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一章
20、風呂を沸かそう
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わたし、どうしてしまったのでしょう。
自分で自分が分かりません。エルヴィンさまに胸を触れられていると思うと、恥ずかしいのに気持ちが良くて。頭の中が真っ白になって、ソファーに座っているのにまるで湖に沈んでいくみたいで。
たくましい彼の背に必死でしがみついていたの。
すると、エルヴィンさまがわたしの頬に軽くキスをなさったの。その時に胸の尖りが、彼の服にこすれて。
ただそれだけなのに。
「あ……っ、ん……」
再びわたしは快楽の渦に飲み込まれました。エルヴィンさまにしがみついていないと、本当に溺れてしまいそう。
「ああ、なんと愛らしいんだ。触れるのが申し訳なくなるほどだ」
「エルヴィンさま……わたし」
いつの間にか汗をかいていたようで、わたしの顔に張りついた髪を彼の長い指が払ってくださいます。
「済みません。暑いわけではないのに、汗なんて」
「いや、気にすることはない」
露わになった胸も、しっとりと汗ばんでいます。あまりの恥ずかしさに襟を合わせようとしたのですけど。
「恥ずかしいだろうとは思うが、隠さなくてもいい。その……俺が、あなたに甘美な快感を与えたと思うと、嬉しいのだ」
騎士団の副団長とも思えない、狼狽えた喋り方です。
わたしは、自分でも気づかぬ内に襟から手を離していました。
「俺だけが、あなたに触れることが出来る。俺だけが、あなたをいかせることができる」
「……いかせる?」
「いや、聞き返さないでくれ。その……さっきレナーテが達した感覚だ」
「困ったな」と呟きながらも、エルヴィンさまは脱げそうになったワンピースごと、わたしを抱きしめてくださいました。
「汗が気になるのなら、風呂に入ろうか」
「はい。エルヴィンさま、お先にどうぞ」
「いや。一緒にという意味だが」
わたしは彼の腕に閉じ込められたままで、瞬きを繰り返しました。
結婚をしたら、夫婦になったら、寝室も同じでお風呂も一緒に入るものなんですか?
既婚の卒業生のお姉さまは、そんな風には仰っていませんでしたよ。
この家には通いの使用人が来てくれるのですが。新婚ということもあって、気を利かせてわたし達が不在の間に家事を済ませてくれたようです。
お風呂に向かったエルヴィンさまは、一度外に出るとお風呂用の薪を黒い金属製の釜に入れました。
「使用人が風呂に水を入れてくれているのだが。俺達がいつ入るか分からないからな。自分で沸かさないと」
「手慣れていらっしゃるんですね」
「まぁこれくらいは」
わたしは、エルヴィンさまの隣にしゃがんで、積んである薪を手渡します。
すでに割ってあるのですが、それでもなかなかに重いです。
「レナーテ。君はそんなことをしなくていいんだよ?」
「わたしも、これくらいはできるんです」
ふふん、とわたしは胸を張りましたが、なぜかエルヴィンさまは笑いを噛み殺していらしっしゃいます。
なぜ?
「笑うなんてひどいです」
「済まない。あなたを馬鹿にしたわけではないのだが」
わたしに背を向けて、なおもエルヴィンさまは肩を震わせています。
自分で自分が分かりません。エルヴィンさまに胸を触れられていると思うと、恥ずかしいのに気持ちが良くて。頭の中が真っ白になって、ソファーに座っているのにまるで湖に沈んでいくみたいで。
たくましい彼の背に必死でしがみついていたの。
すると、エルヴィンさまがわたしの頬に軽くキスをなさったの。その時に胸の尖りが、彼の服にこすれて。
ただそれだけなのに。
「あ……っ、ん……」
再びわたしは快楽の渦に飲み込まれました。エルヴィンさまにしがみついていないと、本当に溺れてしまいそう。
「ああ、なんと愛らしいんだ。触れるのが申し訳なくなるほどだ」
「エルヴィンさま……わたし」
いつの間にか汗をかいていたようで、わたしの顔に張りついた髪を彼の長い指が払ってくださいます。
「済みません。暑いわけではないのに、汗なんて」
「いや、気にすることはない」
露わになった胸も、しっとりと汗ばんでいます。あまりの恥ずかしさに襟を合わせようとしたのですけど。
「恥ずかしいだろうとは思うが、隠さなくてもいい。その……俺が、あなたに甘美な快感を与えたと思うと、嬉しいのだ」
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わたしは、自分でも気づかぬ内に襟から手を離していました。
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「……いかせる?」
「いや、聞き返さないでくれ。その……さっきレナーテが達した感覚だ」
「困ったな」と呟きながらも、エルヴィンさまは脱げそうになったワンピースごと、わたしを抱きしめてくださいました。
「汗が気になるのなら、風呂に入ろうか」
「はい。エルヴィンさま、お先にどうぞ」
「いや。一緒にという意味だが」
わたしは彼の腕に閉じ込められたままで、瞬きを繰り返しました。
結婚をしたら、夫婦になったら、寝室も同じでお風呂も一緒に入るものなんですか?
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「使用人が風呂に水を入れてくれているのだが。俺達がいつ入るか分からないからな。自分で沸かさないと」
「手慣れていらっしゃるんですね」
「まぁこれくらいは」
わたしは、エルヴィンさまの隣にしゃがんで、積んである薪を手渡します。
すでに割ってあるのですが、それでもなかなかに重いです。
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「わたしも、これくらいはできるんです」
ふふん、とわたしは胸を張りましたが、なぜかエルヴィンさまは笑いを噛み殺していらしっしゃいます。
なぜ?
「笑うなんてひどいです」
「済まない。あなたを馬鹿にしたわけではないのだが」
わたしに背を向けて、なおもエルヴィンさまは肩を震わせています。
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