなかったんじゃない?」
「…………え?」
「だって今まで抑えてたから。この奥の、最高にきもちーとこは突いてあげてなかっただろ?」
「──っ」
右の胸をいじめていた指先がゆっくりと肌を滑り、スカートの中へと侵入した。
「だから今日からは、本気の恋人セックスしような」
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