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06 恋の悩み
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「はぁ……」
フレッドと恋人になったあの夜から早一ヶ月。すっかり秋も深まり、昼間でも薄手の外套が必要な季節になってきた。
ユフェは親友ミミと、いつもの中庭で昼食をとっている。
「どうしたのユフェ、ため息なんてついちゃって。あんたはラブラブな彼氏といちゃいちゃハッピー生活を送ってるところでしょうよ。あ、もしかして昨日、激しすぎて寝かせてもらえなかったとか?」
「ちょ……! こんなところでなに言ってんのばかなの?! そんなわけないでしょ」
「えぇ~? でも寝不足でしょ? ちょっと隈できてるわよ」
ニヤニヤと揶揄うような視線を受け流し、ユフェはベーグルを頬張った。瑞々しいレタスとチーズ、そしてベーコンは相性抜群だが、いかんせん肉が厚切りすぎて食べづらい。次からは薄切りにして枚数を多くしよう。
フレッドとは彼の家で半同棲状態に陥っている。時間の合う日は一緒に帰り家事をして、同じベッドで眠り揃って出勤する。
大好きな人と一緒にいられる時間が増えるのは嬉しい。毎朝偶然を装い、鉢合わせるようにと計算する必要もなくなったし、フレッドはユフェをことさら大事にしてくれる。
「……まぁ、確かに独りのときより睡眠時間は短くなったかもしれないけど」
「なになに悩み? このミミさんに聞かせてごらんなさいよ」
完全に面白がっている様子だが、実は頼りになる親友だったりする。何度「そいつはダメ男だからとっとと切れ」とバッサリ言ってくれたことか。
「それが、なんていうか……すっごく、愛されすぎてるの」
「お、おぉん……?」
予想だにしていない言葉だったのか、ミミからはおかしな声が漏れる。
「いや、わかるよ。え? って感じだよね。でも」
フレッドは初めて身体を重ねたあの日から、全く変わることなく惜しみない愛を囁き、与えてくれる。むしろ深まっているくらいだ。
それがとても嬉しくて、幸せであるはずなのだけれど。
「でもね、なにか本音を隠してたりするんじゃないかとか、遠慮してるんじゃないかって、不安にもなって」
夜だって、毎回おかしくなるほど愛されている。傷つけまいと、丁寧に優しく快楽を植え付けられて、何度も気をやって。
だが愛されていると実感すると同時に、不安にもなる。
今までユフェに愛を囁いてきた恋人たちは、付き合い恋人となると、まるで手のひらを返すようにすぐ態度を変えた。
会う日は三日に一回になり、十日になり、気がつけば他の女性に乗り換えられている。
フレッドが彼らと一緒だとは思わないけれど、一度覚えた不安は簡単には拭えない。フレッドだって、なにか抑えているような、我慢しているような、そんな素振りを見せる瞬間がある。
「え? それってマンネリ? アイツ、セックス下手なの?」
「い・い・か・た・! というか今そんな話してた?」
そんなわけないでしょと口を尖らせ、睨みつけた。
ユフェとて経験豊富なわけではないが、一晩で何度も絶頂に追いやってくる彼の手つき腰つきは、きっと普通じゃない。
(昨日だって、きつく抱きしめながらじっくりと……)
ミミの言葉に、うっかり昨夜の情事をつぶさに思い出してしまった。すっかりと快楽を教え込まれた身体は彼の厚い胸板の重みを反芻して、子宮がねだるように甘く疼く。
そんな、口を結び顔を真っ赤に染めあげたユフェを生暖かい目で眺め、ミミは元気よく「ゴチソウサマでした」と手を合わせた。
その後執務室に戻った彼女たちに待っていたのは大量の書類仕事で、残念ながら残業が確定してしまった。
ユフェはその旨をフレッドに伝え、仕事に取り掛かる。
こんな日は、彼が温かい煮込み料理などを作って待ってくれていたりするのだ。簡単なものだけど、と言いながらもきっちりと下準備した肉は臭みもなく柔らかに煮込まれていて、フレッドの愛情深さと料理のおいしさにほっぺが落ちそうになってしまう。
今日もきっとそんな素敵な時間を過ごせるのだろうと頬を緩め、できるだけ早く彼のもとに帰ろうとペンを握った。
フレッドと恋人になったあの夜から早一ヶ月。すっかり秋も深まり、昼間でも薄手の外套が必要な季節になってきた。
ユフェは親友ミミと、いつもの中庭で昼食をとっている。
「どうしたのユフェ、ため息なんてついちゃって。あんたはラブラブな彼氏といちゃいちゃハッピー生活を送ってるところでしょうよ。あ、もしかして昨日、激しすぎて寝かせてもらえなかったとか?」
「ちょ……! こんなところでなに言ってんのばかなの?! そんなわけないでしょ」
「えぇ~? でも寝不足でしょ? ちょっと隈できてるわよ」
ニヤニヤと揶揄うような視線を受け流し、ユフェはベーグルを頬張った。瑞々しいレタスとチーズ、そしてベーコンは相性抜群だが、いかんせん肉が厚切りすぎて食べづらい。次からは薄切りにして枚数を多くしよう。
フレッドとは彼の家で半同棲状態に陥っている。時間の合う日は一緒に帰り家事をして、同じベッドで眠り揃って出勤する。
大好きな人と一緒にいられる時間が増えるのは嬉しい。毎朝偶然を装い、鉢合わせるようにと計算する必要もなくなったし、フレッドはユフェをことさら大事にしてくれる。
「……まぁ、確かに独りのときより睡眠時間は短くなったかもしれないけど」
「なになに悩み? このミミさんに聞かせてごらんなさいよ」
完全に面白がっている様子だが、実は頼りになる親友だったりする。何度「そいつはダメ男だからとっとと切れ」とバッサリ言ってくれたことか。
「それが、なんていうか……すっごく、愛されすぎてるの」
「お、おぉん……?」
予想だにしていない言葉だったのか、ミミからはおかしな声が漏れる。
「いや、わかるよ。え? って感じだよね。でも」
フレッドは初めて身体を重ねたあの日から、全く変わることなく惜しみない愛を囁き、与えてくれる。むしろ深まっているくらいだ。
それがとても嬉しくて、幸せであるはずなのだけれど。
「でもね、なにか本音を隠してたりするんじゃないかとか、遠慮してるんじゃないかって、不安にもなって」
夜だって、毎回おかしくなるほど愛されている。傷つけまいと、丁寧に優しく快楽を植え付けられて、何度も気をやって。
だが愛されていると実感すると同時に、不安にもなる。
今までユフェに愛を囁いてきた恋人たちは、付き合い恋人となると、まるで手のひらを返すようにすぐ態度を変えた。
会う日は三日に一回になり、十日になり、気がつけば他の女性に乗り換えられている。
フレッドが彼らと一緒だとは思わないけれど、一度覚えた不安は簡単には拭えない。フレッドだって、なにか抑えているような、我慢しているような、そんな素振りを見せる瞬間がある。
「え? それってマンネリ? アイツ、セックス下手なの?」
「い・い・か・た・! というか今そんな話してた?」
そんなわけないでしょと口を尖らせ、睨みつけた。
ユフェとて経験豊富なわけではないが、一晩で何度も絶頂に追いやってくる彼の手つき腰つきは、きっと普通じゃない。
(昨日だって、きつく抱きしめながらじっくりと……)
ミミの言葉に、うっかり昨夜の情事をつぶさに思い出してしまった。すっかりと快楽を教え込まれた身体は彼の厚い胸板の重みを反芻して、子宮がねだるように甘く疼く。
そんな、口を結び顔を真っ赤に染めあげたユフェを生暖かい目で眺め、ミミは元気よく「ゴチソウサマでした」と手を合わせた。
その後執務室に戻った彼女たちに待っていたのは大量の書類仕事で、残念ながら残業が確定してしまった。
ユフェはその旨をフレッドに伝え、仕事に取り掛かる。
こんな日は、彼が温かい煮込み料理などを作って待ってくれていたりするのだ。簡単なものだけど、と言いながらもきっちりと下準備した肉は臭みもなく柔らかに煮込まれていて、フレッドの愛情深さと料理のおいしさにほっぺが落ちそうになってしまう。
今日もきっとそんな素敵な時間を過ごせるのだろうと頬を緩め、できるだけ早く彼のもとに帰ろうとペンを握った。
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