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一章
51、君が可愛すぎるから、つい
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レナーテの甘い喘ぎは、声が消えてもすべて俺の左のてのひらで感じられた。
俺の右手の、そして指の動きに応じて、彼女の体がぴくりと反応する。
どこが弱いのか、どこを感じるのか、俺にはもう分かるから。
焦らしつつ、翻弄しつつ。彼女を追い詰めていく。
彼女の白い肌がうっすらと桃色に染まり、俺が刻んだくちづけの印がさらに濃い色に染まっていく。まさに赤い花びらが散っているかのようだ。
「んん……ぅ、ん……ぁ」
「ああ、苦しいな、レナーテ。そろそろ解放してあげるよ」
「エルヴィンさま……ぁ」
指と指の隙間から洩れる声。俺の名を呼びながら達するその姿が、あまりにも愛らしすぎて。
本当に加減が難しい。
指だけで達したレナーテは、浅く短い息を繰り返しながら、俺の胸にぐったりともたれている。
しまった。疲れさせてしまったか。或いは湯に当たったか。
多分、どちらもだろう。
俺はレナーテを抱え上げて風呂から上がった。
◇◇◇
お風呂のお湯は熱くはなかったのに。エルヴィンさまがなかなか離してくださらないので、お風呂から上がる頃にはわたしはぐったりとしていました。
そう。気づけば、寝室のベッドに横になっていたんです。
窓は開かれ、庭から緑の香りのする風が入ってきます。
「気がついたか?」
エルヴィンさまは、ベッドの傍の椅子に腰を下ろして、わたしを扇であおいでくださいます。
そよそよとそよぐ風。窓からの風と一緒になって、涼しくて火照った体に心地よく感じます。
いつの間に着替えたのでしょう。朝だというのに、わたしは寝間着を着ていました。
そしてやはり、ボタンが掛け違えられていました。
不思議。寝間着はちゃんと自分で着ないといけないのだけれど。
不器用な手つきでボタンを留めてくださるエルヴィンさまを想像すると、微笑ましくなるの。
林檎を剥くのは、あんなに器用でいらっしゃるのに。
「済まなかったな、レナーテ。俺は、あなたと違って頑丈だから。その……つい無茶をさせてしまう」
「エルヴィンさま」
「……信じてもらえないだろうが、あれでも相当加減はしているつもりなんだ」
エルヴィンさまの表情は切なそうで、眉が下がっています。
いいえ、いいえ。抱いてほしいとおねだりしたのは、わたしなんです。エルヴィンさまは、元々昨夜は抱かないつもりだったと仰っていました。
むしろ我儘を聞いてもらったのは、わたしの方なんです。
「わたし、慣れてなくて。あんなにも疲れるものだと知らなかったの」
「逆に、レナーテが慣れていたら怖いよ」
くすっと小さくエルヴィンさまが微笑なさいます。
「エルヴィンさまは慣れていらっしゃるの?」
「むしろ慣れていたら、あなたを倒れさせたりしないよ」
扇をベッドに置いて、大きな手がわたしの頭を撫でてくださいます。ひんやりとした手がわたしのひたいに載せられて「熱はなさそうだ」と仰いました。
「何かしてほしいことはあるかい?」
「林檎が食べたいです。ウサギと白鳥の」
「畏まりました、お嬢さま」
わたしの手を取ったエルヴィンさまは、恭しく手の甲にキスをなさいました。
そうでした。エルヴィンさまは騎士なのです。
こんなにも大事にされて、愛されて。わたし、エルヴィンさまに花嫁に選んでいただいて、とても嬉しいの。
俺の右手の、そして指の動きに応じて、彼女の体がぴくりと反応する。
どこが弱いのか、どこを感じるのか、俺にはもう分かるから。
焦らしつつ、翻弄しつつ。彼女を追い詰めていく。
彼女の白い肌がうっすらと桃色に染まり、俺が刻んだくちづけの印がさらに濃い色に染まっていく。まさに赤い花びらが散っているかのようだ。
「んん……ぅ、ん……ぁ」
「ああ、苦しいな、レナーテ。そろそろ解放してあげるよ」
「エルヴィンさま……ぁ」
指と指の隙間から洩れる声。俺の名を呼びながら達するその姿が、あまりにも愛らしすぎて。
本当に加減が難しい。
指だけで達したレナーテは、浅く短い息を繰り返しながら、俺の胸にぐったりともたれている。
しまった。疲れさせてしまったか。或いは湯に当たったか。
多分、どちらもだろう。
俺はレナーテを抱え上げて風呂から上がった。
◇◇◇
お風呂のお湯は熱くはなかったのに。エルヴィンさまがなかなか離してくださらないので、お風呂から上がる頃にはわたしはぐったりとしていました。
そう。気づけば、寝室のベッドに横になっていたんです。
窓は開かれ、庭から緑の香りのする風が入ってきます。
「気がついたか?」
エルヴィンさまは、ベッドの傍の椅子に腰を下ろして、わたしを扇であおいでくださいます。
そよそよとそよぐ風。窓からの風と一緒になって、涼しくて火照った体に心地よく感じます。
いつの間に着替えたのでしょう。朝だというのに、わたしは寝間着を着ていました。
そしてやはり、ボタンが掛け違えられていました。
不思議。寝間着はちゃんと自分で着ないといけないのだけれど。
不器用な手つきでボタンを留めてくださるエルヴィンさまを想像すると、微笑ましくなるの。
林檎を剥くのは、あんなに器用でいらっしゃるのに。
「済まなかったな、レナーテ。俺は、あなたと違って頑丈だから。その……つい無茶をさせてしまう」
「エルヴィンさま」
「……信じてもらえないだろうが、あれでも相当加減はしているつもりなんだ」
エルヴィンさまの表情は切なそうで、眉が下がっています。
いいえ、いいえ。抱いてほしいとおねだりしたのは、わたしなんです。エルヴィンさまは、元々昨夜は抱かないつもりだったと仰っていました。
むしろ我儘を聞いてもらったのは、わたしの方なんです。
「わたし、慣れてなくて。あんなにも疲れるものだと知らなかったの」
「逆に、レナーテが慣れていたら怖いよ」
くすっと小さくエルヴィンさまが微笑なさいます。
「エルヴィンさまは慣れていらっしゃるの?」
「むしろ慣れていたら、あなたを倒れさせたりしないよ」
扇をベッドに置いて、大きな手がわたしの頭を撫でてくださいます。ひんやりとした手がわたしのひたいに載せられて「熱はなさそうだ」と仰いました。
「何かしてほしいことはあるかい?」
「林檎が食べたいです。ウサギと白鳥の」
「畏まりました、お嬢さま」
わたしの手を取ったエルヴィンさまは、恭しく手の甲にキスをなさいました。
そうでした。エルヴィンさまは騎士なのです。
こんなにも大事にされて、愛されて。わたし、エルヴィンさまに花嫁に選んでいただいて、とても嬉しいの。
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