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揺れる世界 見下ろすもの 見上げるもの
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電脳兵のセブンは成層圏を抜けて
巨大大陸北部のクレーターに向けて
降下をしていた。
「でかいな、直径1kmくらいのクレーターで
周辺の30km範囲が吹き飛んでるな。
深さは200m近いか。
ダイヤモンドがそこここに出来てるな。
中央丘の中心に金属反応がある。
あれが異界の魔石か。
回収しておくかな。
収納 っと。」
クレーターの内外には魔物、魔獣がひしめき、
それらと戦闘中の兵団、冒険者などがいたが、
中央丘周りに散らばっていた魔石などのお宝を
セブンが横から攫った形になった。
この魔物や魔獣はどこからか
湧き出してしてくるようで
疲弊した戦士達は休息と補給を求めて
戦場を後にして、しばらくすると
再アタックをかけているようだ。
どの軍団にも引くに引けない事情があるのか
悲壮感を漂わせながら戦闘を継続している。
クレーターの外輪からかなり離れた、
人気のない場所に揺らめきがあった。
2機のフライングユニットが
ステルスモードのままでふわりと降り立った。
セブン、クロ、カーラ、ブリュンヒルドを
パージすると、2機とも静止衛星軌道上に浮かべている
攻撃衛星目掛けて飛び上がって行った。
「クロ、周りに精霊の気配はあるか?」
「まだいない感じ。
この辺りに精霊転送の魔法陣を描くよ。」
「ああ、頼んだよ。
じゃ、俺はこの先に潜入してくるよ。
お二人はこの辺りで
クロと魔法陣の護衛をよろしく。」
「「了解した(なのです)!」」
セブンはステルスモードに移行し、
外輪の中に向けて移動して行った。
「カーラよ、分かっておるな?
本来なら天界の神々と共闘する立場じゃが、
光の精霊をここから世界樹のところまで
送り返せたら被害が減るのじゃ。
神々のやることは時に無体なこともある。
それに付き従うのが我ら神兵の本懐でもある。
これは反旗を翻す行為じゃ。
無理に付き合うことはないのじゃ。
今からでも遅くはない。
引き返すのなら今のうちじゃ。」
「何度も同じ返事をするのです、お師匠様。
カーラはこの大陸の人々を守りたいのです。
・・・本当はセブンも守りたいのです。
セブンはいつもフライングユニットを安全な場所に
移動させてから戦闘していたのです。
いつも自分だけ危ない目にあって、
ボロボロになった姿で何度も申し訳なさそうに
救援の依頼をしてくるのです。
まるで敵の攻撃を一身に受け止めてから
反撃しているかのようにボロボロになっているのです。
無情の電脳傭兵とか言われていたけれど、
きっと違うのです。
自分も死のうとしていたように思うのです。
今度の戦いも差し違える気配を漂わせているのです。
お師匠様、カーラはそうなる前にセブンを強制的に
フライングユニットで回収するつもりなのです。」
「それはならん。
戦士の思いを無にするようなことは断じてならん。
シヴァ神の暴走を止めた時、異界の神を召喚する技を
逡巡することなく使った戦士じゃ。
すでに覚悟ができておる証拠じゃ。
我らも同じ戦士、同じ戦士として
その決意を無にすることはならん。」
尚も何か言おうとしたカーラの唇に人差し指を立てて
ブリュンヒルドは首を振った。
「我らに出来るのはここの防衛じゃ。
それすらどうなるか分からぬ。
耐えて待つのじゃ。」
空が少し曇り始めた時、クレーター内輪部には、
人の気配も魔物達の気配もいつの間にか消えていた。
陰ったクレーターに現れたものがいた。
黒い炎を纏った剣を携えたルシファーと、
漆黒のコートを羽織ったメフィストだ。
「あの連中がここにいたもの達を
何処かに追いやったようだな。」
「この辺り一帯に衝撃吸収の結界を広げたみたが、
どれほど保つか保証はしかねる。」
「ほお、異界の結界魔法か。
何も感じさせないとはさすがだな。
まぁ、周りの被害は気にするな。
滅ぶ時には滅ぶものだ。
黙って滅ぼされる気は全くないがね。」
「あら、貴方達気が早いのね。
先陣は私が切るわ。
きっとイシュガルが撃ち込んでくるから
弾き返すのだわ。
貴方まで来る事は無かったのだけれど。」
「愛する妻が天使共と一戦交えるというのに
側にいない夫などいるものか。
心配無用だ。イシュガルの相手は任せる。
彼らとも縁がある。
向こうでもそうだったが、天使共の
横柄さには虫唾が走る。
黙って見ていることなど出来ん相談だ。」
「そうね、相手も多そうだし、
手数が増えるのは歓迎するわ。
一つだけ約束して頂戴。
もし、万が一、イシュガルに私が破れても
あの子には手を出さないであげて。
私の体だけを冥界に持ち帰ってくれるかしら。」
「縁起でもないことを。
それも約束出来ん相談だ。
必ず倒して共に帰るのだ。」
エレシュキガルとネルガルも魔力の込められた装備に
身を包んでいた。
天空から金色の光が突き刺さってきた。
見上げると金色に輝くライオンにまたがった
イシュガルの姿があった。
「逃げ出さずに、よく来れたわね、お姉様。
あら、そちらはネルガルさんね?
私のものになるというのなら、
貴方だけでも見逃してあげるのだけれど、
どうかしら?」
「心配無用だ。
妻以外に気を向ける余裕は持ち合わせておらん。」
「また悪い癖が出たわね、イシュガル。
人のものを欲しがるのはやめなさい。」
「お姉様には言われたくないわ。
ご存知かしら、ネルガルさん。
お姉様にはご執心の男が
この世界にいるのだけれど。」
「知っておる、セブン殿だ。
いつものことだ、気になどならんよ。
我ら夫婦の愛はその程度では揺らぐ事はない。」
「なぁんだ、つまんないわ。
いいわ、二人ともここで滅ぼしてあげる。
あら、そこのお二人も一緒に滅びたいのかしら?
いいのだわ、私の本気の力で滅ぼしてあげる。」
そうイシュガルが地上の四つの影を見ろして言い放つと、
曇っていた天空から無数の翼のあるものが降りてきた。
曇っていたのではなく、彼ら天使が無数に犇いていたようだ。
「ルシファーよ、我ら戦士団の力、
存分に味わって滅ぶといい。」
天使の中でも一際筋骨隆々の男が地上を見下すように
見つめながら大声をあげた。
「面白い戯言だな、ミカエル。
出来るものならやってみるがいい。
前にも言っただろう?
下を見て慢心するものには、進歩も未来もない。
上を見上げるものにだけ、進歩も未来もあるのだと。
お前達は今日ここまでだ。
冥界で鍛え直してやるとしよう。」
「貴様こそ、戯言を言うな!
全軍、攻撃開始せよ!
大地ごとなくなろうとも構わん、
あの連中をこの世界から消し去るのだ!
光の精霊魔法も発動させよ、
大地を全て焼き払ってしまえ!」
見上げると、後ろの上空で光の球が無数に浮かんでいた。
光の精霊を使って集団精霊魔法で大地を焼くつもりのようだ。
「よそ見はいけないのだわ、お姉様。
この神の光の矢でその身を貫いて差し上げますわ。」
イシュガルは光の矢と言うより槍のようなサイズのものを
エレシュキガルに向けて投げ放った。
エレシュキガルの手前に黒い球体が現れ、
光の矢を吸い込んでいくように萎んでいく。
しかし、吸い込みきれなかった一部分が貫通するように
飛び出すと、エレシュキガルの脇腹を貫いて行った。
さらに上空の天使達は地上に向けて
直径1mサイズの光の槍を
轟音を響かせながら地上に投げ打ち始めた。
ルシファーに向いた槍は尽く粒状に霧散して行った。
「相変わらずだな。
さて、これを受け取れ!」
ルシファーが黒い剣を投げ上げた。
途端に剣は上空で10倍くらいに巨大化し、
黒い炎を振り撒き始めた。
「愚か者め。
精霊で取り囲んで固めてしまえ。」
黒い魔剣に向けて光の球が投げつけられ、
見る見るうちに魔剣は光で覆われ、
動きを止めてしまった。
「よし、そのまま精霊に自爆させてしまえ。」
そうミカエルが冷徹な命令を下した時、
メフィストの目が細まった。
パンッ!パンッ!と破裂音をさせて
精霊達が自爆したようだ。
「なにっ!貴様、光の精霊の結界を越えて
干渉したと言うのか!」
見ると黒い魔剣は元のサイズでメフィストの手に
収まっていた。
「ルシファー、これは私には似合わない。
お返ししよう。
さて、天使諸君。
これは先ほどの光の矢の礼だ。
受け取りたまえ。」
そうメフィストが空を見上げながら言うと、
天使達の影から黒い刺々しい球が出現し、
そのトゲが天使達を貫いて行った。
ほぼ全滅に近い結末かと思われた時、
全ての天使達が青い炎に包まれ、蘇生し
先ほどよりも大きな光の槍を投げ放ち始めた。
地上が光の槍の放つ高熱で蕩けるほどの猛攻だ。
攻撃はそれるものもあり、
離れた山の斜面や平原に飛んでいき、
その先で火柱を上げまくっていた。
あまりの猛攻に防戦一方になる地上の戦士達。
クレーターを越えて、
周囲10kmが火の海に変貌していた。
「しぶといな。
光の精霊の命を持って、精霊魔法の奥義、
広域殲滅魔法を実行せよ!
この地上のもの全てが滅ぼうとも構わん。
全力で焼き払え!」
イシュタルとエレシュキガルは光の槍と闇の槍で
戦っており、ネルガルもルシファー、メフィストと共に
光の矢を打ち落とし、弾き返しと
身動きを取る余裕がなくなっていた。
「もう黙っておれん!
カーラ!ここを頼むぞ!
『ブリュンヒルドが命ずる!
ヴァルハラよ、その門を開き、
エインヘリャルを解き放て!』
不死の神兵共よ!
この地を焼き払おうとする、
狂った天使共を打ちのめせ!
行くぞ!!」
ブリュンヒルドが死した戦士達の魂を解き放ち、
上空から無慈悲の攻撃の手を緩めない天使の軍団に
向けて空を駆け上がり、戦闘を始めた。
(あ、先に出られちゃったか。
どうだろ、この戦闘の中を
光の精霊達だけでも助けに行くか。)
ステルスモードのままで上空に囚われている
光の球を目掛けてバーニアを吹き上げ、
密かに飛び立っていくセブンであった。
巨大大陸北部のクレーターに向けて
降下をしていた。
「でかいな、直径1kmくらいのクレーターで
周辺の30km範囲が吹き飛んでるな。
深さは200m近いか。
ダイヤモンドがそこここに出来てるな。
中央丘の中心に金属反応がある。
あれが異界の魔石か。
回収しておくかな。
収納 っと。」
クレーターの内外には魔物、魔獣がひしめき、
それらと戦闘中の兵団、冒険者などがいたが、
中央丘周りに散らばっていた魔石などのお宝を
セブンが横から攫った形になった。
この魔物や魔獣はどこからか
湧き出してしてくるようで
疲弊した戦士達は休息と補給を求めて
戦場を後にして、しばらくすると
再アタックをかけているようだ。
どの軍団にも引くに引けない事情があるのか
悲壮感を漂わせながら戦闘を継続している。
クレーターの外輪からかなり離れた、
人気のない場所に揺らめきがあった。
2機のフライングユニットが
ステルスモードのままでふわりと降り立った。
セブン、クロ、カーラ、ブリュンヒルドを
パージすると、2機とも静止衛星軌道上に浮かべている
攻撃衛星目掛けて飛び上がって行った。
「クロ、周りに精霊の気配はあるか?」
「まだいない感じ。
この辺りに精霊転送の魔法陣を描くよ。」
「ああ、頼んだよ。
じゃ、俺はこの先に潜入してくるよ。
お二人はこの辺りで
クロと魔法陣の護衛をよろしく。」
「「了解した(なのです)!」」
セブンはステルスモードに移行し、
外輪の中に向けて移動して行った。
「カーラよ、分かっておるな?
本来なら天界の神々と共闘する立場じゃが、
光の精霊をここから世界樹のところまで
送り返せたら被害が減るのじゃ。
神々のやることは時に無体なこともある。
それに付き従うのが我ら神兵の本懐でもある。
これは反旗を翻す行為じゃ。
無理に付き合うことはないのじゃ。
今からでも遅くはない。
引き返すのなら今のうちじゃ。」
「何度も同じ返事をするのです、お師匠様。
カーラはこの大陸の人々を守りたいのです。
・・・本当はセブンも守りたいのです。
セブンはいつもフライングユニットを安全な場所に
移動させてから戦闘していたのです。
いつも自分だけ危ない目にあって、
ボロボロになった姿で何度も申し訳なさそうに
救援の依頼をしてくるのです。
まるで敵の攻撃を一身に受け止めてから
反撃しているかのようにボロボロになっているのです。
無情の電脳傭兵とか言われていたけれど、
きっと違うのです。
自分も死のうとしていたように思うのです。
今度の戦いも差し違える気配を漂わせているのです。
お師匠様、カーラはそうなる前にセブンを強制的に
フライングユニットで回収するつもりなのです。」
「それはならん。
戦士の思いを無にするようなことは断じてならん。
シヴァ神の暴走を止めた時、異界の神を召喚する技を
逡巡することなく使った戦士じゃ。
すでに覚悟ができておる証拠じゃ。
我らも同じ戦士、同じ戦士として
その決意を無にすることはならん。」
尚も何か言おうとしたカーラの唇に人差し指を立てて
ブリュンヒルドは首を振った。
「我らに出来るのはここの防衛じゃ。
それすらどうなるか分からぬ。
耐えて待つのじゃ。」
空が少し曇り始めた時、クレーター内輪部には、
人の気配も魔物達の気配もいつの間にか消えていた。
陰ったクレーターに現れたものがいた。
黒い炎を纏った剣を携えたルシファーと、
漆黒のコートを羽織ったメフィストだ。
「あの連中がここにいたもの達を
何処かに追いやったようだな。」
「この辺り一帯に衝撃吸収の結界を広げたみたが、
どれほど保つか保証はしかねる。」
「ほお、異界の結界魔法か。
何も感じさせないとはさすがだな。
まぁ、周りの被害は気にするな。
滅ぶ時には滅ぶものだ。
黙って滅ぼされる気は全くないがね。」
「あら、貴方達気が早いのね。
先陣は私が切るわ。
きっとイシュガルが撃ち込んでくるから
弾き返すのだわ。
貴方まで来る事は無かったのだけれど。」
「愛する妻が天使共と一戦交えるというのに
側にいない夫などいるものか。
心配無用だ。イシュガルの相手は任せる。
彼らとも縁がある。
向こうでもそうだったが、天使共の
横柄さには虫唾が走る。
黙って見ていることなど出来ん相談だ。」
「そうね、相手も多そうだし、
手数が増えるのは歓迎するわ。
一つだけ約束して頂戴。
もし、万が一、イシュガルに私が破れても
あの子には手を出さないであげて。
私の体だけを冥界に持ち帰ってくれるかしら。」
「縁起でもないことを。
それも約束出来ん相談だ。
必ず倒して共に帰るのだ。」
エレシュキガルとネルガルも魔力の込められた装備に
身を包んでいた。
天空から金色の光が突き刺さってきた。
見上げると金色に輝くライオンにまたがった
イシュガルの姿があった。
「逃げ出さずに、よく来れたわね、お姉様。
あら、そちらはネルガルさんね?
私のものになるというのなら、
貴方だけでも見逃してあげるのだけれど、
どうかしら?」
「心配無用だ。
妻以外に気を向ける余裕は持ち合わせておらん。」
「また悪い癖が出たわね、イシュガル。
人のものを欲しがるのはやめなさい。」
「お姉様には言われたくないわ。
ご存知かしら、ネルガルさん。
お姉様にはご執心の男が
この世界にいるのだけれど。」
「知っておる、セブン殿だ。
いつものことだ、気になどならんよ。
我ら夫婦の愛はその程度では揺らぐ事はない。」
「なぁんだ、つまんないわ。
いいわ、二人ともここで滅ぼしてあげる。
あら、そこのお二人も一緒に滅びたいのかしら?
いいのだわ、私の本気の力で滅ぼしてあげる。」
そうイシュガルが地上の四つの影を見ろして言い放つと、
曇っていた天空から無数の翼のあるものが降りてきた。
曇っていたのではなく、彼ら天使が無数に犇いていたようだ。
「ルシファーよ、我ら戦士団の力、
存分に味わって滅ぶといい。」
天使の中でも一際筋骨隆々の男が地上を見下すように
見つめながら大声をあげた。
「面白い戯言だな、ミカエル。
出来るものならやってみるがいい。
前にも言っただろう?
下を見て慢心するものには、進歩も未来もない。
上を見上げるものにだけ、進歩も未来もあるのだと。
お前達は今日ここまでだ。
冥界で鍛え直してやるとしよう。」
「貴様こそ、戯言を言うな!
全軍、攻撃開始せよ!
大地ごとなくなろうとも構わん、
あの連中をこの世界から消し去るのだ!
光の精霊魔法も発動させよ、
大地を全て焼き払ってしまえ!」
見上げると、後ろの上空で光の球が無数に浮かんでいた。
光の精霊を使って集団精霊魔法で大地を焼くつもりのようだ。
「よそ見はいけないのだわ、お姉様。
この神の光の矢でその身を貫いて差し上げますわ。」
イシュガルは光の矢と言うより槍のようなサイズのものを
エレシュキガルに向けて投げ放った。
エレシュキガルの手前に黒い球体が現れ、
光の矢を吸い込んでいくように萎んでいく。
しかし、吸い込みきれなかった一部分が貫通するように
飛び出すと、エレシュキガルの脇腹を貫いて行った。
さらに上空の天使達は地上に向けて
直径1mサイズの光の槍を
轟音を響かせながら地上に投げ打ち始めた。
ルシファーに向いた槍は尽く粒状に霧散して行った。
「相変わらずだな。
さて、これを受け取れ!」
ルシファーが黒い剣を投げ上げた。
途端に剣は上空で10倍くらいに巨大化し、
黒い炎を振り撒き始めた。
「愚か者め。
精霊で取り囲んで固めてしまえ。」
黒い魔剣に向けて光の球が投げつけられ、
見る見るうちに魔剣は光で覆われ、
動きを止めてしまった。
「よし、そのまま精霊に自爆させてしまえ。」
そうミカエルが冷徹な命令を下した時、
メフィストの目が細まった。
パンッ!パンッ!と破裂音をさせて
精霊達が自爆したようだ。
「なにっ!貴様、光の精霊の結界を越えて
干渉したと言うのか!」
見ると黒い魔剣は元のサイズでメフィストの手に
収まっていた。
「ルシファー、これは私には似合わない。
お返ししよう。
さて、天使諸君。
これは先ほどの光の矢の礼だ。
受け取りたまえ。」
そうメフィストが空を見上げながら言うと、
天使達の影から黒い刺々しい球が出現し、
そのトゲが天使達を貫いて行った。
ほぼ全滅に近い結末かと思われた時、
全ての天使達が青い炎に包まれ、蘇生し
先ほどよりも大きな光の槍を投げ放ち始めた。
地上が光の槍の放つ高熱で蕩けるほどの猛攻だ。
攻撃はそれるものもあり、
離れた山の斜面や平原に飛んでいき、
その先で火柱を上げまくっていた。
あまりの猛攻に防戦一方になる地上の戦士達。
クレーターを越えて、
周囲10kmが火の海に変貌していた。
「しぶといな。
光の精霊の命を持って、精霊魔法の奥義、
広域殲滅魔法を実行せよ!
この地上のもの全てが滅ぼうとも構わん。
全力で焼き払え!」
イシュタルとエレシュキガルは光の槍と闇の槍で
戦っており、ネルガルもルシファー、メフィストと共に
光の矢を打ち落とし、弾き返しと
身動きを取る余裕がなくなっていた。
「もう黙っておれん!
カーラ!ここを頼むぞ!
『ブリュンヒルドが命ずる!
ヴァルハラよ、その門を開き、
エインヘリャルを解き放て!』
不死の神兵共よ!
この地を焼き払おうとする、
狂った天使共を打ちのめせ!
行くぞ!!」
ブリュンヒルドが死した戦士達の魂を解き放ち、
上空から無慈悲の攻撃の手を緩めない天使の軍団に
向けて空を駆け上がり、戦闘を始めた。
(あ、先に出られちゃったか。
どうだろ、この戦闘の中を
光の精霊達だけでも助けに行くか。)
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