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春の精霊祭
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「セブン、ありがとう。
きっとこれでわらわは一人ではなくなる。
わらわは魔王として孤独に生きてきた。
母になる夢を見た事はあったが、
叶わぬ夢と諦めておった。
エレシュキガル様に頂いた祝福の力で
わらわも神々に準じる力を持つものとして
神々と同じように子を為せるようになったのだ。
サラ、抜け駆けしたようですまぬな。
セブンに面倒はかけぬ。
わらわ一人で育ててみせる。」
カミュールとマインはスゥーっと気配が薄まっていき、
その場から消えていった。
魔族の王である魔王の力は子に継承される。
神龍の山の麓で目紛しい勢いで復興している魔族の国では、
新魔王の父親、祖父母のポジションを虎視淡々と狙う
魔族の貴族達が暗躍しているらしい。
このままでは国の維持のために望まぬ婚姻を
結ぶことになるやもしれぬと思っていた時に、
エレシュキガルとセブンの騒動を聞き、
それならばと思い立ったようだ。
友を裏切るような形になって後悔はすれども
ささやかな願いを叶えカミュールは戻っていった。
カミュールの消えた跡には、祝福するかのように
揺らめく小さな球がふわふわと浮かんでいた。
「あなたはいつも隙が多いのだわ。
って、あまり実感ないようね?
これからは神気は常に抑えておいて欲しいのだけれど
出来るかしら?
そ、じゃあこれからは気をつけることね。
それと、たまにはカミュールさんのところに
行ってあげる事をお勧めするわ。
あなたには責任があるのだわ。」
「て、言われても、何にも実感ないんだけど。
そう言う世界なんだな、ここって。
・・・過去の記憶が全部戻ったよ、
紗良義姉さん。髪の色とか色々違うけど、
雰囲気はそのままって感じで違和感ないな。
この電脳兵の体ってさ、生きてるって言えるのかな?」
「あら?色々違うところが何か気になるのだけれど、
後でじっくり聞かせて欲しいのだわ。
そうね、電脳兵の体でも生きてると言っていいのが
この世界だと思うのだわ。
何よりこんなに頻繁どころか普通に
神様が顕現している世界って特別だと思うのだわ。
それにさっきからこの辺りをふわふわ飛んでる
精霊達もいるくらいだから、
本当に神秘的な世界だと思うのだわ。」
「えっと、後でですね。。
かなり精霊が多いように思えるんだけど、
何なんだろ?何だか楽しそうな感じなんだけど。」
「あ、もうすぐ精霊祭だって神殿の方で
お祭りの話をしてたっしょ。
二つの太陽が綺麗な形で重なって、
昼と夜の長さが等しくなる春分の日なんだって。
蓮さんとあんこ系のスイーツ作るんだ。
セブンも食べたいのがあったらリクエストしてよ。
・・・あ、それとセブン。。。
あたいもセブンのこと好きだから
カミュールさんに負けないくらい頑張るよ。
絶対諦めない、諦められないから。
じゃあ、戻るね。」
ショックから立ち直ったパイロが潤んだ瞳のままで
神殿に戻って行った。
彼女は普段は神殿にいて電脳ボディのメンテにだけ
拠点に来ていることが多くなっていた。
拠点内ではカイがいつものように温かい飲み物を
用意し始めていた。
クロはセブンが離れたソファーに陣取り、
ゴロゴロし始める日常に戻っていた。
ただいつもと違うのは、精霊達が
賑やかに飛び回っていることだ。
見るもの全てを笑顔に、体の中に暖かな気持ちが灯るような
柔らかい光を放ちながら、ふわふわと楽しそうに飛んでいるのだった。
「カーラよ、春の精霊の日に行う神事の訓練を始めるぞ。
何、演舞というか剣の舞を踊るだけじゃ。
我らの決まった型がある。
それを今からじっくりと教える。
じゃから、その串をそこに置け!
それ、さっさと行くぞ!」
「えーやっと暖かくなって鳥さんのお肉が
美味しくなってきたのです。
もっと食べたいのです。」
「食べ過ぎじゃ!
また樽ボディになるぞ!
何で、カーラはそんなに丸いのじゃ?」
「お師匠様が少食なだけなのです。
もっと食べるべきなのです。」
「何を言っておるか。本来我らは・・・
あっ!神気で空腹を抑えて、体力も補う術を
教えておらなんだな。
よし、それも今からやるぞ!
それ、さっさと来い!」
丸みを帯びたカーラが鍛えられたマッスルボディの
ブリュンヒルドに引き摺られていくのを
シヴァと蓮が目線だけで見送っていた。
精霊の日、巨大大陸ではそこここで神事が執り行われる。
季節の移り変わる節目の日。精霊達への感謝の日。
春はこれからの豊作を、秋は無事に冬を越せる事を
神に願いながら様々な祭りが行われる。
獣人族には、いや、正確には獣人族の女性には重要な慣しがある。
意中の男性に気持ちを込めた贈り物を堂々とする日でもある。
ネコ獣人族のファーラは顔を赤く染めながら
セブンに渡す贈り物をあれこれと思案にふける
ある意味、幸せな時間を過ごしていたのだった。
きっとこれでわらわは一人ではなくなる。
わらわは魔王として孤独に生きてきた。
母になる夢を見た事はあったが、
叶わぬ夢と諦めておった。
エレシュキガル様に頂いた祝福の力で
わらわも神々に準じる力を持つものとして
神々と同じように子を為せるようになったのだ。
サラ、抜け駆けしたようですまぬな。
セブンに面倒はかけぬ。
わらわ一人で育ててみせる。」
カミュールとマインはスゥーっと気配が薄まっていき、
その場から消えていった。
魔族の王である魔王の力は子に継承される。
神龍の山の麓で目紛しい勢いで復興している魔族の国では、
新魔王の父親、祖父母のポジションを虎視淡々と狙う
魔族の貴族達が暗躍しているらしい。
このままでは国の維持のために望まぬ婚姻を
結ぶことになるやもしれぬと思っていた時に、
エレシュキガルとセブンの騒動を聞き、
それならばと思い立ったようだ。
友を裏切るような形になって後悔はすれども
ささやかな願いを叶えカミュールは戻っていった。
カミュールの消えた跡には、祝福するかのように
揺らめく小さな球がふわふわと浮かんでいた。
「あなたはいつも隙が多いのだわ。
って、あまり実感ないようね?
これからは神気は常に抑えておいて欲しいのだけれど
出来るかしら?
そ、じゃあこれからは気をつけることね。
それと、たまにはカミュールさんのところに
行ってあげる事をお勧めするわ。
あなたには責任があるのだわ。」
「て、言われても、何にも実感ないんだけど。
そう言う世界なんだな、ここって。
・・・過去の記憶が全部戻ったよ、
紗良義姉さん。髪の色とか色々違うけど、
雰囲気はそのままって感じで違和感ないな。
この電脳兵の体ってさ、生きてるって言えるのかな?」
「あら?色々違うところが何か気になるのだけれど、
後でじっくり聞かせて欲しいのだわ。
そうね、電脳兵の体でも生きてると言っていいのが
この世界だと思うのだわ。
何よりこんなに頻繁どころか普通に
神様が顕現している世界って特別だと思うのだわ。
それにさっきからこの辺りをふわふわ飛んでる
精霊達もいるくらいだから、
本当に神秘的な世界だと思うのだわ。」
「えっと、後でですね。。
かなり精霊が多いように思えるんだけど、
何なんだろ?何だか楽しそうな感じなんだけど。」
「あ、もうすぐ精霊祭だって神殿の方で
お祭りの話をしてたっしょ。
二つの太陽が綺麗な形で重なって、
昼と夜の長さが等しくなる春分の日なんだって。
蓮さんとあんこ系のスイーツ作るんだ。
セブンも食べたいのがあったらリクエストしてよ。
・・・あ、それとセブン。。。
あたいもセブンのこと好きだから
カミュールさんに負けないくらい頑張るよ。
絶対諦めない、諦められないから。
じゃあ、戻るね。」
ショックから立ち直ったパイロが潤んだ瞳のままで
神殿に戻って行った。
彼女は普段は神殿にいて電脳ボディのメンテにだけ
拠点に来ていることが多くなっていた。
拠点内ではカイがいつものように温かい飲み物を
用意し始めていた。
クロはセブンが離れたソファーに陣取り、
ゴロゴロし始める日常に戻っていた。
ただいつもと違うのは、精霊達が
賑やかに飛び回っていることだ。
見るもの全てを笑顔に、体の中に暖かな気持ちが灯るような
柔らかい光を放ちながら、ふわふわと楽しそうに飛んでいるのだった。
「カーラよ、春の精霊の日に行う神事の訓練を始めるぞ。
何、演舞というか剣の舞を踊るだけじゃ。
我らの決まった型がある。
それを今からじっくりと教える。
じゃから、その串をそこに置け!
それ、さっさと行くぞ!」
「えーやっと暖かくなって鳥さんのお肉が
美味しくなってきたのです。
もっと食べたいのです。」
「食べ過ぎじゃ!
また樽ボディになるぞ!
何で、カーラはそんなに丸いのじゃ?」
「お師匠様が少食なだけなのです。
もっと食べるべきなのです。」
「何を言っておるか。本来我らは・・・
あっ!神気で空腹を抑えて、体力も補う術を
教えておらなんだな。
よし、それも今からやるぞ!
それ、さっさと来い!」
丸みを帯びたカーラが鍛えられたマッスルボディの
ブリュンヒルドに引き摺られていくのを
シヴァと蓮が目線だけで見送っていた。
精霊の日、巨大大陸ではそこここで神事が執り行われる。
季節の移り変わる節目の日。精霊達への感謝の日。
春はこれからの豊作を、秋は無事に冬を越せる事を
神に願いながら様々な祭りが行われる。
獣人族には、いや、正確には獣人族の女性には重要な慣しがある。
意中の男性に気持ちを込めた贈り物を堂々とする日でもある。
ネコ獣人族のファーラは顔を赤く染めながら
セブンに渡す贈り物をあれこれと思案にふける
ある意味、幸せな時間を過ごしていたのだった。
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