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番外編
14、夜は長いので【2】
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「あの……ランプを消しても、いいですか?」
くちづけとくちづけの間に、レナーテが切れ切れに尋ねてくる。
「それは無理だな。暗くしたら、愛しいあなたのことがよく見えなくなる」
「でも、恥ずかしいです」
恥じらうレナーテもまた可愛いなどと言ったら。きっと意地でも俺の腕から逃れて、明かりを消すことだろう。
彼女の首筋に唇を触れると、レナーテは両手で顔を隠した。
「駄目だよ。意地悪しないで、顔を見せてくれ」
力を入れたわけではないが、俺の頼みにレナーテは自ら少しだけ手をずらした。
睫毛を伏せ、僅かに見える瞳は潤んでいる。
両頬に手を添えると、まるでそれが命令ででもあるかのように、レナーテは瞼を開いた。
「ちゃんと俺にキスをしなさい」
「……はい」
俺の首に両手をまわして、レナーテが上体を少し起こす。柔らかな、マシュマロのような唇がそっと戸惑うように触れてくる。
「大人のキスをするんだよ? レナーテ」
ああ、たいそう恥ずかしいだろうに。レナーテは唇を半ば開いて、俺の口中に舌を忍び込ませてくる。
恥じらいが先に立つ彼女には、命じてやった方が親切なのを、俺は知っている。
「あの……もう、よろしくて?」
「よろしくないなぁ」
まったく、ほんの少し舌を入れたくらいで俺があなたを解放するわけがないだろ?
安心しなさい。明日のカーリンの散歩も遊び相手も、俺が務めてあげるから。
だから、今夜のあなたは俺だけのものだよ。
レナーテの寝間着のボタンを外しながら、鎖骨の辺りに、そして柔らかな胸にくちづける。
赤い痕を残しながら、俺は胸の尖りをそっと舐めた。
「お、おやめになって。恥ずかしいの」
「これからもっと恥ずかしいことをするのに?」
レナーテの返事はない。半ば寝間着を脱がされた状態で、手の甲で目の辺りを隠している。
俺の節くれだった指は、滑らかなレナーテの肌をたどり、下腹部へ伸ばした。
硬く閉じた脚。
妻となり五年が過ぎても、あなたはまだ奔放にはなれないんだな。
「レナーテは胸が弱いよな」
「あ、あなた?」
「それも同時に触れられるのが好きなんだろ?」
胸の先端を指でつまむと、レナーテはくぐもった声を洩らした。
彼女が何処が弱いかは、知り尽くしている。
痛いほどに胸の尖りをつまみ、反対の手で彼女の秘所に触れる。そよ風が撫でるほどに、そっと。
もどかしい快楽と痛みを同時に感じたレナーテは、身をよじった。彼女が体を動かした所為で、石鹸の香りが鼻をかすめる。
「ん……んんっ」
「声は出さないのかい?」
「だって……カーリンが、目を……覚まし……っ、ぁあ」
さっき寝かしつけたばかりだからだろうな。レナーテはどうしても集中できないようだ。
困った俺は、サイドテーブルに手を伸ばした。
そこには、レナーテのレースのハンカチがある。
「これを口に咥えなさい」
「ハンカチを?」
「声が洩れるのが嫌なのだろう? それから……」
俺は、彼女の寝間着のウエスト部分を結んでいた細い腰帯を外した。
「少し怖いかもしれないが。視界を奪うよ」
「エルヴィンさま? 何を……」
レナーテの目許を覆いながら、彼女の後頭部で帯紐を結ぶ。簡単には外れないように。
あなたは、俺の与える快楽にただ溺れなさい。
くちづけとくちづけの間に、レナーテが切れ切れに尋ねてくる。
「それは無理だな。暗くしたら、愛しいあなたのことがよく見えなくなる」
「でも、恥ずかしいです」
恥じらうレナーテもまた可愛いなどと言ったら。きっと意地でも俺の腕から逃れて、明かりを消すことだろう。
彼女の首筋に唇を触れると、レナーテは両手で顔を隠した。
「駄目だよ。意地悪しないで、顔を見せてくれ」
力を入れたわけではないが、俺の頼みにレナーテは自ら少しだけ手をずらした。
睫毛を伏せ、僅かに見える瞳は潤んでいる。
両頬に手を添えると、まるでそれが命令ででもあるかのように、レナーテは瞼を開いた。
「ちゃんと俺にキスをしなさい」
「……はい」
俺の首に両手をまわして、レナーテが上体を少し起こす。柔らかな、マシュマロのような唇がそっと戸惑うように触れてくる。
「大人のキスをするんだよ? レナーテ」
ああ、たいそう恥ずかしいだろうに。レナーテは唇を半ば開いて、俺の口中に舌を忍び込ませてくる。
恥じらいが先に立つ彼女には、命じてやった方が親切なのを、俺は知っている。
「あの……もう、よろしくて?」
「よろしくないなぁ」
まったく、ほんの少し舌を入れたくらいで俺があなたを解放するわけがないだろ?
安心しなさい。明日のカーリンの散歩も遊び相手も、俺が務めてあげるから。
だから、今夜のあなたは俺だけのものだよ。
レナーテの寝間着のボタンを外しながら、鎖骨の辺りに、そして柔らかな胸にくちづける。
赤い痕を残しながら、俺は胸の尖りをそっと舐めた。
「お、おやめになって。恥ずかしいの」
「これからもっと恥ずかしいことをするのに?」
レナーテの返事はない。半ば寝間着を脱がされた状態で、手の甲で目の辺りを隠している。
俺の節くれだった指は、滑らかなレナーテの肌をたどり、下腹部へ伸ばした。
硬く閉じた脚。
妻となり五年が過ぎても、あなたはまだ奔放にはなれないんだな。
「レナーテは胸が弱いよな」
「あ、あなた?」
「それも同時に触れられるのが好きなんだろ?」
胸の先端を指でつまむと、レナーテはくぐもった声を洩らした。
彼女が何処が弱いかは、知り尽くしている。
痛いほどに胸の尖りをつまみ、反対の手で彼女の秘所に触れる。そよ風が撫でるほどに、そっと。
もどかしい快楽と痛みを同時に感じたレナーテは、身をよじった。彼女が体を動かした所為で、石鹸の香りが鼻をかすめる。
「ん……んんっ」
「声は出さないのかい?」
「だって……カーリンが、目を……覚まし……っ、ぁあ」
さっき寝かしつけたばかりだからだろうな。レナーテはどうしても集中できないようだ。
困った俺は、サイドテーブルに手を伸ばした。
そこには、レナーテのレースのハンカチがある。
「これを口に咥えなさい」
「ハンカチを?」
「声が洩れるのが嫌なのだろう? それから……」
俺は、彼女の寝間着のウエスト部分を結んでいた細い腰帯を外した。
「少し怖いかもしれないが。視界を奪うよ」
「エルヴィンさま? 何を……」
レナーテの目許を覆いながら、彼女の後頭部で帯紐を結ぶ。簡単には外れないように。
あなたは、俺の与える快楽にただ溺れなさい。
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