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運命を繋ぐもの(最終話)

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電脳兵のセブンは、今日も巨大大陸の見回りをしていた。

 「武人、そんな頻繁に見回らなくても問題なくてよ。
  もうここに来て1年が経つのだから
  視るポイントは掴めているのではなくて?」

白い靄の中で運命の女神ウルズからそう声をかけられた。

 「いや、そうは言っても元々寝る必要のない体だし、
  今は反応炉なくて神気だけでなんとかなると言っても、
  何かしておかないと落ち着かないんだけど。」

もといた世界とは異なる、滅ぶべき姿であった世界を
運命を捻じ曲げて救ってしまったセブンは
同行していたベルザンディから見放され、
この世界で新たな神の1柱として、
この世界の神界で見習い神の仕事をしていたのだった。

この世界の運命の女神3姉妹は、元いた世界の3姉妹と
同じであって同じでない存在だそうだ。
うん、全く分からん。

意識の元は同じでも存在は異なる異次元の存在とも言うそうだ。
うん、それでもよく分からん。
まぁ、一応生きてることだし、そのうちどうにかなるといいなと
超楽天家思考でゆるゆると過ごしている。

 「武人には感謝しているけれど、
  この世界の存在レベルを上げていかないと
  破壊神様に一瞬でこの神界ごと消されてしまうから、
  どうにかして底上げしないとヤバいんだけど。」

スクルドは平和すぎて進歩しない大陸の民達に
不安を抱いているようだ。

 「あ、そうだ。
  いい手があるよ。
  ちょっと下界に行ってくる。」

 「ちょっと待てぇーい!
  そんな簡単におりたら駄目って
  前にも説明したでしょ?
  頼むよほんと。
  私が降りたいくらいなんだから。」

プリプリと怒り出すスクルドを横目に
どうにかして下界に降りれないかと
画策するセブンであった。

 「もう本当にしょうがないわね、二人とも。
  ほら、もうすぐ精霊の日が来るわ。
  その日なら世界樹のもとに
  降りていっていいから行ってらっしゃいな。」

 「そうだった!さすがお姉様。
  武人、下界に行って何をする気なの?」

 「ああ、リニアメトロの交通網を錬成で
  作り出そうと思ってるんだ。

  流通が変われば、世界の動きが加速して
  今までにないことが起こるから
  いい刺激になると思うんだ。」

 「却下!
  この世界にありえない技術持ち込むのはダメ。」

 「じゃあ、この世界の風魔法と重力魔法で作るのは?」

 「それはギリセーフかな。」

 「よーし、じゃあこの手で行くよ。」

数日後、世界樹のもとに降りた二人は
この世界の流通を変える大事業を成し遂げて
大きな変化をもたらしたのだった。

巨大大陸内の産業が活性化し、特産物も交流が進み、
食文化も加速して多様化していった。

そんなある日、ついに世界を吟味するものが訪れたのだった。
またもや天使の体を使っているようだ。

 「おや?
  君はいつぞやの機械の兵士ではないか?
  こんな遠くの別世界で何をしているのだ?」

 「あー、実はですね。」

事の経緯を話すと世界を吟味するものは声をあげて笑っていた。

 「はっはっはっ!君はつくづく無茶をするのだな。
  それは確かに取り決めでそうなっておるから
  仕方のない事だな。

  ところで、あの時の酒はまだ持っておるか?」

 「はい、ここに。」

 「おおっ!これじゃこれ!
  伝統の文化も良いものだな。
  うむ、美味い!

  よし、この世界も破壊は見送りだ。

  そうだ、君は暇を持て余していると
  ウルズから聞いておるがそうなのか?」

 「はい、貧乏性でして、何かしていないと
  落ち着かないんですよ。」

その言葉を聞いて、吟味をするものは天使の顔でニヤリとした。

 「では、世界を吟味する私が命じよう。
  武人といったか。
  君には別の世界の管理を命ずる。

  この世界はこれからまだまだ時間をかけながらも
  発展していく事だろう。
  その世界は暗い雰囲気に包まれており、
  存在レベルも低迷気味だ。
  良い刺激を与える起爆剤として赴き、
  私が吟味するにふさわしい世界となるよう
  管理に励むことを命ずる。

  覚悟は良いか?
  では、私の力で強制的に次元間転移させる。

   オープンゲート!
   われ破壊神が命ずる、
   この者をあるべき世界へ送りつけよ!」

セブンの足元に黒い渦が沸き立つと、
一瞬でその姿は飲み込まれて消えていった。

 「さて、私は次の世界を吟味しにいくとしよう。」

 「「「ご温情に感謝致します。」」」

運命の女神3姉妹が破壊神に深く頭を下げて礼を言った。



 「ダメだよ、全然ダメだよ。
  自分で作ってて美味しいと思えないよ。
  もう無理だよ、シヴァ様。
  食べて欲しい人がいないと
  あたいはもうダメだよ。」

 「泣くでない、パイロよ。
  いい女が台無しじゃ。
  そんなことでは
  他のものに負けてしまうぞ。

  それ、気合を入れて作り直すのじゃ。」

 「シヴァ様、今日もお祈りに参りました。」

神殿の奥でスイーツの新作に苦労しているパイロのところへ
憔悴したサラとカイが丸々としたカーラを伴って
毎日の日課となっているお祈りにやってきたのだった。

セブンが戻って来なくなって
すでに1年以上経っており
待ち続ける女性達は疲れていた。

それでもと、下界に降りて来なくなった運命の女神像に向けて
セブンの無事を祈る日々を続けていたのだった。

 (セブン、本当に貴方はどこにいってしまったの?
  運命の女神様達ともお話しできなくなってしまって
  今の私たちは無力だわ。
  貴方のいない世界に存在している意味はないわ。
  私も消えてしまいたいわ。)

 「それは余計に心配になるから、やめていただきたいですね。
  紗良義姉さん。」

女神像の前に立つ、待ち焦がれた男の姿があった。

 「バチンッ!!」

サラの全力の平手打ちがセブンの頬を直撃した。

 「心配かけてごめん。
  ある神様のお陰で帰って来れたよ。」

 「貴方と言う人は!!」

涙を流しながら抱きつくサラ。
駆け寄るパイロ、カイの姿があった。

魔族の国ではカミュール魔王の愛息である第一王子が
攻撃魔法ではなく伝説でしか存在しない
完全回復の魔法を行使したという。



白い靄の中から、ほっと一息つく3つの影があったという。

 「大したものね、本当に私達でもどうにもできない
  運命を切り開いて見せてくれたわね。
  ここに来る日を楽しみにしているわ。
  新神のタケト。」


後に多くの妻を娶り、子沢山の神として祀られる
タケトと言う名の神の物語、これにて終幕です。


☆ここまでお読みいただいた皆様、
 本当にありがとうございました。

 皆様のおかげで最後まで書き切れました。
 深謝にたえません。

 また、新たに書き始めているお話に、
 ちょこっとセブンが出るかもしれません。
 また、お読みいただけましたら幸いです。
  gray persona
  
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