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6、キスをしてくださいました

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 ベルナルトお兄さま……いえ、ベルナルトさまは、わたしを担ぎ上げたままで寝室のドアを開きました。
 この部屋には薪ストーブがついていないので、ひんやりと肌寒いです。

 でも、わたしは体が熱くて。頬も耳も火照ってしまって、とても暑いの。
 ねぇ、暑いのよ。お兄さま。気づいていらっしゃるんでしょう?

「すぐに済む……かどうかは、分からないが」

 ベルナルトさまはわたしの耳元で囁きながら、わたしをベッドに降ろします。とても優しく。
 新婚生活のために新調したベッドは大きく。いつもベルナルトさまと一緒に眠っています。
 本当にただ眠るだけで、手を繋ぐことすらありません。

 窓のカーテンはまだ引いていないので、宵闇が辺りを包んでいます。
 ぎしり、という軋む音。
 視界が一層暗くなったと思うと、ベルナルトさまがわたしに覆いかぶさってきました。

「わたし、これまでキスしたことないんです」
「……そうか。それは光栄だな」

 そう仰ると、ベルナルトさまはわたしの頬に唇を触れさせました。
 ただそれだけのことなのに、涙が滲んで。
 どうして嬉しいのに、涙が出るの? わたし、こんなにも泣き虫だったの?

 わたしを見つめる琥珀色の瞳。その瞳が閉じられて、今度は唇にキスされました。
 軽く。いいえ、違うわ。軽くなんて……ない。

「ん……っ」

 まるで食べられてしまいそうなキス。ベルナルトお兄さまの舌が、わたしの口の中に入ってきて。貪られるように激しくて。

 ベッドの上なのに溺れてしまいそうで、わたしはベルナルトお兄さまの背中に必死にしがみついたの。

「ああ、なんて愛らしいんだ。エミーリア」
「おにい……さ、ま」
「ベルナルト、だよ?」

 ベルナルトさまのくちづけは、止むことがありません。
 いつの間にか料理用のエプロンが外され、ブラウスのボタンも外されて。わたしの胸元にベルナルトさまがキスをなさっているの。

 ひりつく痛み。それを何か所も与えられます。

「痕が残ると思うが、怖がらないでくれ。むしろ俺は、君に痕を残したいんだ」

 仰っている意味が分かりません。
 でも、ベルナルトさまのくちづけは痛くて、心地よくて。わたしは近くにあったエプロンをフリルごと握りしめました。

 好き。大好き。

 子どもだったわたしには、ベルナルトお兄さまは大人で。
 告白なんかしても、きっと「俺は子どもに興味はないよ。同い年の少年にしておきなさい」なんて、断られそうで。
 ちゃんと「好き」と言えなかったの。

 ねぇ、お兄さま。わたしもう大人になったのよ。結婚できる年齢になったのよ。ホットミルクを欲しがる子どもじゃないの。

 わたし、嬉しいの。
 ベルナルトさまの瞳に、ちゃんとわたしが映っていることが。

「……っ、ぁ……あぅ」

 いつの間にかスカートがたくし上げられ、わたしの足にまでベルナルトさまはキスをなさっています。
 半ば脱がされたブラウスを肘や腕にまとわせて、少し硬い彼の髪に指を挿し入れました。
 ベルナルトさまの大きな手は、わたしの両膝に載せられています。

「怖いかい?」

 わたしは、ふるふると首を振りました。
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